ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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後書きで解説や考察を垂れ流していますが、あまり長くならない様にしてます。そのつもりではあります。
ですが今回は長め。なんなら分霊箱についてが長過ぎてカット、後回しにしました。

今更言う事では無いですが、確実に正しいとは断言出来ません。
興味無ければスルーしてください。


第20話 隠れ穴

 どれだけ大変な夏休みだろうと、私には考えなければならない事がある。

 それは今年の事件についてだ。

 

 秘密の部屋が開かれ、目を直接見ると死んでしまうバジリスクが徘徊するとんでも事件。

 目を見たらアウトなんて、そこらのホラーゲームでもそんな理不尽はしてこないだろう。

 たまたま偶然にも犠牲者が石化で済んだだけで、脅威で言えばトップクラスの事件だ。

 きっと原作者が「2作目で早々に生徒の死はちょっと……」とか考えて控えめになっただけだと思う。

 

 いやでも大量の吸魂鬼が徘徊する3年目も大概だな……

 死食い人が潜入してきたり、改めて考えると結局毎年が危険じゃないか。終わってるなホグワーツ。

 

 

 て、そうじゃなくて……とにかく全てが物語通りになるだなんて保証は一切無いのだから、本当に冗談抜きでヤバイ。

 ほんの少し何かがズレただけで、石化じゃなく真の犠牲者が出てしまう。

 というかもう既に変わりまくってるんだ。どうにか無事に解決しなければ……

 

 いや、解決するだけなら簡単だ。

 ルシウスがジニーの荷物に紛れ込ませる日記帳をどうにかすればそれで終わり。

 だけど……問題はこの事件が後々大きな意味を持つという所だ。

 

 ヴォルデモートの分霊箱であるリドルの日記を完全に破壊する。これは絶対にやらなきゃならない。

 その為には少なくともバジリスクの毒か悪霊の火が必要だ。後を考えたらグリフィンドールの剣に毒を吸収させる必要もある。

 

 そしてもう1つ。もし仮に可能だとしても、事前に日記を破壊しておくだけじゃ駄目だ。

 お爺様が複数の分霊箱に気付くのもこの事件と日記がきっかけだった筈だからね。

 

 

 じゃあどうするか。これが本当に悩ましい。

 

 当然、私1人でどうにか出来る筈が無い。

 というか諸々を理解して動いていたら、何処でどうやって知ったんだと思われるだろう。

 むしろ余計な事をして事態を悪化させたりなんかしたら……その所為で犠牲者が出たら悔やんでも悔やみきれない。

 

 いっその事、予言者の様にお爺様へ話してしまうという手もある。

 普通の人なら何言ってんだコイツと思われるだろうけど、ちゃんとした予言という物を知っているお爺様なら信じてくれそうだ。

 夢で見たとか言っておけばいいだろう。

 

 しかしそれをした場合、今後に影響が出る。

 自発的にするにしろ、求められるにしろ、今回だけで済む訳が無い。

 良い感じの予言者ムーブなんて私に出来るのか? 無理だろう。

 ただでさえ細かい事までは覚えてないし、事が起きてから思い出す場合も多いと言うのに。

 

 それに今回に限らず、全ての事件に言える事がある。

 大きく変えれば変える程に、予測が出来なくなるんだ。それこそ事態を悪化させかねない。

 

 考えに考えて未だに答えが出ない。

 本当にどうすれば良いのやら。自分の頭の悪さを呪うよ。

 

 

 

 

 

 

 頭を悩ませていたって時間は進む。

 数日後、私達はウィーズリー家である『隠れ穴』に遊びに来た。

 解決しない悩みなんて今は置いておこう。

 

「やっほー!」

 

 まずは私から暖炉に入って無事に到着、そして元気良く飛び出して挨拶。

 

「まあまあ、よく来てくれたわね。いらっしゃい」

 

 すると真っ先にモリーさんが歓迎の言葉をくれた。

 勿論ハリーやロン、フレッドとジョージも騒ぎながら私をぐるりと囲んでくる。

 パーシーは1歩離れているけれど、それでも歓迎してくれている。

 

 ただ、やはり残念ながらビルとチャーリーは居ないらしい。

 確か外国で仕事してるんだっけ? まぁ仕方ないね。

 仕事と言えば、アーサーさんも仕事中なのか姿が見えない。私達が居る間に帰ってきたら挨拶しよう。

 

 ていうかまだハーマイオニーが来てないから、歓迎はもう少し待って――

 

