世界最強の弟はとってもカワイイサメ人間   作:翁月 多々良

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 最近、夢絵ってのを漁って見たり、自分で描くのにハマってます。


第34話∶初めまして馬車!ぶらり旅 その1

 

 ハジメ達がキャサリンに最後の世話焼きを受けながら見送られて数時間後の正午。

 

 

 「お、おい、まさか追加の四人って“スマ・ラヴ”なのか!?」

 

 

 正面門にやって来たハジメ達を迎えたのは商隊のまとめ役と他の護衛依頼を受けた冒険者達だった。まとめ役らしき人物と十四人の冒険者が、最後にやって来たハジメ達を見て一斉にざわついた。

 ところで、先ほど聞こえてきた“スマ・ラヴ”というのは、いつの間にか浸透していたハジメ達のパーティー名

 “スマッシュ・ラヴァーズ”の略称である。

 言い寄る男達の“男”を尽く終わらせてきた(・・・・・・)“股間スマッシャー”たるユエ。

 ユエに言い寄る勇気のない男共からの決闘を尽く粉砕してきた“決闘スマッシャー”たるハジメ。

 

 そして、

 そんな2人の寵愛を一身に受け、愛されている幼子。

 

 ユエどころかハジメにすら立ち向かう勇気のない者どもが邪な感情で外堀を埋めるために、取り入ろうと近づいてきた傍から、その愛くるしいくも健気で真摯で純粋な仕草で尽くを浄化してきた(よこしま)スマッシャー”たるナナキ。

 

 そのような出来事から、彼等のパーティーはこの町ではまたたく間に一目置かれる存在となったのである。それによりギルドでパーティー名を申請してもいないのにも関わらず、周囲から“スマ・ラヴ”という総称が浸透してしまう結果となったのだった。

 

 ちなみに、自分の存在感が薄いとシアが涙したのは余談である。

 

 「マジかよ! ホントにスマ・ラヴだ!!嬉しさと恐怖が一緒くたに襲ってくるんですけど!」

 

 命名の経緯が経緯なだけに、ハジメ達スマ・ラヴは憧れと同時に恐れられてもいる。しかし──

 

 「おいあそこ!エンジェルも居るぞ!」

 「おお!スマ・ラヴの唯一の良心!」

 

 ナナキに向けられる眼差しだけは少し違う。ハジメ達へ向けられる畏怖と羨望ではなく、尊敬やどこか神聖視するような視線だ。

 それもそのはず、ナナキに近づいた者たちはハジメやユエと違ってそのすべてが無事に生還を果たしている。

それどころか浄化されたことによりどんなにヒャッハーな見た目のチンピラでも、次の日には頭を丸め道のゴミ拾いや老人への親切などの地域貢献に尽力するほどの更生を見せている(※これらはナナキきゅんを産みたいとはまた別口の集団である。)

 

………これはこれでまた別種の恐怖現象ではあるが。

 

 まぁどっちみち、ナナキの存在によってブルックの町の治安は10%程改善されたのは事実。

 その功績とナナキの普段の愛くるしく(ハジメ達とは違って)良心的な振る舞いが、彼らにナナキを神聖視させるに至ったのだ。故に、ナナキには『邪スマッシャー』とは別にエンジェルという二つ名が付けられ、呼びやすいことからこちらの方がより多く呼ばれ定着する事になったのだ。

 

 「おぉ神よ。かのプリティ〜な男の子に出会えたことに感謝します。」

 「ありがたやありがたや〜〜」

 「見ろよ、俺の手。さっきから震えが止まらないんだぜ?」

 「いや、それはお前がアル中だからだろ?」

 

 そうして正面門前の広場では、ユエ、シア、ナナキの登場に喜びを顕にする者、股間を両手で隠し涙目になる者、純粋過ぎるが故に溢れ出る神聖さを前に祈り始める者、手の震えをハジメ達のせいにして仲間にツッコミを入れられる者など様々な反応だ。ハジメが、嫌そうな表情をしながら近寄ると、商隊のまとめ役らしき人物が声をかけた。

 

 「君達が最後の護衛かね?」

 

 「ああ、これが依頼書だ」

 

 ハジメは、懐から取り出した依頼書を見せる。それを確認して、まとめ役の男は納得したように頷き、自己紹介を始めた。

 

