仲間たちを探して プロジェクトセカイ×松本零士漫画作品 作:千生鉄斗羅
少女たちは、練習の息抜きも兼ねて、セカイを走る鉄道に乗って、銀河の景色を楽しんでいた。
快適で楽しい
だからなのか、彼女らは、何かが接近してきた事に気づけなかった。
「・・・・・・ッ! みんな!」
真っ先に気づいたのは、一歌だ。だが、その時にはもう遅かった。何か──鉄道の様に見えるそれは、彼女たちの乗った鉄道を、容赦なく撥ね飛ばした。
「あッ──咲希! 穂波! 志歩!」
「いっちゃん・・・・・・! こんなの、なんで!?」
衝突した位置は、丁度彼女らの乗っていた客車だ。彼女らは、宇宙に投げ出された。この宇宙は、セカイの一部であるためか、有害な紫外線や放射線は存在しない。そのため、宇宙服なしでもある程度は生存できる。しかし、物理法則は普遍的に存在する。
「みんな、捕まってッ! このままだと、放り出される!」
「空気が・・・・・・! どんどん抜けて・・・・・・」
酸素が枯渇していく。その影響で、少しずつ意識が薄れていくのを、彼女らは感じていた。
それでも、宇宙空間に放り出されないように、何とか手すりや吊り革を掴んでいた。そこにあったのは、生への渇望といえよう。
だが、意識を失った瞬間、一歌たちは、その手を離してしまった。
彼女らは、宇宙空間に、バラバラに放り出されてしまった。
Leo/needは、物理的な意味で空中分解してしまったのである。
程なくして、現実世界では、デビューしたての女子高生バンドが行方不明になったというニュースが報じられた。彼女らが失踪する動機は一切なく、しばらくの間インターネットの掲示板などで考察が行われていた。
仲間たちを探して プロジェクトセカイ×松本零士漫画作品
咲希が目を覚ましたのは、どこかの鉄道の客室だった。
「う、う〜ん、ここはどこ?」
「おお、目を覚まされましたか。よかったよかった」
そう言って、咲希の元に駆け寄る人物がいた。およそ四頭身くらいだろうか、咲希より少し背の低い人物だった。彼は、「私は、この銀河超特急999号の車掌です」と名乗った。
「車掌さん、ですか? ああでも、まずはありがとうございます」
「いえいえ、宇宙に放り出されている人間を見かけたら、保護しないわけにはいきますまい。まあ、それが銀河鉄道の運行を邪魔して放り出されたと言うのなら、話は別ですがね」
「ぞ〜っ」
「もちろん、あなたがそんな人物ではないだろうということは、何となくわかりますがね」
車掌は、咲希に風呂を勧めた。着替えも、用意してくれると言うので、咲希はありがたく享受する事にした。風呂は、かなり快適だった。
車掌の用意した着替えは、赤いTシャツと黄緑のズボン、そして黒(裏地は緑)のジャケットだった。要するに、星野鉄郎と同じ姿である。なお、このセカイに、星野鉄郎とメーテルは存在しない。
「なんか動きやすい!」
「そうでしょうそうでしょう。それは、私服として使っていただきます」
「私服、ってことは、アタシも何かしないといけない、ってことですよね?」
「その通り、察しが良くて助かります。実を言うと、まあ当然と言えばそうなんだが、今の君は無賃乗車をしている状況にある。一方でこちらは、食堂車のウエイトレスがいないんだ。だから、君に、そこで働いてもらいたい」
車掌は、そういった。だが、咲希はキョトンとした様子だ。
「・・・・・・ええと、ウエイトレスって、なんですか?」
車掌は、ずっこけた。
「ウエイトレスを知らない!?」
「そうなんです」
咲希は、カフェでアルバイトをしていた。だが時代の流れか、ただ店員と呼ばれるのみで、ウエイトレスという言葉は使われていなかったのだ。
自身のアルバイトの経験を語ると、車掌は、「それがウエイトレスだ。男ならウエイターともいうんだが、それは今はどうでもよろしい」と説明した。
咲希は、仲間のことが気がかりだった。ちゃんと生きているかどうか、それすらもわからない状況にあるのだ。
「ふうむ、なるほど。しかも、どうすれば帰れるのかもわからない、と」
「そうなんです・・・・・・。本当に突然のことで、何が何だか・・・・・・」
今にも泣きそうな様子だった。
車掌は、
「事情はわかりました。では、当面はウエイトレスとして働いてもらう事にしましょう。あなたの仲間と、帰るべき場所を全て見つけたら、そこで降りてもらう。これでどうでしょう」