「けっほ……危なく咽る所だったわ。どうやらちゃんと着けたみたいね……」

 

 とか思ってたら咳をしながら出て来た。

 そうして身だしなみを軽く整えながら私の隣に並ぶ。

 

「あー……君誰だい? 暖炉を間違えたんじゃない?」

 

 と、ロンがキョトンとしながらそんな事を言った。いや、彼女を知る全員が目を丸くしている。

 彼のセリフも冗談で、分かってて言ってるらしい。

 

「ハーマイオニー・グレンジャーですけど何か? よくご存じだと思いますけどね」

 

「全然ご存じじゃないよ……」

 

 彼女の返事は久々にトゲトゲだった。

 ロンは睨まれ萎縮してボソボソと答える。実際かなり変わったから仕方ないかもしれない。

 

 仕方ないと言えば、年頃の男の子なんて女の子を揶揄いたいものだ。

 けどまぁ、見た目に関しては冗談になるかどうか難しいと学んでくれただろう。

 

「えっと、随分変わったね。驚いたよ」

 

 萎れたロンを見て、ハリーはその学びを得たようだ。

 苦笑いだけど素直に驚きを口にした。

 

「アリスのお陰よ」

 

「夏休みは女の子が一気に変わる時期だからね」

 

 今度は顔を赤くしたハーマイオニーが私を見たので、とりあえずドヤ顔で胸を張っておいた。

 古今東西、夏休みとはそういう物だ。多分。

 

「え、アリスは何か変わった?」

 

「…………」

 

 前言撤回、ハリーは何も学んでいなかった。

 まるで疑う様に私を見てきたので無言で杖を抜く。どうしてくれようかコイツ。

 

 人が1ヶ月でそんなに変わる訳無いだろ……あれ? まぁいいか、そういう事もある。

 

「いや……ごめ――」

 

「シレンシオ」

 

「――っ――っ!?」

 

 人の家で騒ぐのも悪いから、ひとまず呪文で黙らせるだけにしておいた。

 しばらくそのままで……あ、しまった。

 

「やば、思わず魔法使っちゃった」

 

「……まぁ、見なかった事にしましょう。警告されなくとも気を付けるんですよ?」

 

「えへへ……」

 

 お母さん達に黙認されてるだけで、本来は使っちゃ駄目なんだった。迂闊だったなぁ……

 モリーさんが困った様な顔で注意した。怒られなかっただけマシか。

 

 でもごめんなさい、向こうじゃ使いまくってます。

 とりあえず笑って誤魔化しておこう。

 

 

「コホン。まぁともかく……ハーマイオニーは凄く可愛くなったね、アリスは相変わらず可愛いね、くらい言えないの?」

 

「すげー自己評価」

 

「そんなのこの2人に求めるのは早過ぎるぜ」

 

 ひとまず気を取り直して。杖を振って沈黙呪文を解除しつつ、ロンとハリーに小言を飛ばす。

 するとフレッドとジョージからツッコミを頂いた。

 いやまぁ、本気で求めてる訳じゃないよ。ていうかそんな気の利いたセリフを言い出したらぶったまげるね。

 

「……もういいだろ、うるさいな」

 

 そして拗ねた様にロンは目を逸らした。

 

「あ、ジニー。なんでそんな離れてるんだよ、ほら挨拶しろ」

 

 そのまま話まで逸らす為に妹を呼んだ。

 そういえば見送りした時にもジニーとは挨拶出来てなかったな。

 

「こんにちは、ジニー。私はアリス……ダンブルドアの名前はあんまり気にしなくて良いからね」

 

「私はハーマイオニー。まぁ女同士なんだし、遠慮はしなくていいわ」

 

 とりあえず改めて自己紹介をする。

 今年から彼女もグリフィンドール、仲良くしておくに越した事はない。

 というか物語通りなら今年一番の被害者になってしまうんだ。気に掛けておきたい。

 

「……どうも」

 

 しかしなんだか素っ気無く返され、彼女は部屋へと戻って行った。

 

「あれ?」

 

 揃って顔を見合わせ首を傾げる。

 何か気に障る事を……言ってないな、どうしたんだろうか。

 

「まただ、意外と人見知りなんだなアイツ。気にしなくていいよ、その内慣れるさ」

 

「活発そうな子に見えたけど……」

 