 「私の名はモットー・ユンケル。この商隊のリーダーをしている。君達のランクは未だ青だそうだが、キャサリンさんからは大変優秀な冒険者と聞いている。道中の護衛は期待させてもらうよ」

 

 「もっと?」

 「ユンケル? ……商隊のリーダーっても大変なんだなぁ〜……」

 「うん、たまにはおやすみがだいじだよ!」

 

 「え、えぇまぁ。お言葉はありがたいのだが……(なぜ唐突に私はこんなにも気遣われているのだろう……)」

 

 日本のとある栄養ドリンクを思い出させる名前に、ハジメの眼が同情を帯びる。ナナキに至っては、傍に近づいてきてポンポンと無遠慮にお腹あたりを撫でてきて労っている。

なぜ、初対面でこんな親切にしてくるのか分からないモットーは首を傾げながら、「まぁ、大変だが慣れたものだよ」と苦笑い気味に返し、お腹を撫でてくれたナナキにも一応感謝の気持ちとして頭を撫で返した。

 

 「まぁ、期待は裏切らないと思うぞ。俺がハジメで、こっちはユエとシアそして義弟(おとうと)のナナキだ。」

 

 そうしてこちらも滞りなく自己紹介を済ませるハジメ。

そして名義上ユエの弟ということになっているナナキを紹介するときの注意も忘れない。仮名エァーミートを装着しているナナキはしっかりユエとそっくりの外見になっている。音としては『おとうと』とちゃんと呼んでいるが、ニュアンスを義弟よりにしっかりと発音している。それでも頑なに『おとうと』と呼ぶことでナナキがボロを出さないよう対策もバッチリである。

 

 「ナナキっていいます!あにぃと、ユエあねぇの、おとうとです!……しっかりとおじさんの……えっとぉ……ご、ごえい?をがんばりります!……よろしくおねねします!」

 

 ハジメの紹介に合わせて、ナナキも元気に自己紹介をした後、今回の依頼に対する意気込みを述べ綺麗なお辞儀を決めていた。途中ちょっと語彙が怪しかったが、実際ナナキの実力もハジメ達同様評判であるため、ちょっと舌っ足らずなくらいで依頼に差し支えることはないだろう。

 モットーも「おぉそれは頼もしいな」と微笑ましくはしながらも、ちゃんとハジメ達を頼りにしている様子だ。

 

 「……ところで、そこの兎人族……売るつもりはないかね? それなりの値段を付けさせてもらうが」

 

 すると突然、モットーの視線が値踏みするようにシアに向けられる。兎人族で青みがかった白髪の超がつく美少女だ。商人の性として、珍しい商品に口を出さずにはいられないということか。首輪から奴隷と判断し、即行で所有者たるハジメに売買交渉を持ちかけるあたり、きっと優秀な商人なのだろう。

 

 その視線を受けて、シアが「うっ」と嫌そうに唸りハジメの背後にそそっと隠れる。ユエのモットーを見る視線が厳しい。だが、一般的な認識として樹海の外にいる亜人族とは、すなわち奴隷であり、珍しい奴隷の売買交渉を申し出るのは商人として当たり前のことだ。モットーが責められるいわれはない。

 

 ………本来であれば……

 

 

 「うぅ?おじさん。なにいってるの?」

 

 だが、そう言った常識を理解していない……いや知らない人物がここに一人。

 

 「シアはもの(・・)じゃないから、うれないんだよ?ナナキのだいじなおともだちなのぉ〜ッ」

 「な、ナナちゃん……。」

 

 そう、純粋無垢の化身。ナナキくんである。

 

 彼はこの世界に来てからずっとハイリヒの城内で過ごしていた。

無理もない。当時の彼は何の力も持たない弱者だった上に、障害を持っている事で周囲の善意ある人々から普通の幼子よりも慎重かつ丁寧に扱われていた。故に外出なぞ当然できるはずも無く、監禁にも近い生活を送っていた。

 それにより、この世界の常識……暗い面を知る機会は減り、今現在ハジメ達と行動を共にするようになっても、過保護な彼らにそう言った危うい知識から遠ざけられて来た。

 唯一ライセン大峡谷で遭遇した奴隷狩りをしていた帝国兵がその暗い面の常識を知る機会だったのだが……

ナナキにとってあれは『弱いものいじめをしている』という分かりやすい構図しか見えていなかった。

 

