世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 FGOで、遂に俺のじいじが宝具レベル5に到達!
レベルも最大Lv120まで行きました!!(∩´∀`)∩ワーイ

 あとはアペンドスキルや……( TДT)


第25話∶にゅうもん?おとめどう!

 

 「あなたは逸材よ。私と一緒に、この道を極めましょうッ!」

 

 「う、うぅ?」

 

 「「ちょっと待てえええええええええええッ!!」」

 

 

 

 女装の巨漢が、ドレスを着た(・・・・・・)幼い少女(・・)の小さな両手をゴツい両手でガッツリ掴み言い寄っている現場。

それにユエとシアが必死の形相で割り込もうとしている。

 

 なぜこんな事になってしまったのか?

 

 それを語るには数時間前まで時間を遡る………。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 マサカの宿で朝を迎えたハジメ達一行。ハジメは宣告通り少し余裕を持っての起床を果たし、ユエは久々のお楽しみ(・・・・)に顔の艶が良い。

 

 ハジメとユエが階下の食堂へとやって来れば、そこには先に起きていたナナキとシアがいた。

 

 ナナキは昨夜ほどではないにしても、すでに卓上には皿の塔を形成している。その顔は満足気に微笑みながら、頬袋をもっちゃりと膨らませてモキュモキュ胎動している。

 

 しかし、ご機嫌なナナキとは逆でシアは、同じように頬こそ膨らませているが、その目はハジメとユエへじっとりとした視線を向けていた。

 そしてハジメとユエが同じ机へと座った瞬間。

 

 「もーぅッ!!抜け駆けなんてズルいですよユエさん!!今朝目が覚めたら隣に寝てるのはユエさんじゃなくナナちゃんで、本ッッッとにびっくりしたんですから!!」

 

 まるで、押さえたものが爆発したかのようにシアは雄叫びを上げる。そして、一度火がついたシアは止まらなかった。

 

 「えぇ全くッ!こんな時間まで寝坊だなんて、昨夜はさぞお楽しみだったんでしょうねぇ〜ッ!!」

 「私って皆さんの仲間ですよねぇ!?召使いやベビーシッターになったつもりはないんですよ!?」

 「酷いですよね〜ナナちゃん。お二人の都合で別室に追いやられるなんて私と一緒で悲しいですよねぇ〜」

 

 「うぅ?」

 

 

 シアの怒りのマシンガントークは、最後にナナキへ自分に同情するよう促したが、食事に夢中だったナナキは全く話を聞いていなかった。

 

 実に哀れであるが、ハジメは全く別のことを考えていた。

 

 「お前って……なんだかんだ言って律儀だよなぁ〜」

 

 そう、シアは烈火のごとく怒りながらも、器用にナナキの面倒を見てくれていた。

 

 驚きながらも、ナナキを起こしてくれたり。

 

 怒りながらも、ナナキと一緒に食事をしてくれたり。

 

 怒鳴りながらも、食べカスまみれのナナキの口元を拭ってあげたりと、

 律儀にナナキの世話を焼いてくれていたのだ。

 

 ハジメはほんの一ミリ、シアを見直した。

 

 「えっきゅ、急になんですかぁ〜ハジメさぁん。そんな『お前は頼りになる』何て、今更煽てても何もでないんですからぁ〜♡」

 

 だが、この残念なウサギは何を勘違いしたのか、ハジメの言葉を自己解釈して、勝手に照れて頬に手を当てながら気持ち悪く身体をくねらせている。

 

 ハジメは、残念ウサギを見直した以上に見損なった。

 差し引きマイナスである。

 

 

 なんだかんだで朝食を食べ終わると、ハジメはユエとシアにお金を渡し、旅に必要なものの買い出しと一緒にナナキの世話を頼む。

 ハジメはこれから、とある作業に集中するためナナキに構ってあげる事が出来ないからだ。

 

 ハジメはナナキには買い物のメモ書きを渡す。これは、ユエとシアにお金を渡している時、自分にも何か役割が欲しそうにうるうると見つめていたナナキに負けて、ハジメが仕方なく用意したもの。

 無論ユエもシアも、買い物の内容は頭に入っている。だが、弟のように想う少年の可愛らしい献身を無下にする理由は、この二人の中にはなかった。

 ハジメは、片膝をついてナナキに目線を合わせると、優しくナナキによく言い聞かせる。

 

 「いいかナナキ。 

 勝手にどっかに行かず、姉ちゃんたちの後をしっかり着いて行く事。

 姉ちゃんたちの言うことをよく聞く事。

 もし迷子になったら匂いで俺か、姉ちゃん達のところに行く事。

 ちゃんと守れるか?」

 

 「うんッ!ユエあねぇと、うさぎさんのおてつだい。がんばる!!」

 

 「フッそうか。」

 

 「あとね、あとね。ふたりがあぶなくなったらね。

 ナナキがまもるの!」

 

 「あぁ任せだぞ、ナナキ。」

 

 「えへへ〜ッ」

 

 とても張り切っている弟の頭を撫でながら、ハジメは柔らかい笑顔を向ける。

 それを受けて、ナナキも嬉しそうにへにゃッと笑う。

 

 「ん……期待してる」

 

 「それでは、今日は小さな騎士(ナイト)さんに頑張ってもらいましょう!……あと私の名前はシアです。」

 

 「ふんすッ!」

 

 この二人も、微笑ましくも胸を張って張り切るナナキに、守られるプリンセス役として応援の言葉をかける。

そして今回も、シアの名前は呼ばれなかった。

 

 

 ハジメを宿に置いて外へ出た三人は町を三人横並びで歩いていた。右からユエ、ナナキ、シアの順だ。

 この並びには理由があり、真ん中のナナキが2人をしっかり守れるようにとそれぞれの手をがっちり握っている。ユエとシアの二人としても、この形はナナキの迷子対策となるため都合が良い。正に一石二鳥だ。

 

 「チェックアウトはお昼……計画的に動こう。」

 

 「ナナちゃん。何を買うかは分かりますか?」

 

 「うん。え〜っとぉ〜」

 

 シアに聞かれてナナキは、レインコートの中に手を突っ込みオーバオールの胸ポケットから、ハジメから渡されたメモを確認する。

 

 「えっと、たべものと、ウサギさんのおようふく、

 それから……いろんなおクスリ!!」

 

 「ん、完ぺき。」

 

 「ありがとうございますナナちゃんッ!そして私の名前はシアです!」

 

 無論ユエもシアも、買い物の内容は理解している。本来はこんな確認など必要ないのだが、だからと言って何もしなければ、せっかく預かったメモ書きが不要になってしまい、ナナキの役割がなくなってしまう。

 そのため二人は敢えてこのように確認を取っているのだ。

だが正直、二人はナナキへの対応に申し訳なく思っていた。

 幼い言動で忘れがちだが、ナナキは本来16歳の青年。そんな彼にまるで話を合わせて騙しているかのような対応。仕方がないこととは言え、あまりにも過度な子供扱いでユエもシアは心苦しく思っていたのだが……

 

 「むっふ〜ッ」

 

 当の本人は鼻息荒く上機嫌な為、まぁいっかと、納得している。

 ナナキの隣を歩くユエもまた、そんな上機嫌な少年の姿に嬉しく思いその頭を優しく撫でる。

 

 これは、奈落での苦労を思えばこその感情だ。

この子にはいつまでも笑顔でいてほしいと、そう願うユエ。

 

 ふと、その瞬間。撫でていた頭がクルんッと回り、ナナキが頬をぷっくり膨らませてユエを見上げている。

 

 「ユエあねぇだめ!ちゃんと……おててにぎってないと、あぶない!」

 

 どうやら叱っているらしい。今ユエの手はナナキの頭を撫でるために一時的に繋いだ状態から離してしまっている。これはそのことに対する叱責だ。

 まぁ、やっぱり迫力はなく可愛いだけなのだが……。

 

 「ん。……ごめんね」

 

 ユエも謝りはするが、その顔から微笑みは消えない。そんな事気にもとめないナナキは、再びユエと手を握り直しながら

「うん、いいよ」と、彼女を許すのだった。

 