 ハーマイオニーは意外そうに、彼女が消えた壁の向こうを見つめた。

 私としては物語後半の彼女のイメージが強いから、今の段階じゃ分からんなぁ……

 家族であるロンが言うならそうなんだろう。

 

「うーん……実は僕もあんまり話が出来てないんだよね」

 

 そこにハリーも気まずそうに同意した。

 いや、それは可愛らしい好意の……まぁ何も言うまい。

 

「ちょっとずつ仲良くなれれば良いでしょ。とりあえずいつまでも暖炉の前に居ても仕方ないし……ロン、案内よろしく」

 

 どうであれ彼女とも長い付き合いになるんだ。焦る必要は無いだろう。

 

 と、挨拶はこのくらいにして移動しよう。

 私は気分を変える様にロンとハリーの背を押した。

 

 

 

 

 

 

 ロンの部屋に行き、手紙には収まらなかったお互いの近況を話し合った。

 私とハーマイオニ―が勉強やら呪文の練習やらを頑張っていると聞いて、彼らはなんとも複雑な顔をしていた。

 

「2人とも何よその顔……どうせ遊び呆けてたんでしょ」

 

 その表情が気になったのか、ハーマイオニーは呆れた様に溜息交じりに言った。

 魔法を使ってはいけないっていうのを無視してる事は棚に上げてるらしい。

 

「悪いかよ。ていうか呪文の練習なんてママ達が許してくれないよ」

 

「僕だってちょっとくらい練習したいさ。でも警告を受けちゃったから怖くて使えないよ。アリスが言ってた通りなら大丈夫なんだろうけどさ……」

 

 悪いとは思わないけど……練習はともかく勉強は出来るだろうに。

 そっちを頑張る気は無いようだ。あったらビックリだけど。

 

 むくれたロンはともかく、げんなりとしたハリーには同情する。

 使ってもいないのに警告を受ければ、その気になれないのも仕方ない……かな?

 

「あぁ……そういえば。災難だったね」

 

 新学期が始まる前からコレだ。災難としか言い様が無い。

 いやまぁ、毎年が物凄い災難だけど……

 

「お陰様でこんな素敵な家で生活出来て、結果的に最高だけどね」

 

「そりゃ良かった」

 

 しかし彼は前向きに楽しんでいるようだ。

 ストレス無く楽しめるのなら、友人としても喜ばしい。

 

 そして当の素敵な家に住んでいるロンは顔を赤くして俯いた。

 ハリーの純粋な気持ちを向けられるのが気恥ずかしいのだろう。

 

 ただ、顔を赤くする前からソワソワと落ち着かない様子だったのが気になる。

 一体何を考えているのやら。

 

「ロン、さっきから何をそんなにソワソワしてるの?」

 

 どうやらハーマイオニーも気になっていたらしく、変な物を見る様に訊ねた。

 

「女の子が自分の部屋に居るのが気になるんでしょ。年頃の男の子なんだから仕方ないって」

 

 有り得そうな理由としてはこんなもんだろう。

 なんせ様変わりしたハーマイオニーは誰が見ても可愛い。そして私も美少女だ。

 そんな2人が部屋に来れば、男の子としては落ち着かないに決まってる。

 

「違っ……いや、あー……もう。分かった風に言うなよな……」

 

 半分くらいは図星だったらしい。

 ニヤニヤ笑う私に何かを言い返そうとして言葉に詰まった。

 

 しかし他にも理由があるのか。そっちはサッパリだな。

 

「じゃ何考えてたの?」

 

「……誘っといて言うのもおかしいけどさ、君達と遊ぶって何をすればいいか分かんないんだよ。ハリーとだったら兄貴達と色々遊べるけど……」

 

 とりあえず聞いてみれば、どうもそういう事らしい。

 そりゃそうか。彼の身近な女の子なんて妹1人だ。

 

 学校生活の中じゃ、遊ぶなんて限られた物しか無かったから考える程の事じゃなかった。

 それが自分の家になって、女の子と遊ぶにはどうすればいいのか分からなくなったようだ。

 

「私は同じ扱いでも文句は無いけど」

 

「そうね……別に嫌だとは言わないわ。あんまりにも変な事だったら別だけど……」

 

 ただまぁ、そこに関しては私は全く気にしない。中身がアレだからな。

 ハーマイオニーも似た様な物らしい。思い返してみれば、女子同士で何かするより彼らと居る方がずっと多いんだ。

 彼女も元からそういう気質なのかもしれない。

 

「そう? それならまぁ……」

 