と提案した。
自分一人では何もできないことを、咲希は痛いほどに理解していた。だから、その提案を受け入れた。
こうして、閑古鳥の鳴く999号に、一人のウエイトレスが加入した。
***
志歩が目を覚ましたのは、船室だった。
「ここは・・・・・・船?」
窓の外には、宇宙空間が広がっている。
「そもそも、セカイかどうかすらわかんないし、下手に動くのはやめとこう」
「賢明ナ判断ネ」
「!?」
志歩は、突然の来訪者(異邦者はこちらなのだが)に、ビクッと震えた。そして、酒の匂いを感じた。
「・・・・・・酒臭っ」
「諦メナサイ。私ハ、アルコールガ主食ナノヨ」
振り向くと、志歩はさらに驚愕した。
「・・・・・・宇宙人」
そう、その人物──声から判断するに女性だろうか──は、碧き髪と瞳の無い目を持ち、逆に口らしき器官を持たず、それでいて美しいということがわかる顔立ちだったのだ。その人物は、ミーメと名乗った。
「日野森、志歩、です。助けてくれて、ありがとうございます」
「志歩トイウノ。ヨイ名前ネ、正二アワセタラ親近感ヲ持ツカシラ」
「タダシ・・・・・・?」
「ソウネ、螢ノホウガ意気投合モシヤスイカモシレナイワネ」
知らない人物の名を聞かされても、志歩には誰が誰だかわからない。
「あの、そのタダシとかケイとかって誰なんですか? そして、ここは一体?」
志歩は、疑問をミーメにぶつけた。
「デハ、マズ場所カラ教エマショウ。ココハ、アルカディア号。宇宙海賊キャプテンハーロックノ根城ネ」
「宇宙海賊──」
「ソシテ、サッキ名前ヲダシタ二人ハ、ソノ乗組員。コノ中ダト、正ガ一番ノ新入リトイッタトコロカシラ」
彼女は、簡潔に紹介した。
「トコロデ、歩ケルカシラ?」
「ええ、まあ。ちょっと痛みはありますけど、支障はないかと」
「デハ、艦橋ニ行キマショウ」
ミーメに連れられ、志歩はアルカディア号の艦橋に向かった。そこには、数人の人間がいた。一際目立つのは、眼帯の男だろう。志歩は、この男こそがハーロックだ、と直感した。
「目を覚ましたか」
「ダカラ連レテキタノヨ」
ミーメと一言交わし、男は志歩の方を見た。
「ええと、ありがとうございます」
「礼には及ばんさ。若者が死ぬというのは、いつの時代もあってはならんことだからな、当然のことをしたまでだ」
しかし、と男は言う。
「自分が、どれくらい気絶していたか──いや、眠っていたかわかるか?」
「いえ、多分酸欠か何かで倒れたと言うことまではわかりますけど・・・・・・」
「一週間だ」
「!?」
志歩は、目を丸くした。まさか、そんなに長く倒れていたなど、想像もできなかった。
「着の身着のままで寝かせていたので、少し不快な感覚があるだろう。シャワーを浴びて、着替えるといい」
「でも、船なら資源に限りがあるんじゃ・・・・・・」
志歩は、自分に貴重な資源を使わせるわけにはいかないと、辞退しようとした。
「何をいっているの。私みたいな、こういう生き方を選んだのならともかく、年頃の若い女の子がそんなんじゃいけないわ。大人しく使いなさいな」
「螢の言う通りだぜ。だが、着替えがあったかどうか・・・・・・」
「あなたのお古があるでしょう。みたところ、あれがあの子に一番似合いそうに見えるから」
と言うわけで、志歩は、少々強引ながらもシャワーを浴びて汗を流し、台場正がかつて着ていたデニムとシャツと革ジャンに着替えたのであった。
「男ものだけど、大丈夫かい?」
「ええ、胸がキツいということもないですし、それにスッキリできました」
「ならよかった。・・・・・・おっと、もうし遅れてすまない。俺は、台場正。こっちの子が、有紀螢」
「日野森志歩です」
「ヒノモリ・・・・・・? ということは、君も地球の出身なのかい?」
正は、志歩にそう訊いた。
「はい。シブヤの、宮女に通ってました」
「シブヤ・・・・・・? 待ってくれ、まだそんな場所が残っているってのか!?」
「ありえないわ。マゾーンだけじゃない、いくつもの脅威にさらされて、安全圏はグッと減ったはず。少なくとも、渋谷なんて、マトモに機能しているかどうかさえ怪しいのに・・・・・・」
その反応に、志歩は訝しんだ。正たちと自分の認識が、驚くほどに食い違っているのだ。
──どういうことだ?
