本来英語なので全員「I」で喋ってますが雰囲気です。細かい事はいいんです。
TSには好みの別れる要素がいくつもありますが、私の性癖は「男であると自覚した上で女の子らしく振舞う」なので曲げません。絶対です。
さーて、この4年色々ありましたよ、と言う訳で……時間はドーンと飛んでこんにちは。
体はあんまり成長してないけど、知識は増えた。技術も身に付けた。
何故か決闘を教え込まれたのは疑問だけどね。ここはレガシー世界だったのかと思うくらいに物騒だ。
まぁその辺りを学ぶのは生き残るのに必須。願っても無いから真面目に学んだ。
ともかく今日は大事な日、大きなイベントがある。
もうホグワーツの入学も間近――つまり学用品の買い出しへ行くのだ。
行先は勿論、あのダイアゴン横丁。
いやー、魔法界にもだいぶ慣れたけど、流石にこれは楽しみだな。なんせホグズミード周辺しか知らないからね。
この4年で私も変わった。
中身が大人の男だという事は自覚しつつ、自然と子供らしく振舞う様になった。
環境の変化の所為なのかは分からないけど、まぁ楽しいから良いだろう。
後はまぁ、こうして心の中でも私と言う様になった。
英語だから関係無いとか言ってたって? 細かい事は気にするな。
なんであれ今は女の子だって事は変わらないから、少しずつ受け入れて行こうと思う。
でも自覚は男のままだ。ややこしい奴だな、私は。時代が時代ならまた違っただろうけども。
ともかく、もうすぐ約束の時間だ。
迎えを寄越すって言ってたし、多分マクゴナガル先生が――
「あ、来たかな?」
姿現しをした時の音が聞こえた。
ワクワクと外へと飛び出すと……
「げっ」
なんか真っ黒な男が居た。
思わず顔を引き攣らせた私は悪くないと思う。
マジかよ、なんでよりによって今日来るのがアンタなんだ。
「人を見て随分な反応ですな? 君の今日の楽しみには、吾輩が居るからこそ辿り着けるのだと理解しているのかね? 吾輩としては今すぐ帰っても良いのだ。どうしても仕方なく吾輩に押し付けられただけで――」
長い。ホントに嫌味ったらしいな。
「ごめんなさい。だってワクワクして扉を開けた瞬間、不機嫌なおっさんが居るから……」
「良かろう、自力で歩いて行きたまえ。吾輩はホグワーツに戻る」
「嘘嘘、待って連れてって!」
嫌味に憎まれ口を返すと、スネイプは私に背を向けて帰る素振りを見せた。
それを慌てて、服の裾を掴んで引き留める。
有無を言わさず姿くらまししない辺り、本当に帰るつもりは無かったと思うけどね。
「はぁ……行くぞ」
やたらとデカい溜息を吐かれ、そのまま結局、有無を言わさず付き添い姿くらましでその場を後にした。
*
私はスネイプが苦手だ。
物語的に超重要人物で、バックストーリーにも惹かれるものはある。
最期まで二重スパイを通した凄い人だ。
だけど実際に接してみれば評価は全く変わる。
常に高圧的で不機嫌で陰鬱な、真っ黒で清潔感があまり無いおっさん。何処に好印象を抱けと。
というか普通に悪人だ。死食い人としての活動が合法で安全だったとでも?
そして虐められてた印象が強いけど、あれはただの場面の切り取りでしかない。
彼もまた虐めっ子気質なのは疑い様も無く、やってやられての繰り返し。なんなら相当にヤバイ事をしていた筈だ。
ご存じ人体を切り刻む呪文を作った上に、実際に使ってた設定があったと思う。それがジェームズ相手だけなのかは不明だけど。
というかハリーやネビルへの態度を見てみろ。教師として普通にアウトだ。
私も散々虐められている。厳しいとか言うレベルじゃなく理不尽なんだよ。
まぁとにかく、別に嫌いではない。苦手なだけだ。
だから精一杯明るく接しようとした結果が、さっきの砕けた態度だったりする。
あんまり馴れ馴れしくすると怒るから難しいけど。
でもいっつも怒ってるみたいな感じだし変わらんか。
「うぅぉおえぇぇっ」
ダイアゴン横丁へ付き添い姿現し……直後、私は蹲って盛大に嘔吐いた。ちょっと出た。
行くならせめて返事をしてからにしてほしかったよ。
「さて……無知な君に一応説明してさしあげよう。ここがダイアゴン横丁だ。大抵の物はここで揃う。必要無い物を買わせる気は無いがね」
スネイプは全く心配する素振りも無く、私を見向きもせずに話し始めた。
まぁ別にいいけどさ。むしろ心配されたら怖い。
「学びを考えるのならば、まずグリンゴッツ銀行に行くべきであるが……なんとも有難い事に、今日の買い物の代金はダンブルドアから既に渡されている。よって銀行には向かわない。気になるなら自分で調べておけ」
あら残念。小鬼はまだ見た事無いし、あの銀行は楽しみだったんだけどな。