 私達のアッサリした答えを聞いて安心したのか、ロンはいつも通りの雰囲気に戻った。

 

「おーい。ロン、ハリー、今日はどうする?」

 

「アリスとハーマイオニーが来てるなら止めとくか?」

 

 そして同時に、外からフレッドとジョージの大きな声が聞こえた。

 

「……言ってたら来たよ。外行くかい?」

 

「僕ら、最近は箒で遊んでるんだ。クィディッチの練習だよ」

 

「あ、やりたい」

 

「それなら私は観戦ね。見てるだけでもきっと楽しめるから、気にしないでいいわ」

 

 双子の声を聞いて話が一気に進んだ。

 クィディッチの練習なら私にとっても丁度良い。

 

 ハーマイオニーが家に来てからは殆ど飛んでなかったからね。

 他にやりたい事があったし、1人で飛んでも仕方ないし。

 

「オッケー。フレッド、ジョージ、待ってて! 今から皆で行くよ!」

 

 それなら、とロンは窓に寄って返事を返した。

 

 

 という訳で、私達は揃って部屋を出ていく。

 

「ていうかここって飛んで大丈夫なの? 近くにマグルが住んでるんでしょう?」

 

 歩きながらハーマイオニーが訊ねる。

 そうか、そういえばこの辺りはそうだった。

 

「丘の上の牧場なら下の村からは見えないんだ。高く飛ばなければ大丈夫さ」

 

「まぁ本物のボールは使えないけどね。村の方にボールが行ったら大変だからって言ってた」

 

 彼女の疑問にロンとハリーが答えた。

 多分この家も周辺丸ごと、マグル避けの魔法が掛かってるんだろう。村に近づいたり、遠目で分かってしまう程に高く飛ばなければ良いようだ。

 

 

 

 

「お嬢様方も来るとはね。観戦かい?」

 

「私は参加するよー」

 

 私達が家の外へ出ると、双子が出迎えた。

 えーと、これはどっちだ。よく分からんけど、私の参加は伝えておこう。

 

「へぇ、アリスの飛びっぷりを見れるのか。こりゃ期待だな……て箒は?」

 

「あ……しまった。アリス、箒はオンボロしか無いんだけど……良い?」

 

 もう片方が楽しそうに笑った。こっちがフレッドかな?

 彼の言葉でロンは思い出した様に、申し訳無さそうに言った。

 

「ふふん、箒なら問題無いよ」

 

 しかし箒に関しては彼らが気にする事は無い。

 私は胸を張って返した。あの箒を見れば驚くぞ。

 

「お母さんに箒をプレゼントしてもらえるのがハリーだけだとでも?」

 

「「お母さん?」」

 

「あ、いや、マクゴナガル先生……」

 

 更にドヤ顔で続けたが、お母さんという言葉にハーマイオニー以外の皆が反応した。

 くっ……なんか凄い恥ずかしいんだけど……なんだこれ。

 

「ってそんな事は良いの! 私だって箒を貰ったんだよ」

 

 決して誰も馬鹿にする様な目ではなく、ニマニマと微笑ましいけど鬱陶しい笑みを向けてくる。

 そんな彼らは無視して、とりあえず話を進めようと無理矢理押し切った。

 

「そりゃ羨ましいな。箒は何だ? まさかハリーと同じニンバス2000?」

 

「いやいや、あのマクゴナガルが娘に贈る箒だぜ……最新のニンバス2001だ」

 

 双子は素直に箒が気になるようだ。しかし残念、ハズレだ。

 

「それは見てのお楽しみ!」

 

「見るって何処に……」

 

 そんな彼らの驚く様を期待して、私はぴょんと一歩飛び出して振り返る。

 

「アクシオ! シルバーアロー!」

 

 そして唱える。さぁ来い私の相棒。

 

「「シルバーアローだって?」」

 

「しまった……名前言ったらバレバレじゃん……」

 

 見てのお楽しみとか言って煽ったのに即バレした。恥ずかしい。

 

「残念だったな。まぁちゃんと驚いたから気にするな。ていうかまた魔法使ったな……内緒にしといてやるよ」

 

「むしろアクシオが使える事に驚いたぜ。なんとも俺達の周りは優等生が多くて嫌になるな」

 

 またまたしまった。反省した筈なのにすっかり忘れてた。

 気にせず魔法を使いまくるのが染み付いてるな。本当に気を付けなきゃ。

 