 よってナナキは、今この時に至るまで『奴隷』という概念やそこから付随するこの世界の暗い常識。『奴隷は売り買いされる()である』という事柄を理解していなかったのだ。

 

 シア前に出て、まるで間違っていることを教えている様な感覚でモットーへと声をかけるナナキ。

 そのナナキの様子に目を丸くするモットーが、再びハジメへと視線を戻す。

 

 「ほぉ、なるほど。弟子(おとうとご)とも関係は良好。そちらの兎人族も随分と皆様に懐いている様子……。中々、大事にされておられますなぁ。ならば、私の方もそれなりに勉強させてもらいますが、いかがです?」

 

 大凡この世界の常識とはズレたナナキの行動と、シアの様子を興味深そうに見ていたモットーが更にハジメに交渉を持ちかけるが……

 「ま、あんたはそこそこ優秀な商人のようだし……答えはわかるだろ?」

 

 ハジメの対応はあっさりしたものである。モットーも、実はハジメ達が手放さないだろうとは感じていたが、それでもシアが生み出すであろう利益は魅力的だったので、何か交渉材料はないかと会話を引き伸ばそうとする。

 だが、そんな意図もハジメは読んでいたのだろう。やはりあっさりしているが、揺るぎない意志を込めた言葉をモットーに告げる。

 

 「例え、どこぞの神が欲しても手放す気はないな……理解してもらえたか?」

 

 「…………えぇ、それはもう。仕方ありませんな。ここは引き下がりましょう。ですが、その気になったときは是非、我がユンケル商会をご贔屓に願いますよ。それと、もう間も無く出発です。護衛の詳細は、そちらのリーダーとお願いします」

 

 ハジメの発言は相当危険なものだった。下手をすれば聖教教会から異端の烙印を押されかねない発言。一応直接、聖教教会にケンカを売る言葉ではない。それでもギリギリの発言であることに変わりはない。

 それ故に、モットーはハジメがシアを手放すことはないと心底理解させられた。

 

 すごすごと商隊の方へ戻るモットー。その後ろ姿を先程のしつこく交渉しようとしたモットーに些か不機嫌になったナナキがぷんすことほっぺを膨らませながら睨んでいた。

 一応依頼者な為、直接何か文句を言う事はなかったが、今のでナナキの中のモットーの評価は最底値へと落ち込んだようだとハジメは感じていた。

 

 そんな弟とモットーの様子をハジメが見ていると、周囲が再びざわついている事に気がついた。

 

 「すげぇ……女一人のために、あそこまで言うか……痺れるぜ!」

 「流石、決闘スマッシャーと言ったところか。自分の女に手を出すやつには容赦しない……ふっ、漢だぜ」

 「エンジェルもだ。その無限の愛と優しさは種族問わず振りまかれるのか……なんと神々しぃ……。」

 「おぉう、ありがたや〜ありがたや〜ッ」

 「いいわねぇ~、決闘スマッシャー……私もあんな男に一度くらいはああ言う事を言われてみたいわぁ〜」

 「いや、お前、男だろ? 誰が、そんなことッあ、すまん、謝るからっやめっアッーー!!」

 

 そんな愉快?な護衛仲間の愉快な発言に頭痛を感じたように手で頭を抑えるハジメ。やっぱりブルックの町の奴らは阿呆ばっかだと……。

 

 そんな時に、突如背中に何やら“むにゅう”と柔らかい感触を感じ、更に腕が背後から回されハジメを抱きしめてくる。

 ハジメが肩越しに振り返ると、肩に顎を乗せたシアの顔が至近距離に見えた。その顔は真っ赤に染まっており、実に嬉しそうに緩んでいる。

 

 「……いいか? 特別な意味はないからな? 勘違いするなよ?」

 

 「うふふふ、わかってますよぉ~、うふふふ~」

 

 あくまで身内を捨てるような真似はしないという意味であって、周りで騒いでいるヤツ等のように“自分の女”だからという意味ではないとはっきり告げるハジメ。

しかし、シアにはまるで伝わっていない。むしろ惚れた男から“神にだって渡さない”とまで宣言されたのだ。どのような意図で為された発言であれ、嬉しいものは嬉しいのだろう。

 

 今度はそんなシアの腰にむぎゅッとしがみつく感触を覚え、ゆるゆるだったシアはそちらに視線を向ける。

 

