「ちょ、俺が救世主!?」~転生商人のおかしな快進撃~   作:月城 友麻

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14. 得難い仲間

「な~に、やってるの?」

 

「うわぁ!」

 

 突然の声に、ユータは思わず飛び上がった。

 

「そんなに驚くことないでしょ!」

 

 振り返ると、ドロシーが不満そうな顔で立っていた。銀髪に透き通るような白い肌、水色のワンピースを着た美しい少女が、俺をじっと見つめている。

 

「ゴメンゴメン、驚いちゃって」

 

 俺は頭をかきながらフォローする。

 

「ふーん……。何……やってんの?」

 

 ドロシーはジト目で俺を見る。

 

「実はね、武器を売ろうと思ってるんだ」

 

 俺は石に水をかけ、再び剣を研ぎ始めた。

 

「ふーん……。ユータってさぁ……。ずいぶん……変わったよね?」

 

 ドロシーは首を傾げ、ユータの顔を覗き込んだ。

 

 俺は少しドキッとしながら、それを気づかれないように顔を伏せたままにする。

 

「まぁ、いつまでも孤児院に世話になってはいられないからね」

 

「そうね……」

 

 沈黙が続き、しばらくジョリジョリと研ぐ音が倉庫内に響いていた――――。

 

「あの時……ありがとう」

 

 ドロシーが小さな声で呟く。

 

「大事にならなくてよかったよ」

 

 俺は研ぎ続けながら、さりげなく返した。

 

「本当はね……」

 

 ドロシーは言葉を選ぶように話し始めた。

 

「ユータって手に負えない悪ガキで、ちょっと苦手だったの……」

 

「俺もそう思うよ」

 

 俺は少し苦笑しながら肩をすくめる。確かに前世の記憶が戻る前の俺はどうしようもないクソガキだったのだ。

 

「いやいや、違うのよ!」

 

 ドロシーは慌てて手を振った。

 

「本当はあんなに勇気があって頼れる子だって分かって、私、反省したの……」

 

「ははは、反省なんてしなくていいよ。実際悪ガキだったし」

 

 俺はなんだか申し訳なくなってしまう。

 

 ドロシーはしばらく黙っていたが、突然決意したように言った。

 

「でね……。私、何か手伝えることないかなって思って……」

 

 予想外のドロシーの言葉に、俺は顔を上げた。

 

「え?」

 

「ユータが最近独り立ちしようと必死になってるの凄く分かるの。私、お姉さんでしょ? 手伝えることあればなぁって」

 

 ドロシーの目には真剣な光が宿っていた。

 

 確かに、頼れる仲間がいるのは心強い。何しろドロシーは賢くて器用だ。きっと役に立ってくれるだろう。

 

「じゃあ……そうだな……武器の掃除を手伝ってよ。持ち手や(つば)に汚れが残ってるんだ」

 

 おじいさんから買った剣は、ジャンク品だったため、細かな部分まで手が回っていない。

 

「分かったわ! この手のお掃除得意よ、私!」

 

 ニッコリと笑うドロシーの目がキラリと輝く。

 

 その笑顔に、俺は心温まる物を感じた。今まで薬草取りからずっと一人だったのだ。こんな頼もしい仲間ができただなんてつい目頭が熱くなってしまう。

 

「売れたら……お駄賃出すよ」

 

「何言ってんの、そんなの要らないわよ!」

 

 ドロシーは慌てて手を振った。

 

「いやいや、これは商売だからね。もらってもらわないと困るよ。ただ……小銭だけど」

 

 俺はは真剣な顔でドロシーの顔をのぞきこむ。

 

「うーん、そういうものかしら……分かった! 楽しみにしてる!」

 

 ドロシーは素敵な笑顔を見せると、棚からブラシや布、洗剤をてきぱきと(そろ)えた。

 

 ユータの隣に座って真剣な表情で磨き始めるドロシー。二人の間に心地よい沈黙が流れる。

 

 ジョリジョリという研ぐ音と、シュッシュッという磨く音が倉庫に響く。時折、二人は顔を見合わせて微笑む。言葉は交わさなくても、二人の間には確かな絆が生まれていた。

 

 

       ◇

 

 

「これ……、本当に儲かるの?」

 

 少し疲れが見えてきた頃、ドロシーが額の汗をぬぐいながら言った。

 

「多分儲かるし……それだけじゃなく、もっと夢みたいな世界を切り開いてくれるはずだよ」

 

 俺は胸を張って答える。

 

「えー? 何それ?」

 

 ドロシーは少し茶化すように笑ったが、その目は好奇心に満ちていた。

 

「本当さ、俺がこの世界全部を手に入れちゃうかもしれないよ?」

 

 俺は野心を隠さず、ニヤリと笑う。

 

「世界全部……? 私も……手に入っちゃう?」

 

 彼女は上目遣いでユータを見つめ、銀髪がサラリと揺れる。澄んだブラウンの瞳がキュッキュッと細かく動き、十二歳とは思えない色香を漂わせていた。

 

「……え?」

 

 俺はつい見とれてしまって言葉を失う。精神年齢二十代の俺からしたら十二歳などガキだと高をくくっていたが、身体が子供なせいか、なんだか不思議な気分になってしまった。

 

「あ? いや、そういう意味じゃなくって……」

 

「うふふ、冗談よ」

 

 ドロシーはくすりと笑った。

 

「男の子が破天荒な夢を語るのはいいことだわ。頑張って!」

 

「あ、ありがとう」

 

 俺は火照ってしまったほほをさすりながら、急いで研ぐ作業に戻った。

 

 

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