 幸いにも双子は内緒にしてくれるようだ。そしてうんざりした様に肩をすくめた。

 でも言葉とは裏腹に全然嫌そうじゃないし、彼らなりの誉め言葉と受け取ろう。

 

 

「さて、気を取り直して……じゃーん! これが私の箒、シルバーアロー!」

 

 そんな事を言ってる間に箒がご到着。お披露目といこうか。

 

 という訳で私はさっき以上に胸を張ってドヤ顔で箒を突き出した。さぁ見たまえ、この美しい箒を。

 双子は勿論、ハリーもロンも食い入る様に見回している。

 

 今の時代じゃ決して飛び抜けた性能じゃないけど、それでも有名且つレアな箒だ。

 クィディッチ好きなら当然気になるだろう。

 

 ちなみにハーマイオニーにはとっくにお披露目しているし、選手になるつもりだとも伝えてある。

 箒に関しては流石の彼女もピンと来ないようで、あまり話を広げてはいないけど。

 

 

「凄いな、マクゴナガルはなんでこんな箒を……」

 

「気に入って保存してたんだってさ」

 

「で、それを贈られたと。可愛がられてるねぇ」

 

 多分ジョージが感心した様に言葉を漏らし、フレッドは私の頭を撫でた。何故。

 男に可愛がられても……まぁ別に悪い気分ではないか。擽ったいけど。

 

「えっと……この箒ってそんなに凄いの?」

 

「僕はあんまり詳しくは知らないかな……なんせ古いんだ」

 

 ハーマイオニーと違って興味はあれど、クィディッチを知って1年のハリーはあまり分かっていないようだ。

 というかロンでもあんまり知らないらしい。まぁ仕方ないけどね。

 

「骨董品だな。流石に俺達だって詳しくはないぞ」

 

「やたらと評価の高い箒だったって事くらいだな。でも今の箒にゃ敵わない筈だ」

 

「カスタムしてあるからそこそこの速度は出るよ。ハリーのニンバスには負けるけど……でもチェイサーなら充分やれるよ!」

 

 実際に選手である双子は、ロンより多少の知識があるらしい。

 しかし骨董品とは言ってくれるね。事実だけど、古いからって舐めてもらっちゃ困る。

 

「おっと、どうやらやる気らしいぞ」

 

「いいね、選抜が楽しみだ。頑張れよ」

 

 私の言葉で察したようだ。

 双子は驚きつつも期待を込めて応援してくれた。

 

「アリスならきっと活躍するよ。応援してる」

 

「アリスまで選手に選ばれたら、僕の立つ瀬が無いよ……いいなぁ」

 

 勿論ハリー達も分かってくれた。

 しかしロンは何やら置いてけぼりにされた様にしょんぼり。

 やっぱり彼の根っこは早々変わる物じゃなさそうだ。文字通り根深そうだものね。

 

「ロンだって充分やれそうだけどなぁ……」

 

「無理無理。僕なんて全然駄目さ。大人しく応援させてもらうよ」

 

 私が素直な評価を言ってもこれだ。自己評価が低過ぎる。

 将来的にはキーパーとしてかなりの才能を見せると言うのに……まぁ、それも調子で左右されまくる不安定な実力だけど。

 

「全く、そんな事言ったら箒に乗るのが未だに苦手な私はどうなるのよ」

 

「君は他にいくらでもあるだろ。うーん……僕も何か頑張んなきゃなぁ……」

 

 見かねたハーマイオニーが励ますが、それさえアッサリ言い返してしまう。

 人の事はちゃんと見てるのにね。でも前向きになろうとはしてるっぽい。

 

「へぇ、どうやら俺達の弟は成長したらしい」

 

「あぁロニー。一体いつからそんなまともになっちまったんだ」

 

 そんな彼の成長を感じたのは双子も同じ。

 むしろ家族だからこそより分かるのだろう。揶揄いつつもしっかり認めているようだ。

 

「良い事じゃん」

 

「まぁな」

 

「兄として見守らせてもらうぜ」

 

 でもせっかくの成長を揶揄っちゃ駄目だろう、と私は口を挟んだ。

 しかし彼らは思ったより真面目に捉えていたらしい。

 いつもの気楽な様子を引っ込めて返された。

 

「いいよそんなの……」

 

 そんな兄達の目が恥ずかしかったのか、ロンは若干赤くなった顔を逸らした。

 

 上から目線は止めようと思ってはいるけど、こういう所を見るとやっぱり微笑ましく感じてしまう。

 でもこれくらいは御愛嬌……にしたい。

 大人の目線からでも見れるのが私の特権だ、それを無駄にするのも勿体無いものね。

 

 

 

 

 

 

 そして思う存分、飛び回っていた時の一幕。

 

「ほらほら! ハリー、どうしたの!? 全然追いつけてないよ!」

 

 シルバーアローとニンバス、どれくらい差があるの?

