可哀想は可愛い。
それから数日後。
ハリーは鬱陶しいロックハートとストーカーにうんざりしていたけど、それは置いといて……
クィディッチの選抜試験があった。
過去形の通り、既に終わった話だ。
私は無事にチェイサーとして選ばれた。
原作本来のメンバーから、惜しくも私と入れ替わりで補欠に降格してしまったのは……3年生のケイティ・ベル。
あの屈指のホラーシーン、呪いのネックレスの被害者になってしまう子だな。
彼女もまた2年生時から選ばれていたけれど、今年は私の方が少し上だった様だ。
正々堂々と真剣勝負をした結果だから、快くバトンタッチとなれた。割と真面目に一安心だ。
私の所為で余計な亀裂が入ったら色々辛過ぎる。
そして私が選ばれた事は沢山の人に祝福された。
チームメンバーは勿論、お母さんも、ハーマイオニーもロンも、ハグリッド他、友人達が皆嬉しそうにしてくれた。
悪くない気分だ。やってやろうじゃないか。
見てろよ皆、思いっきり活躍してやるからな。
と、意気揚々と更に数日が経ったとある日。
選抜が終わったという事はつまり……クィディッチ狂のキャプテンが練習を始めるという事。
「アンジェリーナ・ジョンソン! アリシア・スピネット! アリス・ダンブルドア! 起きろー! 練習だ! クィディッチの練習だぞ! 起きろー!」
まだまだ皆眠っている早朝だと言うのに、オリバー・ウッドは階下から壊れた目覚ましの様に同じ事を5回も6回も叫び続けている。
女子寮に入れないから仕方無いのかもしれないけど……流石に安眠妨害にも程がある。多分殆どの生徒が起こされたろう。
全く……やる気があり過ぎるって。ちょっぴり意気消沈……
あからさまに不機嫌なハーマイオニー、ラベンダー、パーバティに急かされ、私はモゾモゾと着替えノロノロと競技場へ向かった。
まず更衣室に集合、そこで話をしてから練習という事らしいが……
バッチリ目覚めているのはウッドだけだった。
フレッドとジョージはクシャクシャの髪のまま、腫れぼったい目で座り込んでいる。
アンジェリーナは大欠伸、アリシアは壁にもたれてコックリコックリ舟を漕ぎ、私はベンチに突っ伏して半ば夢の世界に居た。
そして遅れてハリーが入ってくると、ウッドはようやく話とやらを始めた。
アンジェリーナに優しく起こされ、とりあえずしょぼしょぼの目のまま顔を上げる。
「グラウンドに出る前に、諸君に手短かに説明しておこう。この夏休みで全く新しい練習方法を編み出したんだ。これなら絶対、今までとは――」
何かを言いながら何かを取り出したけど、眠くてよく分からない。
何かを使って演説してるらしい。
誰かのいびきが聞こえる。寝てるじゃん……いいなぁ……
私は選手に選ばれたばかりだし、真面目な態度で居ないと……あれ、目の前が真っ暗だしおでこが痛いぞ。
なんだっけ……そうだ、眠いんだった……
硬い枕だなぁ……
「アリス……アリス!」
「ふにゃ……ねてにゃいれすぅ……」
「もう寝言だよそれは」
ハリーの声と共に体が揺れる。
あれぇ?
「ん……おかしいな……素晴らしいプレーを披露してたのに……」
「出来れば現実で見せてほしいかな」
どうやら私が眠ってる間に話は終わったらしい。
「ふあぁ……嘘でしょ、もうこんな時間?」
とりあえず私も起きて、欠伸を繰り返す皆に続いて歩く。
もうすっかり太陽が昇ってる。他の生徒達は美味しく朝食を頂いてる頃だろう。
「寝てたから分かんないと思うけど、ウッドは相当やる気だよ。去年、最後の試合で僕が倒れてたから……」
これだけ時間が経ってれば寝てても分かるよ。
手短にって言ってたのは気の所為だったか。
しかしそうか、確かにそれは悔しいよな。きっと出場出来ていれば優勝確実だったろうに……殆ど勝ち筋の無い試合で甚振られたんだな。
私もその試合は見れてないけど、シーカー不在なんて最早試合にさえならないって事は分かる。
ハリーはそう言って本当に申し訳無さそうに苦い顔をした。
責任を感じるのは仕方ないけど、そんな顔をするな。
「じゃあ今年は優勝だ」
「……そうだね」
私が笑顔で前向きに返せば、ハリーも笑って返してくれた。
「眠気に耐えられなかったお子ちゃまが言うねぇ。期待してるよ!」
すると前を歩いていたアンジェリーナが足を止めて背を叩いてきた。
お子ちゃまじゃないし。皆よりちょっと耐えられなかっただけだし。
私達がグラウンドに出ると、ハーマイオニーとロンが出迎えてくれた。
「まだ終わってないのかい?」
