「ちょ、俺が救世主!?」~転生商人のおかしな快進撃~   作:月城 友麻

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12. 世界最強化計画

 うわぁ……。

 

「どれがいいんだい?」

 

「どれも値段は一緒ですか?」

 

 おばあさんは少し考え込むような仕草をした。

 

「うーん、この小さいのなら銀貨七枚でもいいよ」

 

 ユータの目が輝いた。

 

「じゃあ、これください!」

 

 興奮のあまり手を伸ばそうとしたが、おばあさんの素早い動きに阻止される。

 

「ダメダメ! 触ったら凍傷になるよ!」

 

 おばあさんは慌ててユータの手を掴み、軽く叱りつけた。その仕草には、孫を気遣うような優しさが感じられる。

 

 手袋をはめたおばあさんが、慎重に氷結石(アイシクルジェム)を取り出す。そして柔らかな布でキュッキュと丁寧に拭うと、急に氷結石(アイシクルジェム)は濃い青色で鮮やかな輝きを放ち始めた。

 

「うわぁ~!」

 

 俺は息を呑んだ。深い海の底から引き上げられたかのような、神秘的な(あお)い輝き。俺はその輝きにくぎ付けになってしまう。

 

「霜が付いてるから、そのままじゃ鈍い水色にしか見えないんだよ」

 

 おばあさんが優しく説明する。

 

「拭くと、本来の美しさが現れるのさ。どうだい、綺麗だろ?」

 

 俺は感動に震えていた。この小さな石に、まるで異世界の奥深さが凝縮されているかのようだった。

 

 おばあさんはユータの反応を見て、にっこりと微笑む。そして小さな箱に石を入れ、「はい、どうぞ」と差し出した。

 

「ありがとうございます!」

 

 俺は満面の笑みで小箱を受け取り、慎重にポケットに押し込んだ。

 

 

         ◇

 

 

 俺の仮説はこうである。

 

 ゴブリンを倒したのは俺の血がついた槍、つまり、俺の血がついた武器で魔物を倒せば、俺がどこで何してても経験値は配分されるのだ。ただ、血が乾いてカピカピになってもこの効果があるかといえば、ないだろう。そんな効果があったらどんな武器にだって血痕は微量についている訳だからシステム的に破綻してしまうはずだ。だから、まだ生きた細胞が残っている血液が付いていることが条件になるだろう。しかし、血液なんてすぐに乾いてしまう。そこで氷結石(アイシクルジェム)の出番なのだ。この石を砕いてビーズみたいにして、中にごく微量、俺の血を入れて凍らせる。そしてそれを武器の中に仕込むのだ。これを冒険者のみんなに使ってもらえば俺は寝てるだけで経験値は爆上がり、世界最強の力を得られるに違いない。

 

 もちろん、それだけだと他人の経験値を奪うだけの泥棒になってしまう。やはり喜ばれることをやりたい。と、なると、特殊なレア武器を提供して、すごく強くなる代わりに経験値を分けてもらうという形がいいだろう。

 

 俺はウキウキしながら孤児院に戻り、みんなに見つからないようにそっと倉庫のすみに作業場を確保した。

 

 果たして仮説通りに上手くいきますかどうか……。

 

 ヨシッ!

 

 俺はパンパンと頬を張って気合を入れると、氷結石(アイシクルジェム)の加工作業に入った。

 

 

       ◇

 

 

 週末の朝、澄み切った空の下、街の広場は活気に満ちていた。『(のみ)の市』の開催日。ユータは胸を躍らせながら、こっそりと貯めたお金を握りしめ、人々の波に身を投じた。

 

 広場には色とりどりの品々が所狭しと並べられ、それぞれが物語を秘めているかのようだった。ハンドメイドの雑貨や、長年眠っていたお宝たち。ユータの目は、その中でも特に武器に釘付けになる。

 

「さあ、レア武器を見つけるぞ!」

 

 俺は気合を入れると鑑定スキルを駆使しながら、端から武器を見て回った。

 

グレートソード レア度:★

大剣 攻撃力:+10

 

スピア レア度:★

槍 攻撃力:+8

 

 しかし、小一時間が経過しても、目当てのレア武器は見つからない。鑑定を使い過ぎて、目はシバシバしてきてしまった。

 

「うーん、フリマだから仕方ないのかな……」

 

 少し落胆しながらも、ユータは諦めなかった。★1の武器に氷結石(アイシクルジェム)を仕込むのは、使う人に損をさせてしまう。それは絶対に避けたかった。

 

 すごく強くなれるけど、経験値が少し減る。そんな武器を作りたかったのだ。

 

 疲れた足を休めるため、ユータは噴水の石垣に腰を下ろした。気の良さそうなおばちゃんから買った手作りクッキーを頬張りながら、ユータは快晴の空を見上げた。

 

 どこまでも広がる青空、賑やかな声が響く広場。そして美味しいクッキー――――。

 

 つい頬に、自然と笑みが浮かんでしまう。

 

「ここは、本当に素晴らしい場所だな」

 

 かつての暗い部屋でゲームばかりしていた日々を思い出し、俺は首を振ると大きく息をついた。

 

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