できるだけ毎日投稿したいけど、ある日突然眠たくなって、寝落ちして、結局投稿したかった時間に間に合わない。
そういうことってあるよね
あ、誤字報告ありがとうございます!
そして、ミミルル さん 魔人王ゲーティア さん
男前 さん 袖軍曹 さん 青龍@ さん 松風さん
仮面紳士アマオウ さん 栃木県FGO さん
Emerihhi さん コネコネ さん
新たに評価ありがとうございますm(_ _)m
いやぁ〜この作品をこれだけ評価してくれるなんて今でも信じられません。夢のようです!!
これからも頑張ります!!
結果だけを言えば……被害は……あった。
「畜生ッ!!あのサメ野郎、ウチの商品全部食い尽くしやがって!!」
「ただ飯よ!ただ飯!!商売上がったりだってのよッこっちは!!」
「騎士さん達ぃ!何とかしてくれよあのサメ!!」
「………………………………。」
全速力でホルアドに着いたと思ったら、町の人々から食い逃げ犯のサメをとっ捕まえてくれとせがまれている。
私、八重樫 雫です。
私達が全速力でホルアドに着いた頃には日が沈んでからかなりの時間が経とうとしていた。
そしてホルアドに着けば街灯の松明が照らす町中は人々の悲嘆の声で溢れかえっていた。
それを見て正直、間に合わなかったかッ……と、私や香織、メルドさん率いる騎士団の人達は思った。
しかし確認すれば、街の人達に “犠牲者は一人も出ていない” と報告があった。
その報告を聞いて、香織はつい「良かったぁ〜ッ!」と声を上げ地面に腰をへたり込む。
無理もない、現に私やメルドさん、騎士団の人達ですら、同様に表情を緩めている。一見、人的被害が皆無だったことへの安堵と捉えられるが、もちろんそうじゃない。いや……少しだけそれもあるけど。
でもやっぱり一番は、ナナキちゃんが人に手を出していないとわかった事に安心したのだ。これでひとまずは、人を襲う危険な魔物として優先的な討伐対象と定められることはなくなってひと安心。
だがその時、香織の「良かった」に反応してか、一人の男性が叫ぶ。
「良かっただぁ〜ッ!?良くなんかあるか馬鹿野郎!!うちの店の串焼き全部食い尽くされたんだぞ!!明日から俺はどうやって飯を食ってけばいいんだぁ!!」
あれは確か、迷宮攻略前に見かけた串焼き屋さんだ。怒りと絶望を織り混ぜたような顔で頭を抱え、こちらを怒鳴っている。
私達が、どういう事だ?と訝しむと、メルドさんにホルアド常勤の騎士の人が声を掛ける。
何でもサメ型の魔物もとい、ナナキちゃんは、人こそ襲わなかったものの、目のつく食品を扱う屋台に近寄っては店に並ぶ食材を、調理されているものから準備前のものまですべて順に食べ尽くしていったそうだ。
「……………。」
私達は今更だが思い出す。”変質者“は見た目と力こそ変質するもののその中身、心と人格までは変質しないということを……。
それを聞いて、どこまでもナナキちゃんらしいやらかしに、安心すればいいのか、頭を悩ませればいいのか、私達はまた何時ぞやの時のように微妙な顔になる。
そして今、串焼き屋のおじさんを筆頭に、被害にあった飲食店の人々に詰められているのが今の状況である。
まぁ、どのみちナナキちゃんが誰かを傷付けていないとわかっただけで僥倖だ。無銭飲食については、それはそれで大問題ではあったのだけど……。
「そういえば、ナ……ゴホンッ、そのサメ型の魔物は結局何処へ向かったのだ?」
「「!!?ッ」」
そうだった、私達はナナキちゃんが誰にも手を挙げてないことばかり気を取られて、いちばん大事なことを忘れていた。
実際辺りを見回してもそれらしい影は一つもない。ナナキちゃんは一体何処へ行ったのか?