「まだ始まってもないんだよ」
信じられない、と驚くロンにハリーが苦笑を溢した。
なんか美味しそうな匂いがすると思ったら、彼女達はマーマレード・トーストを持ちだして来たらしい。
いいなぁ……お腹空いた……まだ何も動いてないけど。
まぁいい、とにかくさっさと飛ぼう。
あんな大口を叩いたんだ、私だってやる気を出さなきゃ。
そうして選手達が一斉に空へと舞い上がった。
朝の冷たい空気が顔を打ち、あっという間に目が覚めていく。
私だけじゃない。さっきまでずっと眠そうにしていた皆も、たったそれだけでハッキリ覚醒した。
最初からこうしていれば良かったのに……
あ、全く話を聞いてなかったけど練習ってどうすればいいんだろ。
まぁいいか……なんとかなるだろ。ひゃっほー。
まずはウォーミングアップという事で、競技場を思いっきり飛び回る。
次第に速度が上がっていき、自然と仲間内で軽い競争が始まった。
トップは流石のハリー。続いてフレッドとジョージ。そしてチェイサー3人娘と並ぶ。最後尾はキーパーのウッドだ。
よーし、早速見せてやろう。古い箒と言えども、充分にカスタムした上に乗り手が小柄な私だ。最高速はともかく、加速は良いんだぞ。
そう思って一気に飛び出し、ハリーに並んだ。
「今日は私の後ろを飛ばないの? あっ……残念、ユニフォームじゃパンツが見えないもんね!」
とりあえず煽る。
「なっ……く……そんなに前を飛びたいなら飛んで見せろよ!」
するとハリーは顔を赤くして、私以上に加速していった。
あー……それはちょっと追い付けない。ずるーい。
「あ、見せろってパンツの事じゃないからね!?」
「分かってるよ馬鹿!」
と思ったら急ブレーキ、一言叫んでまた加速していった。
何言ってんだアイツは……
まぁ色々お年頃なハリーは置いておくとして。
そもそも追い付けないのだから置いておくしかないんだけど……
ともかく。やっぱり箒で飛ぶのは楽しい。
絶叫系は無理な私だけど、これは全く問題無い。急降下、急上昇、急旋回、姿勢を変えたって酔いもしない。
不思議なもんだ。自分で運転する車やバイクと同じと考えれば、まぁそんなもんなのかもしれないけど。
いつの間にか競争が終わり、揃って速度を落とし始めた頃。
スタンドに小さな人影が1つ見えた。ハリーのストーカー、コリン・クリービーだ。
「こっちを向いて、ハリー! こっちだよ!」
写真を撮りまくって黄色い声を叫んでいる。
「誰だ? アイツ」
「全然知らない」
フレッドの呟きにハリーは知らん顔で答えた。
なんともまぁ……大変な事で。
とりあえず私はカメラに向かって手を振っておいた。可愛く撮っておけよ。
「いったい何だあれは。気に入らないな……我々の新しい練習方を盗みにきたスリザリンのスパイか?」
「いや、スリザリンにスパイなんて必要無いぜ。ご本人達のお出ましだ」
しかめっ面のウッドが傍に来て苛立たし気に言うと、ジョージが地上を指差した。
なるほど確かに、箒を持った緑色のローブの群れが見える。
あっ……そうか今日ってこのイベントなのか……完全に忘れてた。
「そんな筈は無い、今日ここを予約したのは僕だ。話を付けてくる!」
途端にウッドは歯ぎしりをして、物凄い勢いで降りて行った。
そんな怒る程……?
ひとまずそんなキャプテンに続いて、皆も地上に降り立った。
んー……どうしよっかなこれ。
別にロンがナメクジを吐く事には物語上の意味が無いもんね。
精々がハグリッドの小屋に行く事くらいだけど、そんなのはいつでも行ける。
後でロックハートが逆噴射を受ける理由として描写されただけだろう。
新学期に入って散々な彼を余計苦しめるのも可哀想だし、それは止めてあげたいかな。
なんて考えつつ、私は一足遅れて駆け付けた。
「――その為に特別に早起きしたんだ! 今すぐ立ち去ってもらおう!」
「俺達全員が使えるぐらい広いだろ」
やってるやってる。ウッドとフリント、キャプテン同士が子供の遊び場を取り合うみたいに言い合ってる。
どうやらウッドは練習風景さえ一目と見せたくないらしい。予約したのは僕だ、と頑なに譲らない。
全く……グラウンドは仲良く使いましょう、なんて小学生でも分かってるよ。
「こっちにはスネイプ先生のサインがあるぞ。新人シーカーの教育の為に競技場の使用を許可する、ってね!」
するとフリントは得意げに1枚の紙をヒラヒラと見せつけた。
なんであるんだよ。ウッドが占有しようとするって予想してなきゃそんな許可取らないでしょ……お前ら実は仲良しだな?