トロッコも乗ってみたかった……いや私は絶叫系は無理だったわ。そもそも私の金庫が無いか。
ちなみに魔法界のお金は未だに慣れない。
なんなんだあの訳の分からない分け方は。計算は魔法で出来るけど、とにかく意味が分からない。
「グズグズしてないでさっさと行くぞ。こっちだ、付いてきたまえ」
「はーい……」
これは気になる店を覗いてみるとかも出来そうに無いな。
今日は大人しく付いていくだけにしよう。それでもきっと楽しいだろうさ。
まずはマダム・マルキンの洋装店に行き、ホグワーツの制服を購入。
採寸したけど悲しい結果だった。ちんちくりんだ。
お陰で仕立て直すのを待つ羽目になった。
お次はフローリシュ・アンド・ブロッツ書店へ。
よく分からない教科書を沢山買った。
これを入学前に全て読んで覚えた奴が居るらしい。逆に馬鹿じゃないのか。
薬問屋と鍋屋はさっさと買って出たかった。
なんか変な臭いするし、何より隣に相当な腕を持った魔法薬学の先生が居る。
有難いご高説を聞き流していたら怒られた。勝手に難しい話をしておいて理不尽だ。
多分良い物は買えた。
魔法動物ペットショップにも行ったけど、悩みに悩んでペットは買わない事にした。
猫が物凄く欲しかったけど、私1人で世話を続ける自信が無い。
高級クィディッチ用品店には自然と足が向いた。襟首を掴まれて引き戻されたけど。
実はホグズミードでそれっぽい事を子供達と遊んでいたんだよね。
選手には……なりたいようななりたくないような。楽しいけどクソルールなんだもん。
そしてそして、遂に来ましたオリバンダー杖店。
今日一番のイベント、一番の楽しみ。
さぁ、私の相棒をこの手に!
「こんにちはー!」
スネイプは店の外で待つらしく、私は1人で意気揚々と入店した。
多分、合わない杖の暴発的なアレに巻き込まれたくないんだろうな……
「これはこれは、可愛らしいお嬢さんだ。新入生かな?」
「はい!」
「元気でよろしい。では早速杖を選びましょう……杖腕はどちらかな?」
「右!」
シュバッと右手を伸ばして答える。
いやーワクワクが止まらない。どんな杖になるんだろう。
勝手に巻尺が動いて色々測っているのが擽ったい。鼻の穴を測って何するんだよ。
けど、我慢しながらオリバンダーさんの話を聞いた。いや、胸を測りかけた時は払い落とした。
話ってのは杖についての説明だ。芯がどうとか、同じ杖は無いとか、持ち主を選ぶとか、長々と語っていた。
長いと言う事はつまり、カットだ。
「さて、ではこれを。サンザシにユニコーンの毛、28センチ。振りやすい」
そうして手渡された杖を振ってみる。
うーん、これは違うと思う。
「うひゃっ」
案の定、暴風が吹き荒れて箱が散乱。
私はスカートが捲れない様に慌てて押さえた。
「あまり良くないですな。ではこちら、柊にドラゴンの心臓の琴線、35センチ。しなやか」
受け取ってみたけど……これも違うでしょ。
「いてっ」
振ろうとしたら勝手に手からすっぽ抜けて頭に落ちて来た。
全然駄目だこれ。
「これはいかんな。ではこれだ、サクラにドラゴンの心臓の琴線、32センチ。曲がらない」
更に次は桜の杖。あー、元日本人としてはこれが良いな。
合うかな……どうかな。
「わっ」
振ってみたら、傍に積んであった箱が吹き飛んだ。
残念、駄目か。でも先の2本よりはなんか合ってる感はあった。
「ふーむ……なるほど。それでは……これはどうかな。ローズウッドに不死鳥の尾羽根、30センチ。とても頑丈」
ローズウッドって紫檀の事だっけか。
高級家具とか楽器に使われる木だったような。
「あ……これだ」
持った瞬間に分かった。これが私の杖だ。
一応振ってみれば、柔らかな白い光が飛んで弾け、小さな光の花が舞った。
「おぉ! 良さそうですな。ローズウッドは名前の通り、微かに薔薇の香りを持つ木でしてな。美しくそして堅い」
そう言われて匂いを嗅いだ私は悪くないと思う。薔薇の香りはしなかった。
「黒檀とは全く違う別の木なのですが、不思議と似た性質を持ちます。つまり、戦闘系の呪文や変身術に最適。あるがままの自分を受け入れ信念を貫くならば、最高の杖となるでしょう」
「あるがままの自分……」
それは難しそうだ。絶賛悩み中だしな。
自分は一体何なのか、どんなキャラクターとして物語に関わっていくのか。関わっていくべきなのか。
男なのか女なのか、大人なのか子供なのか。
なんでこの杖に選ばれたんだろう……さっさと受け入れろって事なのかな。
まぁいい、今考えたって変わるもんでも無い。
一言二言交わし、支払いを済ませてドアに向かう。
「ありがとうございましたー!」
いやー、これで一安心だ。実はほんのちょっぴり不安があった。
