「ふじみ~! 久しぶり~~~!!」
「おー、さわ久しぶり。単位の目処がようやく立ったって?」
「そうなんだよ! ふじみーが家でゴロゴロしてる間にあっち行ってこっち行って講師に質問して参考書読んでと大変だったんだからー!」
「おい。人を勉強もやらずにぐーたらしているみたいに言うな」
――今日は久しぶりにさわとオシャレなカフェで会うことになった。
――半年近くメールだけしか連絡することもできず、私はすでに単位を取っているから大学で会うなんてこともなく、大丈夫かと心配していたけどいつも通りのさわだった。前より悪い意味で少し痩せたか? 今日は美味しいものいっぱい食べさせなきゃ。
――コーヒーとスイーツを持って席に座った途端さわが切り出してきたのは、予想通りのことだった。
「それよりふじみー! 何であんな面白そうなこと黙ってたの! ずっと勉強ばっかで友達から教えてもらうまで全然知らなかったんだよ!」
「んー? 何のことー?」
「あー! とぼけてるときの顔だー! おじさんのことだよおじさん! Twit〇erのトレンドにもなったし、異世界?の話がすごい広まってるらしいじゃん!」
「こ~らさわ、もうちょっと声小さくしろよ」
「落ち着いていられないよ! ネットとか良く見てる若い人で知らない人ほとんどいないんじゃない? 異世界肯定派が優勢で否定派も粗が探せないでどんどん勢力が縮小してるんだって! 私も一昨日から最初の配信を見直したけど、みんなの言ってるとおりCGとは思えない出来だったの! 掲示板とかふじみー見る? そこでいっぱい議論もされてるし、日々新しい否定派が現れては肯定派が論破するを繰り返してるんだよ! CGのクオリティー・リアル風じゃないリアル・謎の美男美女・大量のエキストラ・特定できない撮影場所・作り込まれた設定・異常なレベルの更新頻度……どれもこれも作りものとするには証拠が出揃ってるって! まだテレビや雑誌で公式に知る機会が無くてコレだよ? 信じてない人の中にはよく調べないで表面上のこと知っただけなんて人もいるの! 私もいっっっぱい喋りたいことあるのにふじみーと会えないしメールで聞いてもはぐらかされるし、実際どうなのそこのところ!!」
「長い長い。ノンストップで喋るな。要点をまとめろ」
「ふじみーはおじさんの配信のことどれだけ知ってる?」
「一通りは知ってるけど……」
「洗いざらい教えて!」
「断固拒否します」
「何でさー!?」
「さわ、自分の口の軽さ自覚してないのか? 前におじさんの事情を話した直後に友達にちょっと盛った話してたのに……*1」
「いや、それは……その~」
「目泳いでるぞ?」
――相変わらずさわはさわだった。
――コイツにだけはおじさんの秘密を私の口から言わないようにしないと。言った瞬間、友達にソッコー暴露してSNSに投稿する可能性大だ。しかも余計な尾びれ付きで。最悪、変な奴にさわが絡まれる可能性だってある。想像力も危機意識もあるのに、変なところに着地するのがさわという女性だ。
――気分を変えてコーヒーに舌鼓を打っていると……
「あああああああああっ!!」
「ちょ!? さわ、声が大きい! あぁ、すみませんすみません。何でもないんです。連れがおバカなだけなんです! ――こら、さわ! お店の中で大声はNGでしょうが何やってんのよ!?」
「ご、ごめん。じゃなくて、これこれ! おじさんがゲリラ配信してるの! うわぁ、生で見るの初めてだー」
「おじさんが? あぁ、雑談配信ってやつか」
農場主「糞オークめ! うちの大事な牛を食うつもりだな!」
村人「へっへっへ、さぁってオークの解体といきますか」
狩人「良く見てろよ。こうしておけば血が桶に溜まって地面を汚さずに済むんだ」
冒険者「アホなオークだぜ。首まで埋められてまだ寝てやがる」
【狩られすぎな映像】
おじさん:いやー、同居人に「ダイジェストでも俺が異世界でオークとして狩られてきた映像を編集して」と頼まれた時は無駄になるんじゃないかと思いましたが、本当に視聴者から要望があるとは……。スパチャ分は返せたと思う?