「新しいシーカーだって? 誰だ?」
敵の新メンバーが気になるのか、憤慨していたウッドは急に大人しくなり怪訝な表情で訊ねる。
そうして前に出てきたのが――
「げっ……ルシウス・マルフォイの息子じゃないか」
フレッドは嫌悪感を剥き出しにして驚いた。
息子とも父親とも直接関係してないのにこの反応。如何に魔法族が家系で見ているのか分かるというもの。
「ふふ……そのドラコの父親が我々にくださった有難い贈り物を見せてやろう」
ルシウスの名前が出たからか、スリザリン・チーム全員がニヤニヤと笑い始めた。
見せてやろうっていうかもうずっと見えてるけど……
「ニンバス2001だ! 出たばかりの最新型さ!」
そして7人全員が素早く並び、ビシッと揃った動きで箒を突き出す。
代表してフリントが叫んだ。
これでもかと言う程に全員がドヤ顔。貰った物でそこまで自慢出来るって凄い……あ、私もか。
ていうか……
「……それ、練習してたの?」
自慢する為に全員で動きを揃えるなんて……暇か。
「今はそんな事どうでもいいんだよ。本当にズレてる奴だなお前は」
ボソリと溢した私の呟きに、マルフォイが若干呆れていた。
「コホンッ……ポッターの旧型ニンバスより上だ。なんならクリーンスイープ相手じゃ……はっ、考えるまでもなく圧勝だな」
フリントは尚もニヤニヤと見下し、鼻で笑い飛ばした。
グリフィンドール・チームはもう誰も言葉が無かった。
どうしようも無く差を付けられてしまったのは事実だからだ。
「そこのシルバーアロー相手だって……シルバーアロー!? なんでそんな骨董品があるんだ」
そして今更になって私の箒に気付いて2度見した。
どいつもこいつも二言目には骨董品って……
「ふふんっ、骨董品だってカスタムすれば凄いんだから。舐めてたら驚くよ。むしろ驚かせてやる!」
「へぇ……あんまりにも古いから知らないが……それは中々に興味深いな。最高速度は?」
私があんまりにも自信満々に胸を張るもんだから、フリントは素直に聞いてきた。
クィディッチも箒も好きなら、詳しく知らない箒の性能なんて気になって仕方ないだろう。
けどまぁ……うん。
「…………旧型のニンバスにも及ばないです」
なけなしの胸を張ったのは虚勢だ。私は目を逸らしてボソリと答えた。
別に正直に言う必要も無いけど、実際に見れば分かってしまう事。嘘を言って後からバレる方が恥ずかしい。
「聞く価値も無いな」
そして会話は終わった。酷い……
お母さんが贈ってくれたんだぞ……馬鹿にしやがって……絶対目に物見せてやるからな。覚えてろよ。
性能を最高速度だけで判断するなんて、そっちの方が馬鹿ってもんだ。
「どうしたんだ? なんで練習しないんだよ。それになんでコイツが居るんだ?」
私がしょんぼりと数歩退がったタイミングでロンが参戦してきた。後ろにハーマイオニーも来ている。
ここにマルフォイが居る事が不思議でならないようだ。
「ウィーズリー、僕はスリザリンの新しいシーカーだ」
そして当のマルフォイは得意げに、それはもう最高に満足そうに、意地悪く笑った。
やたらとショックを受けたロンは口をあんぐりと開けるだけ。彼もまた言葉が出てこないらしい。
「僕の父上がチーム全員に買ってあげた箒を、皆で賞賛していた所さ」
そんな反応に気を良くしたのか、マルフォイは更に畳み掛ける様に箒を見せつける。
もうロンは顎が外れているかもしれない。
「羨ましければグリフィンドールも資金集めして買えばいい。シルバーアローなんて骨董品も増えたみたいだし、クリーンスイープと一緒に博物館に売ってみたらどうだ?」
とことん見下してくる奴だ。マルフォイの言葉でスリザリンは大爆笑……こっちは誰も彼も、今にも怒りが爆発しそうだ。
だけどこれで手を出せば悪いのはこっちになる。それが分かっているからこそ、皆は歯を食いしばりただ耐えていた。
しかし、そんな私達の様子を見て我慢ならなかったのかハーマイオニーが口を開いてしまった。
「少なくとも、グリフィンドールの選手は誰1人としてお金で選ばれてないわ。純粋に実力で選手になってるのよ」
それを聞いた瞬間、過去最高に良い笑顔をしていたマルフォイの顔が思いっきり歪んだ。
確かに彼は箒に乗るのが上手いけど……シーカーに選ばれる程かと言うと疑問だ。
父親の贈り物のお陰で後押しされたんだと自分でも分かっているんだろう。
だってマルフォイ家は、家柄を重視しまくるスリザリンの中でトップの立場だ。しかも彼らは家同士の繋がりも深い。
そんな家から特大の援助を受けて、息子がシーカーの立場を望んでいたなら……無視出来る筈が無い。
だからこそ、彼はこれまた過去最高にブチギレた。
「……っ、誰もお前の意見なんか求めてない! この……生まれ損ないの『穢れた血』め!」
そしてずっと黙って耐えてきた皆でさえ、この言葉にはブチギレた。
フレッドとジョージはマルフォイに飛び掛かかる程で、それをフリントが食い止める。
ウッドだって拳を震わせて睨みつけている。彼がキャプテンという立場じゃなかったら、あの拳が振るわれていただろう。
ウッドもアンジェリーナもアリシアも、ハーマイオニーとは友人と呼べる程の関わりは無い。
それでも目の前で最大の侮辱を受けた彼女の為に、誰もが轟々と声を上げた。
そして誰よりも怒りを表したのはロン。
自分の杖が折れているという事も忘れ、抜き放った流れそのままに呪文を――
しまった、思ってたよりロンの動きが速い!? 間に合え!