杖に選ばれるって事は、個人の好みなんて関係無いって事だもんね。
変なデザインの杖じゃなくて良かったよ。
ふふふ……ニヤニヤしちゃうな。練習用の杖とは全く違う。これが私の杖か。
暗い赤褐色で、言っていた通り確かに綺麗だ。よく磨かれている。
精巧に削り出された柄があるタイプのデザインで真っ直ぐ。堅いのは勿論、他の杖に比べるとちょっとだけ重い……かも。
他に目立つ特徴は無いけど気に入った。これからよろしく頼むぞ、相棒。
「やっと戻ったか。では行くぞ、必要な物は全て買った。これ以上吾輩の時間を浪費されたくは無い」
ホクホクと店の外に出ると、相変わらず不機嫌そうなスネイプが待っていた。気分が台無しだよ。
言いながらジロリと見てくる。はいはい、服を掴めって事ね。喋ってよ。
さらばダイアゴン横丁。次に来るのは1年後だな。
*
「おぇっぷ……」
そうしてホグズミードの家の前へ。今度は耐えた。
「さて……帰る前にいくつか伝えておく事がある」
さっさと帰るのかと思ったら、スネイプは私に向き直って口を開いた。
「入学の際は誰かしらが駅に連れて行く。最初くらいは汽車に乗れ、という事らしい」
そりゃ良かった。汽車で既に関係が出来てたりするっぽいし、仲間外れは嫌だ。
夏休みに入る時は逆に見送りとか行きたいけど、それはそれで誰かに頼んでみるか。
「そして言うまでも無いであろうが……生徒となったからには今までの様に馴れ馴れしくしない事ですな。その場合、容赦無く減点してさしあげよう」
「私がスリザリンだったとしても?」
「どう見てもグリフィンドールのお調子者の癖に何を言う。こちらから願い下げだ」
冗談を返したらキッパリお断りされた。決めるのはアンタじゃなくて帽子だろうに。
実際の所、スネイプってスリザリンから減点するのかな……しないだろうな。
「それから、君は既に新入生以上の知識を持っている。よって授業による加点は一切しない。吾輩達から学び、4年も先行しているのだ。それで加点しては不公平と言うもの。だからと言って手を抜けば減点だ」
「不公平って何だっけ」
贔屓しまくる人が何か言ってるわ。不公平の権化だろう、アンタ。
でもまぁ、それは既にマクゴナガル先生にも同じ事を言われている。
もっと言えば、あの人は私がグリフィンドールだったとしても公平に減点するだろうね。誰かと違って。
「最後に……ホグワーツでダンブルドアの名を持つ事が何を意味するのか理解しておきたまえ。常に模範たれ、とまでは言わんが……よくよく考えて行動する事をお勧めする」
あぁ、それは大丈夫だ。ちゃんと分かってる。
村の中でもとっくに実感してるから、学校に行ったらそりゃもう注目の的だろう。
その為にこの1年は苦手な勉強を特に頑張った。ダンブルドアが悪い成績なんて取れないよ。
「では、吾輩はこれで失礼する。これでここに来るのが最後になると思うと、非常に胸が空く思いだ」
と、言うだけ言って今度こそスネイプは姿をくらました。
全くなんて奴だ。4年も経ってそのセリフか。
愛想良くされても、それはそれで気色悪いけどさ。
最後に激励をくれただけでも驚きだ。
さーて……じゃあ入学まであと少し、何をしようかな。一応勉強はしておくけど。
まぁいいか、いつも通り過ごそう。
ローズウッドはいくつもの種類に別れますが、日本では一纏めに紫檀と呼ばれる事が多いです。
黒檀とは名前や特徴が似ていますが、全く別の木になります。
特徴は作中の通り、堅く美しく重い。微かに薔薇の香りを持つのも本当ですが、加工後では分かりません。
削ったりすると匂います。個人的には薔薇とは思いませんでしたが……
杖には使われていないそうですが、勝手に追加しました。
黒檀の杖の「あるがままの自分でいる事を恐れず、信念を貫き決意を覆さない者に最適」という特徴に惹かれたものの、やはり普通じゃない主人公の杖には特別感を出したかったので似た木を持ってきました。
それに個人的にですが、ローズウッドにはなんとなく女性的な印象がありましたので。
追記
どうやらフランスのパリにある杖店「Baguettes Magiques de Cosme Acajor」でローズウッドの杖が売ってるようです。
ボーバトンの生徒が買ってるのかもしれません。
まぁウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターで展示するに当たっての設定と思われます。
この杖は真っ白に塗装され、柄はパステルブルーと金の蝶の装飾がされ、他にも全体的に彫り込まれていたりと手が込んでいます。
綺麗且つ可愛らしいデザインで、息を呑む程の変化をもたらす力がある……とか。
これを先に知っていたらこの杖にしたのに……