 

 

 さて、こうして今三人が歩く町中は、活気ある多くの喧騒に包まれている。露店の店主が元気に呼び込みをし、主婦や冒険者らしき人々と激しく交渉をしている。飲食関係の露店も始まっているようで 『朝からそれは濃すぎじゃないか?』 と普通なら(・・・・)言いたくなるような肉の焼ける香ばしい匂いや、タレの焦げる濃厚な香りが漂っている。

 

 そんな匂いを嗅げば当然。

 

 「………。」ジィ〜

 

 食べるの大好きナナキ君は、もはや自然な流れで釣られてしまっている。

 

 朝から濃い?そんな些事、無敵の胃袋を待つナナキには問題ですらない。その場で足を止め、串焼きの屋台を食い入るように見つめて口の端から涎を垂らしている。

 

 

 「………。」ジュルリッ

 

 「こら駄目ですよナナちゃん!ていうかあなた、

 さっきあれだけ朝ごはん食べたばっかりですよねぇ!?」

 

 「ナナキ、買い物が優先。余裕があったら帰りに買ってあげるから」

 

 「………はっ!ブルブルッな、なんでも……ない!」

 

 ユエの一言で正気に戻ったナナキは顔をブルブルと振り回し毅然と振る舞おうとする。だがやはり、色んな食べ物の屋台の前を通る度に、その匂いに誘われチラチラと視線を右往左往させてしまう。

 それでも、大好きな兄から任された使命を思い出し、結局最後は我慢しようと顔をブルブルと振り回してその可愛らしい顔の眉を吊り上げ、真剣な顔つきになる。

 

 コロコロと表情の変わるナナキを両側から眺めるユエとシアは、その健気な仕草についおかしくて笑みを零す。

 

 そんなやり取りをしているうちに、シアの衣服を揃えるため冒険者向けの店の前まで到着していた。

 

 ここまで迷わず来れたのも、受付嬢のおばちゃん改めキャサリンさん印の地図のお陰である。

 そこには普段着用の店、高級な礼服等の専門店、冒険者や旅人用の店と分けてオススメの店が事細かに記載されている。やはりおば……キャサリンさんは出来る人だ。痒いところに手が届いている。

 

 訪れた店もキャサリンさんのオススメ通り、品揃え豊富、品質良質、機能的で実用的、されど見た目も忘れずという期待を裏切らない良店だった。

 

 

 ただ、そこには……

 

 「あら~ん、いらっしゃい♡可愛い子達ねぇん。来てくれて、おねぇさん嬉しいぃわぁ~、た~ぷりサービスしちゃうわよぉ~ん♡」

 

 

 ・  ・  ・  。

 

 

 化物が……いた。

 

 身長二メートル強、全身に筋肉という天然の鎧を纏い、劇画かと思うほど濃ゆい顔、禿頭の天辺にはチョコンと一房の長い髪が生えており三つ編みに結われて先端をピンクのリボンで纏めている。動く度に全身の筋肉がピクピクと動きギシミシと音を立て、両手を頬の隣で組み、くねくねと動いている。服装は……いや、言うべきではないだろう。少なくとも、ゴン太の腕と足、そして腹筋が丸見えの服装とだけ言っておこう。

 

 ユエ達三人は硬直する。シアは既に意識が飛びかけていて、ユエは奈落の魔物以上に思える化物の出現に覚悟を決めた目をしている。さしものナナキも、化物の異様な威圧感に本能が反応し少し小刻みに震えている。メルドや昨日のおじいさんなど強面な人物はこれまでも多く見てきた。

 しかしこれは……これまで遭遇してきたどの強面とも違う

 全く別種の生き物だ。

 

 ナナキはつい後退りしそうになる。

 

 しかし、ふと……両隣から恐怖の感情を検知する。

 

 ババッと一瞬で両方へと顔を向けるナナキ。

 そこにあったのは、恐怖と焦燥に顔を強張らせたユエとシア。彼女達は、ナナキが兄以外で最強と認める強い人達だ。ユエは言わずもがな、シアだって、条件付きとは言えそのユエに土を着けた相手だ。当然ナナキは彼女の事も強い人だと認めている。

 

 そんな二人が、怯えた様子で固まってしまっている。

 

 予想もしなかった異常事態に混乱するナナキ。二人を掴んだ両手に冷や汗が滲む。

 

 『任せたぞ、ナナキ。』

 

 ッ!

 

 そうだった。何を弱気になっているんだ。ナナキの頭の中で、兄からもらった言葉が反復する。

 

 あねぇとウサギさんを守る。

 あにぃと約束したんじゃないのか!

 

 この二人が怯えているのなら、自分が二人を守るんだッ!!

 

 ダンッ

 

 ナナキは己を奮い立たせて引いた足を元に戻し、

 

 ダンッ!

 

 更に一歩大きく踏み出した。

 

 

 「ガルルルルルルッ!!

 

 この場でサメ化する訳にはいかない為、人間態のままだが、それでも精一杯の威嚇をするナナキ。

 

 歯茎ごと牙をむき出し、顔の表情筋すべてをつり上げる。いつでも飛びかかれるように前傾姿勢になり、尻尾(・・)は天井へと直立している。溢れ出す戦意は青色のオーラとなって、レインコートの下の髪をユラユラと揺らしていた。

 

 しかし、それを一身に受けている化物は、ナナキを見て多少面食らうも堪えた様子はなく飽く迄自然体を貫いていた。

 

 「やだわぁ〜そんなに警戒しなくていいのよ僕ちゃん(・・・・)。何も取って食おうって訳じゃないんだからぁ〜♡

 そっちの二人もよ〜ん。皆かわいいんだから、怖い顔しないで。ほら、笑顔よ笑顔ぉ〜♡」

 

 そう言って化物は、そのゴツい指で自分の笑窪を押あげ、こちらに笑顔を促してくるが、そもそもお前のような化物を相手にして笑える訳が無い。そのあざとい仕草と外見のゴツさのギャップに背筋が凍え風邪を引きそうである。

 

 そのままその化物は、何というか物凄い笑顔で体をくねらせながら接近してくる。一瞬怯むも、負けじと威嚇を続けるナナキ。  

 しかし悲しいかな、体格差によるものかその構図は、

ムツ●ロウ先生よろしく、「よ〜しよしよし」とか言いながら怪しい笑顔で小動物に迫る人と、近づいてくる人間に必死にキャンキャンッと吠えまくるチワワにしか見えない。

 ナナキの抵抗も虚しくにじり寄ってくる化物に、ここまで沈黙を保っていたユエも、つい堪えきれず呟いてしまった。

 

 「……に、人間?」

 

 

 

 その瞬間、化物が怒りの咆哮を上げた。

 

 

 「だぁ~れが、伝説級の魔物すら裸足で逃げ出す、見ただけで正気度がゼロを通り越してマイナスに突入するような化物だゴラァァアア!!

