ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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ハリポタ一挙放送が始まったらしいので初投稿です。
秘密の部屋編、開始。



秘密の部屋
第19話 夏休み、ホグズミードにて


 私の夏休みは中々に大変な状況になっていた。

 

 まず1つ。私が守護霊の呪文を完璧に使ってみせた事がお爺様に伝わり、それならばと声を届ける使い方とやらを教わった。

 

 どうも先せ……お母さんがそれはもう大興奮で伝えてくれたらしい。

 顔を見せに来たお爺様も大層嬉しそうだった。

 まぁそれはともかく、その使い方まで完璧になるのに半月は掛かった。

 

 次に、スネイプの宣言通りにひたすら厳しい鍛錬が始まった。しかも頻繁に。

 実戦を考えてのガチな指導で、厳し過ぎて泣きそうになった。

 しかし強くなるのは私も望む所。必死に食らい付いている。

 

 

 そしてお母さんの指導の下、クィディッチの練習までもが始まった。

 何故かって? まぁ順番に語ると……

 2年生になれば自分の箒を持ち込んで良い訳で、私にも箒をプレゼントしてくれたのだ。

 なんとその箒がシルバーアロー、やたら特別感のあるアレだ。

 

 お母さんが気に入って保存していた物らしい。

 ただのクィディッチ狂じゃなく、学生時代に選手として大活躍していたのもあって箒も好きなようだ。

 

 白銀の美しい箒に見惚れ、私もこれに乗ってクィディッチをやりたい、と思わず溢してしまった。

 それならばとお母さんが張り切った結果だ。

 

 私が参入したら原作のチームメンバーが……と悩んだけれど、開き直って選考に挑ませてもらおう。

 一応チェイサー志望だ。クソルールの所為で一番可哀想と言っていい立場だけど、青春の1ページを彩る為ならクソルールも受け入れよう。

 

 ちなみに、シルバーアローは今となってはかなり古い物。だから最高速度は控えめだ。

 しかしそこ以外は素晴らしいの一言だし、お金を出してカスタムすればある程度は改善出来る。

 なんでも、既に競技用にカスタムされた物が市販品になる現代の箒と違い、昔の箒はその辺りを自分でやるんだとか。

 

 だからガッツリとカスタムさせてもらった。選手を目指すなら必要な事、とたっぷりお小遣いまで貰ったからね。

 お陰でかなりマシになった。ハリーのニンバス2000に並ぶかと言うとそこまででは無いけれど……やっぱり作られた時代が違う分劣るのは仕方ない。

 

 それでも私としては大満足。毎日を厳しく楽しく過ごしている。

 

 

 

 

 

 

 そんな日々を繰り返す中で、気付けば8月へ突入した。

 今日からハーマイオニーがここ、ホグズミードに滞在する事になっている。

 

 これは彼女からのお願いだ。この1ヶ月でかなり勉強したけれど、どうしても呪文の練習がしたいらしい。

 その事をお母さんに話してみれば、少し悩んだだけで許可された上にスネイプの厳しい指導が一旦終わった。

 

 お爺様に説得されたからとは言え、私が好き放題に魔法を使っているのをお母さんは容認しているのだ。

 呪文を練習したいと言う彼女に駄目とは言えないだろう。

 

 むしろ根本的に不公平な未成年魔法使いの云々を気にしていたらしい。 

 そもそも3年生時に逆転時計を使わせるくらいに目を掛けてるんだし、これくらいは許容範囲なのかな。

 至極真面目な向上心だと認めて信頼してくれてるのもあるだろうけど。

 

 

 まぁそんな訳で……お母さんが迎えに行き、ハーマイオニーが到着したのがついさっきの事。

 魔法を使う事に関してはあくまで黙認、という形なのですぐに私達だけになった。

 

「さて……じゃあまずは荷物を置こうか。あ、手紙にも書いたけど寝るのは同じベッドになっちゃうからね」

 

「そんなの別にいいわ」

 

 簡単に家の中を案内――案内する程の広さでもないけど、一応して。

 しばらく自分達だけで生活する事を伝える。炊事洗濯掃除、全部だ。これが条件とも言える。

 まぁそういう生活も魔法を使う練習になるだろう。前向きに捉えよう。

 

