ビジュアルがもう神!!
ドラゴンの方も相変わらずかっちょいい!!
欲じがっだぁああああああああああああッ!!(切実)
やっぱり願ったのが駄目だったか?
あの後も、俺達はこの
ミレディの文言通り、部屋の先の道は全く見知らぬものに変わっていた。それに対して、俺達は怨嗟に声を荒げるもナナキのほっぺセラピーで何とか精神を立て直す。
まぁ、当然順風満帆とはいかず、特にシアの野郎が
金たらい、トリモチ、変な匂いのする液体ぶっかけ……
等など、地味なトラップに尽く引っかかりまくり、ストレスマッハなシアは修羅ウサギへと進化しようとしていた。
そうして、かれこれ1週間。最早あのウザ構文を、菩薩の心境で受け止められるまでに悟りを開く程周回したライセン大迷宮。
その中で、どうやらこの迷宮の構造変化には一定のパターンが存在することが判明する。
それによって“マーキング”とナナキの鼻を利用して、どのブロックがどの位置に移動したのかを確かめる事に成功した。
この調子なら、次の部屋で何かしら進展があると俺は当たりをつけている。
その部屋の前の安全地帯で、現在俺達はキャンプ中だ。
すでに夜は更け、見張りの俺以外の三人は眠りについている。
右隣にユエ、左隣にシア、膝の上にナナキがそれぞれすやすやと眠っている。
「気持ちよさそうに寝やがって……ここは大迷宮だぞ?」
俺はなんとなしに抱きしめられていた腕を解き、ユエとナナキの髪を撫でる。ユエは僅かに頬が緩んだように見える。
ナナキはここまで来るにあたって散々弄ばれたほっぺはツヤツヤのプルプルに仕上がり、俺の膝の形に沿うようにペちょぉ〜と変形している。
そのほっぺを徐ろにつついてやると「うみゅ〜ッ」とくすぐったそうに声をあげる。
次いでシアに視線を向ける。俺の肩をよだれで濡らし、非常にだらしなくはあるものの、とても穏やかな顔で口をムニャムニャさせて眠っていた。
そういやこいつ、頭を撫でてほしい……とか言ってたな。
何を思ったのか、俺はそのままシアの頭にも手を伸ばす。青みがかった白髪を撫で、白いモッフモフの耳に触れる。
思ったよりもモフモフだったその感触に驚いていると、唯でさえだらしない事になっている表情が更にゆるゆるになってしまった。
……とても安心しきった表情だ。
「まったく、俺みたいなヤツの何処がいいんだか……こんな所まで付いて来やがって……」
悪態はつくが、俺の心境はどこか穏やかだった。
正直に言うと、俺はシアの事を結構気に入っている。
ポジティブな考え方や明るさ、泣き言を言いながらも諦めない根性は好感が持てる。
だからって俺にはユエがいるから、こいつが求めるような思いを向けてやることは到底できないが……
それでも、この撫でる手付きも自然と優しくなる。
「そろそろ……か」
もうじき朝が来る。迷宮内である為日の光は届かないが、オルクスのとこから持ってきていた3時間砂時計の上の砂がすべて落ち切ろうとしていた。
「いい加減、決着をつけようぜ……ライセン大迷宮ッ」
今日中に、俺達四人で必ず踏破する。その意思が強まるとともに、砂時計の下の山が頂点に達した。
◇
起床時、シアが起き方においてすら圧倒的な女子力をユエに見せつけられ、消沈するというゴタゴタはあったものの、身支度を整えたハジメ達一行は次の部屋へと入室する。
そこは、一週間前に訪れてから一度も遭遇することのなかった部屋になっていた。
忘れもしない、最初にスタート地点に戻して天元突破な怒りを覚えさせてくれた騎士ゴーレムの住む部屋だ。
ただし、今度は封印の扉は最初から開いており、向こう側は部屋ではなく大きな通路になっていた。
「ここか……また包囲されても面倒だ。扉は開いてるんだし一気に行くぞ!」
「んっ!」
「あぁい!」
「はぁぁ〜……」
いざ出陣!って時に、シアから重たいため息が漏れる。
「んだよこれからって時に辛気臭ぇなぁ」
「だって、ユエさんに女子力で負けるのはわかりますよ?