 「ご、ごめんなさいっ……」

 「キャインキャインッ!!」

 

 ユエがふるふると震え涙目になりながら後退り、ナナキは唐突の怒声に張りつめた精神の均衡が一瞬で崩れ、使命そっちのけに『キャインッ』と恐怖で子犬のような悲鳴を挙げてユエとシアの背後に隠れてしまう。シアも腰が抜けたようにへたり込み………

……少し、下半身が冷たくなってしまった。

ユエが、咄嗟に謝罪すると化物は再び笑顔? を取り戻し接客に勤しむ。

 

 「いいのよ~ん。それでぇ? 今日は、どんな商品をお求めかしらぁ~ん?」

 

 シアはへたり込んだまま、ナナキは完全に萎縮しユエの背に隠れてしまっている。二人が戦意喪失した為、ユエが覚悟を決めてシアの衣服を探しに来た旨を化物へと伝える。

シアは、もう帰りたいのか、ユエの服の裾を掴みふるふると首を振っているが、化物は「任せてぇ~ん♡」と言うやいなやシアを担いで店の奥へと入っていってしまった。その時の、ユエとナナキを見つめるシアの目は、まるで食肉用に売られていく豚さんのようだった。

 

 結論から言うと、化物改め店長のクリスタベルさんの見立ては見事の一言だった。店の奥へ連れて行ったのも、シアが粗相をしたことに気がつき、着替える場所を提供するためという何とも有り難い気遣いだった。

 

 「どうですか?ユエさん、ナナちゃん!」

 

 「ん……いいと思う。」

 

 着替えが終わり、クリスタベルさんプロデュースの服を身にまとったシアが、その姿を見せつけるようにクルンッと一回転。聞かれたユエは、素っ気なくは見えるものの意外にも穏やかにシアの服装を評価する。

 この二人、ハジメの関わらない話題では年頃の乙女同士基本、平和な関係を築けている。素っ気なく見えるのはユエの落ちついた性格故に、そう見えるだけだろう。

 

 「あれ?ナナちゃん。どうしたんですか?」

 

 「……………。」

 

 ふとここで、シアが首を傾げる。何故ならこういう時、いの一番に正直な気持ちを隠さず、こちらが恥ずかしくなるほど褒めちぎって来る筈の少年が、気落ちした様子で黙り込んでしまっているからだ。

 

 「ナナキ?……どうしたの?」

 

 これにはユエも異変を感じ、ナナキの俯いた顔を覗き込む。

すると、ナナキは唇を噛み締め、今にも泣き出しそうに瞳をうるうるとさせていた。

 

 「ナナキが……ちゃんと……まもるってヤクソク……したのに……。」

 

 

 「ナナキ……。」

 

 ナナキは先の事で、クリスタベルの怒号に恐れ慄き、今日一日守護を約束したユエ達の背に情けなく隠れてしまった。

その事にナナキは強く後ろめたく感じていた。ギュッと強く握りしめられた服の裾が、その気持ちの大きさを表している。

 

 そんなナナキにユエとシアは、かける言葉が見つからない。

 ここで自分たちが慰めの言葉を掛けても、ナナキは納得するだろう。ナナキの精神は子供だ。簡単な励ましでもコロッと元気になってしまう。よく言えば素直、悪く言えば単純な精神構造をしている。

 しかしそれはその場凌ぎ、問題を棚上げしているだけで何の解決にもなっていない。ナナキの心の上辺だけは救われても、その奥底にしこりを残してしまわないか?

 そういった事全てに目を逸らし、甘い夢だけを見せるのは、あまりにも不誠実ではないだろうか?

 

 ユエはどうする事が正しいのか逡巡する為、押し黙っている。よってその場には、気まずまい空気が流れる。

シアも、この状況に耐えきれず何かを言おうとするが、自分が何か下手なことを言って更に状況が悪化するのではないかと思い、アワアワしている。

 

 「気に入ってもらえたようで良かったわぁ〜ん。それじゃあ会計を……て、あら?どうしたの?」

 

 そんな間の悪い中、クリスタベルさんが会計の為に声を掛ける。

 

 「えっあ、あ〜ぁ会計!会計ですね!ちょっと待ってください。えっとぉ〜」

 

 クリスタベルさんの存在に気づいたシアが、慌てた様子でお金の入った財布を模した小さな袋を漁る。

 明らかにさっきと様子の違う三人に訝しんだクリスタベルはシア、ユエ、そしてナナキの順に視線を巡らせると、何かを察したように「うん」と頷いて━━

 

 「ごめんなさぁ〜い。会計はちょっと待ってくれないかしらん?」

 

 ━━と、言い放つ。

 

 唐突なことに、シアは手を袋に突っ込んだまま「ふえ?」と、気の抜けた声を漏らし間抜けな顔を晒す。

 

 そんなシアの隣を横切り、クリスタベルはユエの隣にいるのナナキに目線を合わせるようにしゃがみ込む。それだけでもかなりの迫力でナナキは肩をビクつかせるが、次に飛び出たクリスタベルの言葉にさらに目を丸くすることになる。

 

 「あなたにちょっと、頼み事があるのよん☆」

 

 そう言ったクリスタベルは、バチコーンッ☆と妙に迫力のあるウインクをナナキに向けて放った。

 

 「う、うぅ……?」

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 「きゃああああッッ!!素敵よぉおおおおおッ!!」

 「ナナキッ!視線……視線をもっとこっちにッ!!」

 「そうです!その角度!かわいいですぅううッ!!」

 

 「うぅッ……」

 

 こう言うのを『女三人(?)寄らば姦しい』というのだろう。

 三人のおとめ(・・・)達は、クリスタベルの洋服店内、試着モデル用に設けられた円状の台座の上。

 アンティーク調の椅子に座らされた、幼い少女(・・・・)の可憐な姿に色めき立っていた。

 

 いや正確に言うと、そこに居るのは少女のように見える少年(・・・・・・・・・・・)

女装で御粧ししたナナキだったのだ。

 

 

 この時より数分前…。

 

 

 クリスタベルの頼み事とは、モデルの依頼。

 

 というのも、クリスタベルは近い将来。こことは別に支店をいくつか開く予定らしく、その支店で取り扱う服は趣向を変えて子供用のお洒落服を取り扱うらしい。

 

 しかし、今まで大人用の服しか扱ってこなかったクリスタベルにとって子供服のデザインを興すのは、なかなかに手を焼くものだった。その為、本来であれば冒険者ギルドとは別に商会や店舗を仕切る商人ギルドに依頼して、劇団の子役にモデルを斡旋して貰うところなのだが……

 

 「何故だか、誰もやってくれないのよ〜子役の精神的負荷を避ける為〜とか、今後の役者人生に影響が出ないよう鑑みて〜とか、あやふやな理由で尽く断られてしまってね。

 そんなに難しい事頼んだつもり無いのだけれど〜?」

 

 「いやそれは……いえ、何でもありません。」

 

 シアは口を閉ざし目を逸らした。仕事内容以前に、現場にこんな見るだけでSAN値がゴリゴリ削れる理解しがたい怪物が居れば、子供には悪影響がすぎる。R指定入れてモザイクをかけるべきである。

 え?ナナキは平気なのかって?

……実年齢16歳だからへーきへーき。

 

 閑話休題(話を戻して)

 

 そこで白羽の矢が立ったのがナナキと言うわけである。

子供と言っても差し支えない小柄な体型に、モデル映えする美貌。クリスタベルのインスピレーションを沸き立たせるには十分だった。

 しかしここで問題が生じる。それを指摘したのはシアと共に視線を逸らしていたユエだった。

 

 「……!ッ待って、その子は……服を脱いじゃ駄目で(・・・・・・・・・)……」

 

 そう、忘れちゃいけないのが、ナナキはただ可愛いだけの少年ではないと言うこと。背中から生えた三角の背びれに、腰から伸びた鮫の尻尾(おびれ)。手袋とチョーカーを外せばその下からも水かきやエラ筋など人外の特徴が現れてしまう。

 それらはあまり人目に触れて良いものではない。だからこそ、ハジメお手製のアーティファクトのレインコートで全身を覆い隠すという手間を取っているのだ。着替えなどしてしまえば一瞬で気づかれてしまう。

 しかし、一瞬の事でうまい言い訳を思いつかなかったユエは、中途半端なことしか言えず言い淀んでしまう。これでは、何かを誤魔化していると相手に教えているようなもの。訝しまれ、追及されてもおかしくない……そう思っていたのだが……

 

 「あ〜大丈夫よん。そこの坊や(・・)が”普通じゃない“事くらいちゃぁ〜んと分かっているわ。」

 

 「は、え?」

 「ど、どういうことですか?」

 

 クリスタベルの言葉にユエは呆然とし、シアは困惑のまま聞き返す。その答えとしてクリスタベルは、『うっふ』とにっこり二人に微笑んだあと徐ろにナナキへ視線を移すと、

 

 「そぉ〜れぇーいッ!」

 「ひゃうッ!?」

 

