「ちょ、俺が救世主!?」~転生商人のおかしな快進撃~   作:月城 友麻

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17. 五億円の衝撃

 裏庭に出ると、そこには(わら)で作られたカカシが立っていた。【起き上がりこぼし】のように揺れるそれは、剣の腕前を試すのに最適だという。

 

 エドガーが紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣を手に取った瞬間、驚きの声が上がった。

 

「え? なんだこれ? 凄く軽い!」

 

 俺は内心でガッツポーズする。剣が軽くなったわけではない。エドガーの「強さ」が上がったのだ。しかし、この世界の人々にはステータスが見えない。だからこそ、この驚きがある。

 

「エドガーさん、思い切り振ってみてください!」

 

 俺は声援を送る。この剣は使う者の潜在力を最大限に発揮してくれる名剣である。思い切り振ればきっとその良さに気づくはずだった。

 

「あまり無理すんなよー!」「また腰ひねらんようになー!」

 

 五、六人のやじ馬が集まり、からかうように声をかける。

 

「おめぇらうるせーぞ!! 俺の華麗な剣さばきをしっかり見とけよ!」

 

 エドガーは剣でやじ馬を指して怒る。

 

「『華麗』って何だよ!」「カレー食いたくなったぞ! ぎゃははは!」

 

 こりゃダメだという感じで肩をすくめたエドガーは、トントンと軽く飛び上がると、深呼吸をし、鋭い目線で剣を構えた――――。

 

 一瞬の静寂の後、凄まじい速さで剣が宙を舞った。

 

 ヒュン!

 

 剣は風を切り、目にも止まらぬ速さでカカシに打ち込まれる――――。

 

 が、不思議なことにカカシは微動だにしない。

 

「え?」

 

 エドガーの声が戸惑いを帯びる。確かにカカシを捉えたはずだったが手ごたえも全くなかったのだ。

 

「あれ? 斬れてないぞ?」

 

 やじ馬からも困惑の声が上がる。

 

 直後、カカシがゆっくりと斜めにズズズとずれ始めた。そして、地面に落ちてコテンと転がっていく。

 

「えーーーー!?」「ナニコレ!?」「はぁっ!?」

 

 驚愕の声が広場に響き渡る。誰もが目を疑うような光景に、言葉を失っていた。

 

 俺は胸が高鳴るのを押さえられなかった。自分が作り上げた剣の真の力を、今まさに目の当たりにしている。エドガーの腕前と紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣の力が融合した結果、まるで伝説の剣士のような一撃が生まれたのだ。

 

「Yes! Yes!」

 

 俺は両手のこぶしをギュッと握ってブンブンと振った。

 

 エドガーは剣を見つめ、まだ信じられないという表情を浮かべていた。彼はCランクの中堅冒険者だったが、今の一撃はトップクラスのAランク以上の実力を示していた。

 

「ちょっとこれ、どういうこと?」

 

 エドガーは困惑の色を浮かべながら俺を見る。

 

「その剣は紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣といって、由緒あるすごい名剣なんです」

 

 俺は誇らしげに答えた。

 

「称号付き名剣!? なんと……。そうか……名剣は初めて使ったが……すごい……本当にすごい」

 

 エドガーは食い入るように紅蓮虎吼(ぐれんこほう)剣の刃を見つめ、目を輝やかせた。

 

「ど、どうですか?」

 

「いやいや、これなら今まで行けなかったダンジョンの深層に行けるよ! これは楽しみになってきた!」

 

 彼は刀身に彫られた金色の虎の装飾をそっとなで、嬉しそうに微笑んだ。

 

「じゃぁこの剣、使い倒してやってください!」

 

 俺は嬉しくなってプッシュする。

 

「もちろん! いや、これちゃんとお金払うよ!」

 

 エドガーはすごい勢いで言った。

 

 しかし俺は首を振る。

 

「命の恩人からはお金取れません。その代わり、お客さん紹介してもらえますか?」

 

「いやー、このレベルの武器を売ってくれるなら、いくらでも欲しい人はいるよ。なぁみんな?」

 

 エドガーがやじ馬たちに振り返ると、「俺も欲しい!」「俺も俺も!」興奮気味の声が次々上がっていく。

 

 俺は嬉しくなってグッとこぶしを握った。

 

 その日、持ってきた★3の武器を金貨三枚で売り、俺は金貨二枚の利益を得た。日本円にして二十万円。ざっと計算して仕入れが順調なら二千万円くらいの利益が狙えそうだ。いや、★4も含めれば五千万も狙えるかもしれない……。他の街の冒険者にも売っていけばこの十倍、五億円だって夢じゃない。

 

「えっ!? ご、五億円!?」

 

 思わず声を上げそうになる。自分がとてつもない金鉱脈を掘り当てたことに気づいたのだ。

 

 帰り道、抑えきれない喜びがあふれ出す。

 

「ヤッホーーーーイ!!」

 

 スキップしながら腕を高々と突き上げ、まさに幸せの絶頂だった。

 

 ふと、ドロシーの顔が脳裏に浮かぶ。この成功は彼女の協力あってこそなのだ。忘れてはならない。

 

 早速ケーキ屋に立ち寄り、リボンの付いた可愛いクッキーを買った。

 

「喜んでくれるかな?」

 

 俺の胸には、感謝と期待、そして新たな決意が芽生えていた。これは単なる商売の成功ではない。孤児院のみんなも幸せにする、その夢への第一歩なのだ。

 

 夕暮れの街を歩きながら、俺は心の中で誓った。必ず、この才能を活かして、大切な人たちを守り、幸せにすると。そして、自分を育ててくれた孤児院にも恩返しをしていくと。

 

 その瞳には、未来への希望と強い意志が輝いていた。

 

 

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