でも……でもぉ〜!ナナちゃんにまであんな可愛らしい起き方されたら、私の立つ瀬がありませんよ!」
シアは未だ、先程の事をグチグチ気にしていた。
実は今朝、圧倒的な女子力を発揮したのはユエだけではない。
それは誰か?聞くまでもなく超絶プリチー男の娘。南雲ナナキ君である。ナナキはサメの能力は持っているが睡眠事情は人間並みで、寝起きの機嫌はコロコロ変わる。
普段は寝起きが良い、ぱっちりお目々のナナキ。
しかし今朝は少しいつもと違って寝起きが悪かった。
それは無理もない。見た目によらずこのパーティーでは随一の体力お化けのナナキだが、この一週間。構造が変化するとは言えずっと同じ迷宮をぐるぐる回った事で、トラップの内容も完全に覚えてしまう。
結果、何が来るか分かっているトラップなど余裕で対処が出来る。
要するに
その疲れはナナキをいつもより深い睡眠へと誘っていた。
よって何が起こるか?
『ほらナナキ。もう朝だから起きろよ〜』
『あぶぅ〜〜』
『こらこら、二度寝しようとしない』
『やぁ〜あッ』
『やぁーじゃないってコラッ
俺の膝に登ろうとしちゃ駄目だってッ』
『うぅ〜ぅッ』
『いい加減にしなさいッ起きないと置いてきますよ〜』
『……んッ』
『あ?………なんですかぁ?その手はぁ?』
『………だっこぉ〜』
『コファッ!?………………た、ったくしょうがねぇ〜な』
と、このように眠気レベル3のような、ふにゃふにゃナナキになって蠱惑的な甘えん坊ちゃんになってしまったのだ。
これにはブラコンハジメもノックアウト。何とか気絶は免れ吐血に抑えたが……その後、ユエ達の身支度が整いナナキの眠気が完全に覚めるまで、そのまま抱っこし続けたという。
「うぅ、男子に、男子?……男の子に女子力で負けるなんてぇ〜」
「元々お前に女子力はねぇだろ。」
「えっ」
シアのそんな切実な思いをバッサリ切るハジメ。しかしシアから文句が飛ぶ前に、すかさず声をかける。
「いいから集中しろ。前も言ったが、お前のことは頼りにしてんだ。そんなどーでもいいことでいちいち気を取られんな!」
「………ッ」
言い方の粗暴さは変わらない。変わらないはずなのに、
そんな、今までの雑な扱いとは少し違う物を感じさせる言葉に、シアが呆気にとられる。
「……ど、どうでもいい事ではありませんが……」
一瞬の間の後、急な事だったのでどもりながらも、
不満げに頬を膨らませたシアだったが、その己の頬を両の掌でバチンッと叩く。
「ハジメさんに頼りにされて悪い気なんてしませんよ!……よしっやったるですよぉ〜ッ!!」
一心入魂。気合を入れ直したシアが叫ぶ。
しかし、慣れたとは言え未だ危険な大迷宮。そんな場所でこんな戦場では関係ない事で嘆けるのは、ある意味余裕の表れなのかもしれない。
そういう考えもあり、ハジメとしてもシアが頼もしい事に偽りはない。
こうしてシアの気合も充分。ようやく四人全員の準備が整った。
「行くぞ!」
「ん!」「おぉ~!」「はいですぅ!」
ハジメ達は、ゴーレム騎士の部屋に一気に踏み込んだ。
部屋の中央に差し掛かると、案の定、ガシャンガシャンと音を立ててゴーレム騎士達が両サイドの窪みから飛び出してくる。出鼻を抉いて前方のゴーレム騎士達を銃撃し蹴散らしておく。そうやって稼いだ時間で、ハジメ達は更に加速し包囲される前に祭壇の傍まで到達した。ゴーレム騎士達が猛然と追いかけるが、ハジメ達が扉をくぐるまでには追いつけそうにない。逃げ切り勝ちだと、ハジメはほくそ笑んだ。
だが、そんなハジメの笑みは次の瞬間には剥がれ落ちる。
なぜなら、ゴーレム騎士達も扉をくぐって追いかけてきたからだ。
しかも……
「なっ!? 天井を走ってるだと!?」
「おぉ~すごい!!」
「……びっくり」
「重力さん仕事してくださぁ~い!」