「ロン、駄目!」
「マルフォイ! 思い知れ!!」
私が飛び出し杖を押さえると同時、ロンは呪文を放った。いや、放とうとした。
大きな音と共に閃光が弾け、私達は揃って吹き飛んだ。
え、嘘……受けた? 当たっちゃった? え……嘘でしょ。
「アリス、ロン!?」
ハーマイオニーが悲鳴を上げて駆け寄るが、私達は何も答えられない。
口を開こうとした瞬間、粘液と共に数匹のナメクジをビチャビチャボタボタと吐き出した。
さっきまでの喧騒が嘘の様に静まった。
誰一人残らずドン引き。本来大爆笑してる筈のスリザリン達は、暴発に巻き込まれた私を見て笑うに笑えていない。
駆け寄ってくれたハーマイオニーでさえ一瞬足を止めた。
「うえぇぇっ……ゲボッ、おえぇぇっ……」
そして私は堪える事も出来ず、ゲロゲロと吐きまくる。
最悪だ。こんな醜態を晒すなんて……なんでだよぉ……
「うっ……ぼぇぇ」
猛烈な吐き気、せり上がって来る大量のナメクジと粘液。
その感触、味、臭い……ありとあらゆる感覚が最悪で余計に気持ち悪い。
そしてそれらが自分の口から出てきたのだと突き付けてくる光景。
視覚からさえも更に吐き気を催す。
そんな吐き気がナメクジに変わって出てくる悪循環。
どれだけ吐いても尽きる事が無いんじゃないかと思う程に大量に溢れてくる。
同時に涙も鼻水も流れ、もうグチャグチャのビチャビチャのドロドロ。
「はぁ…うぅ……ぉえ……げぼぉっ……んぐぅ……ぐす」
何より、そんな姿を大勢に見られている恥ずかしさ。
私はあっという間に限界を超えた。
「ぶえぇぇぇええっ……おえっ、うえぇぇぇっ……ぅあーーっ!」
泣き叫んだ。ゲボゲボとナメクジと粘液を溢し、涙と鼻水を流し、ただ泣いた。
余計に恥ずかしい姿を晒していると気付いても止まらなかった。
余りにも耐え難い地獄だった。
「やべぇ、マジ泣きだ……」
「おいロン、謝った方が良いぜ」
「ゲボゲボゲボゲボ……」
「いやこっちもヤバイな」
「まぁロンは後回しでいいか。まずはアリスだ」
ゲロゲロー。
「ちょっとハリー! 呆けてないで手伝って!」
「はっ……ごめん。なんかアリスを見てたらおかしな気分になって……」
「ハリー、その扉は開けちゃ駄目だ。戻ってこい」
ゲボゲボ―。
「あっちにその扉を開けちゃった奴が居るぞ」
「おいそこの1年坊主、カメラ仕舞え! 何撮ってるんだ!」
「はぁ……はぁ……なんか、すごく……良い」
「おいソイツ止めろ」
「なんか、俺も興奮してきた……」
「スリザリンにもヤベェのが居るぞ、誰だ!? 早くアリス隠せ! ていうか逃がせ!」
誰が何処で何やってるのか分からないけど、もう滅茶苦茶な大騒ぎだ。
あんまりにも状況が酷過ぎて逆にちょっぴり冷静になってきた。
「うぁぁああーっ、もうやだぁぁ! 変態しか居ないよー! ゲロゲボおえー」
「なんでそんな状態でもツッコミしちゃうのよ、喋らないで」
言わずにいられるか、こんなの!
なんなんだよ! 私が何したって言うんだよ!