メルドさんの質問にその常勤の騎士は答える。
「ハッ……それが、あらかたの食材を食い漁ると、オルクス大迷宮へと駆け込んでいきまして……」
「……やはり……そうか……。」
………やっぱり、ナナキちゃんがホルアドに向かった理由は、南雲君のところに行くためだった。
どうやってかはわからないけど、何らかの技能を使って南雲君の足跡を突き止めたのだろう。香織のように、南雲君が生きていると信じているのか、はたまた、ただ諦めきれないだけなのか……。
「己ぇ卑劣な魔物め!……メルドさん後を追いましょう!こんな蛮行は見逃しちゃおけません!!」
「いや……光輝、あのだな」
またも光輝が、よくわからない思い込みをしていたとき、ふと香織の声が響いた。
「やっぱり……そうなんだよ……南雲君は生きてるんだよ!!」
香織のあまりに唐突な発言に誰もが面食らう。
「か、香織?何故今南雲の話になるんだ?」
光輝のもっともな質問、しかし私は何となくだがその意図を理解する。
「サメってね鼻が良いのもあるんだけど、“電気感覚”って言う独特の感覚器官を備えてるの。だからナナk━━「あーッあーッ!!ちょっと待って香織!!」
案の定、香織は豊富な雑学に物を言わせて、ナナキちゃんの名前まで出して話そうとしていた。
事情がわかる光輝や騎士団ならともかく、実際に被害にあったホルアドの人達の前でする話ではない。
未だに
さて、路地裏へ移動した私たちは香織からの説明を受ける。
まず、サメには鼻が良い以外に、サメ固有の”電気感覚“またの名を“ロレンチー二器官”と呼ばれる器官が存在するということを聞く。
これは動物の筋肉が動くときに発生するとても微弱な磁場、電気信号を感じ取ることができるモノで、サメはコレと嗅覚をうまく利用して、砂の中に隠れる獲物を見つけたりするらしい。
同じサメの魔物であるナナキちゃんは、それらのサメ固有の能力にに加えて、異世界のチートパワーの上乗せでそれ以上の性能を持っている可能性がある。そう、例え迷宮の中だろうと生きた人間を、南雲君を察知できるかもしれない……ということらしい。
若干香織の願望が入っている気がしなくもないが、まぁ?たしかにそれならオルクス大迷宮までの道のりを知らないナナキちゃんがここまでやって来れた理由としては説明がつく……のかしら?
そこまで聞いた後、案の定光輝が「なぜここでナナキちゃんの名前が出る?」なんて聞いてきたもんだから改めて、今回の騒動を起こしたサメ型の魔物というのが、天職を覚醒させたナナキちゃんだということをしっかりと説明する。っていうかやっぱり理解してなかったわねコイツ……。
「そんな……ナナキちゃんがそんな事を……」
「まぁ……無理もねぇわな。あんだけ南雲のヤロウを慕ってたわけだからよ」
ようやく状況を理解した2人がそれぞれの反応を見せる。光輝は驚愕、龍太郎は納得?と言ったところかしら。
でも、私達も伊達に幼馴染をやってはいない。光輝のことだからこのあと、もう一悶着あるはず━━
「なら尚更!ナナキちゃんを追いかけるべきだ!街の人達の食料を勝手に食べて……許されることじゃないッ連れ戻して謝らせないと!」
━━だわって言い切る前にこれだ。そして光輝の言ったそれは、普通に考えて色々と無理がある。これだけの大事になったのだ。そもそも謝って済ませられる問題じゃない。それに……
「待て光輝、確かナナキの天職って〜と、何かヤバい奴なんだろ?こっちに戻ってくんのはまずいんじゃないのか?」
龍太郎が珍しくまともなことを言う。丁度いいので私もここに便乗する
「そうよ光輝、ナナキちゃんの天職。”変質者“は、教会で異端認定を受けてる。覚醒してなかった前までならいざ知らず、覚醒してしまった今、城に戻ればナナキちゃんがどういう扱いを受けるか、貴方だってわかるでしょ?」
実際にそういった陰口を言った貴族達を光輝自身が糾弾している。故に、光輝もこれについては一定の理解を示して━━
「?それはもう、陛下が諌めてくれたから心配ないんじゃないのか?」
━━は、いなかった。いや、なんでよ!と声を大にして言いたい所だけど、まぁ基本、人の善性を信じて疑わない光輝の事だから当然の反応かもしれない……。