「ろぼきしにんじゃ〜ッ!!」
「そりゃ設定盛り過ぎだろうがぁ!!」
そう、追いかけてきたゴーレム騎士達は、まるで重力など知らんとばかり壁やら天井やらをガシャンガシャンと重そうな全身甲冑の音を響かせながら、ナナキが言うようにまるで忍者の様に走って来るのである。
これには、流石のハジメ達も度肝を抜かれ、ハジメは咄嗟に通路に対して“鉱物系鑑定”を使うが、その材質は既知のものばかり。重力を中和したり、吸着の性質を持った鉱物等は一切検知できない。
「どうなってやがるッ?」
そんな呟きが思わず口から漏れる。そして、再度、背後の騎士をチラリと振り返って更に度肝抜かれることになった。
天井を走っていたゴーレム騎士の一体が、走りながらピョンとジャンプすると、まるで砲弾のように凄まじい勢いで頭を進行方向に向けたまま宙を飛んできたのである。
「んなっ!? くそったれ!」
ハジメは驚愕しながらドンナーを連続して発砲、放たれた弾丸は閃光となって飛んできたゴーレムの兜と肩を破壊した。騎士ゴーレムは頭部と胴体が別れ、更に大剣と盾を手放す。しかし、それらは地面に落ちることなく、そのままハジメ達に向かって突っ込んできた。
「回避ッ!」
「んっ」
「うぅ〜ッ!」
「わきゃ!」
猛烈な勢いで迫ってきた騎士ゴーレムの頭部、胴体、大剣、盾を屈んだり跳躍したり、時には
その中で、ハジメ達を通り過ぎたゴーレムの残骸は、そのまま勢いを減じることなく壁や天井、床に激突しながら前方へと転がっていった。
「おいおい、あれじゃまるで……」
「ん……“落ちた”みたい」
「重力さんが適当な仕事してるのですね、わかります」
「ふしぎぃ〜ッ」
まさしくふしぎ。それはユエやシアの言葉が一番しっくりくる表現だった。
どうやら騎士ゴーレム達は重力を操作する事ができるらしい。
なぜ、前回は使わなかったのかは不明だが、もしかすると部屋から先の、この通路以降でなければ発動しなかったギミックなのかもしれない。
そんな推測も、ゴーレム達がこぞってハジメ達に“落下”してきたことで中断された。
中には大剣を風車のように回転させながら迫ってくる猛者もいる。ハジメ達は、銃撃や“破断”で遠距離攻撃しつつ、接近してきたものはシアとナナキが打ち払い、足を止めることなく先へ進んで行く。
ゴーレムの雨あられを乗り越え、駆け抜けること五分。視線の先に通路の終わりが見えた。
通路の先は巨大な空間が広がっているようであり、道自体は途切れ、十メートルほど先に立方体の足場が見える。
「お前らッ跳ぶぞ!」
ハジメの掛け声に頷くユエ、ナナキ、シア。背後からは依然、ゴーレム達が落下してくる。それらを迎撃し、躱しながらハジメ達は通路端から勢いよく飛び出した。
身体強化でオリンピック選手並みの跳躍を見せたハジメ達四人は、無事その立方体へと着地するが、
ハジメ達が乗った瞬間、その立方体がひとりでに上昇する。
「何ッ!?」
咄嗟に振り落とされないよう姿勢を低くする四人。しかし意外にもゆっくりとした上昇に安堵し、周囲を見渡す。
その空間は、黒光りする大小様々な立方体が宙を縦横無尽に漂う不思議な空間だった。
「ますますラ●ュタじみて来たな……」
その光景を見てハジメが、この迷宮に入って初日に感じた所感に再び耽入っていると……
次第にハジメ達が乗っている立方体が頭上に鎮座していた一際巨大な、それこそハジメ達の乗る立方体の数百倍は大きい立方体へと近づいていく。
そして、その立方体の上まで出ると、
そこに鎮座していた存在が目に入る。
「おいおい、まじかよ……」
それは、超巨大な騎士型ゴーレムだった。
纏う全身甲冑は先程の量産型騎士たちのスリムなものより
ずんぐりとした如何にも親玉といった体型で、全長が二十メートル弱はある。右手はナックル、左手には鎖がジャラジャラと巻きついていて、フレイル型のモーニングスターを装備している。
