世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 ライセンスさん、デイブレイクさん、深緑 風龍さん、
 
 新たに評価、ありがとうございますm(_ _)m

 そして、長らくおまたせして申し訳ありませんでした。

 本日より投稿再開します。

 今後もよろしくお願いしますm(_ _)m

 あと、俺ガイルもせっかく書いたので気分が出たらちょくちょく書こうと思ってます。
 ですがあくまでメインはこっちです。

 


第24話∶独り相撲

 

 それは、唐突に始まった。

 

 

 「あ〜む!モキュモキュッ」

 

 「フムフムッガッツ、ガッツりガッツッ!」

 

 

 「おおっ良いぞ!嬢ちゃんが抜いた!」

 

 「いいや!オッサンが盛り返してきた!!」

 

 「おいッ店員早くしろ!次の料理はまだか!!」

 

 「もういいッ!!俺も加勢するッ厨房へ案内しろ!俺の天職は調理師だ!!」

 

 「お前、なんで冒険者やってんだよ……」

 

 「私達も運ぶのを手伝うわ!!」

 

 

 始まりは突然、皿を高く積み上げたオッサンが、唐突に追加の注文をし始め、まるでナナキ食事スピードに追いすがる様に爆食いし始めたのが切っ掛けだった。

 

 ナナキはご馳走に夢中で気がついていないが、オッサンの方は明らかに意識してやっている。

 

 何のつもりだ?と訝しんだ俺こと、南雲 ハジメだったが、別に個人で勝手にやる分には此方に何の害もないので無視することにした。まぁしかし野次馬とはどこにでも湧くものらしく、周りはそうもいかなかった。

 

 「あっ嬢ちゃんのペースがちょっと落ちてきたんじゃないか?」

 

 「あれは単純に食べにくい料理だから時間がかかってんだよ。見ろよあの幸せそうな顔!まだ全然余裕そうだぜぇ」 

 

 「だが、この間にオッサンが畳み掛けてきやがった。一気に5皿も平らげたぞ!」

 

 

 いつの間にか周囲はお祭り騒ぎのどんちゃん騒ぎ。

 

 ある者は歓声や実況に声を張り上げ、またある者は焦れて料理と給仕を手伝う始末。余談だが、後半の方は宿屋の3人親子が分かりやすいようにパァッと顔を輝かせていた。それでいいのか客商売……。

 

 「バライティ番組の大食い対決かよ……」

 

 「……騒がしい」

 

 「でも、賑やかでなんだかいいですねぇ」

 

 

 三者三様にボソリと呟く俺達を他所に、ギャラリーはさらに沸き立つ。

 

 ナナキが大量に皿に詰められた貝を蒸したような料理から『ちゅぽん』と言う、かわいい音を出して丁寧に身を吸い出している間に、オッサンは汁物料理を一気にかき込んでいる。それが5皿、6皿、7皿と続く。恐らくオッサンはここでナナキと圧倒的に差をつけるつもりらしい。10皿目を平らげた正にその時……

 

 ガシャンッ

 

 「ッ!?うぐっ!!」

 

 突如オッサンが突っ伏しその振動で食器の塔が撓む。何事かと目を向けてみれば、オッサンが胸下の丁度胃があるだろう場所を左手で押さえ、脂汗を流して苦しみだしている。

 

 その時初めてローブの中から見えた顔は巨漢の割にはかなりのご年配で教皇とはまた別の老人にはそぐわない覇気を感じられた。俺が顔を見るまで中年のおっさんと思い込んでいた程に……。

 しかしその覇気も今では感じられず、匙を手放し震える様は年相応に苦しんでいるように見える。オッサンの異変にどよめくギャラリーとは正反対に、俺は諭すようにオッサンに声を掛ける。

 

 「無理すんなオッサン。あんた、こんなくだらねぇことで死にたいのか?」

 

 しかしオッサンは俺の言葉聞いた瞬間顔を蒼白に染めながらも、その口角を獰猛に吊り上げる。

 

 「フンッあまり……舐めてくれるなよ若いの……」

 

 そう言うとオッサンは手放した匙をもう一度右手で強く掴むと、再び連続で追加注文を取る。そうしてやってきた品々はどれも巨大かつ高カロリーで見るだけでも胃もたれしそうな光景だった。それを見たギャラリーもさすがに動揺が走る。

 

 「む、無茶だあんた!!」

 

 「それ以上()ったら死んじまうッ!!」

 

 少し大袈裟な反応な気もしなくも無いが、俺も概ね周りの意見に同感だった。しかしオッサンは、その好戦的な表情を崩すこと無く声高らかに言い放った。

 

 「食うことこそ私の生き甲斐、食うことこそが私人生だ。食い続けた果てにこの身が朽ち果てるのなら……寧ろ本望よ!!」

 

 そう言うと、オッサンは皿に乗った巨大な肉にかじりついた。

 

 オッサンの不屈の精神にギャラリーはさらなる盛り上がりを見せる。

 だが俺は……その光景を冷めた目で見ていた。何故なら、この勝負の行く末が既に見えていたからだ。

 

 

 

 オッサン。

 

 そんなんじゃ一生、

 

 逆立ちしたってナナキに敵っこねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 

 