ハーマイオニーに立たされ、ヨロヨロと歩き出す。
まだまだ吐くのも泣くのも全く止まらない。
「おいスリザリン、今日の所はひとまず譲ってやる。ただし覚えておけよ……絶対に許さないからな」
「いや事故は俺達の所為じゃ――」
「黙れ! そもそもの原因は――」
そんな戻ってきた言い合いを背に、私とロンはハーマイオニーとハリーと双子に支えられながら競技場を後にした。
「フィニート、フィニート……っ、どうして呪文が効かないの!?」
歩きながらハーマイオニーが必死に呪文を唱える。
しかし全く効果が無い。ゲロゲロ。
「分かんないけど、多分杖が折れてた所為で出力がおかしくなったんじゃないか? でも大丈夫さ」
「ああ、時間が経てば治まる筈だ。アリス、辛いだろうけど吐き続けるんだ」
双子はロンを支えつつ私を気遣った。ゲボゲボ。
他人の魔法を強制終了させるには相応の実力が必要だからね。
彼女でも駄目となると、かなり強力な暴発だったんだろう。それだけロンが本気でキレたという事でもある。
「誰か僕を心配してくれても良いんじゃない……ゲボー」
そのロンはナメクジを吐きながら不貞腐れてぼやいた。
一応支えてくれている双子でさえ、心配の言葉を掛けていないからだろう。
不貞腐れる余裕があるなら良いじゃん。誰の所為で私がこうなってると。
「ハグリッドの所へ行こう。医務室よりよっぽど近い」
ずっとだんまりだったハリーがやっと口を開いた。
さっき興奮してたのを私は忘れないぞ。許さん。
「それがいい。ロンはともかく、こんな状態のアリスを医務室まで運ぶのは可哀想だ。また変態が増えちまう」
「なら悪いけど、俺達はもう離れるぞ。出来るだけ見られたくないだろうからな」
そうだね……出来るだけっていうか、これ以上誰にも見られたくないよ。
双子は私を気遣う流れで、スルリとロンの支えを放棄して城へ向かった。
あの……私はともかく弟……まぁいいか。
「ねぇ僕も大変な事になってるんだけど……ゲボロロロロ」
「うるさいわね。アリスの方がよっぽど大変よ」
ロンは支えを失い、1人フラフラと歩きながらナメクジを垂れ流す。
そんな彼に対し、ハーマイオニーはいつもより厳しかった。
*
私とロンはハグリッドの小屋で遠慮無く吐きまくった。
勿論バケツにだけど、それでも嫌な顔1つしないのは凄い。精神的にも助かる。
「うっぷ……ごめんよアリス……」
「ゆるしゃない……」
大きなナメクジをボリュッと口から溢し、ロンがようやく私に謝った。
しかし私はハーマイオニーに背中を擦られながら拒絶。
大抵の呪文なら笑って許してやるけど、これは駄目だ。
少なくとも今日1日は絶対に許さない。
「一体なんでこんな事になっちまったんだ? ロン、お前さんは何をしたんだ?」
嫌な顔はせずとも、流石に事情が気になったらしいハグリッドは不思議そうに訊ねた。
「ロンがマルフォイに呪文を撃とうとして、それを止めようとしたアリスが暴発に巻き込まれたんだ」
「折れた杖なんか使うから……それにロン、あなた事件を起こしたら次は無いのよ? アリスは2つの意味でロンを止めようとしてくれたの」
事情はハリーとハーマイオニーが説明してくれた。
そう、暴発というか逆噴射を止めたかったのも確かだけど……もし万が一にも呪文が成功していたらもっと大変な事になっていた。
なんせ相手はあのマルフォイ。しかも激昂した状態だ。
間違い無く父親を出してきて大きな事件にされてしまう。家族間の関係も最悪だしね。
そうなったらロンはどうなっていたか。本当にモリーさんが連れ帰るかは分からないけど……良くない事になるのは確かだ。
「う……本当にごめん、アリス……」
「やだぁ……」
そこまでを全て理解してくれたロンはまたしても謝った。
でもやっぱり許さない。
なんか自分が幼い駄々っ子みたいになってる気がするけど……知った事か。
「うぅ……コリンは変態になるし、ハリーも興奮するし……」
私の姿を見ておかしな事になっていた奴らが居たのも許し難い。
もしかしたら今年は厄年なのかもしれない。
「ちょっ、待ってよ! 僕は興奮なんてしてないよ!? ただなんか……その……」
私が恨み言を漏らすと、当のハリーが慌てて否定してきた。
いや否定出来てないな。ハッキリ自覚まではしていなくても、何かしら感じ入っていたのは事実らしい。
「怪しいわ……ちょっと付き合い方を考えた方が良いかしら」
「違うって! 友達が苦しんで泣いてるのを見て興奮なんて……そんな」
睨む私の隣で、ハーマイオニーもジトリとハリーを見た。
更に慌てて弁明しようとしても、目を逸らしてモゴモゴと言い淀む。
お前はアレだな、父親に似てドSなんだな。むしろ変な性癖に目覚めそうな辺り父親以上か?