 スカートめくりの要領で、豪快にナナキのレインコートを捲り上げる。咄嗟のことで驚いたナナキも可愛らしい悲鳴を上げる。

 

 そうして顕になる鮫の尻尾。それに指を差したクリスタベルが口を開く。

 

 「さっきこの子が頑張って唸っている時、この尻尾が見えたんですもの〜」

 

 「「あ……」」

 

 クリスタベルの言葉にユエとシアから間の抜けた声が漏れる。

 そして思い出す。あの時、ナナキはクリスタベルへ威嚇していた時、尻尾を天井へと向けて真っ直ぐに立たせていた。そんな事をすればレインコートから尻尾が出てしまうのは必死。

 このレインコートはハジメのアーティファクトだ。しかし万能ではない。故に、身体をレインコートから少しでも出せばその効果は機能しなくなってしまう。

 

 「目の前で髪と目の色が変われば(・・・・・・・・・・)流石に気付くわぁ〜ん」

 

 「「なっ!!??」」

 

 言われてハッとなるユエとシア。二人も今までクリスタベルの異様に圧倒され気づかなかったが、ナナキの髪は指摘通り、偽装の金から灰銀へ、瞳は紅から藍色へと戻っていた。

 

 なんとも間抜けな話だが、事はそんな小さな話では済まない。このまま事がこのクリスタベルを通して世間に露呈すれば、

ハジメ達の旅路は国の追手という新たな障害により、更に困難な物になってしまう。

 まさに、こんな平和な町の只中で三人はいきなり窮地に立たされていた。

 

 この場をどう乗り越えるべきか、ユエはその優れた脳で思考を回す。

 

 「あ、そんなに警戒しなくても大丈夫よん。別に誰かに言いふらすなんてことしないわ。」

 

 しかし、ユエ達の危機感とは裏腹に、クリスタベルは自然な態度で言葉を紡ぐ。

 

 「…………どうして?」

 

 「どうしても何も、そんな事して私にメリットなんて無いわ。

 それに、訳ありなんでしょ?冒険者でなくても、誰にだって人には言えない秘密はある物よ。それをわざわざ言い触らして詳らかにする趣味は私には無いわ。

 だって“美しく無いもの”。」

 

 ユエの問いに、クリスタベルは毅然と答えた。その言葉には確かな芯が通っている様にも感じられる。

 

 現にシアは何処か安堵したような顔をしているが、ユエはまだ油断なく、クリスタベルの瞳の奥を覗き込みながら聞き返す。

 

 「…………本当に?」

 

 「あらヤダわ!そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃない///……」

 

 そう言って照れるような仕草を一瞬見せたあと、クリスタベルは居住まいを正し笑顔のまま真剣な目でこう言った。

 

 「本当よ。漢女に二言はないわ☆」

 

 ウインクと共に頬に指を当てるという、少しお茶目な仕草は残しつつ……。

 

 ユエは再びクリスタベルの目の奥を見据える。ユエは元王族、権謀術数渦巻く政治の中を過ごしてきた慧眼。

それが、彼女に技能に寄らない嘘を見抜く力を身に着けさせていた。

 

 「……………ん。あなたは……信じられる。」

 

 しばしの沈黙のあと、ユエはクリスタベルを信頼に値する人物と結論づけた。

 

 「うふふッありがとう。嬉しいわお嬢さん、そして私も約束するわ。この事は他言無用ってね」

 

 「ん。こちらこそ……感謝。」

 

 そう言って、右手を差し出すクリスタベルの手を、ユエも強く握り返す。

 ここに乙女たちの約定は交わされた。

 

 

 「さぁてと!気難しい話はここまで!ささ、僕ちゃんは私と一緒に奥へいらっしゃぁ〜い♡劇団から衣装はたぁ〜くさん借りて来てるんだから」

 

 切替にパァンッと手締めをしたクリスタベルは、そそくさとナナキを試着室へと足早に促す。

 

 「う、うぅ〜ッ」

 

 背を押されあれよあれよと連れて行かれるナナキ。

 

 「あッ一応私たちにも予定があるので、ナルハヤでお願いしますぅ〜!」

 

 試着室のカーテンが閉められたあと、「たくさん衣装がある」と聞いてシアが思い出したように間延びした声で願いかける。

それに応えるように、カーテンの隙間から指でOKサインを出したクリスタベルの剛腕が一瞬覗くも、その後すぐ…

 

 「あ〜ッこれも似合うしあれも似合う。あなたとってもいい素材してるからねぇ。どれを着せようかお姉さん迷っちゃうわぁ〜ん」

 

 「うぅ、うぅぅ〜ッ」

 

 試着室のカーテンの奥で、クリスタベルの悩ましい声と、ナナキの弱々しい悲鳴が響く。

 

 「時間……間に合いますかね?」

 

 「……………分からない。」

 

 最初こそ、予定を気にしていた二人。しかし、あまりにも素早いクリスタベルの早着替えさせ術により、数秒と待つことなく、一着目の衣装を身にまとったナナキが現れる。

 

 「「お、おおッ!!」」

 

 その姿に二人の歓声が上がる。

 

 その姿は俗に言う王子様系ロリィタファッションと呼ばれるもの。

 

 黒い薄手のシャツの上に、深い青色のかっちりとしたベスト。そしてふっくらとしたシルエットの黒い短パン。

 頭には青色に変色させた造花のバラがあしらわれた黒のハット。

 足元は、黒の背の低いブーツに黒のロングソックスは膝上まで長く、全体的に暗い色合いの衣装は、ナナキの色白の肌と灰銀髪を強く映えさせている。むろん短パンの後ろには尻尾もちゃんと通っている。

 短パンとロングソックスの隙間から覗く、太ももの絶対領域も、普段はダボッとしたオーバオールに隠されている分、とても魅惑的だ。

 顔にはモノクルが掛けられ、髪型も普段の三つ編みを解き、前髪をそのままに、右寄りのハットとは反対に、左に結われたサイドテールを起点としてぐるっと1周編み込まれている……ってあの一瞬でこの髪型にしたクリスタベルはマジで何なんだ?

 

 「うぅ?」

 

 「「ズッキュン!!」」

 

 「エエエェェクセレントォオオッ!!素敵も素敵よぉおお!!筆が止まらないわぁあああ!!」

 

 そんな可愛いと言うよりカッコいいと言いつつ、やはり可愛いナナキの姿に胸を撃ち抜かれるユエとシア。

 クリスタベルも奇声を上げながら、手に持つ画板の上の紙にスケッチを走らせる。しかもナナキの周りを機敏な動きで縦横無尽に移動しながらだ。

 その動きの俊敏さは“縮地”を使ったハジメに迫るほど、正直言って只者じゃねぇ。残像が残り、ショタの回りに巨漢がニ、三人たむろしているように見える。

 そしてある程度満足したのか、カーテンがシャーッと閉まる。

 

 ここまで、正味3分。

 

 「あぁッ!もうちょっと見たかったのにぃ〜ッ」

 シャーッ

 「ひょ!?」

 

 あまりにも短すぎるお披露目に文句を言うシア。だか、言い切る前に次の衣装が登場する。マジ着替えが早すぎる。

 

 2着目は先ほどの落ち着いた衣装とは対象的に、どこか活発な印象を持たせる服だった。

 

 茶色のチェック柄のハンチング帽子を被り、髪型はシンプルなポニーテール。広がったシルエットだが袖口はキュッと締まった白いシャツに、紺色のサスペンダー付きのカーキー色で大きめのサイズの長ズボンは普段のオーバオールを彷彿とさせるが、オーバオールと違い大きすぎずシュッと纏まった姿は、普段よりも大人びた印象を与える装いとなっている。

 

 「うぅ?」

 

 「「ハギュわッ!!??」」

 

 「良いわ良いわぁ〜ッ!!そのまま帽子のつばを摘んで腰を張ってぇ〜、そう、そうよそのポーズよぉ〜ッ!!」

 

 ユエとシアは最早悲鳴を上げていた。心臓を抑え蹲ってしまっている。クリスタベルは相変わらず超人のような動きでスケッチを続ける。

 