 私はしがないフードファイター。

 

 胃に抱えた爆弾が今にも暴発しそうなのを必死に抑え込み、目の前に並べられた食事をかっ食らう。

 周りから上がっていた声援は私を気遣う悲痛な叫びへと変わる。

 

 私も感じていた。恐らく、この戦いが終わる頃には私はもう……。

 

 ……構うものかッ!なんせこんなにも心躍っているのだ。私はチラッと少女の方へと視線を一瞬向ける。

 

 ッ!なんということだ!ドゥンファ貝の蒸し盛りを平らげた瞬間一気に追い上げてきた。私が停滞している間に10皿はあった猶予は3皿まで詰められていた。

 

 類稀無い実力者。コレまで数人と出会うことができなかった最高の好敵手。

 

 食いたい……。

 

 腹の底から、食い(勝ち)たいという気持ちが溢れ出てくる。心情では、五十年ほど若返った思いだ。

 

 さぁ、最後の勝負だ!好敵手よ。例えこの胃が弾け飛ぼうと、私はこの匙をこの口を止めることは絶対にしない。

 

 少女の皿の塔が私の皿の塔を追い越す、そこにすかさず私が追いすがる。それを更に少女が超える。

 

 カチャカチャと積まれる皿の音が響く接戦に、観衆が沸く。いつの間にかレフェリーを買って出た冒険者が私たち2人の皿の枚数を叫ぶ。

 

 「右ッ107枚!左ッ107枚!現在同着!!」

 

 右とは私、左は少女の事だ。今激しい接戦の末、両者共々手も口も止まっていて追加注文をする気配もない。誰もがこの状況を膠着だと思うだろう。だがコレで……私の勝ちが確定する。

 

 少女の机には空の皿の塔のみ、私の机には皿の塔意外にも、食材が装われた皿が1枚。私はそれを最後の力を振り絞って口に詰め込んだ。

 

 カチャッと静かに一回、皿が1枚積まれた音がする。そして……

 

 「ぷふぅ〜、もうおなかいっぱい」

 

 「右108枚、左107枚……右の勝利ぃいい!!」

 

 まん丸になったお腹を擦る少女の言葉を合図に、レフェリー君が叫ぶ。1枚高く積まれた皿の塔は私の物。

 

 そう、この戦い……私の勝━━━

 

 「あにぃ〜、さいごにでざーとたべる〜!」

 

 「お〜そうか、どれにする?何でもいいぞ〜」

 

 「う〜ん。ど〜しよ〜」

 

 「いっその事全部なんてどうだ?どれも美味そうだし。お金は気にしなくていいからな」

 

 「うん!」

 

 

 

 …………は?

 

 さっきお腹いっぱいって言わなかった?一皿二皿ならまだわかる。でも少女は嬉々として、デザートメニューを全品注文していた。

 

 あまりの訳わからなさに私だけでなく、周りの観衆レフェリー冒険者も目を見開いて驚愕している。

 

 レフェリー冒険者君なんて、気が早かった勝利宣言に少し恥ずかしげにしている。私も少し恥ずかしい。

 

 

 「いや、待ってくださいハジメさん。さっきナナちゃんお腹いっぱいって言ってませんでしたか?なんか……まだ全然余裕そうなんですけど」

 

 そうこうしていると、少女と同じ机に座る奴隷の首輪をつけた兎人族の娘が、恐らくここにいる全員が抱いているであろう疑問を提示してくれた。

 しかし、問いかけられた眼帯に白髪の青年は何も答えず、代わりに少女が口を開く。

 

 そこで返ってきた答えはこれまた意味のわからないものだった

 

 ……だが

 

 「でざーとは、べつばら!!」

 

 

 少女は……とてもいい笑顔で、そう言った。

 

 

 

 はっ!いかんいかん、呆けている場合ではない。まだ勝負はついていないと分かれば、私のやることは決まっている。私は追加の注文を取ろうと再び店員を呼ぼうと手を挙げるが━━ッ

 

 ズグンッ

「ぬぐぅッ!?」

 

 最後のつもりで体を気遣うこと無く無理した反動がここで来た。胃が焼けるように痛い。

 あまりの痛みに、私は身体から力が抜けその身を机に投げ出す。何かがスーッと抜けるような感覚と共に、意識と痛みが遠のいていく。

 

 

 あぁ……どうやら……ここまで、らしい……

 

 

 私は自分の命の終わりとともに、この最後の勝負に於いての己の敗北を悟る。

 多少の未練を残しつつ、私がその瞼を閉じる。

 

 正にその瞬間だった。

 

 

 

 「アホかよ。マジで死ぬやつがあるか」

 「むぐッ!?