流石、苦痛を与える事を楽しまなきゃならないクルーシオを扱って見せた主人公だ。歪んでやがる。
そんな、3割くらい冗談なやり取りをしているとノックの音が響いた。
「誰だ? まさかまーたロックハート先生じゃなかろうな。勘弁してくれ」
ハグリッドが訝し気にドアを開けると、そこに居たのは――
「ポッター、ウィーズリー、探しましたよ。処罰について連絡を……」
お母さん……マクゴナガル先生だった。どうやらあの事件の罰則を伝えに探していたらしい。
しかしその言葉は最後まで言われなかった。
私を一目見て絶句したからだ。
「ア、アリス!? 一体どうしたのですかそんなナメクジなんて吐いて!?」
だけど絶句したのはほんの一瞬だけ。
一目散に私に駆け寄って、優しく背中を擦ってくれた。
まさかこんな痴態を見られるとは思わなかった。恥ずかし過ぎる。
なのになんだか一気に安心してしまった。
「おかぁあさぁあん……」
「あぁ……こんなに泣き腫らして……本当に一体何が……?」
今度は別の意味で涙が溢れ、お母さんは私の顔をぶにぶにと拭う。
そして、まるで事態が分からないと皆を見回す。
元から青い顔で吐き続けている元凶のロンは、余計に真っ青になって硬直した。
だけど説明はしなくちゃならない。ハーマイオニーとハリーは、出来るだけロンを庇いつつ丁寧に事情を語った。
マルフォイ達の箒自慢に始まり、皆が馬鹿にされた上にハーマイオニーが例の最大の侮辱を受けた。
それに怒ったロンが杖を抜き、私が止めに入ったものの遅かった。
纏めてしまえばたったそんなもんの事件だ。
この呪文の苦しみだけは計り知れないけど。
「……事情は分かりました。友人の為に怒れるのは良いですが……なんと愚かな事を。折れた杖というのはとても危険なのですよ」
険しい表情で聞いていたお母さんは、一瞬だけロンを見て微笑んだ。
だけどすぐにまた表情が戻り、杖の危険性を伝える。
でも危険だと言われようとどうしようもない。他に杖は無いし、買ってもらうのも絶望的だ。
杖を使わない授業の方が少ないし、日常生活だって魔法を使う。
ロンは俯いて何も言えなかった。言える状態でも無いだろうけど。
「まだこの程度の呪文で良かった。何より、たまたま私があなた達を探してここに来て良かった」
お母さんは大きな溜息を吐きながら杖を抜いた。
そして私に向かって軽く振る。
「けぷっ……あ……治まった」
すると、今の今まで胃の中で渦巻いていたナメクジ共が綺麗サッパリ消えたのが分かった。
苦しみも吐き気も何もかもが、小さなげっぷになって飛び出して終わった。
あんまりにもあっけない。ハーマイオニーでさえ無理だったのに、サッと杖を振るだけで解決してしまった。
「さて、ひとまず伝える事を伝えましょうか。2人共、処罰は今夜8時になります」
何事も無かったかの様に杖をしまい、お母さんはハリーとロンに向き直って当初の目的を話した。
罰則の内容はなんだろう、と彼らはゴクリと唾を呑み込んだ。
いや、ロンはナメクジを呑んだかもしれない。すぐにナメクジが飛び出してきた。
「ポッター、あなたはロックハート先生のファンレターに返事を書く手伝いです。なにやら気に入られている様ですね」
ハリーは絶望した。呆然として何かブツブツと呟いている。
自業自得とは言え、ご愁傷様……
「ウィーズリー、あなたはフィルチさんと一緒にトロフィールームで銀磨きです。杖が折れていては言う必要も無いでしょうが、魔法は無しですよ」
生徒を虐める事が大好きなフィルチとなんて、さぞ最悪な時間を過ごせるだろう。
それでもハリーよりはマシかな、いやどうだろう……なんて考えてるのが見て取れた。
というか、相当厳しい罰則を……って言ってたのに、結果的には大した物じゃないなんて。
やっぱりなんだかんだお母さんは甘いんだから。
「ただし……明日はまた別の処罰を受けて貰います。勿論私の下で」
「えっ!? そんな……げぶぅっ」
と思ったけどなにやらロンに罰則が追加された。
予想外に続いた言葉で、当の本人は驚きながらナメクジを噴き出した。
「アリスを吐かせ泣かせ辱めたのですから、当然でしょう。文句も質問も受け付けません。いいですね?」
「……ゲボォ」
お母さんは私の頭を撫でてそう言い、返事を聞くまでも無く小屋を出て行った。
むしろ返事の代わりに出てきたのはやっぱりナメクジだった。
まぁ……折れた杖を使って事故を起こした上に、他人を巻き込んだとなれば罰則くらいは普通にあり得る事。
だけど、そう言わずにあえて私の名前を出した事が少し嬉しい。
教師としてよりも、家族としての感情を見せてくれた様に思う。それが良いか悪いかはともかく、ね。
「なんでアリスだけ治してもらえたんだよ……げっぷ、おえぇ……」
「それも罰なんじゃない?」
「あんまりだ……」
お母さんが立ち去って静かになった小屋で、ロンの不満そうな呟きと嘔吐が空しく響く。
私はとりあえず笑って返しておいた。
何回も目の前で吐いてるのに無視してたから、多分そういう事だろう。
まぁでも……可哀想だから、私はもう許してやるよ。
*
そして翌日。
朝食へ向かおうと女子寮を降りると、男子寮の方からとんでもない叫び声が聞こえてきた。
「な、何?」
「……なんかついこないだも聞いた声だなぁ」
隣のハーマイオニーは驚いて跳ねた。
これ、モリーさんの声じゃん……まさかまた吠えメール?