同居人:…………うん。スパチャしてくれた人はありがとうございます。事前に用意するよう推測して言っておいた甲斐がありました。同情した人もよろしければスパチャをどうぞ。
おじさん:本当はまだまだいっぱいあるんですけど、さすがにお時間が……
同居人:改めて……おじさん狩られすぎでしょ!
おじさん:1回寝ると滅多なことじゃ朝まで起きなくて……寝込みを襲われると見てのとおり吊され放題やられ放題なんだ。*2
同居人:よく生きて帰って来れたよね……
おじさん:獲物が無防備すぎるとせっかくだから手の込んだ処刑をしたくなるっていう人間心理が良い方向に働いた結果だな。
同居人:そんな人間心理知りたくなかった。
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・「……(T-T)」(無言の同情代) ¥3000
・何でだよーーー!! ¥500
・頼んでアレだけど……すんません ¥5000
・マジでよく生きて帰ってこれたなおじさん…… ¥800
・これでまだ一部だけとかマ?
・17年間のオーク狩りで生き残ったおじさんの豪運よ…… ¥500
・どれもメイベルの村の人たちみたいに無力化したんじゃないのか
・冒険者だから野宿も多いと思ったけど
・人が住んでる近くで野宿する度に狩られてるんじゃ……? ¥600
・おじさんの性質が異世界のモラルとミスマッチすぎて…… ¥900
・「老け顔」「寝ると朝まで起きない」が縛り過ぎる ¥400
・そこに過程での運の悪さも加えろ
・三重苦で異世界へGo!!
・3日でタヒぬ自信がある
・早急に強くならないと見世物小屋に売り飛ばされる危険も
・自分以外全部敵な異世界人! 笑えねえ…… ¥1200
・これはRTA走者も匙を投げかねん
・おじさんが何したってんだ。ただ寝てただけだろ…… ¥1000
・作りものにスパチャしすぎだろ。YouT〇berチョロいな俺もなるか?
・アホ1人追加
・顔の整った外国のエキストラ街単位で雇ってみてから言え
・【ミッション】同じ人物禁止で数百人の美男美女を用意せよ
・やれるもんならやってみろゴラぁ!
・どうしよう……異世界の人間心理ちょっとだけ分かる自分がいる
・クマと遭遇戦になるか、罠に掛かった状態で会うかの違い
・↑めっちゃ分かりやすい
「おじさん……!」
「ほらさわ、ハンカチ貸すから涙拭け」
「私もスパチャしなきゃ。少しでもおじさんを幸せにしなきゃ!」
「(こうやっておじさんは小金持ちになってくんだろうなー)」
同居人:続いてのマシュマロは――「おじさんが日本に帰ってきてビックリしたことは?」との質問です。
おじさん:全部、っていうのが正解なんですよね。何せ17年後にタイムスリップしたようなものだから、何もかも違って……。1番衝撃だったのはSE〇Aがゲーム機業界から撤退した件を病室で同居人に聞かされた時ですね。……本当に辛くてこっちに戻って最初に消した記憶だったよ。結局、紆余曲折あって思い出してしまった影響で数日は立ち直れませんでした。
同居人:俺も病室でおじさんの魔法を見て衝撃受けたんだよね。もう3年になるのかー。(『おじさんは衝撃が強すぎて記憶消去の調整をミスるほど動揺してました。記憶が戻った後、血涙(ガチ)を流して数日は40年ぐらい老け込んだ顔で白くなってました』と書かれたフリップを出す)
おじさん:他だと……あー、地味に『こ〇亀』が終わっていたのには驚いたな-。17年経ってたらそりゃ終わるかと思ってたら、割と最近まで連載してたって知ってさらに驚きました。*3
同居人:あの時のおじさんの反応は面白かった。
おじさん:それと……後に誤解だったと知って安心したので、俺が『笑って〇いとも』をテレビで見てた~って話を同居人にして、同居人は『笑ってはい〇ない』を見てた~という発言で「タ〇さんどうしちまったんだよ!?」と仰天したエピソードもあります。
同居人:本当に浦島太郎みたいな経験をしないと、現代社会で見ることのできない奇跡みたいな誤解ですね。
・SW:これで美味しいものでも食べてください! ¥1000
・2000年→2017年だもんな。そりゃ変わる ¥400
・やっぱりSE〇Aか
・絶対SE〇Aのハード撤退だと思った
・俺氏、SE〇A詳しくない。何でゲーム機本体作らなくなったん?