 

 私の口の中に何かがねじ込まれ、無理矢理飲み込まされてしまう。

 「ゲッホゲッホッ……なっ何をするんだね君は!?」

 

 「だぁーだぁー騒ぐな落ち着け。」

 

 私は噎せながらも飛び起き(・・・・)下手人たる白髪の青年に怒号を飛ばすが、彼はそれに意にも返さず務めて穏やかに言った。

 

 「腹の調子はどうだ?もう何の問題もないと思うが……。」

 

 そう言われて初めて私は違和感に気づく。先ほどまで猛威を振るっていた胃痛は静まり、安定を取り戻している。

 

 「こ、これは一体……?」

 

 「見ての通り、うちの子は食べるのが好きな奴だからな。胃もたれ防止の為の胃薬もどきは用意しておいたんだが、アイツには必要なさそうでよ……。ま、無駄にはならずに済んだようだが。」

 

 薬……薬だって?私の爆弾は一度起爆してしまえば薬一つでどうにかなるものではなかったはずだが……。

私の疑問を察してか青年は口元に人差し指を持っていき「製法については企業秘密だ。」と釘を差して来る。

 

 何とも……初々しく慣れていなさそうな威圧の仕方だが、こちらも借りがある。これ以上の追求はやめておいた方がいいだろう。

 

 それにしても、まぁ……

 

 「死に損なってしまった様だな……。」

 

 「………。」

 

 辛くも命は拾った。だが、正直私はこの場で燃え尽きてもいいと思っていた。私は人間族の中でも齢80の大台を超えた長生きだったし、最後の最後でこの命を燃やし切る価値のある好敵手にも出会えた。

 

 しかし結果は勝負に負け、虚しくも生き残ってしまった。

 

 一度匙を手放し倒れた手前、もう往生際悪く勝負を再開しようなどとは思えない。

 だからとこの先を生き延びたとしても、すでに戦えぬこの()では、また惰性に余生を過ごす日々に戻るだけだ。

 

 

 「……これから……私は一体……。」

 

 

 「……チッ あ”〜クソッ……おいオッサン!」

 

 諦観に沈む私に青年は髪をかきむしりながら舌打ちして私に呼びかける。振り向いてみれば青年は苛立った顔をしながら何かを私めがけて投げつける。慌ててなんとか落とさず掴んで見れば、それは小瓶のようなもので中には黄色い豆のみたいな丸い粒ががたくさん詰め込まれていた。

 

 「これは?」と聞く前に青年がまくし立てる。

 

 「良いか?必ず食事前と食事後に一粒づつ服用しろッ

 それで大分胃へのダメージは抑えられるはずだ。半年は待つ量入ってるはずだが、無くなったら知らん。

 見ず知らずのあんたの為にわざわざ追加を作って来てやるほどこちとら暇じゃないからな!」

 

 「ちょ、ちょっと待ちたまえ君。何故これを私に?」

 

 私は言うだけ言って自分の席へと踵を返す青年を呼び止める。彼は見ず知らずの私に追加を作ってやる必要はないとは言っているが、そもそも見ず知らずの他人にこのような薬を無償で渡すこと自体おかしな話だ。

 

 どういうつもりなのか私は彼に問い質す。すると彼はこちら振り返ること無くぶっきらぼうにボソッと答える。

 

 「……胸糞悪ぃんだよ。こんなくだらねぇ事で死なれちゃ……。」

 

 「……は?」

 

 呆気にとられる私を他所に彼は続ける。

 

 「何が『死に損なった〜』だ。バッカじゃねぇの?別に良いだろ死に損なっても……生きてるんだからな。そんな生きてることが絶望(・・・・・・・・・)みたいな顔すんなよイライラする。

 生きてた方が断然良いだろうがッ!生きてたらやりたい事がいくらでも出来んだ。他にやりたい事が見つからないなら探せばいいんだよ。人生選択肢は一つじゃないんだから……ってなんで俺はオッサン相手に説教してんだよ。」

 

 

  

 

 

 

 「………ク、ハッハハハハハッ!!」

 

 「あ?何笑ってんだよ」

 

 これが笑わずにいられるものか。誰かに気遣われるなど久しくなかっただけでなく、彼の言うように私のような老い先の短い老人が自分の孫くらいの年の若者に人生を説かれたのだから、己の滑稽さに笑いが込み上げる。

 

 「いや、すまない。これは君を笑っているわけではないんだ。これは私を━━クックククッ」

 

 青年に断りを入れながらも、私からは抑えきれない笑いがクツクツと漏れ出す。

 そんな私を青年は「フンッ」と鼻で一笑した後、

 「あ!そう言えばぁ〜」と思い出したように芝居がかった口調で語り出す。

 

 

 「あんたが勝手に吹っかけて来た勝負。最後に、アンタの胃の限界が来てようが来ていなかろうが……

 

 アンタは、ナナキには絶対に勝てなかっただろうぜ。」

 

 「何?それはどういう……」

 

 私とて勝つつもりで戦っていた為、不快では無いがその言葉は正直聞き捨てならなかった。どういう事かと訝しむ私に青年がくいっと顎で少女を見るように促す。

 

 「お待たせしました〜。特製シフォンケーキになります」

 

 「おお〜……ッ」

 

 

 少女の席に新たに臨時ウェイトレスの女冒険者からデザートのケーキが運ばれてきた。

 

 

……これは、あとから聞いた話なのだが、この日の店内の仕事はもうほとんどギャラリーの冒険者や町民が請け負っており、本来の従業員である親子3人は過労により店奥の方で伸びていたそうだ。

 

 事の発端である私としては心苦しい話だが今は置いておく。

 

