世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 これ、オリジナル天職ってタグつけたほうがいいかな?



第2話∶初めてのステータス

 

 翌日から早速訓練と座学が始まった。

 

 まず、集まった生徒達に十二センチ×七センチ位の銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒達に、騎士団長メルド・ロギンスが直々に説明を始めた。

 

騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った時が僕にもあったけど、対外的にも対内的にも〝勇者様一行〟を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

 メルド団長本人も、「むしろ面倒な雑事を副長に押し付ける理由ができて助かった!」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副長さんは大丈夫ではないかもしれないが……

 

 「よし、全員に配り終わったな? このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

 非常に気楽な喋り方をするメルド。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか!」と、他の騎士団員達にも普通に接するように忠告するくらいだ。

 まぁ僕等もその方が気楽で良かった。遥か年上の人達から慇懃な態度を取られると居心地が悪くてしょうがない。

 

 「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 〝ステータスオープン〟と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ? そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」

 

 「あてぃふぁくとー!!」

 

 「ハハハッ!!今日も元気が良いなぁナナキ!!」

 

 アーティファクトという言葉に何か感じる物があったのか、ナナキが元気よく復唱する。

 

 ナナキは曲がりなりにも僕の弟、完全に理解はしてなくても、オタク知識が魂に刻まれているんだろう。

 

 いやぁ〜必死に教え込んだ介があった。しかし講義を妨げても気分良く受け流してくれるメルド団長は本当に人が良い人間なのだということがよくわかる。

 

 「続けるぞ?アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

 なるほど、と頷き生徒達は、顔を顰めながら指先に針をチョンと刺し、プクッと浮き出てきた血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。僕も同じようにやろうとして……思い出したようにナナキに振り返る。

 

 そして恐る恐るメルド団長に進言する。

 

 「すいませんメルドさん、これはその……本当にやらないといけないことなのでしょうか?」

 

 僕の質問に周りのみんなはコイツ何言ってんだ?って顔をするが、ナナキの隣に座る愛子先生をはじめとした一部の人達は僕の質問の意味に合点が行ったのか、表情を曇らせる。どうやらメルド団長もその一人のようで神妙な面持ちで答えを返す。

 

 「うむ、そうだなぁ南雲。先ほど説明した通り、このステータスプレートは一般市民にも流通していて、身分証としても普及している。それは勿論大人だけでなく、子供(・・)にも当然普及されている。」

 

 そう言うとメルド団長は視線を僕からナナキへと向ける。そう、なぜ僕がこんなことを聞いたのか、それは僕が、たとえ小さな針でちょっと刺すだけだとしても、ナナキに痛い思いをしてほしくないと嫌厭したからだ。そんな僕の気持ちを見透かしているかのようにメルド団長はにやりと笑う。だがそれは決して嘲笑の類のものではなく優しい微笑みだった。

 

 「良いか南雲、何も囲ってしまうことだけが守る事じゃない。時には傷を、痛みを教えることも、守ることにつながるんだ。それに……お前の弟はやるつもりらしいぞ?」

 

 それを聞いて驚愕に振り向く、すると

 

 「ナナキ君大丈夫ですよぉ〜、ちょっとチクってするだけですからね」

 

 「うんッ」

 

 それはまるで予防注射を打たれる子どものように針を持った愛子先生に、自分の指先を向ける弟の姿があった。

 

 愛子先生も若干緊張していたが、無駄に怖がらせないように痛がらせないように速やかに事にあたってくれている。そして……

 

 「はいッ終わりましたよ〜よく我慢しましたね〜」

 

 「うん……うん」

 

 優しくナナキを労う先生、対してナナキは何かに必死に堪えるように震えながら頷いていて、そして……

 

 「う…うぅ……うえええええええん!!」

 

 「大丈夫ですよぉナナキ君、よく頑張りました」

 

 遂には泣き出したナナキを先生は優しく抱きしめてあやしてくれていた。

 

 「よく頑張ったわねナナキちゃん」

 

 「うおお〜ナナっちぃ!!流石は鈴の妹!!」

 

 「色々違うよ鈴ちゃん」

 

 そうやってクラスの何人かも労ってくれていた。そんな光景に僕が感極まっていると、メルド団長が話しかけてくる。

 

 「南雲、ナナキについては愛子から聞いている。確かにナナキは俺達多くの人間からしちゃあ、弱い部類の人間なのかもしれん、心がいつまでも子どものまま成長できないのかもしれない。」

 

 そう言われて顔を伏せる僕、

 