・色々理由はあるけど、他2社との競合で出遅れたのが原因
・確か需要と供給を満たせなかったんだっけ?
・そうそう。欲しい人に対して最新機種の数を用意できなかった
・ライバル2社が強かったのも大きいよな
・SE〇Aの歴史に詳しい人何でこんなに多いの???
・おじさん効果でSE〇Aの公式ページ行って学んでくるから
・立ち直れなかったおじさんが容易に想像できるw ¥500
・記憶消去したんかい。どれだけ耐えられなかったんだよ
・しかも、よりにもよって脳に作用する魔法の調整ミスるとか……
・血涙って本当に出るんですね……
・非常に希だけど無いわけじゃない。ただし、眼科へGoせな
・おじさんお疲れ様です ¥600
・『こ〇亀』懐かし。すごい続いたよね
・しかも毎週連載(休み無し)を数十年だからな
・弁当の黒豆のような存在だったのに残念
・↑黒豆だったらいらないよねソレ
・バカヤロー。黒豆やきんぴらゴボウ無かったら悲しいだろ
・おじさん『笑って〇いとも』見てたのか
・何か意外
・自分は『笑ってはい〇ない』シリーズ大好きだった
・大晦日に放送されるその年の混沌を詰め込んだ番組
・デデーンッ! おじさん、OUT!
・異世界で一生分のOUTくらってるんで許してあげて
・www
・なんて奇跡的な誤解なんだ。腹痛い ¥1500
・おじさんは本物だ。でないと、こんな言葉出てこない ¥500
・タモ「笑っては~?」出演者「「「いけないとも~!」」」
・草が多すぎてもう大草原だわこんなん ¥800
・何てコメするんだ。脳内再生で鼻水噴いた
・その時の映像、精霊経由で映し出せん? 絶対おもろい
・浦島エピソードに困らないだろおじさん
「もしかしてあの時の血って――!?*4」
「うん。つまり……そういうこと」
「待って!? よくよく思い出したら初めてたかふみくんの家行った時、私の前でも光る板みたいの出してたよね? アレってもしかしなくても!?」
「ご想像にお任せします」
「その後、私と千秋くんの頭に手をかざしてたけど……私たち記憶消されかけてたの!? え? え? 恐ぁっっっ!!」
「さわ……世の中には知らない方が良いこともあるんだよ?」
「ふじみー!?」
同居人:続いてのマシュマロは――「ドルド山の祠がヤバそうで異世界言語覚えるのが難しいようですが、おじさんと同じ『翻訳』のチート取れば仮に異世界に行っても一先ずは生き延びれますか?」との質問です。
おじさん:神に『翻訳』をくれと願えば叶うのでしょうが……いくつか問題点があります。
同居人:ほう? その問題点とは?
おじさん:1つは、言葉を通じ合わせたい相手と心から望んで対話したいと思うことです。軽い気持ちでは発動しません。現に俺は『翻訳』を持ってても英語がからっきしです。本気で英語を理解したい・英語で相手と話したいと思ったことがないからでしょう。
同居人:なるほど。日本に戻ってきた日に病室で魔法を使えるようになった時もそれだけ必死だったんですね。
おじさん:同居人が何かの資料持って腫れ物扱うみたいな目で見てきたので「あ、これ本気でアピールしないと捨てられて死ぬな」と思って真剣でしたから。
同居人:ところで! もう1つの問題点は!?