三人が、共通して抱いた感想である。
「パラレルワールド、ト言うモノデハナイカシラ」
ミーメが、口を挟んだ。
『パラレルワールド?』
三人は、異口同音に、鸚鵡返しに反応した。
「要スルニ、イフノ世界ネ。『アノ時、マゾーンガイナカッタトシタラ』『モシモ、機械化人ガ存在シナカッタナラ』・・・・・・。ソウイウ可能性ガ実現シタ世界ノコトヲ、パラレルワールドト言ウノネ」
「・・・・・・たしかに、そう考えた方がいいのかもしれません。私の知る限り、こういう宇宙戦艦はまだ実用化されていない──人類が足を踏み入れた中で一番遠いのは、三八万キロの彼方、すなわち月ですから」
「と、いうことは、だ。君は、マゾーンも機械化人も知らない、ということでいいのかい?」
「そうなります」
正は、信じられない様子だった。自分たちが命をかけて戦っている存在が、まさか存在していないとは・・・・・・。
そして、それを知らず、平和に暮らしている。妬みと羨望を覚えた。
「──ところで、私の仲間を見ませんでしたか?」
「仲間?」
「ええ。幼馴染でもあるんですけど、逸れちゃって」
──宇宙に逸れる・・・・・・?
一同は、そんな疑問を抱いた。口ぶりから察するに、志歩の世界では、やすやすと宇宙に出ることは不可能と見てよいだろう。なのに、どうやったら宇宙で逸れることができるのだろう。
代表して螢が、そんなことを訊いた。
志歩は、「どう説明すればいいんだろう、いや、そもそも伝えて大丈夫かな? でも、ここがセカイだとしたら、まあ納得できないことはないけど・・・・・・」とブツブツ呟いた後、意を結したように口を開いた。
「──セカイ、って知ってますか」
『セカイ?』
「世界って、ここのことじゃないの?」
「違うんです。本当の想いが集まって本当の想いが集まってできた空間というべきなのかな。それが、セカイなんです」
「にわかには信じがたいが、並行世界の可能性を提示された以上、否定することはできないな。それで、セカイってのは、どんな場所・・・・・・場所? モノ? うーん、まあ場所か。どんな場所なんだい?」
「私の──私達のセカイは、学校です。でも、私達の他には、バーチャル・シンガーしかいない。たまに──歌ってる時が多いかな──豆腐みたいなのが現れることもありますけど、基本はそんな感じです。それで、最近、駅ができました。どうやら、想いのカタチに応じて、セカイもカタチを変えるみたいなんです。その駅からは、
「事故? 君たち以外はいないはずだろう、事故なんて起こりようも・・・・・・」
「だから、不可解なんです。でも、咲希──幼馴染の一人なんですけど、彼女はちょっと前に、別のセカイに行ったって話してました。私が行ったら、絶対に離れられないだろうな、とも言ってましたけど。ともかく、そういう事例があったってことは、こういうことが起こっても──別の列車との衝突事故があっれも、おかしくはないかと思います」
「・・・・・・衝突事故だと? シホ、その列車には、どんな特徴があった?」
ハーロックが、口を挟んだ。その列車に、思い当たる節がある様子だった。
「詳しくは覚えてないんですけど」と前置きして、志歩は、記憶を手繰り寄せながら話す。
「ええと、黒くて、ノッペリした印象をまず受けた気がします。そして、速かった。まるで、障害物を蹴散らすように、私達の鉄道を壊して、走って去って行ったんです」
「それは、蒸気機関車のような見た目だったか?」
「いえ、そんな感じはしませんでした」
もたらされた断片的な情報から、ハーロックは、確信を持った。
「幽霊列車だ」
「幽霊列車・・・・・・。それって、鬼太郎なんかに出てくる、死にきれなかった人間の霊をあの世へ連れて行くっていうアレですか?」
「違う。幽霊列車とは、機械化人の食料となる、人間の魂を集めるため、さまざまな惑星から人間を──若者を回収してまわる、忌まわしき列車のことだ・・・・・・!」