兜の隙間からは青白い光がギュピーンッと光り、まるでハジメたちを睥睨しているようだ。
「すごく……大きい……」
「ま、まさに親玉って奴ですね……」
「おぉ~、カッコイイ☆」
ハジメに続き、それぞれ驚嘆の声を漏らす三人。ナナキのみテンションがおかしいが、状況さえ違えばハジメも同じ事を思っていただろう。
巨大ロボは男の子のロマンである。テンションを上げるなと言う方が難しい。
だが、先ほども言った通り。今はロボにロマンを感じている状況ではない。
ハジメ達が目の前の大型騎士ゴーレムに身構えていると、先程まで追いかけてきていた量産型ゴーレム騎士達がヒュンヒュンと音を立てながら飛来する。
ハジメ達の周囲を囲むように並びだし、整列したゴーレム騎士達は胸の前で大剣を立てて構える。まるで王を前にして敬礼しているようだ。
「ナナキ、集中しろ」
キラキラ☆「はッ……う、うん!」
すっかり包囲されハジメ達の間にも緊張感が高まり、流石のナナキも周囲を囲まれたことで気持ちを切り替え、集中を上げる。
辺りに静寂が満ち、まさに一触即発の状況。動いた瞬間、命をベットしてゲーム……
『やほ~、はぁじめましてぇ~☆みんな大好きッ
ミレディ・ライセンちゃんだよぉ~』
「「「…………は?」」」
「うぅ?」
━━巨大ゴーレムのふざけた挨拶だった。
突然のことで周りを敵に囲まれてることも忘れ、ポカンと呆けたた顔をする四人。
『あれれ?聞こえなかったかなぁ〜?
それじゃあもう一度。
おっほん……
やっほぉ〜ッはっじめましてぇ〜☆みんな大好きッ
ミレディ・ライセンちゃんでぇ〜〜すッ!!』
反応がなかった為、今度はさっきよりも大きく、そして大袈裟な身振りをしてさっきと同じ言葉を繰り返す鉄巨人。
無論、ハジメ達とて聞こえていないわけじゃない。それ以前の問題として、目の前の光景が信じられなくて……
いや、信じたくなくて、この訳のわからん状況に理解が追ついいていないだけなのである。
しかし……こんな
「あ、はじめまひて!ナナキはナナキっていいます!
よろしくおねがします!」
そう、誰あろう我らが“ナナキ君”である。
舌っ足らずながらもとても礼儀正しく敬語を使い、ペコリッと頭を下げ尻尾が斜め45°にピーンッと伸びている。
『………………おぉ~!なんてしっかりした子なんだぁ〜!!こちらこそよろしくねぇ〜ナナキちゃ……いや君か!』
ここが戦場の只中とは思えない謎にほんわかパッパとした雰囲気が漂う。そればかりか、巨大ゴーレムと幼児が仲よさげに
「よろしく〜(^ν^)」と握手まで交わしている。
流石は“変質者”適応力が柔軟である。いや、ナナキ君は元々こういう子でした。シリアスブレイカー再びである。
『それに比べて……』
すると巨大ゴーレムは足元に寄って来ていたナナキから、未だにその場に立ち尽くすハジメ達へと視線を移す。
『そっちの君達ぃ〜ッ何を突っ立っているんだい?挨拶をされたら挨拶で返す。これ最低限の礼儀のはずだよ? 常識って知ってる?全く、これだから最近の若者は……この小さな少年を見習いたまえよ』
(((ムカッ)))
どこか既視感のある実にイラッとした言い草である。
巨大ゴーレムはその後も、やたらと人間臭い動きで「やれやれだぜ」と言う様に肩を竦める仕草までして見せた。
それにますますイライラッとするハジメ達。
既視感の正体。それは道中でさんざっぱら見せ続けられたあのウザイ文だ。目の前の本人の態度からして、この巨大ゴーレムがあの文を映し出した張本人である事は、まず間違いないだろう。
しかし……巨大ゴーレムは自身を
“ミレディ・ライセン”と名乗った。
確かに、あの文を書いたのはミレディ某だと決めつけていたのはハジメ達自身だ。