 運ばれてきたシフォンケーキは、綺麗な黄金色のスポンジの上表面を粉雪のようにふんだんにまぶされた砂糖が覆い、更にその上からはホイップクリームが贅沢に渦を巻いている。

 

 机に置かれた振動で皿の上のシフォンケーキがふるんっと揺れる。それを今にも飛びついてしまいそうな前傾姿勢で食い入るようによだれを垂らしながら眺める少女を、隣に座る金髪のもう一人の少女が宥める。

 

 金髪の少女はケーキを少女が食べやすいように小さく切り分けると、フォークに刺してそれを少女の口元まで持って行く。

 意図を悟り、瞳を瞬かせた少女はその小さな口を目一杯大きく開ける。口の周りにクリームが付くことを厭わずにフォークに刺ったケーキにばっくんとかぶりつくと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ん~~ッ!!おいひぃ〜〜〜〜〜ッ!!」

 

 そう言って少女は一瞬目を見開いた後、とろけるように瞼を薄めに閉じ、今にも落ちてきそうな頬を両手でムニィッと持ち上げながらニッコリと輝くように微笑んでいた。

 

 もしも、彼女に尻尾があるのなら今頃高速回転しているだろう。寄り添って隣に座る金髪の少女がやれやれと肩を竦めながらも慈愛に満ちた笑みを浮かべ、彼女の口の周りにたくさんついたクリームを拭き取る。

 反対隣に座る兎人族の娘が少女の座席の後ろを見てアワアワしているのは謎ではあったが……

 

 それは、とても微笑ましく温かい光景だった。

 

 

 「アンタが食に対して、どんなこだわり持ってるかは知んないけどよ。食事ってのは本来、あぁやって美味しく味わうもんじゃねぇのか?」

 

 

 そう語る青年の言葉を聞いて、私の脳内に遠い日の記憶が鮮明に浮かび上がる。

 

 

 70年前〜

 

 

 『兄上!この国を去るとはどういうことですか!?』

 

 『何、俺は戦いは向かぬ。この国を治めるべきは強い王だ。なら、俺よりもお前が適任だろう。』

 

 『何を仰る!兄上は我ら兄弟の中でも最強の男。私なぞよりも最も強いのは兄上ではございませんか!

どうかお考え直しください兄上!!この国の……次代の皇帝(・・・・・)は兄上以外には考えられませぬ!!』

 

 『……正直に言おうイクスト。俺は根本的に戦いが好かぬのだ。』

 

 『兄、上……。』

 

 『強さを至高とするこの国で、こんな異端の考えを持つ男が王になってみろ。

 ……瞬く間に暴動が起きるぞ。』

 

 『……。』

 

 『それよりも、だ。……魔人族との大戦争が冷戦に突入してまだ日もも浅い今、あちこちで食糧難に喘ぐ民たちが続出している。この状況を何とかしなければなるまい。その為に俺は()の見聞を広めたいのだ。』

 

 『食の見聞……ですか?』

 

 『そうだ。この世には、まだ未知の食材達が眠っている。それらを探し出し、食し、調理に試行錯誤を繰り返して、食べれる物を増やす。そうすることで空腹に苦しむ者たちを救うことができる。それを成せるのは、数多の食を口にして来た俺以外に他あるまい?』

 

 『……。』

 

 

 『故に俺は行く。では、さらばだ弟よ!この国の行く末はお前に任s━━ッ

 『つかぬことを聞きますが兄上。』

 

 『って……何だ。気持ちよく旅立とうとしていたのに水を差しおって!ホントに間の悪いやつだなぁ〜もう!』

 

 『いや、色々と難癖つけてましたが……。結局のところ、アンタがまた無駄にデカ過ぎる食い意地拗らせて、まだ見ぬ美食の為に俺に政務を押し付けようとしてるだけですよね?』

 

 『………。』

 

 『おい、何黙ってる。図星か?図星だな?逃がすと思ってんのかこの野郎ォオオ!!』

 

 『えぇぇいッ勘の良い野郎めぇ!!忘れんじゃねぇぞぉ!今この国で一番強いのは俺だ!!だから俺の言うことが絶対!次の皇帝はお前だコラアァァァッ!!』

 

 『こういう時だけ調子いいこと言ってんじゃねぇぞデブが!!』

 

 『デブじゃないです〜ッ体重が重いだけでちゃんと腹筋は割・れ・て・ま・すぅ〜ッ!!』

 

 

 

 と、まぁ。こんな感じで無理矢理故郷を飛び出した私は、色んな料理、食材を探索、発見の日々を送っていた。西へ東へ、平野や砂漠へ、時には魔人族領へと侵入したことすらある。

 その旅の中で、いくつか私が料理を考案した事もあった。

その料理が一つの集落を救ったという情報が噂として耳に入ったときは、人知れず素直に喜んだものだ。

 

 だから調子に乗ったのかもしれない。

 

 元来強くはあっても戦いが好きではない私は、冒険者を辞めた後自分の考案した料理を出す食堂を開いた。

 

 私の考案した料理は、市井の民に好評だ。故に、私には食堂(これ)で食っていける才能がある。そう過信した私は既存の料理を一品も出さず、己の考案した料理のみ(・・)を客に振る舞った。

 

 だが、人生そう全てが順調とは行かない。

 