 「だがな南雲、あいつは俺達にはないでっかいハンデがある中、ああやって、自分なりに前に進もうとしている。」

 

 僕ははっと顔をあげる。

 

 「それは亀の如き歩みかもしれない、心がいつまでも子どものままだったとしても、あいつは進んでいる。精神が、魂が少しずつ大きくなっているんだ。」

 

 「南雲……世の中普遍なんてものはない。寧ろ大人になっちまえば、誰も彼も子どもの心を忘れちまう。そんな世の中で子どもの心を持ち続けるのはとっても貴重なことだと俺は思うぞ!よく言うだろう夢はでっかくってな。」

 

 「俺達はそんな若者の障害を排除するだけじゃなくて、時にはぶつからせ、自分で超えていくのを見守り導く事も大切だ。勿論南雲、お前達を含めてな?囲うのではなく促す。それが俺の役目だと思っている。」

 

 囲うのではなく促す。その言葉が僕の中で何度も響き渡る。

 

 「さて、ちと臭い話をしちまったが続けるぞ」

 

 メルド団長がそう言うと同時に僕も思い出したように自分のステータスを確認する。すると

 

===============================

 

南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1

 

天職:錬成師

 

筋力:10

体力:10

耐性:10

敏捷:10

魔力:10

魔耐:10

技能:錬成・言語理解

 

===============================

 

 と表示された。

 

 

 

 まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、僕は自分のステータスを眺める。他の生徒達もマジマジと自分のステータスに注目している。

 

 そのままメルド団長からステータスの説明がされる。  

 

 「全員見れたか? 説明するぞ? まず、最初に〝レベル〟があるだろう? それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

 

 どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

 

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後でお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。なにせ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」 

 

 メルド団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

 

「次に〝天職〟ってのがあるだろう? それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

 

 自分のステータスを見ると、確かに天職欄に〝錬成師〟とある。どうやら僕には〝錬成〟というものに才能があるようだ。

 

 僕らは上位世界の人間だから、トータスの人達よりハイスペックなのはイシュタルから聞いてある。なら当然だろうと思いつつ、どうしても口の端がニヤついてしまう。自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだからね。

 

 しかし、メルド団長の次の言葉を聞いて喜びも吹き飛び嫌な汗が噴き出る。

 

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル1の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな! 全く羨ましい限りだ! あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

 

 この世界のレベル1の平均は10らしい。僕のステータスは見事に10が綺麗に並んでいる。嫌な汗を掻きながら僕は内心首を捻った。

 あれぇ~? どう見ても平均なんですけど……もういっそ見事なくらい平均なんですけど? チートじゃないの? 俺TUEEEEEじゃないの? ……ほ、他の皆は? ナナキは?やっぱり最初はこれくらいなんじゃ……

 

 僕は、僅かな希望にすがりキョロキョロと周りを見る。皆、顔を輝かせ僕の様に冷や汗を流している者はいない。

 

 そしてそのままメルド団長の呼びかけの下、天之河君から順にステータスの確認がされたのだけど、

 

============================

 

天之河光輝 17歳 男 レベル:1

 

天職:勇者

 

筋力:100

体力:100

耐性:100

敏捷:100

魔力:100

魔耐:100

 

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

==============================

 

 

 

 まさにチートの権化だった。

 

「ほお~、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め! 頼もしい限りだ!」

 

「いや~、あはは……」

 

 団長の称賛に照れたように頭を掻く天之河君、そんな彼に誰もが「流石」と称賛のムードを醸し出す中、

 

 「あれ〜ナナキ君、先生のと少し表示が違いますね」

 

 「私のもですよ。もしかしてナナキちゃんだけなのかしら」

 

 後方の方で愛子先生と八重樫さんからそんな声がどどいた。振り返ってみてみると、愛子先生が自分のものと、恐らくナナキのステータスプレートとを横並びに掲げ首をひねっている。

隣に立つ八重樫さんも同様だ。

 

 「どうした?何かあったのか」

 

 そんな3人の異変に気づいたのか、メルド団長が3人のもとへ駆け寄る。僕も心配になって団長の後をつけるように付いていく。

 

 「あっ実はナナキちゃんのステータスプレートの表示が私たちと少し違ってて、これって故障したりするんでしょうか?」

 

 と八重樫さんがメルド団長に聞く。「どれ、見せてみろ」と団長がナナキののステータスプレートを確認すると。

 

 「な!?……ばっ馬鹿な!?」

 

 と、突然顔を真っ青にさせた団長が驚愕に声を荒げる。思いも寄らない団長の異変に補佐でついていた複数の騎士もその場に駆け寄る。すると他の騎士の人達も、ナナキのステータスを見て顔を青く染めている。