 ベッドに関しては悪いけど同じになる。無い物は仕方ない。

 というか年頃の女の子と生活を共にする事そのものに若干思う所はあるけど……学校生活を考えたら今更だね。

 

「それにしても……これが魔法使いだけの村なのね。なんだか素敵」

 

 荷物を置くと窓から外を眺めて、そんな感想を漏らした。

 そうだろうそうだろう。のんびりしていて、適度に賑やかな良い村だよ。

 

「早く呪文の練習がしたい所だけど……ちょっと観光とか……いいかしら?」

 

「勿論。むしろそのつもりだったよ」

 

 流石の彼女でも、来たばかりの今は気が逸れまくりらしい。

 ソワソワと遠慮がちにそう言った。

 そんなのは最初から織り込み済みだ。ホグズミードに招待して観光しないなんて有り得ない。

 

 よし、じゃあ来て早々だけどお出掛けしようか。

 

 

 

 

 昼は過ぎていたけど食事はまだらしかったので、まずは三本の箒でお腹を満たす所から。

 パブだけど学生も多く来る店だから、バタービールを始め食事だって色々ある。

 まったりと昼食を終えると村の散策へ繰り出した。

 

「お小遣いは多めに持ってこいって言ってたけど……確かにこれだけ色々あると納得だわ」

 

「休日にはホグワーツの生徒が来るから、当然それに合わせて店も賑やかになるんだよね」

 

 軽く見て回るだけでも随分と楽しそうにしてくれている。

 遊びに来れるのは3年生以上だから、彼女としては先取出来てラッキーだったかもね。

 

 悪戯グッズは彼女の好みでは無いだろうけど、お菓子だとかは別だろう。

 純粋に楽しんでくれてる様で私も嬉しい。

 

 他にも色々と店を覗いていったものの、ホッグズ・ヘッドだけは近づかなかった。

 あの怪しくて陰気なパブは子供が行く店じゃないし……何よりお爺様の弟、アバーフォースの店だ。

 

 私は会った事も無ければ、お爺様に聞かされた事も無い。だけど同じ村なのだから向こうは私を知っているだろう。

 どうしていいか分からないから距離を置いている訳だ。多分、お互いに。

 

 まぁそれはともかく……

 

 

「ある程度見たし、最後はここだね。トレス・エンポリアム」

 

「……何、ここ?」

 

 私が看板を指差すと、ハーマイオニーは首を傾げた。

 ここは彼女にとって重要なお店だ。ここだけは絶対に連れて来たかった。

 

「私はね、常々思ってたんだ。ハーマイオニーはそのボサボサの髪をなんとかするべき!」

 

「な、なんなのよ……急に」

 

 看板から彼女の頭へと指を移し、勢いよく言った。

 ハーマイオニーはボサボサと指摘されて赤い顔で髪を抑えた。気にはしてたのか……

 

 ここは所謂美容室……まぁ髪を好みに合わせて弄ってくれるお店だ。歴史の長い店で信頼も厚い。

 魔法薬も併用するからマグルの店とは全く違って、切るどころか伸ばすのも癖の矯正も自在なのだ。

 

「ちょっと色々無頓着過ぎ!」

 

 気にしてたなら尚更だ。何故ボサボサのままでいるのか。

 私はちょっぴり怒りながら、もう一度強めに伝えた。せっかく可愛いのに勿体無い!

 

「あなたに言われたくないわよ! そりゃ、アリスは可愛いし整ってるし綺麗な髪だけど……だらしないわ! さっきチラッと見えたけど、脱いだ服とかそのまま放り出して――」

 

「そ、それとこれとは話が別! とにかく入るよ!」

 

「ちょ、ちょっと……あーもう、なんなのよ!」

 

 すると反論されてしまった。確かにだらしないかもしれないけど、見た目に関してはかなり気を遣ってるのだ。

 お母さんみたいな事を言い出したので、続けられない内に手を引っ張って無理矢理に入店した。

 