握った拳を、震わせた。彼にとって幽霊列車とは、生きる意志を持った若者を家畜以下の存在に貶めるものなのだ。発見次第破壊しようとは思っているのだが、宇宙は広い。そもそも、幽霊列車と出会うことすら稀なのだ。ではどうやってその情報を得たのかというと、プロメシュームの一人娘であるエメラルダスからだ。我が母ながら、なんと悍ましいことをする。エメラルダスがそう愚痴のようにこぼしていたのを、ハーロックはよく覚えている。
「そんな列車が・・・・・・」
志歩は、もしそれに連れ去られていたかと思うと、思わず身震いした。
「ところで、君はこれからどうするんだい? どこか、行くアテでもあるのかい?」
「・・・・・・ない、ですね。今いるここが何処かもわからないし、そもそも並行世界の可能性がある以上、地球が私の知っている場所である可能性も低い。それに、仲間が何処にいるかもわからない」
「仲間?」
「はい。私の、三人の幼馴染です。一度心は離れてしまったけど、元に戻り、さらに絆は強くなった。元の場所に帰るのなら、一歌、咲希、穂波も一緒でないと」
「そう・・・・・・。でも、宇宙は広いわ。探すのには、時間がかかるでしょうね。一人でやる気?」
螢の問いに、志歩ははっきり答えた。
「いいえ。一人だと、私が死んでも見つけられないかもしれない。──見つけてもらえないかもしれない。だから、ハーロックさん。一歌を、咲希を、穂波を、探すのを手伝ってもらえませんか? もちろん、手伝えることがあればなんでもやります。差し出すべき代償は、全て差し出します。だからどうか、手伝ってください。私だけでは、どうしようも・・・・・・」
志歩の目は、しっかりと男を見据えていた。
男もまた、志歩の覚悟を試すかのようにじっと見つめていた。志歩は、正直に告白すると、足がすくんでいた。自分とは生きる世界が何もかも違うこの男の眼光から、今すぐに逃げ出したい。そう思ったのだ。だが、それでは、もう二度と仲間に会うことはできなくなるだろう。だから、しっかりと意識を持った。
数秒の沈黙の後、男は口を開いた。
「・・・・・・よかろう。お前の友を、探そう。とはいえ、彼女らが何処にいるのかの目星はついていないだろう。詐欺のように映るやもしれんが、俺の行く先に友がいれば幸運だと思ってくれ。それでもいいのか?」
「・・・・・・はい。あなたたちに無理を言っているんです、それくらいどうってことはありません」
「ならば、シホ。元の場所に帰るその日まで、お前はアルカディア号の四一番目の乗組員だ」
こうして志歩は、アルカディア号の面々と共に宇宙を旅する事になったのである。
***
一歌が目を覚ましたのは、何かの船の操縦室だった。
「・・・・・・!」
はっと辺りを見回すと、窓から宇宙が見えた。
「どういうこと? さっきまでは、確かにあの鉄道に乗って、それで・・・・・・! そうだ、あの列車が!」
「目が覚めたようね」
背後から、凛とした声が聞こえた。見ると、左頬に傷を持った、麗人がいた。だが、その佇まいは、武人をも思わせた。
「あなたは、一体・・・・・・」
「人に名を訊く時は、まず自分から名乗るものよ。でもまあ、私の船が拒んでいないのは珍しいこと。それに免じて、私が先に名乗りましょう」
麗人は、一歌をまっすぐに見据えた。
「私の名は、クイーン・エメラルダス。宇宙を旅する、孤高の女海賊・・・・・・」
「海賊、って・・・・・・。ここ、どうみても宇宙じゃ・・・・・・」
「私は、宇宙海賊なのよ。それで、あなたの名前は?」
「あ、ええと、星野、一歌、です」
宇宙海賊という称号になんとなく釈然としないものを覚えつつ、一歌は名乗った。
「イチカ、か。どういう意味かしら?」
「両親が出会ったきっかけが、一つの歌だったらしくて、そこから一つの歌、すなわち一歌って名付けたって聞きました」
「歌、か・・・・・・、長らく聞いていない気がする」
エメラルダスは、感慨深そうに、窓の外に目を向ける。いくつもの星が、瞬いていた。