 「シア?だいじょ〜ぶ?」

 

 それはシアの事を心配したナナキだった。シアは当然この弟の様に思っている少年にも感謝している。いの一番にその小さすぎる背中で自分を庇うために前へと出た姿は、微笑ましさ以上にハジメと同等の頼もしさを感じ、普段はあまり似ていないのに(・・・・・・・)やはり兄弟なんだなぁ〜としみじみと感じさせた。

 

 「えぇ、私はだいじょ〜ぶですよ!平気へっちゃらです!」 

 

 そう言ってシアは一旦ハジメから離れると、自分の腰にあるふわふわな髪が生える小さな頭へ手を乗せる。

 

 「ナナちゃんも、私の為に声を上げてくれて立派でしたよ?ありがとうございますですぅ〜!」

 

 「……へへッ」

 

 そんな微笑ましい様子の2人を眺めながらハジメは思う。手っ取り早く交渉を打ち切るための発言が、いろんな意味で“やりすぎ”だった事に、少しやっちまった感を出す。そこへユエが、トコトコとハジメの傍に寄って行くと、ハジメの袖をクイクイと引っぱった。

 

 「? 何だユエ?」

 「ん……カッコよかったから大丈夫」

 

 「……慰めありがとよ」

 

 ハジメの心情を察し、慰めるユエに、ハジメは感謝の言葉を告げながら優しく頬を撫でた。気持ちよさそうに目を細めるユエ。

 

 正午の正門前、多数の人間がいる中で、背後に幸せそうなウサミミ美少女を侍らせ、右手には金髪紅眼のこれまた美少女を纏わりつかせる男、南雲ハジメ。そしてそんな彼らの周りをちょこちょこと動き回る(今は)金髪紅眼の可愛らしい美幼年、南雲ナナキ

 

 商隊の女性陣は生暖かい眼差しで、男性陣は死んだ魚のような眼差しでその光景を見つめる。ハジメに突き刺さる煩わしい視線や言葉は、きっと彼の自業自得である。

 

 

 

  ◇

 

 

 

 「ふおおお〜!たかいたかい!!」

 「ふふ、ナナキ落ち着いて……はしゃぎすぎたら危ない。」

 

 ブルックの町から中立商業都市フューレンまでは馬車で約六日の距離がある。

 

 日の出前に出発し、日が沈む前に野営の準備に入る。それを繰り返すこと三回目。ハジメ達は、フューレンまで三日の位置まで来ていた。道程はあと半分である。ここまで特に何事もなく順調に進んで来た。ハジメ達は、隊の後方を預かっているのだが実にのどかなものである。

 

 そして今、ナナキはユエと一緒に馬に乗っている。元々この商隊に付いていく理由の一つ。ナナキを馬に乗せてあげるという目的を、現在進行系で達成中である。

 

 ハジメ一行の中で完璧に乗馬をこなせるのは元王族のユエのみだ。シアは言わずもがな、ハジメも一応王国にいた頃訓練で乗馬自体の経験はあるのだが、如何せん才能の無さか?馬に舐められていたのかは定かではないがあまり上手くいった試しがない。気持ち的にはハジメも一緒に乗りたい思いでいっぱいなのだが、恋人と弟にあまり無様を晒したくないのか、周囲の警戒のためとそれらしい理由をつけて自ら乗馬を辞退していた。

 

 「パカラッパカラッパカラァ〜♪」

 「ナナキ……お尻はしっかりと下ろして。馬の身体を足で挟むようにして座って……でないと落ちて怪我したゃうから」

 

 ナナキが馬に乗るのはこれで三日目。それでも興奮は収まらないのか、緩やかな足取りな上に何度乗っていても、まるで初めて乗ったときのようなテンションを維持している。共に乗るユエもしっかりとナナキに注意しつつもその表情は柔らかい。時を経て彼女もすっかりとブラコンの仲間入りを果たしたという事だろう。かわいい弟の微笑ましい姿に目を細め慈愛に満ちた視線を送っている。

 

 「あ!トリさん!」

 