 入ってしまえば途端にキョドキョドと慌て始め、店員と私に促されるまま、されるがままになった。

 観念しなさい。君は原作より一足……いや二足早く変わるのさ。

 

 

 

 

 

 

「どう……かしら?」

 

 されるがままに終わって会計を済ませ、店を出ると恥ずかしそうに聞いてきた。

 

 ボサボサだった栗毛は整えられ、長さは殆どそのままで僅かにウェーブの掛かった綺麗な髪だ。

 これぞゆるふわ美少女。うーん……素晴らしい。

 

「良いよ良いよー。ていうか満更でもなさそうじゃん」

 

「うるさいわね……」

 

 予想以上に良い結果になったので、私は笑顔で拍手した。

 恥ずかしそうだけど、それ以上に嬉しそうだ。

 髪の癖が強くて諦めてただけなんだろうな。

 

「これからはお手入れもしようね。スリーク・イージーの直毛薬を付けて櫛で梳くと良いよ」

 

「……定期的に買う事にするわ」

 

 髪は大事だ。私もその辺りだけは昔からキチンとしている。

 これで彼女の髪の強い癖はほぼ消えただろう。後は日々のお手入れで充分だ。どうしても癖が強くなってきたらまた来れば良い。

 オススメを教えてあげると、やっぱり満更でもなさそうに受け入れた。

 

 

「ち、ちなみになんだけど……その……美容整形的な物はあるのかしら? いや、そんな大掛かりな物じゃなくていいんだけど……」

 

 そして歩き始めると、更に恥ずかしそうにボソボソと言った。

 美容整形……? 何をするつもりなんだ?

 

「ハーマイオニーは最初から可愛いよ?」

 

「かわっ!?」

 

 そんな事しなくても充分可愛い。初対面の時から美少女だと分かっていたからね。

 素直に伝えるとハーマイオニーが沸騰した。真っ赤だ。

 

「でもまぁ、そういうのは聞いた事無いかな……」

 

「そう……いや別に残念ではないのだけど……」

 

 しかし正直私は聞いた事が無い。魔法でどうにか出来そうだけど、癒者の領分だろうか?

 彼女は言葉とは裏腹に、思いっきり残念そうに呟いた。

 

「何がしたかったの?」

 

 一体そんなに何を変えたかったんだろう。そう思って訊ねると、赤い顔のまま俯いた。

 

「…………歯」

 

「歯?」

 

 そしてさっき以上に恥ずかしそう、というか消え入りそうな声で答える。

 そうだ思い出した。あんまり描写は無かった気がするけどそうだった。

 

「前歯がね……大きいのがコンプレックスなの」

 

 ごめん、言わせる様な真似をして。

 原作だと歯呪いを受けて巨大化してしまって、それを治す過程で元より小さくしたんだったか。

 しかしそうなると答えは単純だ。

 

「……魔法で良いじゃん」

 

 同じく魔法で小さくしてしまえばいい。

 たったそれだけで解決する話だ。

 

「どんな!? そんな魔法があるの!?」

 

 私がそう言うと、彼女はガバリと勢いよく顔を上げた。

 というか私に掴みかからんばかりに迫ってきた。

 

「れ、レデュシオ、っていう縮小呪文」

 

「是非教えて!」

 

 勢いが凄い。

 

「……自分で唱えて自分の歯を、なんてどうやってやるのさ」

 

「じゃあお願い!」

 

 そうなるよねー。

 

「はいはい……帰ったらね。言っとくけど、人の……それも顔なんて複雑な箇所に魔法を掛けるのは凄く難しいからね。失敗はしないようにするけどさ」

 

「頑張って!」

 

 一応、私には出来ないかもしれないという可能性を伝えた……のだけど応援の一言で終わった。

 仕方ない……頑張るか。話を掘り下げた私の責任だ。

 

 

 

 

 それから勢いの落ちない彼女に連れられて家に戻った。

 遊び歩いた時間が思ったより長かったのか、もう日が暮れ始めている。

 

「さぁ、じゃあアリス……お願い」

 

「……うん」

 

 椅子にちょこんと座り畏まった。

 戻るなりこれだ。

 

「じゃあ、イーッてしてて。動かないようにね」

 

「いー」

 

 歯の大きさなんてミリ単位の調整だ。いやもっとか?

