白い駅員さん   作:あぱつ

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無茶ぶり

 特訓の途中、息抜きも含めて私はヒウンシティのカフェで休憩することにした。前に評判のよさそうなカフェを見つけたので、そこに行くことにしたのだ。私はカフェのテラス席に座ると、ポケモンたちを外に出した。自分の分の軽食と、カフェオリジナルのポケモンフーズを注文して、ポケモンたちに渡した。私は自分の分のサンドイッチを頬張りながら、ポケモンフーズを食べるみんなを見る。

 

「この先のことを考えると、進化ができるバチュルとゾロアは進化させたいんだけど……。バチュル、ゾロア。あなたたちは進化についてどう思う?」

『バチュ~?』

『こんっ! こんこんっ』

 

 バチュルはいつもの様にのんびりとした様子で、ゾロアは興奮したように鳴く。私はその様子に苦笑いを浮かべる。バチュルはのんびりとマイペースな子で、進化を急かすような子ではないのは知っている。

 しかしゾロアはそうもいかないようだ。私の言っている意味を理解しているかは分からないが、自分が『変化』することは本能的に理解しているようで、食べることも忘れてぴょんぴょんと跳ねて私の足に擦り寄ってくる。

 

「そう急かされても進化ってすぐにできるものじゃないからね。進化するためにはたくさん経験を積んで、レベルアップしないと」

『こんっ!』

「それじゃあまずは目の前のご飯を残さず食べるんだよ」

 

 私の言葉にゾロアは力強く頷いて食事を勢いよく再開する。私はその様子に笑いながら、自分の分の食事も再開する。アイスティーにミルクを入れ、ストローでかき混ぜる。このカフェはオリジナルのポケモンフーズ以外にも紅茶の茶葉にかなりこだわっているらしい。なんでもチュリネの頭の葉を乾燥させて他の茶葉と混ぜてブレンドしているそうだ。

 私はカフェのメニュー表に書かれている、そのブレンドされた茶葉の説明を読む。なんでもチュリネの頭の葉にはリラックス効果のある成分が含まれていて、それを他の茶葉と混ぜて飲むことでストレスを緩和させる効果があるらしい。

 

「うん、美味しい」

 

 私はアイスティーを一口飲んで、そう呟く。ポケモンフーズを食べ終えたバチュルが私の腕を通じて首元に登ってきた。バチュルは私の首元にすり寄って僅かに静電気を発する。このバチュルは暖かいところが好きなのか、服の中や首元によくいる。その度にパチパチと静電気をもらう。最初こそびっくりしていたが、最近では慣れてしまってこのくらいの微弱な静電気なら特に感じなくなってきた始末だ。数秒程度首元でぱちぱちしてから昼寝に戻っていく。

 バチュルの静電気で少し乱れた髪の毛を直していると、スマホロトムに着信がきた。着信画面を確認すると、知っている名前。出るかどうか十数秒悩んだ後、ため息と同時に通話ボタンを押した。

 

《やあやあやあ! 久しぶりだね!》

「マルハマ先生……。お久しぶりです」

 

 スマホロトムの画面に映るのは赤い髪にサイドのみつあみが特徴的な男性。彼の名前はマルハマ。考古学者であり、私がカロス地方にいた時お世話になった人だ。

 

《どうしたんだい? 眉間に皺なんて寄せて》

「なんでもないですよ。それより、用があって連絡してきたんでしょう?」

《ああ、そうだった! 実はキミに頼みたいことがあってね》

「頼みたいこと?」

《そう。ちょっとパルデア地方に赴いてほしくってね》

「……えっ?」

 

 マルハマ先生の言葉に私は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

「パルデア地方って! 私が今イッシュ地方にいるの知っていますよね!?」

《うん、もちろん知っているよ》

「知っていてなぜそんな頼み事をできるのか甚だ疑問です。私今頑張っていることがあってそれに集中したいんです。いつものフィールドワークをご所望ならご自身の足で行ってくださいよ」

《お願いだよメルア。俺の助手たちも別のことや個人的な調査で出払ってしまっているんだよ。それに、今回の頼みを聞いてくれたらいいものをあげるからさ。なっ、頼むよ》

「……いいものってなんですか」

《それは俺のお願いを聞いて完遂してくれたらだな》

「はあ~……私今頑張っていることがあってそれに集中したかったんですが……」

《まあまあ。メルアにとっても悪い話じゃないよ。俺が預けたあのポケモンのこと、なんとかしたいっていつも言ってなかったかい?》

「うっ」

 

 マルハマ先生の言葉に私は思わず言葉を詰まらせる。

 確かに、あの子のことはなんとかしたいと思っていた。だからシングルトレインに乗ってノボリさんに相談をするつもりだったし……。けれど誰かの手を煩わせずに私だけでなんとかできるなら、そうしたいと思っていた。

 

「先生の頼みごとをしたからと言って、あの子との何かが変わるというわけじゃないと思うのですが」

《まあまあ。頼まれてくれるね?》

「……分かりましたよ、分かりました」

《そう言ってくれると思ったよ! じゃあ詳細はすぐスマホロトムに送るから。よろしく頼むよ》

 

 マルハマ先生はそう言って通話を切った。私は深くため息を吐いて頭を抱える。けれど一同引き受けてしまった手前、もう後には引けない。私はスマホロトムにマルハマ先生から送られてきたメールを見て、椅子から立ち上がる。

 

「みんな、少し付き合ってくれるかな」

 

 私の声にポケモンたちはそれぞれ鳴いて答えてくれる。早速パルデア行きの飛行機のチケットを予約して、パルデアに出発することにした。

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