 そんな疑問から始まった私とハリーの追いかけっこ。

 他の皆は観戦に移り、傍から見てどうなのかを判断するという流れだ。

 

 箒の性能と私の技術を見せつけようと真面目に飛んでいたけれど、何故か彼は全然本気を出さない。

 一体何をしてるんだ、とちょっとだけ怒りながら煽るが……

 

「ちょ、ちょっとタイム! 一旦降りよう!」

 

 あろうことかハリーはさっさと降りてしまった。

 箒の不調は無いだろうけど、彼自身が不調だったのだろうか。それならそうと早く言えばいいのに……

 

「なんなのさ、もう」

 

 後を追って地面に降り立ち、不満を隠さずに訊ねる。

 しかしそれでも彼は押し黙ったままで答えない。なんなんだ……

 

「ハリーは中々に紳士なのかもな」

 

「いや、度胸が無いとも言えるぞ」

 

 双子のセリフはよく分からない。謎だ。

 

「……ノーコメントで」

 

「私も、もう何も言わないわ」

 

 ロンは目を逸らし、ハーマイオニーは呆れている。もっと謎だ。

 

「……アリス、今更だけど……その恰好で箒は止めよう」

 

 私がひたすら首を捻っていると、ようやくハリーが気まずそうに口を開いた。

 恰好……?

 

「――っ!?」

 

 一瞬考えたけどすぐに理解した。むしろ何故今まで忘れていたのか。

 私の恰好はちょっとばかりお洒落した可愛らしいワンピース。つまりスカートだ。

 

 素晴らしい箒をお披露目する事が楽しくて夢中になってて、恰好の事なんて全く意識の外だった。

 

 慌てて押さえるが本当に今更だ。顔が熱くなっているのが分かる。

 箒どころかとんでもない物をお披露目していたらしい。

 

「ずっと見てたの……?」

 

 というか見えてたなら教えてくれ。

 本気を出さずに私の後ろを飛び続けていたのはまさか……

 

「いや……その……」

 

 モゴモゴと言い淀んでいる。

 ハッキリ否定しない辺り、もうそういう事なんだろう。

 

「えっち」

 

 ささやかな仕返しとして、不名誉な評価を下してやろう。

 

「なんで僕だけ!?」

 

「すぐに教えないで眺めてたんでしょ」

 

 勿論、下で眺めてた皆も同じだ。

 でもハリーが一番近くで見てたんだから、君に言って何が悪い。

 

「そっ……そんな訳無いだろ!」

 

 反応で丸分かりだ。全然隠せてない。

 まぁ隠せてないのは私のパンツもだけど……

 

「どっちだと思う?」

 

「そりゃ眺めてただろ。男なら誰だってそうする」

 

「うるさいよ!」

 

 どうやら双子は思いっきり開き直っているようだ。

 援護してもらえるどころか、逆の意味で肯定されてしまったハリーは堪らず赤い顔で叫んだ。

 

 でも私としては開き直ってくれた方が若干マシだな。

 男なら見ない訳が無いと私は知っている。私だってそうする。

 

 はぁ……でもまぁ、とりあえず……今日はもう箒はいいや。





【バジリスク】
鶏の卵をヒキガエルの腹の下に置いて孵化させると産み出されるとかいう、謎の生態をしている蛇。
何がどうなっているのか、直接目を見ると死んでしまう。反射や透過等で間接的に見ると石化で済む。眼鏡じゃ駄目なんだろうか……駄目なんだろうな。
その石化はダンブルドアでさえ魔法では対処出来ず、マンドレイクを使った薬が必要になる。

オマケに毒蛇の王と呼ばれるだけあって、非常に強力な猛毒を持つ。真偽は不明だが腐食性なんだとか。
それはもう、とことん強固な分霊箱さえ破壊出来る程にヤバイ毒。
当然噛まれれば死は避けられない……が、不死鳥の涙等ですぐに治療すれば助かる。