「行ってみよっと」
「あ、ちょっと……」
気になるから行ってみよう。
女子は男子寮に入れるからね。
躊躇うハーマイオニーを置いて、私はさっさか階段を上がった。
えーっと、どの部屋かなんて聞いた事も無いけど……声で分かるな。よし。
「――事情はともかく、友人を事故に巻き込むなんて!」
「おー……やってるやってる。元気ー?」
どうせノックしたって聞こえやしないだろう、と勝手に突入。
相変わらず物凄い大声だ。
顔を顰めて耳を塞ぐハリー、ロン、ネビル、シェーマス、ディーンに声を掛けたけど……これも当然聞こえちゃいない。
「うわっ!? え、アリス? こっち男子寮だよ」
なのでそのまま部屋の中を進んで皆に近づく。
するとハリーが驚いて話し掛けてきた。
「別にいいでしょ。見られて困る物でも?」
「多分、皆あると思うけど……」
私が適当に返すとハリーは困惑。
なるほど確かに、シェーマスとディーンが私に気付いてドタバタと何かを隠している。
「まぁ……別にいいでしょ」
気になるけど、この場で反応するのもなんだか勿体無いので一旦流しておいた。
後で暴いてみよう。
「手紙を貰って私がどれだけ恥ずかしかったか! あれ程言ったのにお前はどうして……!」
私達が話してる間も吠えメールは吠え続けていた。
「なんでモリーさんに伝わってるの?」
「フレッドとジョージ、それからマクゴナガル先生が手紙を送ってたみたい」
「へぇ……大変だ」
私が巻き込まれただけでこうも変わるのか……
私の中途半端な行動で、結局マイナスにしかなってない気がする。ごめんロン。
「次の休日に迎えに行きますからね! ただし連れて行くのは家じゃなくダイアゴン横丁です! お前の杖を用意しなければ、私達まで恥を掻く事になりますから!」
「え」
そしてまさかのセリフが飛び出してきて驚いた。
嘘、新しい杖をこの時点で買いにいくの……?
お母さんは教師として連絡したのかもしれないけど、フレッドとジョージまでもが手紙を送った理由はなんだろう。
いい加減杖を買ってやれとかなんとか伝えたのかな。
家族想いの彼らなら、弟がお下がりの杖を使わされていた事に何も思わない筈が無い。
ずっと気にしていて、良い機会だからと弟の代わりに頼んだ……とか。
折れたのは自業自得とは言え、魔法で事故を起こすに至ったならどうにかしようと動いてもおかしくないかも。
「その代わり、お前は今年も来年もお小遣いは一切無しです! いいですね!」
そう叫んで吠えメールはようやく灰になった。
ロンはぐったりと項垂れている。
「あー……ロン、一応……良かったね? 杖を買ってもらえるみたいで……」
「お小遣いは消えたけどね……はぁ……」
ハリーが気まずそうに声を掛けると、項垂れていたロンはベッドに倒れ込んでボソリと呟いた。
少なくとも、家に連れ戻される事は無いし杖も新しくなる。
良い事と言ってもあながち間違いじゃないだろう。
私が関わった所為でマイナスばかりかと思ったけど、プラマイゼロくらいにはなれたか?
でもこれ、やばくね?
もし物語通りにロックハートに杖を奪われたら……逆噴射してくれないから終わりだ。
何をどうすればいいかは分からないけど、なんとしても根本的に変えなきゃマズそうだ。
とにかく頑張れ、私。考える事ばっかりで胃が痛いなぁ……
ちなみに……シェーマスとディーンは何を隠したんだろうと暴いてみたら、予想外の物が出てきた。
なんと私の写真だ。なんでだよ。えっちな本じゃないのかよ。期待外れだ。
写真は間違い無くコリンの撮った物だけど……私の把握していない物もある。盗撮じゃん……駄目って言ったじゃん。
ハリーのストーカーじゃなかったの? 私まで追ってるの?