おじさん:常に精霊の声が聞こえるようになることですね。精霊って自然の集合意識というか……目に見えない妖精みたいな存在じゃなく、もっとフワッとしたものなんです。
同居人:え? そんなフワッとした存在と対話できるんですか?
おじさん:頭の中にボワ~と何が言いたいのか流れこんでくるイメージですね。かなり大雑把な思考?をしてたりしますが、だからといってぞんざいに扱ってはいけません。そういう負の感情には敏感なのです。――ほら! 今もそこら中から精霊の声が聞こえてきますよ~~~!
同居人:……おじさん、それ、大丈夫なんですか?
おじさん:ははは、そんなの……
おじさん:見てのとおりさ。
・出たなドルド山の祠問題
・あの時の映像をスローで見ると何か建築物が崖に落ちてるんですよね
・神様もまさか山ごと斬り裂く人類が登場するとは思うまい
・一応は『翻訳』で大丈夫そうなのか
・問題?
・心から相手と対話したいと思う気持ちねえ……
・おじさんの時、どうだったっけ?
・冒険者3人に襲われて死にかけてたな ¥400
・死の間際で言葉が通じれば~って願ってた
・精霊の時は……うん。会話の相手欲しいよね ¥300
・マジで心が壊れ始めてたしね。光に語りかけなきゃ詰んでた
・どっちも真剣だな。よし!
・病室で魔法使うとか危ねえな
・おい同居人!!
・コイツ、おじさんのこと切り捨てようとしてたな!
・でも気持ちは少し分かる
・昏睡状態から覚めた親戚に会ったら「異世界で~」と言ってきたら……
・「はいはい、そうですねー」って流す自信があります
・これはおじさんも必死になる
・露骨な話題転換
・精霊の声が聞こえるのがいいんじゃない。何が問題だよ?
・精霊って個別にいるんじゃないのか
・夢がないな。手の平サイズの女の子いないのかよ
・そこら中から? ねえ、ヤバいこと気付いたんだけど
・奇遇だな。俺もだ
・もしかして……『翻訳』ってオンオフできない?
・「見てのとおりさ」(狂気が感じられる笑顔)
・ちょっと待てい!! デメリットが大きい!
・おじさん24時間幻聴に悩まされてるって事!? ¥2000
・精神がイカれるわ!
・しかも頭の中にボワ~ッと入ってくる謎の声(複数)というおまけ ¥800
・相手は自然の集合意識だからそこら中にいるという絶望
・防ぎようがねえ!!
・おじさん、精神科に一度行った方がいい(真顔)
・SW:これ通院代です ¥3000
・睡眠薬代 ¥5000
・良い精神科医紹介できるよ
・みんな優しい
・オマエら、絶対に『翻訳』だけは取るなよ。取っても精霊とだけはダメ
・異世界人と話せるだけで生き残る力が無いのですが……?
・そもそも異世界に行かないのが正解だからな
・そういえば普通の顔でオーク扱いがデフォだった
「………………」
「さ、さわ……?」
「……おじさんに、辛くなったら周りに相談するように言ってね? 早まった真似だけはしないように言ってね(泣)」
「あ、うん、分かった」
――それから、涙を堪えるしかできないさわを心配した店員さんが来たりと、これ以上2人でお店にいるのが難しくなってその日は結局解散になった。
――「自殺だけは絶対にダメだから諦めずに前を向いて生きて!」とおじさんに伝言を頼まれた。たぶんさわの妄想の中でおじさんが何度も悲惨な末路を辿ったんだろうな。
――「男の人なんだから夜のお店でストレス発散させるのも視野に入れた方が! あ、そもそもエルフさんやメイベルさんってこっちに来てるの? 体で慰めてあげなよ!」と気遣いすぎて変な方向に会話が流れそうだったから強引に別れた。
――宗教の教祖だと思って警戒してた子が随分変わったものだと考える疲れた1日となってしまった。
さわさん登場。
妄想力が逞しくてたまに暴走する子って面白いですよね。
口が軽くなければ藤宮さんと秘密を共有できたのに……
次はアリシアたちとの再会ですね。お楽しみに。