だが、そのミレディは何百年以上前の人物。すでに故人の筈だ。ましてや彼女は人間で、こんなアル●ォンス擬きでは断じて無い。オスカーの手記にもそのように記されている。
いつの間にかナナキを掌に抱えて『へいへ〜いッ』とウザイ動きでこちらを挑発してくる巨大ゴーレム。(と、そのリズムに合わせてなぜか一緒になって腰を振るナナキ。)
そんな奴に対するイライラを今はなんとか抑え、そのへんの事実確認を探るため、ハジメは目の前のデカブツに声をかけた。
「あ”〜、そいつは悪かったな。だが、ミレディ・ライセンは人間で故人のはずだろ? まして、自我を持つゴーレム何て聞いたことないんでな……目論見通り驚いてやったんだから許せ。そして、お前が何者か説明しろ。簡潔にな……
……あと、俺の弟に気安く触れんなカスッ」
『いや口悪ッ!!しかもコイツ、こんな状況なのに物凄く偉そうなんですけどぉ〜!?』
全く探りになってなかった。むしろド直球だった。そもそもイライラも、ついでにブラコンも抑えられていなかった。
流石に、この反応は予想外だったのかミレディを名乗る巨体ゴーレムは若干戸惑ったような様子を見せる。渋々というふうに、掌のナナキを地面にせこせこと降ろした後、直ぐに持ち直すと、人間なら絶対にニヤニヤしているであろうと容易に想像付くような声音でハジメ達に話しかけた。
『ん~それでえっと何だっけ? ミレディさんの正体?はてはて?ミレディさんは初めからゴーレムさんですよぉ~何を持って人間だなんて……』
「とぼけんな。オスカーの手記にお前のことも少し書いてあった。きちんと人間の女として出てきてたぞ? というか阿呆な問答をする気はない。簡潔にっ言っただろう。どうせ立ち塞がる気なんだろうから、やることは変わらん。お前をスクラップにして先に進む。だから、その前にガタガタ騒いでないで、吐くもん吐けポンコツ」
『お、おおう。久しぶりの会話に内心、狂喜乱舞している私に何たる言い様。っていうかオスカーって言った? もしかして、君等、オーちゃんの迷宮の攻略者?』
「ああ、オスカー・オルクスの迷宮なら攻略した。というか質問しているのはこちらだ。答える気がないなら、戦闘に入るぞ? 別にどうしても知りたい事ってわけじゃない。俺達の目的は神代魔法だけだからな」
ハジメがドンナーを巨大ゴーレムに向ける。ユエはすまし顔で、ナナキはハジメが目の前のロボを壊す方針でいくと悟り、少し残念そうにしょんぼりする。シアの方は「うわ~、ブレないなぁ~」と感心半分呆れ半分でハジメを見ていた。
『……神代魔法ねぇ、それってやっぱり、神殺しのためかな? あのクソ野郎共を滅殺してくれるのかな? オーちゃんの迷宮攻略者なら事情は理解してるよね?』
「質問しているのはこちらだと言ったはずだ。答えて欲しけりゃ、先にこちらの質問に答えろ」
『こいつぅ~ホントに偉そうだなぁ~、そっちの弟くんの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいよ。まぁ、いいけどさぁ~、えっと何だっけ……ああ、私の正体だったね。うぅ~ん』
「簡潔にな。オスカー奴みたいに長い説明はいらねぇぞ。あんまりダラダラ話されたら眠っちまう奴がこっちに
「………………あの、ハジメさんその二人のうち一人はナナちゃんだってわかりますがもう一人は?まさか私じゃ無いですよね?ね!?」
『あはは、確かに、オーちゃんは話が長かったねぇ~、理屈屋だったしねぇ~』
ナチュラルにイジられたシアの「ちょっとぉ〜ッ!!」と劈くような文句をスルーして、巨大ゴーレムはどこか懐かしむように天を仰ぐ。
『うん、要望通りに簡潔に言うとね。
私は、確かにミレディ・ライセンだよ
ゴーレムの不思議は全て神代魔法で解決!