 最初の客入りは良かった。新しく、独創的な私の料理を求めて誰もが私の店へと赴いた。すべてが順調にいっていたある日。とある客が「普通の料理はないのか?」と口にした。

 

 その言葉は、当時優越感と自己陶酔に浸っていた私からすれば頭から冷水をぶっかけられたような心境だった。

 

 プライドを傷つけられた私はその客に罵詈雑言を浴びせ店から叩き出した。

 それにより店の雰囲気は悪くなるり、その日にいた客は皆店を出て行ってしまった。

 

 だが、問題ないと私は感心……いや、慢心していた。

 

 私の料理を理解しない者達は去ればいい。お前たちが去っても、明日になれば私の料理に惹かれ客は必然的に寄ってくる。

 

 そう信じて疑わなかった。

 

 しかし、私の思いとは裏腹に翌日から徐々に客足は減っていった。前日の私の醜態が先日の客の口伝てに、瞬く間に広がっていったからだ。

 1日、1日と日付が経つに連れ客は目減りし、いつしかまともな生活ができなくなるほど困窮していった。

 よって滑稽にも、私自身が飢えに苦しむことになったのだった。

 

 故郷にいたころには無縁だった飢えの苦しみに、私の身体と精神は日に日に摩耗していった。荒みあれた私の手により店は私という亡者の住まう廃墟と成り果てる。

 

 幸い食せる野草には詳しかった為、細やかな食事で餓死だけは免れていた。

 凍える冬をなんとか乗り越え麗らかな春を迎えるも、その日も死なない為に野草を漁ろうと拙い足取りで外を徘徊していた。

 

 だが、生きる目的も気力も失い、ただ死んでいないだけの私の精神(こころ)は既に限界を迎えていた。

 

 

 そんな時だった。私が、

 

 “フードファイト”に出会ったのは……。

 

 

 最初は、『全て食べきれば値段は払わなくていい』

 

 この謳い文句に誘われただけだった。

 

 皿に盛られていた、久々に見るまともな食事。それも山のように盛られた数の……。

 

 私は一心不乱にそれらを自分の口に放り込んだ。匙も使わず手づかみで、礼儀も作法も何もなく必死にかっ喰らった。

 

 味など知らない、ただ生きる為に。

 

 気づけば目の前の皿は底にこびり付いた汚れカス一片に至るまで、綺麗に平らげられていた。

 

 一瞬の出来事のようで呆気にとられる私。

しかし次の瞬間、私の周囲でけたたましい歓声が上がる。会場に見に来ていた観客、通りすがりの野次馬に至るまで私の事を羨望の眼差しで讃えていた。

 

 その時、食堂で自分の料理を認められたときと同様、いやそれ以上に、私の中から何か名状しがたい感覚がわき上がっていくのを感じた。

  一度触れたら病みつきになりそうな甘美な感覚。私はそれを求め、あちこちで開かれるフードファイトに参加していった。

 

 憧れの視線、私を讃える声、それを受け私の中で膨れ上がるモノ。コレを私が承認欲求だと気づくのにそう時間は掛からなかった。

 

 

 それは必然だったのだろう。いつしか私は多くのフードファイトを経ていくうちに食事は、質や味よりも量を重視するようになっていった。

 

 

 

 「ただ量を食うのが目的になって、噛まずに飲み込みかっ喰らってたら、そりゃあ胃にもダメージが行くはずだ。

 健康に気をつける意味でも、ちゃんと噛んで味わって『美味しい』って言う。それが健全な食事ってもんだろ?」

 

 青年の偶然にも私の心情と重なった指摘が、過去に飛んだ私の意識を呼び戻す。それに反応して青年の方へと振り返ると、青年もまた何処か遠い時に思いを馳せるようにその目を細める。

 

 「食事が出来るのは、ただそれだけでとっても幸福なことだ。まッ当たり前のことなんだがよ。でも俺は一時期、碌な食事ができない環境だった事もあって尚の事そう思っちまう。」

 

 何処か自嘲気味に肩をすくめた青年は一転。その瞳に優しさを宿しその眼差しで少女達を捉えながら、

 「それに」と次いで言葉を紡ぐ。

 

 「あいつの……ナナキの、飯食うたんびに見せるあんな幸せそうな顔見てたらな……よりソレを実感すんだよ。」

 

 そこまで聞いて、私は再び少女達へと視線を向ける。

 

 

 「モキュモキュッ」

 

 「ナナキ……食べカス付けすぎ。」

 

 「なのにテーブルや床、ひいてはお皿まで汚さず綺麗に平らげるのは何なんですか?行儀が良いのか悪いのか判断に困りますぅ」

 

 「ムフフ〜ッ」

 

 「おいしい?」

 

 「ムンッおいひ〜ッ!!」

 

 「ん……そっか」

 

 

 いつの間にかシフォンケーキは姿を消し、代わりに彼女等の机に現れた物。

それは、山のように積まれた小麦色に焼かれたリング状の菓子。

 

 アレはまさか!“オリクック”

 

 他でもない。私が考案、開発し、世へと広めた菓子だ。

 当初、丸い焼き菓子を作るつもりだったが、真ん中が生焼していた。

 失敗したとその時は思ったが、同時に諦めも悪かった私は、

思い切って生焼け部分をくり抜いた。そんな、私の往生際の悪さが生み出した料理。

 