光輝にとっては一度注意したから、あれで終わったと勘違いしている。
だが事実はそうじゃない。ナナキちゃんを邪魔だと感じていたのは何も貴族たちだけじゃない。陛下や教皇だって例外じゃない。
“変質者へ”覚醒した今、ナナキちゃんが城に戻れば、大義名分を得た彼らに最悪、神敵として処刑される可能性だってあるのだ。
「あんたねぇ〜」と私は頭痛に耐えるようにして天を仰ぐと、視線の先にオルクス大迷宮が見える。
香織じゃないけれど、今はどうか、南雲君が無事に生きていて、ナナキちゃんと無事に合流してくれることを切に願うわ……。非常に悔しいけど、本来なら私たちの方で保護できた方が一番良かったのだけど、こうなってしまっては、もうそっちの可能性を信じるしかない、ナナキちゃんにとってもその方が安心だろう……。
本当に悔しいけれど……。
その後、メルドさんの計らいで、国から援助金を出すと言うことで、ホルアドの市民が破産することは無かった。
そして、私たちの方でも身内がしでかしたことという負い目もあって、罪滅ぼしのつもりで、町への物資運搬を手伝ったったりした後、私たちは城へと帰還した。
無論、ギリギリまでオルクス大迷宮も捜索したけれど、その頃には少なくとも二十階層以内には既に、ナナキちゃんらしい魔物の姿は発見できなかった……。
♢
数時間前〜
ここは【オルクス大迷宮二十階層】、其処には凄惨な光景が広がっていた。
四つ目の狼、ロックマウント、その他にも多様な魔物たちが今宵も侵入者へと殺到する。
しかし、今宵の侵入者はいつものそれとは大きく違った。
バックンッと言う擬音と共に、魔物たちが一瞬にして文字通り一口で消えて行く。
『GRurrrrrrrrrrrrrrrッ』
凶悪な鋭い牙が生え揃う大きな口の端から、恐ろしい唸り声と共に、涎とこれまで捕食してきた魔物の血を滴らせ、まるで幽鬼の様な足取りで迷宮を進む一つの大きな影。そう、変質化しサメの異形へと姿を変えた。少年、南雲ナナキだった。
迷宮を魔物の肉片と血で汚しながら、ナナキはスンスンと鼻を鳴らして辺りを見回す。
大好きなア■ィの匂いを辿って遂にここまでやってきたのだ。ここはあのとき、ハジメ達が転移の罠にハマった一つの部屋だ。この場所は■ニィの匂い以外にも嗅ぎ慣れた匂いがたくさんする。
そして目の前には青白く花開くように輝くグランツ鉱石が目に留まる。別にナナキはこれがキレイだとか、そういったことは一切思わないが、ココからも非常に嗅ぎ慣れた匂いがするので鼻を近づける。
すると、部屋中に光が満ち、ナナキの視界が白一色に染まる。
『AGuUUUッ?』
あまりの眩しさに流石のナナキも呻くも。すぐに視界が晴れると、そこは一本の石橋の上だった。
そう、ここは六十五階層、ハジメ達が死闘を繰り広げ、そしてハジメが奈落へと落とされた運命の場所だ。
突然景色変わったことに不思議なのか辺りをキョロキョロ見回すナナキ。すると、突如後方の出口思われる階段からは小さく無数の魔法陣が、反対の橋の中腹辺りには巨大な魔法陣が現れ、あの時のようにそれぞれ、無数の骸骨の兵士トラオムソルジャーと、そして、天然の鎧と兜を身にまとう凶悪なトリケラトプスが如き巨大な風貌の獣、ベヒモスが姿を現す。
「GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」
身の毛もよだつ咆哮を轟かせるベヒモス、並の冒険者であればその威容に恐怖し腰を抜かす光景だろう。膝を折りエヒト様へと救いの祈りを捧げるだろう。
チート集団たる異世界人達ですら、恐怖で統率が乱れたのだ。
しかし今回ナナキは一人、本来であれば絶望必至の状況であろう。だが、この異形の少年はこれだけの戦力差を前に……
グキュルルルルルルルルルルルッ
『ごハん……いッぱイ……』
「!?ッ」「「「「「!?ッ」」」」」
恐怖どころか、底なしの食欲を漲らせていた。
トラオムソルジャーどころか、ベヒモスですら、ナナキから感じる異様な感覚に身を凍らせる。
今すぐにこの侵入者を排除しなければ、喰われるのはコチラだとッ!