雄鶏の鳴き声を嫌うらしいが、特に深堀される事は無かった。
対策されないようにリドルが城の鶏を殺していた為、実際の効果は不明。

鶏鳴を嫌う=夜明けを嫌う、つまり日光が苦手なのか……はたまた声そのものが苦手なのか。
分からないのがモヤモヤする。何故こんな設定を出したのだろうか。


映画ではまるでドラゴンの様な姿にデザインされており、大きさもかなりの物で約18メートル。この印象が強い人が多いだろう。
しかし原作では一般的に想像し得る大蛇でしかなく、約6メートルになる。

まぁ現実のニシキヘビの特に大きい個体が7メートルくらいになるので、ファンタジーの戦いとして見ると映えないと考えるのも無理は無い。3倍はやり過ぎだと思うけど。

というかあの大きさでどうやって水道管を移動していたんだというツッコミは無粋……か?
他にも色々と個人的なツッコミ所が増えてしまうので、ここでは原作通りかもうちょっと大きい程度の設定で。


ちなみに秘密の部屋のバジリスクは雌らしい。
原作2巻終盤でジニーが連れ去れた時に「彼女の骨は秘密の部屋に永遠に横たわる」的なメッセージが書かれるが……
後々に骨として残っていたのはバジリスクだった。意図したのかは知らないが中々面白い。



【グリフィンドールの剣】
ゴブリン製の銀の剣で、汚れや錆を寄せ付けない。柄にルビーが埋め込まれており、まるで儀礼用の剣の様に美しく細身。

ゴドリック・グリフィンドールが製作を依頼したが、あまりにも良く出来た素晴らしい剣だったのでゴブリン側が惜しくなってしまった。
その結果、盗まれたと嘘を広め剣を奪おうとしたが返り討ち。そのままグリフィンドールが盗んだと言い伝えられてしまい、現代のゴブリンにもそう信じられている。
作った人に所有権があるというのがゴブリンの価値観だとかなんとか。なんにせよ面倒臭い剣。

真のグリフィンドール生だけが組分け帽子の中から引き抜く事が出来るらしい。それがハリーとネビルだった。
当然だが、保管してある剣を持ち出すのは誰でも出来る。
特性として「切った対象の力を吸収して自身を強化する」という何処ぞの半妖の刀みたいな能力を持っている。
この剣でバジリスクを倒した事で毒を吸収し、分霊箱を破壊し得る力を得た。

しかしそれ程の毒を無傷で吸収してしまうなら、剣そのものが分霊箱以上という事になるのでは?
なら素で壊せるんじゃ……攻撃力と防御力は違うと言う事にしておこう。



【悪霊の火】
あらゆる物を破壊し焼き尽くす、途轍もなく強力な闇の魔術。
絶対に壊さなければならない分霊箱に対し、ハーマイオニーが使うつもりは無いと言い切るくらいには危険。
知っているだけで試した事も無い危険な呪文をぶっつけ本番では使えないという意味なのかもしれない。

巨大な蛇やキメラ、ドラゴン等の姿を取り、まるで生きているかの様に動く。
というか炎そのものに破壊衝動の様な意思があり、急速に広がっていくらしい。
当然ながらその制御には極度の集中と技術が必要になる。未熟な者が使用すると制御不可能となり、自分の出した炎に焼き尽くされるという。

実際、原作終盤でクラッブが使用し炎に呑まれた。映画は諸事情により別人。
映画での神秘部の戦いでヴォルデモートが使用したのもこの魔法だと思われる。

フィーンドファイアなんて呼ぶ事もあるが、どうやら「ペスティス・インセンディウム」という呪文らしい。
「Pestis」は疫病、「Incendium」は火。疫病の様に急速に広がり、手当たり次第に命を奪う火……という意味だろうか。

普通の手段では消せないが、炎を消す反対呪文が存在するようだ。しかしそれもまた当然の様に難しいとか。
放置した場合、自然に消えるのかは謎。燃える物が無くなったら消えるのかも。



【シレンシオ「Silencio」】
この呪文を掛けられると一時的に声を出す事が出来なくなる。当然呪文も唱える事が出来ない。
難しい上に威力が減衰してしまう無言呪文を相手に強制する為、戦闘でも効果的と言われている。
しかし無言が当たり前な実力者相手では恐らく無意味だろう。