 その後も、3着目、4着目、5着目と続き、現在は8着目。

 ユエとシアの二人は既に満身創痍、クリスタベルは謎に人間を逸脱し始め、この手に関しては正に最強の存在になりかけていたその時。

 

 ふと、クリスタベルの筆が止まる。

 

 「……浮かない顔ね、坊や」

 

 そのクリスタベルの言葉に、ハッとなってナナキに視線を向けるユエ。

 

 ナナキは、視線を下に向け悲しげな表情を続けていた。

 

 そう、モデル云々で忘れていたが、元々はそういう……

ナナキがユエとシアを守るどころか、庇われてしまった事について、ナナキが落ち込んでしまったという話だった。

  

 クリスタベルは筆を置き、再びナナキと目線を合わせる。

 

 「本当はね。お姉さん、あなたの気を紛らわせようと思ってこんな事を始めたの。まぁモデルが必要だったのは本当だし、個人的私用が8……じゃない2割、あなたの元気な笑顔が見たいが8割って所かしらね」

 

 いや、それ絶対比率逆ですよね?とシアは思ったが、藪蛇なので触れないでおいた。

 

 「あなたは責任感がとっても強くて、何よりお姉ちゃんたちが大好きなのね」

 

 優しく問いかけるクリスタベルにナナキはコクリと頷き、ポツリと呟く。

 

 「でも、でもね。ナナキ……こわくて、かくれて━━

 「何を言ってるのぉ!とても立派だったわ。それに、あなたはちゃんと守ったじゃない。」

 

 ナナキの震える呟きに被せるようにクリスタベルが声を荒げる。

 

 「まもっ……た……?」

 

 「えぇ、そうよ。お姉ちゃんたちが怯える相手に立ち向かって、その小さな背で庇った。それだけでも十分すごいことなのよ。」

 

 困惑するナナキに、クリスタベルはすかさず賛辞と鼓舞する言葉を連ねる。

 

 「自分を褒めてあげなさい。一度の失敗にいつまでもくよくよしないの!昔の失敗を気にするよりも、先の成功を見据えなさい。いつまでも後ろを向いてメソメソするのは馬鹿のする事よ。」

 

 そこまで言ったクリスタベルは、下を向いたナナキの顔をムニぃッと両手で包み、上を向けさせ、

 

 「ほぅら。顔を上げて、笑顔を見せて。とても魅力的なお顔がこのままじゃ台無しよ。……貴方達もそう思うわよね?」

 

 最後に、クリスタベルはユエ達にそう問いかけた。

 

 それを受けたユエは、何かに気づいたようにハッと目を見開く。そしてナナキの側に寄り、優しげに語りかける。

 

 

 「ナナキ……さっきは私達を、庇ってくれて……ありがとう。」

 

 そうだ。そうだった。何よりも伝えなければならない言葉を、ユエ達はすっかり忘れていた。

 

 何かをされたら『ありがとう』

 それは言う側も、言われる側にとっても、とても大切で皆が笑顔になる魔法の言葉。

 

 「ナナちゃん!助かりました。ホントにありがとうございます!!流石今日の1日騎士(ナイト)君ですね!」

 

 ユエに感化されたシアも、ハイテンションで『ありがとう』を告げる。

 

 

 二人の感謝を一身に受けたナナキは、その目にいっぱいの涙を溜めるが、それが零れ落ちる前にぐしぐしと、両手で拭うと…、

 

 「ん!どういたま……じゃなかった、いたしまして!へへ」

 

 そう言ってようやく輝くような笑顔を見せた。

 

 「うん、とってもいい笑顔ねぇ〜。でも駄目よ!

涙を我慢したのは立派だったけど、そんなにゴシゴシしゃったら

せっかくのお化粧がぐしゃぐしゃになっちゃうわ」

 

 「ほらじっとして」と言いながらハンカチでナナキの目元を拭うクリスタベル。しかしそこで、ナナキが思い出したように疑問を投げる。

 

 「あ、あの、おじさ━━

 「お姉さんよぉ〜

  あぅっ!?お、おねえさん?」

 

 言葉選びを間違えそうになり、圧をかけられるが何とかナナキは続ける。

 

 「な、なんでナナキ。おんなのこ(・・・・・)のおようふく……きてるの?」

 

 

 ・  ・  ・  。

 

 「う、うぅ?」

 

 ナナキの問いに、急に押し黙ってしまうクリスタベル。

 

 実は、今ナナキが着ている8着目の衣装。

 

 全体的に黒い色調で統一された重厚なドレス(・・・)

大きく広がったスカート(・・・・)や、胸元、袖口などにレースやフリル、リボン(・・・)などがあしらわれた作りとなっていて、

白と黒のレースとフリルをふんだんに使ったヘッドドレスのカチューシャを嵌めた頭は、ハーフアップのツインテールになっている。

 大きく広がった袖口のフリルも贅沢に使われているため、その手は指先しか見えない萌え袖のようになっていて、その両手で抱え込むように、うさ耳をつけたサメのぬいぐるみを抱いている。

 そして困惑の色に染まったその愛らしい顔には、黒いアイラインに赤いリップという、コントラストの強いメイクが施されている。

 

 その姿は所謂ゴシックロリィタと呼ばれるもの。

 

 完全な女装である。

 

 

 最初の4着までは、ちゃんと少年用の服を着せられていたナナキ。だが、次の5着目からその雲行きが怪しくなる。

 それは、どこか中性的な……所謂ジェンダーレスファッションというものになり、6、7着とやや少女寄りとなり、今の8着目では完全な女装になってしまったのだ。

 

 ナナキにとってそれは、あまり気分のいいものではなかった。周りや初対面の人から『カワイイ』と言われるのは慣れている。それは同仕様もない事実な為、いちいち文句は言わない。

 

 しかし、性別を間違えられるのはどうしても我慢ならない。

 

 そこだけは、あまり物事にこだわりの少ないナナキにとって、唯一のプライドと呼べるものだった。

 『カワイイ』と言われるのも嬉しくないわけではないが、それでも複雑な気持ちになる。できれば『かっこいい』と言われたい。ナナキだって男の子なのだから。

 

 

 何も答えないクリスタベルを不思議に思い、首を傾げるナナキ。そんなナナキにクリスタベルは「ゴッホん」と一つ咳払いをして真剣な眼差しで口を開く。

 

 「いい僕ちゃん。これは僕ちゃんの為でもあるのよ」

 

 「う、うぅ?ナナキの……ため?」

 

 「えぇ、そうよ。僕ちゃん強くなりたいのでしょう?」

 

 「は!う、うん!……ナナキ、つよく……なりたい!」 

 

 それは、大好きな兄達の役に立ちたいナナキにとって渡りに船な話だった。

 

 しかし……なんだか、流れが凄く不自然だ。怪しい雰囲気が漂ってきたが、後ろに控えるユエとシアは何もせずただ見守る。

 

 「ならば、尚更これは必要なことなのよ!僕ちゃん、

いいえナナキちゃん(・・・・・・)あなたはとても魅力的な存在よ、でもまだ足りないものがあるわ」

 

 「たりない……もの?」

 

 「そう、あなたに足りないもの、それは……」

 

 「それはッ……」

 

 勿体ぶるような言い回しをするクリスタベル。しかし、ノリが良いと言うか素直なナナキは、前のめりになって「ごくりッ」と唾を飲み込む仕草をする。

 

 「…………ッ」

 

 「…………ッ」ドキドキッ

 

 しばしの沈黙。クリスタベルは無駄に溜めを作り、ナナキは今か今かと緊張で尻尾をユラユラ揺らしている。

 

 

 

 

 「……………ッ」

 

 「……………ッ」ソワソワッ

 

 

 

 

 一体何の時間なのか分からない時が過ぎ、

 

 そして遂に、クリスタベルがその口を開く!