 しかし、そんな実情とは裏腹にその料理は当時多くの人々に喜ばれることとなった。

 他の類を見ない奇抜な形状に、当時物資不足だった為コスト削減としても大いに貢献してくれた。

 数ある私が生み出した料理の中でも初めて(・・・)作り出したもの。しかも失敗から生まれたものだ。

 

 

 そんな背景を抱えた料理を、少女はその頬をまるで小動物のように大きく膨らませる。オリクックを詰め込んだ口はモッモッと動き、隣に座る金髪の少女はその口元を優しく拭う。兎人族の少女はやや呆れの表情を見せながらも最後には優しげな微笑みを少女へと向ける。

 

 あぁ

 

 そうだった……思い出した。

 

 私はコレを……

 

 この光景を、作りたかったんだ……ッ

 

 

 確かに、私は食べる事が好きだ。

 

 故郷を飛び出したのも、窮屈なしきたり等を取っ払い自由に食事がしたかったというのが理由だ。

 

 だが……そう思うに至った切っ掛け(・・・・)は、また別の理由だった。

 

 

 70年と少し前、魔人族とのいざこざは一時休戦という形で収まった。私も当時、国の代表として兄弟たちと共に戦場に立った身だ。あの地獄の光景を今でも鮮明に思い出せるほど戦争は困難を極めていた。

 

 そんな地獄も、休戦により情勢と共に少しは落ち着くと思われたが、

実際休戦とは名ばかりの冷戦状態へと移行。我々だけでなく民草から余裕と安寧を奪っていた。

 街を見渡せば、皆暗く奴等た表情をし困窮から生まれる飢えを凌ぐため、道端の残飯とも呼べない生ゴミを大人から子供……老若男女が奪い合う悲惨な光景が広がっていた。

 

 

 私は食べる事が好きだ。

 

 それは勿論、美味しい料理が好きと言うだけではない。

 私の故郷はとても殺伐としてはいたが……

 

 食事時は皆穏やかに笑顔だった。

 

 その空間が私はたまらなく愛おしかった。

だから、人々がいがみ合い憎しみ合う食卓なんて、私には耐えられない苦痛だった。

 

 故に、“それを変えたい”。

 

 全世界が平等になどと、傲慢なことを言うつもりはない。

 

 ただ、少しでも多くの人々……家族が、笑って食事ができる。

 明るい食卓を作りたい。その一助となりたかった。

 

 ソレが私の、充実した食生活に繋がる道でもあったからだ。

 

 

 あぁ

 

 私は何故……こんな大事なことを忘れていたのだろう。

 

 一体どこで、私は道を間違えてしまったのだろう。

 

 

 

 

 

 「うぅ、おじいさん……だいじょうぶ?」

 

 「ッ………」

 

 突如、私の足元からそんな声が響き私の意識はそちらへと向く。

 そこにいたのは、あの小さい少女。

 いつの間にかオリクックをほぼ完食し終え、気づけば私の足元まで歩み寄っていた。

 何事かと少女に注視すれば、少女はその手に何かを持って徐ろに私に差し出していた。

 

 その手に握られていたのは、一口齧られた食べかけの最後の一つのオリクック。

 

 「おじいさんもッ……たべる?」

 

 椅子に座っていてもなお目線に差のある私に、爪先立ちで精一杯手を伸ばしている。体制がキツイのかぷるぷる震えている。

 

 だが、その無垢で清らかな瞳だけは真っ直ぐ私を見つめていた。

 

 「何と……ッ!!」

 

 私は今日一の驚愕に目を見開く。

 

 そしてようやく気づく。

いや、気づいてはいたがいい加減自覚する。

 

 この勝負は私の完全な独り相撲。少女は私など眼中になく、ただ目の前の食事に純粋に真っ直ぐに夢中であっただけだ。

 

 それはまるで、かつての私のように。

 

 そして明らかに気落ちしている私へと気を使い、食いかけではあるものの自分の欲を我慢して食べ物(しあわせ)を分け合おうとしている。

 

 これは……完全に敗北だな。大食いだけでなく、その精神性さえも……。

いいや、そもそも最初から勝負などしていなかったのだったな。だが、悪い気はしない。

 

 何処か憑き物が取れたような、清々しい気分だよ。

 

 

 「いや、私はもうお腹いっぱいさ。その気持ちだけ受け取っておこう。ありがとう……。」

 

 「そう?う〜ん…………あむッ」

 

 私に拒まれてしまった少女は、差し出した食べかけオリクックを引っ込めると、そのままそのオリクックをぱちくりと瞬きをしながら見つめる。

 行場を失ったオリクックをしばらく凝視し沈黙のあと、パクッとそれを一口で頬張った。

 

 ほっぺをぷっくりモチャモチャと動かしながらニンマリとしている。

 

 

 実に可愛いらしい

 

 そんな彼女の小さな頭をフード越しについ撫でつけながら、私は立ち上がり、

礼儀として自分のローブのフードを捲り上げて顔を晒す。

 

 