 

 一体どういうことなのか僕も団長の後ろからナナキのステータスプレートを覗く。そこに記されていたのは。

 

============================

 

南雲ナナキ 16歳 男 レベル:1

 

天職:変質者【鮫】

 

筋力:150(+━━━)

 

体力:200(+━━━)

 

耐性:100(+━━━)

 

敏捷:60 (+━━━)

 

魔力:0 (+━━━)

 

魔耐:10 (+━━━)

 

技能:変質化∶(以降、変質化後に解放)・言語理解

 

==============================

 

 

 うん、またしてもチートの権化、“守ろうとした弟が僕より強かった件”なんてラノベタイトルのような文言が頭をよぎるほどに……。

 魔力方面は平均の僕にすら劣るけど、完全なインファイト型だ。筋力、体力に至っては天之河君をも凌駕している。いや、隣にある謎のカッコの+が文字通りの意味なら更にやばいことになるかもしれない。

 

 

 そして天職と技能欄が確かに僕達と少し表示が違う。団長さん達がこんなに鬼気迫る感じなのは、もしかしてコレが原因なのか?

 

 「あっあの、どうかしたんですか?」

 

 と、ナナキのステータスの高さに僕が愕然としていると愛子先生が痺れを切らして団長に問う。

 

 「あ?あぁ、すまない。あまりの事態に放心していた。」

 

 そして仕切り直すようにゴホンッと咳き込むと、団長は説明を始める。

 

 「まず、我々が驚いたのはこの天職、”変質者“についてだ。この変質者の天職は、我々聖教教会により歴史書に記されるほど遥かな昔異端(・・)の指定を受け淘汰されたはずのものだった。」

 

 「!!?」

 

 あまりにも予想外の内容にその場にいた者たちが絶句する。

 

 「当時は発見次第、即処刑されていたほどだ。今では考えられない話だがな、そして何年か経過する毎に、『天職に罪あれど、それを持つものに罪はなし』と言う教えが広まり、無辜の民が無闇矢鱈に処刑される事はなくなった。そして、その後の学者の研究により、“天職は技能が使われなければ次代に引き継がれない”という仮説が立てられた。現に、変質者だけでなく他にもいくつかの天職は近年ではあまり見られなくなった。」

 

 そう言って団長は『占術師』『守護者』等も、近年では確認されていないと説明する。

 

 「そうやって変質者に目覚めてしまった民はその生涯を技能を使わないように努めて生き、次第にその数を減らしていったのだ。」

 

 まぁそれも完全にではなく100年周期でたまに現れたりすると最後に団長が締めくくると、愛子先生が質問を投げかける。

 

 「その……なぜ変質者はそこまで教会に目の敵にされていたんですか?」

 

 当然の疑問だ。僕もそこだけはどうしてもわからない。すると、団長が「うむ」と神妙な顔で頷いて説明を始める。

 

 「これは今後の座学で話すことなんだが、この世界には我々の敵、魔人族の他にももう一つ亜人族という者達がいる。これは多分昨日お前たちもイシュタル教皇より聞いているだろう。」

 

 亜人族、その殆どが人と獣の混じった姿をした人間と魔を省いたその他達、今のところ僕の理解はケモミミパラダイス程度のもだけど、とりあえず今は話を聞く。

 

 「その亜人族は獣と人が混じったような姿の者たちが殆どだ。我々が崇めるエヒト様は、人族の神……。我々と彼らでは根本的には相容れないのだ。」

 

 「その話と変質者がどう関わってくるんですか?」

 

 と愛子先生。確かに、今は変質者の話をしているはずなのに急に宗教的な話をされても意味がわからないだろう。でも、僕はナナキの変質者の隣にある【鮫】の文字もを見て嫌な予感がしていた。

 

 「そうだな、ここからが重要だ。まず変質者とはどういった天職か、説明する。変質者はその名の通り“変質する者”目覚め、力を解放したが最後、変質者の持ち主は全く別の存在へと変質してしまう。」

 

 言われたと同時、クラス全体がざわつく。

 

 「最後(・・)というのは……」

 

 と八重樫さん

 

 「言葉通りの意味だ。変質したが最後、もう二度と元の存在には戻れない。」

 

 一層クラスのみんなが驚愕する。無論僕もだ…ナナキがナナキじゃなくなる!?。

 

 「落ち着けお前たち。変質すると言っても外見とそこに宿る力のみだ、中身は変わらん。ナナキの場合、恐らく鮫の亜人……海人族の様になると思われる。」

 