 

 

 

 

 「それはッ美しさ……よッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 

 

 「うぅ?」

 

 ナナキの脳内に宇宙が広がった。

 

 

 「ナナキちゃん。あなたはとっても素敵よ。そのピュアなところも、優しいところも、そして何より勇気があるわ。その勇気にともなった強さだってある。これでも私は“元冒険者”。少し触れ合っただけでもそれが分かる。」

 「でも、いいえだからこそ惜しい!!あなたは自分の素材を活かしきれていないッ貴方には輝ける素質があるのにッ!!」

 「私はそれが我慢ならないわ!!輝ける筈の子が、その輝き方も知らないままに埋もれていくことがッ!!」

 「私も昔は力ある冒険者だったわ。その力を手に入れられたのも、私の輝きを……美しさを磨いたからなの!!」

 

 ナナキの脳の処理が追いつく前に、畳み掛けるようなクリスタベルのマシンガントークが降り注ぐ。

 

 「そう、美しいはねぇ、力なのよ!!

 

 「う、うつくしいは……ちか……ら?」

 

 「えぇそうよ。謂わばこの瞬間は、その美しさを高めるための修行のようなものなの!よってあなたは、これに全力で取り組まなければいけないわ!」

 

 いや、この着せ替えはそもそもモデルの依頼であり、その訳のわからん精神修行の一環では断じて無い。

 もう既に察せられる事だが、クリスタベルは半ば趣味に走っていた。モデルの依頼を頼むというのも、ナナキの沈んだ気を紛らわせたいというのも、決して嘘ではないだろう。

 しかし、クリスタベルの嗅覚は、ナナキを着せ替えしていくうちに、ナナキの中にある光る原石?を見出してしまったのだ。

 故に今、あれこれと理屈をつけてナナキに、自分の趣味の服装を着せようとしている。

 

 普通ならこんな話のすり替え、通用するヤツなんている訳ないが、ここで、ナナキの弱点。素直でチョロい部分が悪影響を起こし、クリスタベルの押しの強さもあり、いとも容易く流されてしまっている。

 

 後ろに控えているユエとシアも、そのことには当然気づいていた。「「あぁ、これは担がれてるなぁ〜(ですぅ〜)」」と……。

 

 しかし二人は一切止めに入ることはない。それは何故か?

 

 ((ナナ(ちゃん)キの可愛い姿をもっと見たいッ!!))

 

 この澄まし顔で、どうしようもない煩悩を抱く二人には、クリスタベルを止める理由がなかったからだ。

 

 そうして、ブレーキ役の居ないまま、粛々とナナキ君着せ替えショーは続いていき、20着目に突入したとき。

 

 

 「ナナキちゃん。あなたはやっぱり逸材よ!」

 

 片膝を付き、ナナキと目線を合わせたクリスタベルはナナキの両手を握る。

 

 記念すべきナナキの20着目の衣装。

 

 それは、胸元が開いた純白のドレス。大きく広がったスカート丈は引き摺るほど長く、手には肘まである白の手袋。

 まるでお姫様のような複雑な編み込みが施された髪の上には黄金に輝くティアラと、それに付随した白の薄いヴェールが背中まで伸びている。

 メイクはナチュラルメイクで、薄い桜色のリップが控えめに主張している。

 

 うん、誰がどう見てもそれはウェディングドレス(・・・・・・・・・)だった。

 

 「ナナキちゃん。どうか私と一緒に、この道を……漢女道(おとめどう)を極めて行きましょうッ」

 

 そんな花嫁衣装に着飾ったナナキに言い寄るクリスタベルの姿は、正にプロポーズをする紳士のような佇まいである。このまま指輪をでも差し出して、一生を誓い合いそうな勢いだ。

 

 

 ・  ・  ・  

 

 

 さて……ここまで来て、やっと保護者達二人は正気に戻り、

 

 

 「「ちょ、ちょっと待てええええええええええええええッ!!!!ッ」」

 

 

 ナナキを救出する為に、静止の声を上げる。

 

 こうして、話はようやく冒頭に立ち戻ったのであった……。

 

 

 

 

 

  ◇

 

 

 

 

 「いやぁ~どうなるかと思いましたが、何とか抜け出せましたね。」

 

 「でも時間が押してる……急がないと」

 

 「うぅ、ごめんねユエあねぇ、ウサギさん……ナナキのせいで」

 

 「んん、ナナキは悪くない。……私達も悪ノリが過ぎた

こっちこそごめん……反省。」

 

 「ですですぅ〜気にしないでくださいナナちゃん。

 あ、私の名前はシ(以下略)

  あの後、何とかナナキを救出できたユエとシアの二人は、クリスタベルに会計を済ませ、そそくさと服屋を後にした。

 最後までクリスタベルに粘られていたが、最後は納得しなんとか解放してくれた。

 店を出ても

 『ナナキちゅわぁ〜〜んッ何時でも待っているわぁ〜ん♡』

 と、投げキッス付きで声をかけられていたが、ユエ達はナナキを担いで足早にその場を後にした。

 

 「さぁて!あとは食料品とお薬です。急ぎますよぉ〜!」

 

 「ん、失敗をくよくよ悩まない……

 ……前を見据えて、真っすぐに……でしょ?ナナキ」

 

 「!ッ……うん!」

 

 そう、クリスタベルの服屋での時間も決して無駄ではなかった。それを改めてユエに教えられたナナキは力強く、そして笑顔で返事をした。

 

 

 だが、物事はそう上手くは行かない。急いでる時ほど躓くもの。先を急ごうとする3人の行く手を遮るように、ぞろぞろと人だかりができる。

 冒険者風の男やどこかの店員のようなエプロンをかけた男、人だかりの人間は全て男で構成されていた。

 その内の一人が前に進み出る。ユエ達は覚えていないが、この男、実はハジメ達がキャサリンと話しているとき冒険者ギルドにいた男だ。

 

 「ユエちゃん、シアちゃん、ナナキちゃん

 ……で名前、あってるよな?」

 

 「? ……合ってる」

 

 何のようだと訝しそうに目を細めるユエ。シアは、亜人族であるにもかかわらず〝ちゃん〟付けで呼ばれたことに驚いた表情をする。ナナキは、急な人混みに恐れもせずただ不思議そうに首をコテンッと傾ける。

 

 ユエの返答を聞くとその男は、後ろを振り返り他の男連中に頷くと覚悟を決めた目でユエを見つめた。他の男連中も前に進み出て、ユエかシア、そしてナナキの前に出る。

 

 そして……

 

 

 

「「「「「「ユエちゃん、俺と付き合ってください!!」」」」」」

 

「「「「「「シアちゃん! 俺の奴隷になれ!!」」」」」」

 

「「ついでにナナキちゃんも(うち)の子になってくれ!!」」

 

 つまり、まぁ……そういう事らしい。ユエとシアで口説き文句が異なるのはシアが亜人だからだろう。奴隷の譲渡は主人の許可が必要だが、昨日の宿でのやり取りでシアとハジメ達の仲が非常に近しい事が周知されており、まず、シアから落とせばハジメも説得しやすいだろう……とでも思ったのかもしれない。

 当然、男であるナナキは少し事情が異なる。

 冒険者ギルドや昨夜の宿の事で、ナナキがユエの姉弟である事は周知の事実となった。ユエに言い寄る者たちの中から数人、ナナキにも声をかける輩が続出している。

 

 まぁ、でも……

 

 「……ナナキ、シア、道具屋はこっち」

 

 「あ、はい。時間も押してますし、一軒で全部揃うといいですね。ナナちゃんもほら、急ぎましょう。」

 

 「……は!うん!」

 

 告白を受けた当人達は、何事も?なかったように歩みを再開する。

 

 「ちょっ、ちょっと待ってくれ! 返事は!? 返事を聞かせてく『『断る(ります)』』『えっと……ムリです?』

 ……ぐ、くぅ……」

 

 まさに眼中にないという態度(ナナキは何故か疑問形だが……)に、男は呻き、何人かは膝を折って四つん這い状態に崩れ落ちてしまう。

 しかし、諦めが悪い奴はどこにでもいる。まして、ユエとシアの美貌は他から隔絶したレベルだ。多少、暴走するのも仕方ないといえば仕方ないかもしれない。

 