「地球は、もう誰もが自由に歌っていられる星じゃなくなってしまった・・・・・・」
一歌は、え、と思わず声を出してしまった。自分の知る地球は、人間もバーチャル・シンガー(本作においては、ボーカロイドなど合成音声ソフトに総称と定義する)も等しく歌声を響かせている。そこに、国や言葉、血の違いなどありはしない。一歌の反応を訝しんだエメラルダスにそのようなことを説明すると、エメラルダスは、バーチャル・シンガーなど聞いたこともないと返した。
「そんな! ミクを、ミクを知らないだなんて勿体無い!」
一歌は、思わず叫んだ。某「あげません!」と同じくらいの気迫だ。歴戦のエメラルダスも、これには少し
──そういえば、アルカディア号にも似たような人物がいたな。もしかしたら、馬が合うかも知れない。
エメラルダスは思った。その人物──ヤッタランと一歌は、趣味の方向性は違えど、オタクであることは共通しているのである。ヤッタランはプラモデル、一歌はバーチャル・シンガー。どちらも、己の「好き」をとことん追求しているのだ。もちろん、やる時はやると言う点も共通している。
「いつかは聞いてみたいものね、あなたの歌を・・・・・・」
「私の、じゃないです。私たちの歌。私には、仲間がいる」
「・・・・・・!」
「離れ離れになってしまったけど、きっと心は繋がってる。私は、そう確信しています」
一歌は、そう言い切った。
エメラルダスは、盟友とその友を想起した。彼らは、生涯の友だ。その片割れは命を落としたが、その魂は今も片割れと共にある。それでも、生身で語らえないのは、やはり辛い。しかも、その人物は、エメラルダスも愛していたのだ。
今の一歌は、仲間と心は繋がっている。だが、いつそれが途切れるか。エメラルダスの愛した男──トチローのように、命を魂を艦などに移せたならば、まだ救いはあろう。だが、それができるとは思えない。
エメラルダスは、自然と次のようなことを口に出した。
「あなたの仲間を、探しましょうか」
「・・・・・・え?」
いいんですか? 会って間もないのに、そんなことを・・・・・・。一歌は、戸惑いを覚えた。
それに、こうも思っていた。
──それは、自分から言うべきことだったのに。
エメラルダスに、理由を尋ねた。彼女は、
「私は、もう二度と生身で語らえなくなった者を知っている。彼らはまだ、共にある。けれど、あなたたちはそうすることがきっとできない。それは、とても偲びないことよ。だから、あなたの仲間を探す」
と言った。
一歌にとってそれは、願ってもないことだった。
彼女は、自分にできることならなんでもするという条件で、それを受け入れた。
こうして一歌は、クイーン・エメラルダス号の二人目の人間となったのである。
***
彼女が目を覚ましたのは、とある惑星だった。命の息吹を全く感じさせぬ、氷を思わせる場所だった。
「ここは・・・・・・? そして、私は、誰・・・・・・?」
そう、彼女は、宇宙を漂流したことによる酸素欠乏か、それともこの惑星に漂着したショックか、記憶を失ってしまったのだ。ただし、どこぞの不幸だと嘆く男子高校生とは違い、脳細胞が破壊されたわけではないため、うまく要素が絡み合えば、記憶が戻る可能性はある。
『お前は、誰だ?』
と、そんな声が響いた。だが、彼女には、声の主が女性であろうこと以外、何もわからない。自分が何者なのか、どうしてここにいるのか。考えてみても、何もわからない。ただ漠然と、戻らねばならぬ場所があるという思考だけが、彼女の中を渦巻いていた。
「私は、誰ですか・・・・・・?」
だから彼女は、質問に質問を返した。本来ならば無礼とされるこの行為だが、声の主は許容した。むしろ、それだけで、彼女の現状を把握した。
──ふむ、使えそうだ。
声の主は、自分はアンドロメダは機械帝国の女王、プロメシュームであると名乗った。