 控えめじゃあまり意味は無い。かと言ってやり過ぎても駄目だ。

 とにかく頑張れ、私。

 

「いくよ……レデュシオ」

 

 ハーマイオニーが恥ずかしそうに歯を見せ、私はそれに向かって杖を振った。

 

 集中しろ……他の歯にまで呪文の効果が及ばない様に、しっかり前歯だけに限定して……

 ほんの少しずつで良い……0.1ミリずつでも良いから少しずつ、少しずつ……ゆっくり……

 

 まぁ極端な話、縮小と肥大化の呪文でいくらでも修正は可能なんだけど、それが私に出来るとは言えない。

 だから絶対に失敗しないよう、時間を掛けて極限の集中でもって歯を小さくしていき……見た感じ丁度良いと思った所で止める。

 

 

「…………良し! 成功! はい鏡!」

 

 終わらせた勢いのまま手鏡を渡してやると、ハーマイオニーはしばらく放心した様に見つめ続けた。

 ちょ、不安になるから何か反応を……失敗してないよね、成功したよね。大丈夫だよね?

 

「――泣きそうだわ。最高! あなたって最高よアリス! ありがとう!!」

 

 椅子から跳び上がって抱き着いてきた。

 良かった……満足してくれたみたいだ。というかそんなに喜ばれると私もなんだか気恥ずかしい。

 

「あー……一気に疲れた。こんなに神経使うなんて……私に癒者は無理だなぁ」

 

 前歯だけでこれか。癒者の人達は凄いな……

 この間お世話になっただけに、尊敬しかないや。

 

「両親が歯科医だから魔法で解決するのはどうなんだろうってちょっと思ったけど、やっぱりお願いして良かったわ!」

 

 なるほど、彼女の性格なら両親の仕事を否定する様な真似はしたくないと考えちゃうか。

 それでも思い切って魔法に頼る辺り、本当に強いコンプレックスだったんだろう。

 

「髪は整って、歯は小さくなって……まるで私、別人みたい! 最高の気分よ!」

 

「まるで別人だよ。本当に。色々と」

 

 ハーマイオニーは私から離れると、ご機嫌にクルクルと回って踊り始めた。

 何してんの……別人っていうかなんかキャラ変わっちゃってるけど。

 

「でしょう? あぁ……なんだかお洒落とかもしてみたくなってきたわ! この村ってそういうのはあるの?」

 

 私が若干呆れてる事も理解してくれてないらしい。

 今度はお洒落を気にし始めた。コンプレックスから解放されて一気に変わったみたいだ。

 

「そりゃあるよ」

 

「じゃあこれから……はもう遅いから、明日はそういうお店を周りましょう!」

 

 決して大きくはない村だけど、お店はちゃんと揃ってる。

 というか衣服を扱う店なんて当たり前にお洒落な物を売ってるもんだ。

 

 しかし彼女はここに来た目的を忘れてしまったらしい。

 

「……呪文の練習は?」

 

「そんなの後よ」

 

 呆れ続けている私が聞くと、なんともアッサリ返された。

 忘れてるんじゃなくて後回しときたか。本当に別人になってしまった……

 

 まぁいいか。年頃の女の子らしいっちゃらしいものね。

 

 

 

 

 

 唐突にお洒落に目覚めたハーマイオニーは翌日、丸1日使って店で服なんかを物色した。

 アドバイスや感想を求められて大変だったけれど、普通に楽しかった。

 

 多めに持って来させたお小遣いをたっぷり使った彼女は、12歳という年頃の女の子らしく大層様変わりした。

 うん、良いね。可愛い。ていうか魔法界の物価が安くて良かったね。

 

 惜しむらくは、1年の殆どを野暮ったい制服のローブで過ごす事か。

 多分彼女はその事を忘れているだろう。

 

 映画だとキャラ付けの為か私服のイメージが強いけど、実際は休日くらいにしか着ないのだ。

 その休日だって制服を着る人も少なくない。私服で荷物を増やす方が面倒なのかな。

 

 

 ちなみに、私のアドバイスや感想は中々に彼女の参考になったらしい。

 しかしまさか下着の相談までされるとは思わなかった。気まずさがとんでもない。

 

 そりゃあ幼過ぎたりダサい下着なんて嫌だから、私だってそういう所にも気を遣っている。

 見た目が幼かろうと、背伸びしたい年頃なのさ。

 

 けど私はデザインでしか選んでないしブラなんて買ってもいない。

 そこはもう好みだから、と放り投げるしか出来なかった。

 

 むしろ私のブラを選ばれたくらいだ。必要……あるのか?