もっと詳しく知りたければ見事、私を倒してみよ! って感じかな』
「結局、説明になってねぇ……」
『ははは、そりゃ、攻略する前に情報なんて貰えるわけないじゃん? 迷宮の意味ないでしょ?』
今度は巨大なゴーレムの指でメッ! をするミレディ・ゴーレム。これで彼女がミレディ本人であることは確定する。
しかし、肝心の説明の中身は何も分からなかった。強いて言えば、目の前のミレディの状態は、降霊術師の降霊術の残留思念を残すだけの魔法とは明らかにレベルが違うという事。
よって、ミレディの今の状態は何らかの神代魔法によるものだとハジメは推測する。
いずれにしろ、自分が探す世界を超える魔法ではなさそうだと、ハジメは少し落胆した様子で巨大ゴーレム改めミレディ・ゴーレムに問い掛けた。
「お前の神代魔法は、残留思念に関わるものなのか? だとしたら、ここには用がないんだがなぁ」
『ん~? その様子じゃ、何か目当ての神代魔法があるのかな? ちなみに、私の神代魔法は別物だよぉ~、魂の定着の方はラーくんに手伝ってもらっただけだしぃ~』
ハジメ達の目的はあくまで世界を越えて故郷へ帰ること。魂だとか思念だとか……それに関する魔法を得ても意味がない。そう思っての質問だったがどうやら話はそう単純では無いらしい。
“ラーくん”恐らく解放者の誰かの神代魔法が、ミレディの魂をゴーレムに定着させたのだろう。よってミレディの持つ神代魔法はまた別の代物という事だ。
ならばとハジメは再び、ミレディの持つ神代魔法を聞き出そうと質問を繰り返すが……。
『ん~ん~、知りたい? そんなに知りたいのかなぁ?』
(((ムカムカッ)))
再びニヤついた声音で話しかけるミレディに、またもイラっとしつつ返答を待つハジメ。
『知りたいならぁ~、
その前に今度はこっちの質問に答えなよ』
最後の言葉だけ、いきなり声音が変わった。今までの軽薄な雰囲気がなりを潜め真剣さを帯びる。その雰囲気の変化に少し驚くハジメ達。ナナキの本能が何かを察知するように尻尾をピクリッと動かす。ハジメも表情には出さずに問い返す。
「なんだ?」
『目的は何? 何のために神代魔法を求める?』
嘘偽りは許さないという意思が込められた声音で、ふざけた雰囲気など微塵もなく問いかけるミレディ。もしかすると、本来の彼女はこちらの方なのかもしれない。
思えば、彼女も大衆のために神に挑んだ者。自らが託した魔法で何を為す気なのか知らないわけにはいかないのだろう。オスカーが記録映像を遺言として残したのと違い、何百年もの間、意思を持った状態で迷宮の奥深くで挑戦者を待ち続けるというのは、ある意味拷問ではない。軽薄な態度はブラフで、本当の彼女は凄まじい程の忍耐と意志、そして責任感を持っている人なのかもしれない。
ユエも同じことを思ったのか、先程までとは違う眼差しでミレディ・ゴーレムを見ている。深い闇の底でたった一人という苦しみはユエもよく知っている。だからこそ、ミレディが意思を残したまま闇の底に留まったという決断に、共感以上の何かを感じたようだ。
ハジメは、ミレディ・ゴーレムの眼光を真っ直ぐに見返しながら嘘偽りない言葉を返す。
「俺達の目的は故郷に帰ることだ。俺と弟は元はこことは別の世界の住人でな、お前等のいう狂った神とやらに弟共々、無理やりこの世界に連れてこられたんだ。
だから、元の世界に帰る為に世界を超えて転移できる神代魔法を探している……
お前等の代わりに神の討伐を目的としているわけじゃない。この世界のために命を賭けるつもりは毛頭ない」
ハジメは、ミレディの言う通り洗いざらい全て話した。そんな中で意趣返しとして、解放者達が望んでいるだろう神の打倒。その件には一切関わるつもりはない事を真正面から言い放つ。
そうして、ハジメの答えを聞いたミレディの反応は……
「……別の……世界……ッ」
これだった。
……ハジメの答えにミレディ・ゴーレムは余裕が無くなったように僅かにたじろぐ。
そりゃあ、別の世界と聞いて普通は驚くだろう。それに関して言えば、彼女の反応は至って正常だ。
しかし、さっきのミレディの態度は、そんな所とは別の場所に反応しているように感じる。よもや、神の打倒に協力しない意思を見せられて取り乱したかとも思ったが、そういうものでも断じてない。
ならミレディは、何に対して驚いて……いや慄いているのか……。
そうして僅かに訝しんだハジメの目が、ミレディ・ゴーレムの眼光が一瞬、
「おい、テメ━━
『そぉっかそっかそっか。うん!なるほどねぇ〜
別の世界からねぇ~。うんうん。それは大変だよねぇ~
よし、ならば戦争だ! 見事、この私を打ち破って、神代魔法を手にするがいい!』
ハジメの声を覆い隠すように、急にミレディはさっきまでの軽薄な雰囲気に戻り、怒涛の勢いで捲し立てる。
「は、ちょっと待て。脈絡なさすぎて意味不明なんだが……それよりもテメェ……今ナナキを━━━ッ!?」
ズガァアアアアアアアアンッ!!