 「私の名前はワンダン・タイソン。君に会えたこと。我が人生最後にして、最大の幸運だったよ」

 

 私の名前をを聞いて、周りのギャラリー冒険者達から驚嘆と羨望が伝播する。

 まぁ無理もない。私もフードファイターとして(・・・・・・・・・・・)それなりに名が広まっているから好奇の目に晒されるのは当然だ。

 

 しかし、

 

 「うぅ?……どう、いたまし、て?」

 

 「『いたしまして』だろ。痛ましくしてどーすんだよ」

 

 「うぅ〜?」

 

 彼らはそんな事全く気にもとめず、自然に振る舞っている。

 

 「ぷっはっはっはっはっはッ!!」

 

 所詮私の名声なんぞこの程度だったということだ。ひとしきり笑ったあと、私は少女の頭をポンポンとはたき宿の出口へと踵を返す。

 

 

 「それじゃあさらばだ、お嬢さん(・・・・)運が良ければまた何処かで相見えよう。」

 

 人生悲観的になっても何もなりはしない。残り幾ばくかの余生。前向きに生きていこう。そして私の指針……大事なことを思い出させてくれた若者たちに、私は感謝と晴れやかな気持ちで微笑みかけ宿の扉へと手を掛ける。

 

 その時だった……

 

 

 

 

 

 「むぅッ……ナナキ、おとこのこだよ!」

 

 「え“ぇ“!?」

 

 

 私はたった数分で、今日一番の驚愕を更新したのだった。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 「す、すまなかった少年……少年?……と、兎も角また何処かで会おう!!」

 

 と、オッサンはどこか締まらない感じで宿を後にする。最後まで良くわからんオッサンだった。

 

 「ふぁ〜……ッ」

 

 と、俺の隣からナナキの気の抜けた欠伸が漏れ、ちょこんッと床に尻餅をつく。

 

 眠気眼をぐしぐしと擦りながら

 

 「もう、おにゃか……いっぱい……らぉ〜……」

 

 と、フニャフニャ声になる。

 

 バランスを崩して床に頭をぶつける前に、俺はそっとナナキを抱き上げる。一度抱え上げれば、ナナキは無意識に、俺の胸に体を擦り寄せるように尻尾ごと丸まり「ぷ〜ッぷ〜ッ」と寝息を立て始めた。

 

 「寝ちゃった?」

 

 「あぁ、ぐっすりだ。」

 

 「満足そうな寝顔ですねぇ〜」

 

 シアの言う通り、ナナキの寝顔はとても満ち足りたものだった。それを俺の脇から覗き込む二人の顔も何処か満足気で、俺も多少頬が緩んだ。

 さて、食事も終わってナナキも寝たし、俺たちもそろそろ部屋に戻ろうとしたその時。

 

 ふと、周囲の喧騒が耳に入る。

 

 

 「わ……ワンダン・タイソンって言ったか?あの爺さん」

 

 「えっ嘘!?まさか、あの白獣(はくじゅう)のワンダン!?」

 

 「あの真っ白な髪と髭、それに銀の瞳。間違いないッ!

 元金ランク(・・・・・)にして、現銀ランク(・・・・・)の最長齢冒険者、白獣(はくじゅう)のワンダン!!伝説も伝説の存在じゃないか!!」

 

 「出身、経歴共に不明。だがその実力は本物!!金で実力を買ったそこらのパチモンとは理由が違う!!

 なんせかつての史上最強の冒険者に最も近いと言われる猛者だ。」

 

 「御年89歳。年齢が年齢だからって言って自己申告で銀ランクに落としたけれど、今でもその実力は金ランク以上!!

うわぁ〜ッ俺始めてみたよ!!」

 

 「俺もだ!!全冒険の憧れの的ッまさかこの目で見れるなんてッ!!」

 

 「今から追いかけたらサイン貰えたりするかな〜」

 

 「あっずるい!私も欲しい!!」

 

 

 

 なんか、とんでもない盛り上がりようだ。

 

 てかあのオッサン……じゃない、爺さんか?

 あの爺さんそんな有名人だったのか!?宿にいた冒険者達が数名サイン欲しさに外へと駆け出して行ったぞ。

 

 俺達からしたら、ただの大食い好きのドジな爺さんにしか見えなかったぞ。まぁガタイは良かったし顔もそれなりに厳つかったが……

 

……それ以外が……なんかこう、残念と言うかなんというか……

 

 「ちょっとハジメさん?私を見ながら失礼なこと考えてません?」

 

 

 

 「…………………………いや…………………………別に」

 「何ですかッそのなっっっっっっっっがい間はァッッ!!

しかも対して長くない言葉に2回も、2回も入れましたねぇ〜!!」

 

 「…………………………そんな事…………………………無えよ」

 「ほらまたぁッ!!」

 

 

 俺は隣にいる残念なウサギを見ながら、あの残念な爺さんを幻視する。

うん、同じくらい残念なのになぜあの爺さんは慕われているのか……やはり噂されてる通りの実力だからか?それなりの実力があればこのウサギも慕われるようになるのだろうか?