 良かった……それを聞いてひとまずは気持ちを落ち着かせる。安心はできないけど…。

 

 だけど、団長は次の説明で表情を曇らせる。

 

 「そう、変質者を解放すればナナキは亜人族に近い存在なってしまう。だが変質者のそれは亜人族よりもたちが悪い。過去の文献によれば、変質者が変質するものは何も生き物だけでなく、『泥』『鉄』『炎』『雷』等といった無機物、そして変質した者の中で完全に人とは逸脱した姿になったものもいたそうだ。

中でも一番ひどいのは固有魔法(・・・・)に目覚めた者もいたらしい。」

 

 

 「「「!!?」」」

 

 固有魔法、それは昨日のイシュタルの説明にもあった。魔物(・・)呑みが種族事に目覚める特殊な魔法だ。

 そりゃあ異端扱いにされる。人が神敵、本質が人から魔物に変じてしまうのだから。大昔の人は早めの駆除のつもりで、赤ん坊でも容赦なく処刑したのだろう。僕は無意識にナナキを背後に庇う。そんな僕を見て団長の表情が和らぐ。

 

 「安心しろ南雲。先程も言った通り、技能さえ使わなければ変質者が目覚めることはない。もともとナナキは戦闘訓練は積ませても、戦いに駆り出すつもりはなかったからな。」

 

 とそんなことを言ってくれた。唐突な事で呆気にとられていると、横から愛子先生が口を開く。

 

 「安心してください南雲君、ナナキ君の事情については懇切丁寧に私が皆さんにお伝えしましたから。メルド団長さんは私の要望を汲んでくれたのです。」

 

 「うむ、言い方は悪いが、まともな意思疎通ができなければ兵士としての価値はあまりない。だが、自衛のために技術を少しでも習得しておくのは悪いことじゃないだろう。

 まぁ、予想以上にナナキ自身のステータスが高かったからなぁ。いやはや面食らってしまったよ。」

 

 「うぅ?」

 

 多分事の中心にいる本人は今何の話をしているのか分っていないのだろう。コテンと首を傾げて、メルド団長と愛子先生を交互に見る。その微笑ましい光景に誰もが笑顔になった。僕としても、ナナキが戦いに参加しなくて良い大義名分ができて一安心だ。

 

 

 

 

  ♢

 

 

 

 その後色々あって滞っていたクラス全体のステータス確認が再開され、見事僕の低能っぷりが露見してしまう。

 しかし、メルド団長は最初こそ瞠目したものの、まるで感心するように僕を見た。すると僕の肩を叩き穏やかな顔で告げる。

 

 「どうやらお前は、ステータスでは測れない心の強さを持っているんだな。これからもその調子で精進してくれ。期待してるぞ!」

 

 それを聞いて、僕は何だが認められた気がして嬉しくなった。

 

 「はいっ!」と元気よく返事をして元の場所に戻ろうとしたときだった。

 

 「おいおい南雲ぉ〜っどうしたぁ?結構曖昧な評価だったじゃねぇかよ」

 

 檜山大介と他3名、いつも僕を目の敵にしてくるメンバーが僕のステータスにちゃんとした言及がなかったことに目ざとく食いつき絡みはじめてきたのだ。

 

 ニヤニヤと不気味な顔で僕を取り囲む彼ら、そしてつらつらと嫌味をまくし立て始める。

 

 「だってそうだよなぁ?俺達はみんな一人一人どんな天職で、どういう力を持ってるか説明されたのに、お前だけ何か誤魔化された感じがしねぇかあ?」

 

 「そうだぜぇ、俺気になっちゃうなぁ〜」

 

 「ちょっと見せろよっ!」

 

 あっと思ったときにはもう遅く、ステータスプレートを奪われてしまった。そして中身を確認した彼らは、堰を切ったように笑い出す。

 

 「ギャハハハハ!!なんだよこりゃあ全部10!?全部10だぜぇ」

 

 「ぶっははは〜何だよ完全に一般人じゃねぇか!!」

 

 「本当にこんなんでどうやって戦うのお前!?」

 

 「まぁ待てよお前ら、もしかしたら天職が特別かも知んねぇだろ?なぁメルドさん、この“錬成師”って言うの何か特別な奴なんすか?」

 

 そう言って僕のステータスプレート片手に檜山君は団長に声を掛ける。しかし、

 

 「……………。」

 

 メルド団長は何も答えずただこちらを見据えている。

 

 「あ?何シカトしてんすか?」

 