『そして、私は、お前に名を、立場を与えよう。お前は、我が娘、メーテルを名乗るがいい』
「私は──メーテル──」
メーテルと名付けられた彼女は、それを受け入れた。正確には、それを受け入れるほかなかったというべきか。
彼女は、体から汚れを洗い流した。アンドロイドらしき者たちが、恭しく彼女の衣服を受け取った。あれは何かとプロメシュームに尋ねると、「あれは、もとより命を持たぬ者。この大アンドロメダにおいて、多数を占める者。命は、すでに一つに集められている」と答えられた。彼女には、それが一体何を意味するものなのか、わからなかった。だが、それはどうでも良いことだと一蹴した。
彼女は、仮初の母に用意された装束に袖を通した。真っ黒な衣装は、彼女の美しさを引き立たせた。
『よく似合っている』
「ありがとうございます、母様」
その目は、ガラスのようだった。
プロメシュームは、メーテルに、999に乗れと命を下した。
「999・・・・・・?」
『地球とこの大アンドロメダを結ぶ、銀河超特急だ。幾らか無限乗車パスを持って行け。一枚を残し、相応しいと思う人物に渡せ』
一枚は、メーテルの分である。これが無くては、如何にプロメシュームの娘といえど、無賃乗車になってしまう。
メーテルは、それを了承した。
それから数日後、銀河超特急999が到着した。
メーテルは、999号に乗り込んで、地球への旅路を進む。その食堂車で、メーテルはある人物と出会うのだが、それはこの章で語るべきことではない。
大アンドロメダから地球までの所要時間は、半年。往復で一年かかる計算だ。
大アンドロメダへの往復の一年、999号にどのようなことが起こるのか。それはまだ、誰も知らない・・・・・・
別たれた四人の道は、こうして再び、交わろうとしていた。
999号のウエイトレス。
アルカディア号四一番目の乗組員。
クイーン・エメラルダス号の二人目の人間。
そして、プロメシュームの義理の娘。
今、離れ離れとなってしまった彼女たちの、新たなる旅路が始まる・・・・・・
いかがでしたか?
私は、プロセカのイベントストーリーを断片的にしか読んでいないので、「こんなことは起こっていない!」と言う部分もあるかと思いますが、本作ではそうなっているのだと納得してください。
さて、どうしてこの作品を執筆しようと思ったのか説明させてください。
どうも教室のセカイには駅が登場し、さらにそこから宇宙を駆ける列車が発着すると言います。だったら、それは銀河鉄道じゃないか。そこから、999とのクロスオーバーを思いついたんです。
でも、それだけだと何かが足りない。
キャプテンハーロックという曲を聴いて、ハーロックを書きたいと思いました。これで、ピースはいくつか埋まりました。
誰をどう関わらせるかというのは、意外とすんなり決まりました。最初は、一歌がハーロックの、穂波がエメラルダスのコスプレをするみたいに考えてたんですが、なんか違うなと。それで、次に志歩にハーロックの、一歌にエメラルダスの、咲希に鉄朗の、穂波にメーテルのコスプレをさせた絵面を思い浮かべました。これだと思い、組み合わせが決定しました。
本文でも明記した通り、本作には星野鉄朗とメーテルは存在しません。なので、本作に登場するメーテルは偽物という事になります(厳密に言うと、本作においてこのメーテルは本物だけど、原典におけるメーテルではない、と言うこと。あーややこしい)。まあ、この後書を見れば、メーテルが誰なのかはすぐにわかると思いますけどね。明らかに不自然に名前を伏せられている人物が一人いますし。
さて次回は──未定です!
大まかなロードマップはあるんですが、その詳細が一ミリも決まっていないと言う状態です。なので、更新はマジで不定期です(吾妻原、千生、背筋の作品では日常茶飯事ですが・・・・・・)。
どうぞ気長にお待ちください。
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