 未だにペタンコなんだけど。いやちょっとくらいは膨らんでるけどさ。

 

 ともかく、どれくらいから必要なのかという知識が無いから渋々従った。

 自分を受け入れたとは言え、やっぱりこういう変化には戸惑ってしまうな。

 だけどそれはそれで普通の子供らしい事なのかも。

 

 

 

 そんな彼女も、3日目からは目的を思い出してくれた。

 今度は一転して物凄い熱意で呪文の練習を繰り返し、どんどん物にしていく。

 入学前に使って家に置きっ放しにしていた魔法書で学んでいる訳だけど……当時の私よりも習熟が早い。

 なんだこの差は。悔しい……

 

 とは言え私だって成長しているんだ。まだまだ追い付かれはしない……筈。

 現に私の魔法の腕は格段に良くなっている。なにせ杖が応えてくれたのだから、単純に呪文がより上手く扱える様になった。

 しかもそこにお爺様やスネイプの指導もあったからね。

 

 そして呪文の練習だけでなく、決闘の様な事も織り交ぜていった。

 どうも彼女はあの夜に戦えなかった事が本当に悔しかったんだとか。

 この時点でパワーレベリングしていく彼女はどうなってしまうんだろう。

 

 とは言え、こっちに関しては追い付かれる事は早々無いだろう。

 どれだけ呪文を扱えようと、やっぱり反応の速さだとか避けるだとかになると彼女はまだまだだ。

 動くよりも前に、何の呪文を使えば……と考えてしまうらしい。直感的に動くばかりの私とは大きな違いで、これはこれで私の学びにもなった。

 

 

 

「あ……梟だ。ていうかヘドウィグだ。ハリーから手紙が来た」

 

 そんな日課になりつつある決闘ごっこを家の裏手でした後。

 服の汚れを落としてまったり感想会をしていると手紙が届いた。

 

 そういえばもう8月に入って1週間以上も経っている。

 確かハリーがウィーズリー家で過ごし始めるのも8月からだった筈だ。

 どうやら問題無く物語通りになっている様だ。いや、問題があったからこそなんだけど。

 

 しかし1週間以上経ってようやく手紙とは。ウィーズリー家での生活が楽しくて忘れていたのだろうか。

 いや、それはこっちも同じか。ハーマイオニーとの生活が楽しくて、手紙を送るのをすっかり忘れていた。

 

「本当? いくら送っても返事が無かったって言ってたのに……」

 

 ドビーに回収されると分かっていても、一応私は手紙を出していた。

 後から1通も出してなかったと知れたら気まずいし……返事が無い事で事態の確認もしたかったからね。

 

 片やハーマイオニーは誰にも手紙を出していなかった様だ。ひたすら勉強をしていて、運んできた梟に返事を渡していただけらしい。

 でもまぁ、そもそも梟を飼っていない彼女がマグルの家からどうやって手紙を出すのかって話だ。この村の様に郵便屋がある訳でも無いのだから。

 

「あら、また梟が――あっ」

 

 私がハリーからの手紙を開いた瞬間、ガラスの割れる音が響き私は跳び上がった。なんだよ驚かすな。

 

「……何事?」

 

「……梟が突っ込んでいったわ」

 

 パチクリと2人揃って、割れた窓を眺める。

 どうやら手紙を派手にお届けしてくれたらしい。

 

「死んだ……?」

 

「なんとか生きてるみたい」

 

 ハーマイオニーは窓を乗り越えて家に入り、私は恐る恐る様子を伺った。

 ていうか出入口じゃないんですけど……後で直さなきゃ。

 