人間だけでなく動物を黙らせる事も可能。
一部の魔法生物はこの呪文を掛けないと飼育が許可されないとか。

一応5年生の範囲になるが、その中でも割と難しい部類らしい。
失敗すると対象は風船の様に膨らみ、かなりうるさい音を発する。

第3巻でハリーがマージョリーにブチギレて風船の様に膨らませて飛ばした事件があるが……
両親を侮辱する彼女を黙らせるべく、この呪文を杖無し無言で行使し失敗したという説がある。
しかしその時点で彼がこの呪文を知っていたとは思えず、黙らせたいという強い意思だけで似た効果が表れたのかもしれない。

ただし現状はとあるゲームの設定から、使ったのはインフレ―タスという呪文だったのだろうという事になっているようだ。


【レペロ・マグルタム「Repello Muggletum」】
マグル避けの呪文。これを掛けた物や場所にマグルが近づくと何故か急用を思い出して去っていく。
マグルタムと言っているので、非魔法族をマグルと呼ぶ地域で生まれた呪文なのだろう。

基本的に魔法界に関わる所はこれが掛けられていると言っていい。
ただし効力の違いなのか何なのか、完全に存在を隠し見る事も出来ない場合とそうでない場合があるっぽい。

魔法生物の生息地なんかにも掛けられているが、一部の魔法生物は人間を惹き付ける力を持っていて打ち消してしまうとか。
ネス湖のネッシーはケルピーという魔法生物だという設定があるが、惹き付けてしまうからこそ目撃されていたらしい。


似た名前の呪文にレペロ・イニミカムという物がある。
こちらは敵を退ける効果だが、特定の呪文と組み合わせると超強力な防御呪文になるとかなんとかかんとか。
複雑なのでまたいつか。



【アクシオ「Accio」】
呪文の後に対象の名前を言う事で、それを自分の元へ呼び寄せる。
正確な名前でなくとも、限定出来るのなら曖昧でも良いらしい。
ハーマイオニーは「ホークラックスの本」と言ってとある魔法書を呼び寄せた。

いずれにせよ対象が何処にあるのか大まかにでも分かっていないと無理だと思われる。
何処にあるか分からないのに名前さえ言えばお届けしてくれるとは考えにくい。


英語では「Summoning Charm」なので、召喚呪文と言った方がイメージがしやすい。
実際どれだけ遠くの物だろうと呼ぶ事が出来るらしい。空間を越えて現れる……のかも。でなければ自分か対象が密室の中だったら無理だろう。

使用頻度は高いものの、結構曖昧な描写がされており細かい所までは不明。
ホグワーツ・レガシーではロープの様な光を放ち対象を繋げ、引き寄せる。

数々の描写を見るに、どうやら「近くの物を引き寄せる効果」と「遠くの物を召喚する効果」の2つがあるっぽい。

そして無生物のみに作用する、という設定がある。
ただし身に付けた物や持った物を呼び寄せる事で間接的に動かす事は出来る。

が、原作で普通にネビルのヒキガエルを呼び寄せている。恐らく単純に後付けの設定なのだろう。
極一部の生物は大丈夫ともされているが……基準は謎。召喚ではなく、近くから引き寄せるだけなら可能なのかもしれない。
それならばゲームで殆どの敵を引き寄せられるのも説明が付く……か?

なんでもかんでも呼び寄せられたら盗み放題なので、正当な所有者以外からは無効化する対抗呪文が存在する。反対呪文はデパルソとされている。
ちなみに嘘か本当か、光速に近い速度で移動するらしい。飛んできた物に自分が吹き飛ばされる場合もあるようだ。

余談だが、英語の発音としては殆ど「アキオ」になる。



【カーペ・レトラクタム「Carpe Retractum」】
たった2作限りゲームにて使えた呪文。
杖先から光のロープを放ち、対象を引き寄せる。
この描写は多少の差はあれどホグワーツ・レガシーのアクシオに似ている。

明確に違う点は、ぶら下がったりスイングしたりとまさしくロープの様に扱えるという事。
対象が固定されているのなら縮んで自分が移動する事も可能。
やろうと思えば鞭の様に振り回せそうだ。

なんにせよ杖先から繋がっているので、杖をしっかり握る力が無ければ使えないだろう。
むしろ下手したら杖が折れそうで怖い。

ゲーム製作当時はまだアクシオの描写が詳しく分からなかった、とかで引っ張る呪文を作ったのかもしれない。
実はアグアメンティもゲームでは違う呪文として作られた事がある。なんにせよ、そこは関係者のみぞ知る。
同じ様なギミックをレガシーではアクシオで攻略する。取って代わられ消えた呪文。
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