ハジメが言い切る前に、いつの間にか赤熱化していた右腕のナックルの熱拳がハジメたちへと炸裂する。咄嗟だったがこれまでの経験から難なくその場を跳び退いたハジメ達四人。
「てんめぇ……ッ」
仮にも迷宮のボスが
しかし、そんなハジメの圧にも怯まず、ミレディ・ゴーレムは足場の地面にめり込んだ拳をゆっくり引き抜き、悠然と立ち上がったあと、その兜の隙間から覗く眼光が一際ギュピーンッと光る。
『もう、おしゃべりなんてしてる暇はないよ。君の知りたいことも、私の持っている神代魔法も、結局はここで私に敗れたら何も手に入らないんだから……。』
完全に空気が変わったミレディ・ゴーレム。既に彼女は戦闘態勢に入り、周囲を囲む量産型ゴーレムもそれぞれ武器の切っ先をハジメ達に向ける。
『話は至ってシンプルだ。ここで勝てなきゃ、君達の望みは潰える。理不尽と思うかもだけどぉ〜ゴメンねぇ。
でもいきなり不意打ちなんて、君達がこれから被るであろう理不尽と比べたら大したことはないよ……。あッ!そもそも、ここで死んじゃったらこれからも何もないんだったぁ〜!ほんとゴメンね〜ミレディちゃんが理不尽すぎるくらい強くてかわいいせいで君たちの未来を閉ざしちゃってぇ〜』
(((ムカムカムカッ)))
「うぅ?……かわ……いい?」
かと、思えば後半。再びのウザイ態度と台詞が飛び出す。見た目ゴツいゴーレムが人差し指を顎に当てくねくね動くさまは、声はともかくキモい以外何ものでもない。
ナナキは首を傾げ、他三人はいい加減我慢の限界だった。
「上等だ……。お望み通り、この場で全部スクラップにしてやんよ。このポンコツどもが!!ッ」
そう吠えると共に、ハジメは宝物庫からオルカンを取り出し、無数のロケット弾をぶっぱす。火花の尾を引く破壊の嵐が真っ直ぐにミレディ・ゴーレム含めゴーレム集団へと突き進み直撃する。
ズドドドドドドドォォオオンッ!!
凄絶な爆音が空間全体を振動させながら響き渡る。もうもうとたつ爆煙。
手応えはあった。しかしそれは周囲の量産型のみ、肝心のミレディは……。
『やってくれるねぇ〜。すごい威力だ。』
そんな声と共に、赤熱化した右腕が爆煙の奥からボバッと音を立てながら現れると横薙ぎに振るわれ煙が吹き散らされる。
両腕の前腕部を少し砕かれた程度で大して堪えた様子は見られない。しかも、それだけじゃない。
ミレディ・ゴーレムは近くに漂っていた立方体のブロックの一つを引き寄せると、それを砕きそのまま欠けた両腕の材料にして再構成し、修復させた。
『でもまぁ、この通り。私もそれなりに強いから……
……死なない程度に頑張り給えよ』
そう言って修復させた腕を見せつけるように拳をワキワキと開閉させるミレディ。
「やるぞ!
お前等ッミレディを破壊する!」
「んっ!」
「了解ですぅ!」
「あぁいッ!」
こちらを睥睨するミレディの眼光を睨み返し、ハジメは掛け声を上げる。
それを合図にして。
七大迷宮が一つ、ライセン大迷宮最後の戦いが幕を開けた。
すんません、もう1話掛かります。今夜あげます
あと、ナナキ君ってネットミームの
トララレロ・トラララってやつに似てるなぁ〜って思ってたら
ロス・トララリートス・ディセン・トラララ!ってもっと似てるやつ出てきて草生えた。wwwwww
あのミーム……謎すぎてなんか怖い。
そこがなんか癖になるけど……