なんなら昨日のとんでもない醜態までもが写真として出てきた。普及が早過ぎる……どうなってるんだ。
勿論消し炭にしてやった。彼らは悲鳴を上げていたけど知ったこっちゃない。
今度コリンを締め上げよう。
しかしなんでコイツらはこんなに私の写真を……まさか私のファンクラブって……
グリフィンドール男子は終わってるかもしれないな。
【穢れた血】
マグル生まれ、一般的には両親がマグルの魔法使いを指す、侮辱の為の差別言葉。
しかし、そもそも純血思想自体が時代遅れの価値観とされており口に出す人は少ない。
マグルと交わらなければ魔法族はとっくに滅んでいる、と言われている通り殆どが半純血である。
半純血とは何処かでマグルの血が混ざっている人の事。両親のどちらかがマグル、という訳では無い。
マグル生まれだと思われていたとしても、遡れば先祖に魔法族(スクイブ込)が居て隔世遺伝的に目覚めている場合もある。つまり条件としては一応半純血と同じ。
完全にマグルだけの血で、突然変異的に生まれた場合のみが彼らの言う穢れた血になる筈だが……
そんな細かい事を考える事はせず、とにかく侮辱したいが為に使うようだ。
そもそも始祖……というか魔法使いとしての最初の世代はどうやって生まれたのか。
それが突然変異的な誕生だったとしたなら、マグル生まれこそ新たな純血の世代と言って良いかもしれない。
ちなみに、そんな純血思想の強い人達は血を残す為に近親相姦を繰り返している。
なので純血の家系は親戚だらけ。それもあって家同士の繋がりが深い。
当然ながら近親相姦を繰り返した結果の遺伝子異常で、身体的、精神的な問題が現れる人も居る。
そんな中で、純血でありながらマグル寄りな姿勢であるウィーズリー家等は血を裏切る者と呼び冷遇されている。
【スクイブ】
魔法族に生まれながら魔法が使えない人の事。
一部の家系ではスクイブが生まれると家系図から抹消される。
穢れた血の様に侮辱の言葉ではないが、結局そんな意味合いで使われたりもする。
ネビルでさえ自分を卑下する為に使う辺り、相当下に見られているのは確かだろう。
更に杖の所持さえ禁じられ、結構な冷遇っぷり……かと思いきや、彼らの為の教育機関や仕事があるらしい。
実際、フィルチはダンブルドアに迎えられて管理人になったし、ハリーを近所から見守っているフィッグ婆さんは猫とニーズルの交配を仕事にしている。
【スラグラス・エルクト「Slugulus Eructo」】
対象に大小様々なナメクジを洪水の様に吐き続けさせるという、趣味の悪過ぎる呪文。ある意味精神的クルーシオ。
後々になって一応正式と思われる呪文が登場した。
映画での「ナメクジ食らえ」はただの掛け声だったようだ。
原作でも「思い知れ」と叫ぶだけ。
ちなみに英語版だと「eat slugs!」と言って放つ。「eat this」や「catch this」が食らえとか受けろという意味になる。ゲーム等でよく聞くセリフだろう。
口から吐かせるという所と合わせて、まさしくナメクジ食らえ。
逆噴射したとは言え効果は出せた、つまり彼は無言呪文でこれを扱ったという事。
少なくとも、杖が折れていなければ成功していたと思われる。
そもそもキレて咄嗟に使うくらいにはよく知っていた訳で。
ハーマイオニーでさえあの呪文は難しいと言う程なのに、一体彼は何処で知って練習していたのだろうか。謎である。
まぁこんな呪文なので、十中八九フレッドとジョージが絡んでいそうではあるが。
彼らに教わった、もしくは既に被害者にされていたのかもしれない。
余談だが、映画での撮影は大変だったものの、ロン役のルパート自身は楽しんでいたらしい。
作り物のナメクジと一緒に大量の粘液を口に含んだが、その粘液は色んな味が付けられていて美味しかったとか。
微笑ましいが普通に飲み込んでしまいそうで少し怖い。だから映画のナメクジはやたらデカいのかもしれない。役者と言えども子供だし。
【クルーシオ「Crucio」】
許されざる呪文の1つ。途轍もなく激しく、耐え難い肉体的苦痛を与える。
その苦痛は最早言葉に表すのも難しい程で、あえて言うなら骨まで焼かれるとか、熱したナイフ千本を突き刺されるとか、なんとかかんとか。
拷問以外の用途が無い……のだが苦しみから逃れる為に嘘を吐く場合がある為、情報を吐かせるには向かない。というか真実薬がある。
特に秘密の守り等の重大な情報は本人の意思でのみ伝える事が出来るらしいので、強制させる拷問や薬は無意味とされる。
なので本当にただ苦しめたいだけの呪文になっている。
あまりにも強烈過ぎる痛みから、被害者は死による解放を望んでしまうと言う。
そして長時間この呪文に晒されると廃人となる。ネビルの両親がそれ。
恐らく脳に効果を与えて痛みを感じさせており、そこから身体的、精神的に障害が残るという形だろう。
この呪文はただ唱えるだけでは成功しない。
相手に苦痛を与えたいと本気で思い、それを心から楽しむ必要がある。
映画版のお辞儀様が墓場で唱えた時の「クルッ↑シオ!」が本当に楽しそうで流石。
原作でハリーはベラトリックス相手に怒りの衝動で放ったが、一瞬の痛みしか与える事が出来なかった。
しかし後にアミカス相手にキッチリ成功させる。しかも透明マントで隠れての不意打ち。
児童書の主人公がやる事じゃない。まぁいいか。
ちなみにそのハリーの行動は一部から本当に批判が届いたとか。
それに対する原作者の反論は「ハリーは聖人ではない」だった。
物語を通して、誰であろうと性格的に欠点があると拘っているのがよく分かる。