先に動き出したのはベヒモスだった。序盤から早速、頭部の角を赤熱化させてその圧倒的な質量を持ってナナキを轢き潰そうと突進する。
しかしッ
『GuRAAuッ!!』
とナナキが唸ると同時、バシィイインッと何かを叩いたような大きな音が鳴る。
気づけばベヒモスはそこからいくら力を込めても一切前へは進めなかった。
何事かとベヒモスが視線を巡らせると、なんと自分よりも、何倍も小さな体のナナキが、自分の顔に手を突きその場に押し留めていた。
ベヒモスは目を剥く、この侵入者は自分よりも何倍も小さいのに、自分と拮抗、あるいは上回る膂力を有している事に。
しかし、その場で動きが止まる。それを好機と見たのか、硬直からようやく解き放たれたトラオムソルジャー達が一斉にナナキの背後へと殺到する。
しかし、
『ホねは……』
ナナキの両腕の筋肉が隆起する。
『のど二……』
ナナキの片足が、後方に下がりそのまま石橋を踏み砕く。
『さサって……』
ベヒモスの鈍重な体にふわりと浮遊感を感じる。
『アぶナイからッ……』
次の瞬間、
『ごみバこ二ッ……ス・て・ルぅうううう!!』
強烈な衝撃と共に、トラオムソルジャー達が一瞬にして粉微塵に吹き飛んだ。
衝撃で目を回していたベヒモスが何が起こったのかと再び視線を巡らせると、なんと、自分の背後に
ありえないッ!ベヒモスは瞠目する。なんと自分はあろうことか、この侵入者に
そうナナキは、己を軸にしてベヒモスの頭を掴み、まるでコンパスで半円を描く要領でベヒモスを振り回しそのままトラオムソルジャー達を圧倒的な質量で吹き飛ばしたのだ。
その際の衝撃で、トラオムソルジャーを召喚するための魔法陣は跡形もなく破壊されている。
現にベヒモスから見て橋の右側の壁は破壊されて平坦になっている。
先程ナナキは「骨は喉に刺さって危ない」と口にした。子供の頃から魚や骨付き肉を食べるとき、誰でも教わる常識。
そうつまり、ナナキは最初から
哀れトラオムソルジャー、そしてベヒモスは悟る。これは断じて死闘などではない。ましてや狩りですらない。
食事だ
さしずめ自分は皿によそわれたメインディッシュか。
「GURUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!」
そう認識したと同時に、ベヒモスはあらん限りの雄叫びをあげる。
それは自尊心を傷付けられた怒りか?
あるいは、己を奮い立たせる鼓舞か?
はたまた、ただ恐怖に泣き叫んでいるだけか……?
そのまま大口を開けて突進するベヒモスの上下の顎を掴み再びベヒモスを押し留めるナナキは、サメの醜悪な口に孤を描くと。
一言こう呟いた。
『イただキまァ〜スッ!!』
だってそうだろう。ご飯の前には「いただきます」を言う。子供の頃には誰でも習う。常識だ……。
ムチャッムチャッ
ブチッ
と何かを咀嚼する音と、何かを食い千切る音が石橋の上でこだまする。
ベヒモスは……いやベヒモスだった物は無残に横に裂かれて転がっている。その片隅で、内臓と骨を避け、肉のみを喰らうナナキの姿は、恐ろしくはあるが、やはり何処か人だった頃の面影を感じさせる仕草をする。
現にサメの身でどうやっているのか、頬を膨らませてモッキュモッキュしている。そしてこれはサメになってからできた癖だが、尾びれをまるで犬の尻尾のようにブンブンと振り回している。
口に血糊をべっとりと滴らせていなければ、それなりの愛嬌ある姿だろうに。そのグロテスクな姿がそれらを台無しにしていた。
ふとその時、口から滴る一滴のベヒモスの血が、ナナキの胸にある、変質化の影響でまるでよだれかけみたいになった、オーバーオールの切れ端。そこに縫い付けられたサメのアップリケに、
ぴちょんッと血の跡が付いてしまった。
『!!?ッ』
これまでの
『アァ…、アァぅッうぅ〜ッ!』
次第に涙がこぼれ、アップリケに付いた血を拭う為に手で擦るも、既に手にも着いた血で更に汚れは広がっていく。
『うぅ〜ッうぅ〜ッ!!』
イやッ……いヤだ!!こ、コレハ、これハッ……だいジなモノなノッ!■■■かラもらっタッ!!たいセつナ………
アレ……?
■■■って……
グギュルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルッ
『うぅッナッなンで?……あんナにいッパイタベたノにッ』
さっキかラオかしイ、まチでも、こコニきてかラも、いくらタべテモ、おナカがいっパイになラナい……。
ふとその時ナナキの鼻腔をくすぐる匂いが橋の下、奈落の底から漂う。
ナンだろウ……とっても
スンスンと鼻を鳴らす。
アレヲタベタラ、オナカガイッパイ二ナルノカナ?
そうして、目的も忘れた一匹のサメは、ただ己の空腹を満たすため、奈落の闇へとその身を投げた……。
《ロレンチー二の謎》
香織が、ロレンチー二器官などの雑学を修めている理由は、ハジメと仲良くなるにあたり、オタク知識の収集の中で得たもの。
あと、ナナキのロレンチー二器官はたしかに普通のサメより強化されているが、流石に迷宮の外から人を見つけられるほどではない……。
ナナキは、単純にハジメの残り香を追っているだけ、全ては香織の願望が多分に含まれる妄想であった。