 「な、なら……力づくでも俺のものにしてやるぅ!」

 

 暴走男の雄叫びに、他の連中の目もギンッと光を宿す。三人を逃さないように取り囲み、ジリジリと迫っていく。

 そして遂に、最初に声を掛けてきた男が、雄叫びを上げながらユエに飛びかかった。

それを日本人が見たら馴染みのありすぎる綺麗なフォームに、ついつい叫んでしまいそうになるだろう。

現にナナキも「あっ、しってる!ルパ●ダイブ!」と反応している。

 

 それに対して、ユエが冷たい表情で魔法を使おうとした……

 

 次の瞬間。

 突如、ユエの隣から魔力の高まりを感じ、そちらに視線を向ける。

 するとそこでは、ナナキが口を大きく開け、そこに魔力を溜め始めていた。

 それは、威力こそ抑えられているものの、奈落でハジメを凍てつかせたあの氷の息吹(ブレス)だった。

 ユエはギョッと目を見開くが、止める間もなく男がユエに迫る寸前に、ナナキの口からビームのように絶対零度の光線が放たれた。

 

 「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」

 「ぎにゃああああああああああああああああっ!!?」

 

 人間態のまま雄叫びを上げるナナキ。それと同じくらい大きな悲鳴が空中から上がる。

 

 出来上がったのはルパン●イブの形のまま器用に顔以外を凍り付かせた男の彫像だった。

 ルパン●イブの彫像は重力に引かれて落下し、「グペッ!?」と情けない悲鳴を上げて地面に転がる。

 

 周囲の男連中は、水系の魔法と思われるも、自分達の知識に無いあの氷の息吹を一言も呪文を発さず発動したナナキに困惑と驚愕の表情を向けていた。ヒソヒソと「今のは一体何だ」「魔法なのか?」などと懐疑的な声が周囲にがる。

 

 ユエもこの状況に危機感を覚え、証拠隠滅として最終手段を取るかと、危ない思考が一瞬過ったその時。

 

 「ユエあねぇとウサギさんは……ナナキがまもる!!

 

 むふーッと胸を張ったナナキがユエとシアの前に立ち、高らかにそう宣言していた。

 

 

 

 

 その姿に、ユエは今の状況も忘れてつい、表情が柔らかく綻ぶ。

 ナナキは先程のリベンジと言わんばかりに、今回こそはちゃんとユエ達の騎士(ナイト)を務め上げてみせた。

 やはり、クリスタベルとの時間は無駄ではなかった。クリスタベルのあの茶番がなければナナキは前の失敗を気にして迷いが生じ、ユエが迎撃するより先に動く事は出来なかっただろう。

 

 ナナキはこの瞬間、確かに一歩成長したのだ。

 

 それに、誰かを守ろうとするその必死な背中は、彼の兄であり……ユエの最愛の人である“南雲ハジメ”と重って見えるようであった。

 その事実に人知れず、ナナキの事情をハジメから聞いているユエは、我が事のようにとても嬉しかった。

 

 幸いにも、他人から見ればその光景は、子供が背伸びしたような微笑ましい行動に解釈できて、勝手に和んだことで懐疑的な空気は霧散していた。

 

 この機を逃さぬように、ユエは更に事を有耶無耶にすべく前へ出る。

 

 その前に……

 

 「……ナナキ」

 

 「う、うぅ……」

 

 ユエに名前を呼ばれ振り返るナナキ。もしかしたら叱られると思っているのか、恐る恐るといった感じだ。

 そんなナナキの頭にユエが手をかざす。叩かれると思いぷるぷる震え、ナナキがその大きな目をギュッと瞑る。

しかし、想像した衝撃は何時まで待っても来ない。

 

 そっと目を開くと、ユエの手は優しくナナキの柔らかい髪を撫でつける。そして、開かれたナナキの目を真っ直ぐに見つめて一言……。

 

 「守ってくれて、ありがとう。……ナナキ」

 

 「……ッ!うんッうん!どういたしまして(・・・・・・)……へへッ」

 

 ナナキはようやく噛まずに万感の思いで、ユエの感謝にお返しの言葉を言えたのだった。

 

 ナナキとの触れ合いを終えるとユエは、再び前へ進み出る。

ツカツカと氷の彫像にされた男へと歩み寄り、そして手を翳す。

ナナキの絶対零度はハジメの肉体を壊死させるほど、手加減されていたとは言え、並の人間が喰らえば本当に死にかねない。ユエは速やかに、そして慎重に解凍作業に入る。

 

 だが、それでは味気ない。一見冷静に見えて、実は今ユエは非常に怒り心頭だった。それは、先程自分たちに告白してきた連中。

自分に声がかかるのは分かる。それなりに人目を引く容姿をしているのは自覚しているからだ。

 しかし、自分に声をかけておいて、“ついでと称し”ナナキにまで声をかけるのは一体どういう了見だ!?

 別々に声をかけるのはまだいい、ナナキにも同性を堕とすほどの魅力があるのだから理解できる。自慢の弟だ。それを……

 

 ついで、ついで(・・・)だと?自分の愛らしい弟をまるで付属品のような扱い……ふざけるな、巫山戯るなよ!何様のつもりだこの野郎!?

 

 知らしめねばなるまい、見せしめねばなるまい……。

 

 目の前のこの氷像の男含め、この場にいる有象無象のル●ンモドキ共に、自分達に半端な気持ちで手を出したらどうなるのかを……ッ!!

 

 

 

 

 そうしていると、男の身を包む氷が溶けていく。体の芯から温かくなっていく感覚に『解放してもらえるのか』と、表情を緩める男。さらに熱っぽい瞳でユエを見つめる。

 

 「ユ、ユエちゃん。いきなりすまねぇ! だが、俺は本気で君のことが……」

 

 この男は懲りもせず、未だ氷に包まれながら更に思いを告げようとするが、その言葉が途中で止まる。

なぜなら、溶かされていく氷がごく一部だけだと気がついたからだ。それは……

 

 「あ、あの、ユエちゃん? どうして、その、そんな……股間の部分だけ?」

 

 そう、ユエが溶かしたのは男の体内と股間部分の氷だけだ。他は完全に男を拘束している。

 しかも、男は気付いていないが、股間の内部(・・)は凍てつかせたままだ。

嫌な予感が全身を襲い、男が冷や汗を浮かべながら

「まさか、ウソだよね? そうだよね? ね?」という表情でユエを見つめる。

 

 

 そんな男に、ユエは僅かに口元を歪めると、

 

 

 「……狙い撃つ」

 

 そして、風の礫が連続で男の股間に叩き込まれた。

 

 

 

―――― アッアァァッーーー!! 

 

―――― もうやめてぇええ〜〜

 

―――― おかぁちゃぁぁあん! 

 

 

 

 男の悲鳴が昼前の街路に響き渡る。マ●オがコインを取得した時のような効果音(に変換された音)を響かせながら執拗に狙い撃ちされる男の股間。きっと中身は、床に叩きつけられたガラス玉のようになっている事だろう。

 周囲の男は、囲んでいた連中も、関係ない野次馬も、近くの露店の店主も関係なく崩れ落ちて自分の股間を両手で隠した。

 

 やがて永遠に続くかと思われた集中砲火は、男の意識の喪失と同時に終わりを告げた。一撃で意識を失わせず、しかし、確実にダメージを蓄積させる風の魔法。まさに神業である。ユエは人差し指の先をフッと吹き払い、置き土産に言葉を残した。

 

 「……ナナキの代わりに、お前が漢女(おとめ)になるがいい」

 

 「おぉ〜、ユエあねぇ……かっこいいッ!」

 

 同じ男でありながら、ナナキのはしゃぐ声だけはこの場に響いていた。

 

 この日、一人の男が死に、第二のクリスタベル、後の“マリアベル”ちゃんが生まれた。彼は、クリスタベル店長の下で修行を積み、二号店こと『子供服専門店』の店長を任され、その確かな見立てで名を上げるのだが……それはまた別のお話。