 

 ・ ・ ・駄目だ想像できん。

 

 俺はそのまま残念ウサギから目を逸らし、やれやれと肩を竦める。

 

 「ちょっっとぉおおおッ!!なんですかその態ドォ!?」

 「うるさい、ナナキが起きる。」

 「ぐすんッ痛いですぅ〜」

 

 こんな夜中にやかましいウサギをユエの鉄拳が沈めたところで、俺もちょうど眠気が来たのか大きな欠伸が出る。

 

 「ふぁ〜ッ━━あ“〜そろそろ行くかぁ〜。」

 

 「ん……もう眠い」

 

 「私は今ので目が覚めましたよぉ〜」

 

 残念ウサギの鳴き言をスルーして、俺たちは二階の部屋へと歩を進める。

 今日は本当に色々ありすぎて疲れた。これは確実に明日は寝坊コースだが、チェックアウトは昼。作っておきたい物(・・・・・・・・)はあるが、構想はほぼ出来上がってるから数時間程度で完成するだろう。少しくらい寝坊しても問題はない。そうなると明日の町の散策は諦めるしかないが、そこは仕方ない。せいぜいゆっくりさせてもらうとしよう。

 

 

 「ハジメ。このまま一緒部屋のベッドで━━

 

 「寝ない」 

 

 「……(´・ω・`)」

 

 

 

 

 





 おまけ話《這い寄る》

 その日の夜、何処か遠い地にて……。

 暗い祭儀上のような洞窟の中、怪しく光る魔法陣のような何かの上で佇む影が3つ。

 赤、青、黒 のローブを纏う三人の人物がいた。

 そのローブは三人の全身を覆い隠している。
 人相どころか体付きすら分から無いため男女どころか、大人か子供かも分からない。

 不気味な静けさの中、
 三人のうちの一人青ローブが何かに反応したように身動ぎし、静かに声を上げた。


 青「ほう、白獣(はくじゅう)のワンダン……奴が逝ったか」

 赤「へぇ〜彼が」

 黒「……。」

 青の言葉に、赤が興味深げに反応するの。それに対し黒は沈黙を保つ。

 その沈黙がさらなる緊張感をその場に舞い込ませた。……

 ……のだが、






 赤「遂に、我ら大食い四天王(・・・・・・)を討つ存在が現れた。……と、そう言うのね?」




 ・  ・  ・  。

 
 とても重々しく(シリアス)に語りかける赤ローブ。だが、自然(ナチュラル)に放たれた頓痴気(トンチキ)な言葉のせいで、

 雰囲気(ムード)状況(シチュエーション)

 全てが台無しになった━━━

 青「どうやらそうらしい。クックック実に面白い。」

 ━━━筈なのだが……どうやらそのまま進めるらしい。

 青「それにしてもワンダンの奴め、簡単に敗北しよって……我ら大食い四天王(・・・・・・)の面汚しよ」

 赤「けど、彼は私たち大食い四天王(・・・・・・)の中でも最弱。挑戦者は私達の実力に恐怖することでしょう」

 黒「………。」

 
 なんか、どっかで聞いたような強者ムーブをかましてはいるが……『大食い四天王』とか言う呼称のせいで小物感が否めない。

 てか黒ローブ。いい加減喋れッ!無口キャラ気取っててもどうして大したこととないんだろ?

 もう良いから、そういうのお腹いっぱいだから

 こんな茶番見せられたら誰だって辟易するだろう。

 そう思った瞬間たった。

 黒「<●><●>カッ」

 黒ローブがフードの中、暗がりで顔は見えないが目だけが血走った様子で急にこっちを……


 ハジメ(・・・)の方へと振り向く

 そして黒同様にハジメへと振り向いた赤と青の二人が同時に叫ぶ。

 赤青「「貴様ッ見ているなッッ!!」」















 ガバッ
 
 ユエ「どうしたの?ハジメ」

 ハジメ「……ユエ……あ、いや大丈夫だ……なんか怖い……じゃないな変な夢を見た……気がする」

 ユエ「大丈夫?」

 ハジメ「あぁ、平気だ。そういやもう朝か?」

 ユエ「ううん、まだ日は昇ってない。」

 ハジメ「そうか」
 
 ユエ「んッ」

 ハジメ「………」

 ユエ「………」

 ハジメ「………なぁ、ユエさん」

 ユエ「ん?」

 ハジメ「なんでお前が俺の隣で寝てんの?」

 ユエ「………。」

 ハジメ「しかも裸で……」

 ユエ「………。」

 ハジメ「ねぇ、ユエさん?もしもし?」


 ユエ「………………オルクス出てからずっとしてない」

 ハジメ「はい?」

 ユエ「だからもう………我慢、できない」

 ハジメ「ちょ、ちょい待ちちょい待ちッ!この部屋にはナナキがッ」

 ユエ「ナナキはシアの部屋に移した。」

 ハジメ「ガッデムッ!!なんとなく察してたけどぉ!!」

 ユエ「ハジメ、怖い夢見たんでしょ?」

 ハジメ「へ?」

 ユエ「大丈夫……私が忘れさせてあげる。
   夜はまだ……これから♡」

 ハジメ「ちょっ今日もまじで眠いから勘弁……って待って本当に待って、あ、あぁ━━━ッ
 ぷつんッ
 



 その後、ハジメはめちゃくちゃ夢の内容を忘れた。



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