「こっちはロンからだわ」

 

 そういえば彼が使う梟はかなりの年寄りだった。

 運が良いのかガラスを突き破っても大きな怪我はしていないみたいだ。

 魔法界の梟は頑丈だな……普通の鳥なら窓を割るどころか、ぶつかった時点でおしまいだろうに。

 

 それでもぐったりとしていて心配なのは変わらない。

 放置は後味が悪いので、手紙を後回しにして梟を治療してくれそうな店に向かった。

 ちなみにヘドウィグはお利巧なのか、返事を書くから待っててくれと言うとその辺の木で休み始めた。

 

 

 

 

 

 

 出来る限りの治療を終え、家に戻って窓を直してから、ようやく手紙の確認を始めた。

 内容としてはまぁ、私の知っている通りだった。

 

 屋敷しもべ妖精のドビーの所為で大変な事になって軟禁……むしろ監禁され、そこをロン達が空飛ぶ車で助け出してそのままウィーズリー家で生活中。

 ハーマイオニーに届いた手紙も殆ど同じ内容だった。

 

 しかし先んじて私達に伝える事はせず、事後報告とは。

 でもそうか、原作とは違って今は私も居る。あの梟で事前に手紙を2通送るのは無理そうだものね。

 

 そんな報告の最後に、ウィーズリー家に遊びに来ないかというお誘いがあった。

 それが無理でも、日を合わせてダイアゴン横丁に新学期の買い出しに行かないか、とも。

 

「遊びに行っても良いかもね。煙突飛行で行けばすぐだろうし」

 

「そっか、魔法使いの家って暖炉で移動出来るんだったわね」

 

 便利な事だ。ウィーズリー家とこの家で直接移動すれば日帰りで何日でも遊べる。

 流石に私達まで泊まるのは申し訳ないし。

 

「まぁ私は使った事無いけどね。勝手に何処へ行くか分からないって煙突飛行粉を買ってくれなかったから……」

 

 問題は私でも使った事が無いという事だ。どんな物なのか具体的に知らない。

 お爺様とお母さんに使ってはいけないと言い付けられていたからだ。

 いくら私でも勝手に何処かへなんて……いや、ダイアゴン横丁くらいは行っちゃうかも。だからだろうな。

 

「あなたってどんな……」

 

「好奇心って大事だよね」

 

「……そうね」

 

 なにやらツッコミを貰いそうだったので遮っておいた。

 余計呆れられた気がするけど。

 

「まぁこれはお母さんに言えば許可してくれるだろうし、遊びに行くよって返しちゃおうか?」

 

「それも面白そうだし、賛成よ」

 

「よし、じゃあサクッと返事を書いちゃおう」

 

 もう2年生になるのだし、行先が分かってるなら大丈夫だと思う。許可を取りつつ使い方を教えてもらおう。

 ハーマイオニーも賛成らしいので、とりあえず日を決めて返事を返しておこう。無理だったらまた連絡すればいい。

 

 彼らは私達が一緒に居る事は知らないから驚くかもしれないな。

 それ以上に、ハーマイオニーがこんなに可愛くなった事に驚くか。

 

「……これ、返事はヘドウィグに持たせた方が良さそうね。というかこの子、ちゃんと飛んで帰れるのかしら。今度こそおしまいになってしまいそうなんだけど……」

 

 私が羽ペンと羊皮紙を用意していると、ハーマイオニーが不安そうに言った。

 確かに……治療をしても全然駄目だものね。

 

 止まり木にさえちゃんと立ってくれず、ポトリと落ちていく始末。悲劇的だ。

 

「1通に纏めよう。その子は……まぁ、帰れる事を祈るしかないね」

 

 とりあえずこの子についてもちゃんと書いておこう。

 悲しくなる程にもう限界だ。もし帰らなかったらそういう事なのだと説明しておかないと……

 