 

 ユエに、“股間スマッシャー”という二つ名が付き、後に冒険者ギルドを通して王都にまで名が轟き、男性冒険者を震え上がらせるのだが、それもまた別の話だ。

 ユエとシア、そしてナナキは、畏怖の視線を向けてくる男達の視線をさらっと無視して買い物の続きに向かった。道中、女の子達が「ユエお姉様……」とか「ナナキ()……」とか呟いて熱い視線をその二人に向けていた気がするがそれも無視して買い物に向かった。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 結論から言うと、チェックアウトの時間には三人の買い物は間に合わなかった。

 

 クリスタベルのところで時間を取られたのもあるが、他の買い物も意外と難航したからだ。

 その事にナナキがまた責任を感じ、しょぼんとするのをユエとシアが必死に取りなす事で事なきを得た。

 

 駆け足で宿に戻れば、宿の入り口付近でハジメが立って待ってくるていた。

傍らには、ナナキがこの町に入る時に担いでいた大きなリュックに4人分の荷物を詰め、その隣には直径四十センチ長さ五十センチ程の円柱状の物体。まるで機械仕掛けの樽……いや、和太鼓のような物が置かれていた。

 今、ハジメは宝物庫をシアに預けているめどんな大荷物でも外に出す必要がある。

ハジメの宝物庫とナナキの簡易宝物庫はオルクスの隠れ家にあったもの。未だハジメの技術では再現ができていない為量産が出来ない。なので、今回の買い物のように仲間内で使い回すしかないのである。

簡易宝物庫は本当に容量が少ない為、戦闘において武器を必要としないユエよりも、キーファ・ファングを持つナナキが所持している。

 

 そんな大荷物に囲まれたハジメは目立つ為、忙しなくキョロキョロと視線を巡らせる。その中で見つけたのか、ユエ達に向かって片手を上げる。

 

 「ごめん、ハジメ……遅れたッ」

 「すいませんッゼェッ……ハジメッゼェッ……さんッゼェハァッ……」

 「あにぃ……ごめんねッ……」

 

 ようやく駆けつけたユエ達は三人それぞれ息を上げながらハジメに謝罪する。

 

 「いや、大丈夫だ。それよりそっちは平気………か?!」

 

 謝罪する三人に何ともないか声をかけたハジメ。しかし最後の方で尻すぼむ。

 

 どうしたのか振り返る三人が捉えたのは、

驚愕に目を見開きナナキを凝視する(・・・・・・・・)ハジメの姿だった。

 

 「な、ナナキぃ?……ど、どうしたんだ?そのッ!?」

 

 「うぅ?」

 

 聞かれて何を言われているか分からないナナキは首を傾げるが、ナナキの顔を見たユエとシアは『あっ……』と声を漏らす。

 

 三人の視界には、“桜色のリップに桃色に頬を染め、”ナチュラルメイク(・・・・・・・・)を施したナナキがそこに居た。

 

 ユエとシアは『自然(ナチュラル)過ぎて気づかなかった……ッ』とアホな思考になり、ハジメは「なぜにメイク!?死ぬほど似合ってるけどぉ!?」などと馬鹿な事を抜かしていた。

 

 そう言われ、ナナキもハッ!と気づいたと思えば、

「えっへん」と自慢げに胸を張ってハジメにこう告げた。

 

 「しってる?あにぃ……うつくしいは……ちから!なんだよ……へへッ」

 

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

 

 ・

 

 

  。

 

 

 「「あ~」」

 

 「だ……だぁれだぁぁあッ!!俺の弟に変な価値観植え付けた奴ぁあああああああああああッッッ!!!

 

 

 ハジメ□スは激怒した。必ず、かの じゃきぼうきゃく の王カマを除かねばならぬと決意し━━(以下略)

 

 

 

 

 

 




 
 おまけ話《歪んだSay教育》
 ※下ネタ注意。嫌な人は一番下まで飛ばしてね☆


 これは、ユエの手で一人の男が転生(笑)した直後の出来事。

 ナナキ「ユエあねぇすごいッ……かっこいい」

 ユエ「ナナキ褒めすぎ……でもありがとう。」

 ナナキ「でも、なんであのひとの“い●けい”……ばっかりこうげきしてたの?」

 ユエ「ぶッッッ!!?」

 
 説明しよう!(←山ちゃん風)

 ナナキ君はどこに出しても恥ずかしくないピュアボーイ。
故に、聖なる知識に関しては正にブラックボックスなのであ〜る!!

 しかし、思春期オタクである兄ハジメが共にいる環境。そういった物と完全にシャットアウトは不可能!!
とある瞬間にRATAIと遭遇してしまう事は最早避けられぬ必然!!

 更には自分の股間にも同じものが存在していれば、その存在の名前が気になるのは当然の宿命!!

 ナナキは無慈悲に問いかける

 『このぷらーんぷらーんしてるの、なぁ〜にぃ〜?』

 それを受け、当時のハジメは己の灰色の脳細胞をぶん回すッ!!

 第1候補オーソドックスにOTHINK●……普通に下品、却下!!

 第2候補エレファ●トさん……動物園で見かけた時にそれを連想させてしまうから却下!!

 第3候補THIN●HIN……第1とそんな変わらんッ!駄目!却下!!

 第4候補ちんす●う……なんか色々すいませんm(_ _)m却下!!

 最終候補OTH●NPO……なんか表現がえッ()ッ!!
 江戸 は、現在の東京の前身・原型に当たる都市を指し、その旧称である。現在の東京都区部の中央部に位置した。 平安時代後期に東京湾の日比谷入江に面する平川東岸の小地名として現れ、そこに秩父氏の一族の武士が移り住んで云々かんぬん云々かんぬん……。
 ※ウィキ参照

 なんだか、どれも駄目な気がしてきたハジメはゲシュタルト崩壊。
 もう、やましくなければ何でも良いッ
 と言うことで、最終手段として……

 全て、正式名称で教えることにしたのだ!!

 正式名称だと、なんか学術的で変な気も起こさないし、教科書にも載っているため、勉強になる。

 やましいこと何もない!もうそれでいい!

 と言うことになったのである。

 以上!説明終わり!


 ユエ「さ、さぁ……そこが狙いやすかった……から?」

 ナナキ「え〜なんで?」

 ユエ「ぐぅ……た、偶々そこに目についた……から?」

 ナナキ「なんでぇ?」

 ユエ「ぐぐぐッ……」

 その時、ユエの脳内にクリスタベル神の天啓降りる。

 ユエ「……ナナキ、アレはあの人の為でもあるの」

 ナナキ「うぅ?あのひとの……ためぇ?」

 ユエ「そう、あの人は……ああすることでさらなる高みを目指せる。覚えてる?美しいは(・・・・)……?」

 ナナキ「ハッ!ちから!」

 ユエ「そう、美しいは力。ああする事で、あの人は美しくなって強くなる。だからあの人のため……きゅーいーでぃー」

 ナナキ「おぉ〜!」

 満足したようなナナキの顔を見て己の勝利を確信するユエ。しかし、それは早計だった。

 ナナキ「じゃあ、ナナキも、ナナキの“い●けい”こうげきしたらつよくなるのかなぁ〜?」
 ユエ「それはナナキには絶対に合わないからやめて

 ナナキ「え、でも」
 ユエ「やめて、お願いッ

 ナナキ「うぅ?」

 シア「教育って難しいですぅ〜」


                    
               〜to be continued

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 一応言っときますけど、クリスタベルさんは別にヒロインとかじゃないからね?
 いや、花嫁衣装なのはナナキ君だがら、ナナキ君がヒロインなのか?……

 いや、違うからね?

 もぐたろ さん、パワーパワーエネルギー さん、

 新たに評価、ありがとうございますm(_ _)m

 そして今回、おまけ話が下ネタ満載ですいませんでした。嫌な人は飛ばして良いですからね☆

 次回は、もっと早く上げられるように頑張ります。




次回、おいでませ♪ドキワクらいせぇんだいめいきゅう!

 お楽しみに〜
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