 そんな団長の態度に少しイラついたのか語気強めに檜山君が文句を言おうとした瞬間。

 

 ガシッと彼の腕を掴むものがいた。

 

 「あ?」

 

 檜山君がそちらに視線を向けるとそこにいたのは……

 

 「あにぃの……かえせ…」

 

 僕の弟、南雲ナナキだった。

 

 「あ?お前何勝手に触ってんだ…っ」

 

 檜山君がナナキにその敵意を向けようとするが、その動きが一瞬止まる。なぜならナナキが握っている方の彼の腕がミシミシと嫌な音を立てていたからだ。

 

 「痛ッおまっざけんな!はな━━━

 

 「あにぃのぉ!!かえせぇ!!

 

    あ?」

 

 ナナキがそう叫んだと同時 ゴキンッ と人の体から鳴ってはいけない類の音が響く。そちらの方に目を向ければまるで服のしたで檜山君の腕が外れたかのように変な膨らみとシワができている。

 

 そしてあっという間にナナキは檜山君をまるでおもちゃの人形を振り回す要領で投げ飛ばした。

 

 ガシャンと、何の受け身もないまま木の机を砕きながら投げ飛ばされた檜山君は「ガハッ!?」とうめき声を上げたあと、やっと痛みが追い着いてきたのか、うめき声を上げて肩を押さえながら床をのたうち回っていた。

 

 だがナナキの追撃はまだ終わらない。力任せに両腕をグルグル振り回して「かえせええ!!」と叫びながら投げ飛ばされた檜山君へ突貫しようとしていた。

 

 それを見て流石にまずいと思った天之河君と坂上君、そして数名の騎士たちがナナキを抑えにかかった。

 

 「ん〜ッ!!ん~~ッ!!」

 

 4人係りで羽交い締めにされてもなお、手足をバタバタさせて涙目で唸っている。

 

 するとようやく動き出したメルド団長が、ゆっくりと檜山君に近づいて床に落ちている僕のステータスプレートを拾う。

 そしてそのまま檜山君に目線を合わせ懐から魔法陣を取り出し魔法を唱える。

 

 「彼の者の傷、痛み、今このときのみ忘却せよ━━”無痛“」

 

 すると檜山君の傷が仄かに光り、檜山君も何が起きたのか目を白黒させている。

 

 「一時的に痛みを消しただけだ。傷は後で治癒師に癒してもらえ。」

 

 すると余裕を取り戻した檜山君がメルド団長を睨むが、メルド団長は真っ直ぐとした眼差しで檜山君へ視線を返す。そして僕のステータスプレートを掲げ語りだした。

 

 「確かに、南雲のステータスはこの世界の平均で、錬成師の天職もこの世界じゃ鍛冶職のものが持つ、ありふれた物だ。」

 

 急に何の話だと言いたそうに檜山君は怪訝そうな顔をする。

 

 「良いか檜山、さっきも南雲に言ったと思うがあいつは強い心を持っている。それはなぜか、

 

 あいつは、自分の能力が平均と知らされていた。にも関わらずだ。あいつは自分よりも強い弟の盾になろうとした。例え兄弟だとしてもそうそうできるもんじゃない。こういう奴は強くなると俺は確信している。」

 

 そう言い終わると今度は団長は立ち上がり僕達全員に視線を向ける。

 

 「無論お前たちもだ。例えステータスが恵まれていようとも努力を怠ればあっという間に追い越されるぞ。心を強く持て!俺が言いたいのはそれだけだ。」

 

 その後メルドさんは座学へと戻った。僕としてはあんなにベタ褒めされた後で普通に座学をやらされていろんな意味で生きた心地がしなかった。周りの視線がすごい、特に檜山君の取り巻き3人からの視線が……。

 あの後、檜山君は担架で運ばれ治療を受けているため授業の後半はいなかった。

 

 授業終了後、ナナキはメルドさんに呼び止められ、感情のままに使う力は危険だし、自分も傷付く的なことを優しく諭されていて、怒られてると思ったナナキが小さくシクシクと泣いているのを豪快に頭を撫でてあやしていた。

 

 僕も後でナナキにお礼を言わないとな

 

 「兄ちゃんのために、怒ってくれてありがとう」って……。

 

 

 

 

 

 

 それにしても檜山君達、あとが怖いなぁ〜。

 

 

 

 

 

 

 





 因みに、メルドがハジメをベタ褒めしている時、後方彼女面で頷きまくっていた女子生徒が居たとか居なかったとか。

 

 “無痛”今回のみのオリジナル魔法です。
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