 という事で、私達の近況を軽く伝えつつ……日と時間を決めて暖炉で行くよと手紙を送った。

 いや本当に無事に帰ってくれる事を祈るよ。





【シルバーアロー】
何故かやたらと特別感のある古い箒。
たった1人の職人が手作りで拘り抜いた逸品であり、その所為で生産が追い付かず消えてしまった。
と言うと、他の箒は量産品として生産が組まれてるのだろうか。

実はかなり高齢らしいあのマダム・フーチが箒に乗る事を覚えた物。
彼女は最高速度が時速240キロを超えるファイアボルトを前に、その半分の速度さえ出ないシルバーアローがどれ程良い箒だったかを語った。
それだけ評価の高い箒だったのだろう。

少なくとも競技用の箒という枠組みがあるのは確かだけど、カスタム等に関しては独自設定。
市販品そのままを使わなければならないというルールが見当たらなかったので。
もしそういうルールがあったとしても、ここではこの設定で行きます。
レガシーでもクィディッチではないにしろカスタムしてたし……


ニンバス2000はハリーと被るし、2001はスリザリンが使用。
他の箒もなんだか特徴が無いので色合い的にもシルバーアローに。
しかしどうあっても古い箒は現代の箒に敵わないので、大部分を妄想で補う羽目に。

数百年レベルの年代物が普通に現役な魔法界にしては珍しく、箒は新しくなる程により優れた物が作られるらしい。



【トレス・エンポリアム】
ホグワーツ・レガシーでのホグズミードに存在したお店。
キャラクターの見た目を変える事が出来る。
ゲームシステム的に用意された物だろうけれど、ここではその店が髪専門で長く続いているという設定で。



【煙突飛行粉】
フルーパウダー。燃える暖炉に投げ込むと炎が緑色になり、触れても温かい風の様に感じる。
その中に入り行きたい暖炉がある場所の名前を言うとそこへ移動できる。
ただし正確に言えなければ事故が起き、灰を吸い込んで咽ようものなら何処へ行ってしまうか分からない。

移動中は渦に呑まれる様に謎の空間を通り、様々な暖炉が見えるとかなんとか。




【レデュシオ「Reducio」】
対象を縮小させる呪文。人間に使うのは複雑で危険だとされる。
その対象は物体に限らず、炎を小さくしたり出来る。



【ディミヌエンド「Diminuendo」】
音楽用語だけれど、れっきとした縮小呪文。
上記と何が違うのか不明だが、人間相手に使う事が想定されるっぽい?
映画にてダンブルドア軍団での練習中、人形に使用している場面がある。
構造のシンプルな人形相手じゃ練習にならないタイプの呪文だと思うが……



【エンゴージオ「Engorgio」】
対象を肥大化させる呪文。レデュシオの反対呪文として同時に学ぶだけあって、まさしく反対の効果としか言えない。
やはり対象は物体に限らない。

しかしこちらは対象を一定以上大きくしようとすると爆発するらしい。
なのに動物に使っても安全とか言っている。

食べ物を大きくする事で量を増やせる、便利どころじゃない呪文でもある。





レデュシオとエンゴージオはどうやら2年生の範囲っぽい。
ハーマイオニーなら普通に知っていそうだけれど、ここでは教科書を買う前でまだ知らなかったという事で。

しかし梟はどうやって手紙を届けているのか、不思議です。
人の言葉や住所を完璧に理解している訳は無いでしょうし、個人を探知する何かを備えているとしか。
実際ヘドウィグはハリーを追いかけたり、住所不定の相手でも手紙を届けています。
なのでここでは相手の現在地を知らずとも手紙を送れる設定にしました。

ちなみに原作ではハーマイオニーがハリーに手紙を出していましたが、アレは何処からか梟を使ったのかマグルの郵便だったのか……
郵便となると送れる相手がハリーだけになってしまうので、勉強に夢中で自分から手紙を送る事はしていないという形に。



追記
Q.逃亡中のシリウスや、隠れているヴォルデモートに梟を送って見つけられるのか?
A.魔法使いは建物を隠蔽するのと同じ様に、自らの追跡も不可能に出来る。
という原作者からの答えがあったらしい。

追跡させないとかなんとかは正直後付けな気がしなくもないけれど……
そうなると、逆説的にやはり梟は追跡出来るという事になる。
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