 ナナキがテンションが高い理由の一つにこの大自然もあるだろう。現代社会の地球に生きていればまずめったに体験することのない自然の息吹。ハルツェナ樹海も当然大自然ではあったが濃い霧によってあまり見晴らしのいいものではなかったし、唯一大自然の景色を楽しめたであろうフェアベルゲンでは、最初ナナキは眠っていた上に、帰りは追放による即時退散だった為景色を満喫する暇もなかった。

 故に、乗馬を楽しみながら周囲の大自然も拝めるこの遊覧の旅はナナキにとってとても新鮮で楽しいものだった。テンションが上がらないほうがおかしいだろう。

 

 「おいで〜!」

 

 そうナナキが声をかけ、空へ手を伸ばすと数羽の鳥がナナキの元へと降りてくる。その種類は様々で、スズメやツバメに似たかわいらしい小鳥から鷹や鷲と言った大きくかっこいい猛禽類目の様な鳥までやってくる。本来そんな小鳥と獰猛な猛禽類が一緒にいれば即食べられてしまいそうだが、何故かそのような事にならず、すべてナナキの元で仲よさげに囀っている。

 

 「ふふふッくすぐったいよ〜……うぅ?ツバメさんはおうたがじょうずなの?ナナキもね、おうたとおどりがだいすきなんだよ!……

 おぉ!わしさんはここのもりのボスなんだ!かっこいい〜!

 うぅ?はやぶささんはこのもりでいちばんはやくとべるの?しゅごいしゅごい!!う?あ、まってまってはやぶささん、たかさんケンカしちゃダメだよぉ〜」

 

 馬の上、ナナキの肩や膝、頭の上にたくさん止まる鳥とナナキがキャッキャウフフと会話(・・)に花を咲かせている。とってもメルヘンな光景だ。そんなまるでおとぎ話の絵本からそのまま出てきたような光景を目の当たりにしたハジメ達は……

 

 

 

 「……ハジメ…………」

 「……なんだ、ユエ………」

 

 

 

 

 「……たすけて……」

 「……そりゃこっちのセリフだ……」

 

 

 

 尊死寸前だった。

 

 「まずいですぅ〜ッなんなんですかあの生き物?天使ですか?天使なんですか?」

 「うるせぇッ!!んなわかりきったことを聞いてくんな!天使に決まってんだろぉ!!」

 「ん…………口の中噛みすぎて……もうヤバい」

 

 ハジメ達は、ナナキが何かしらのアクションを起こすたび心の臓にズドォンッとした重い衝撃を受け続けていた。

 

 しかし今は依頼中、ナナキの可愛さに当てられ今にも気絶してしまいたい衝動を抑える為に、ハジメは義手の方の腕で己の顔を殴りまくり、シアは自分のうさ耳で自らの首を絞め上げ、ユエに至ってはわざわざ“自動再生”と[+痛覚操作]を止めて自分の口の中をその鋭い犬歯で噛みまくって吐血を疑うレベルで口から血を流していた。

 緩やかな旅路で魔物からの敵襲もないのにも関わらず、ハジメ達は過去類を見ない満身創痍の状態に追い詰められていた。

 何とも平和すぎる危機的状況である。言ってるこっちが馬鹿みたいである。

 

 当然、ハジメ達のこの異様な光景を異常と捉える人間は───

 

 

 

 「かわ……いい……へへ可愛すぎる……へへ」

 「ぐへ、ぐへへへぐへへへぐぼぁあ

 「アカ〜ンなぁ〜んも考えられへん。アホになってきたぁ〜」

 「100点満点のかわいさですぅ〜」

 「心が綺麗になっていッきゅ〜」

 「あれぇ〜脳みそのシワが無くなったぽい〜?」

 「ありがたや〜ありがたや〜」

 「ばったんきゅ〜」

 

 残念ながら存在しなかった。

 一部のベテランな冒険者以外、ハジメ達を除いた有象無象の冒険者達は、ナナキのメルヘンな領域に耐え切れず使い物にならなくなっていた。現在は荷馬車に荷物として放り込まれている。そのベテランな冒険者達も、少しでも気を緩めたら持って行かれてしまう(何処に?)危うさがある。

 

 大した敵襲もない、ピンチとは無縁でのどかな日差しが差す穏やかすぎる遠征で、この商隊は既に壊滅間近にまで陥っていた。

 

 

 

 後にモットーは語る。このときの遠征が、(ある意味)過去一危険旅路であった……と。

 

 





 ちょっと駆け足気味だったかなぁ〜?
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