ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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いよいよ原作ブレイク。
ハリー視点からダンブルドア視点へ。


第27話 未来の為に

 凄惨なハロウィンが明けた翌日。未だに学校中が騒がしかった。

 校内で生徒が何者かに殺されかけたという恐怖。運ばれるアリスやあの廊下を見てしまった生徒達から、どんどん話が広まってしまったらしい。

 アリスの容体が分からない心配もあって、特にグリフィンドールは大騒ぎだ。

 

 なんなら1年生達は初めての学校生活が始まって大して経ってないのにこんな事件だ。

 誰もが揃って不安そうにしている。無理も無い。

 

 ジニーなんて酷くて、真っ青な顔で震えてばかりだ。

 僕はあまり知らないけど、ロン曰く活発な子らしいのに……なんだか可哀想なくらいに怯えている。

 なんとかしてあげたいけど……僕が出るまでも無さそうだ。

 ロンは勿論、お兄さん達がどうにか安心させようとしているのを見て、ちょっと微笑ましかった。

 

 それにしても……なんだか怪我をしているみたいでそっちも心配だ。何処であんなに怪我をしちゃったんだろう。

 

 

 一部の生徒は犯人を捜し出して仇を討とうと躍起になっている。

 僕もその内の1人だ。当然、ロンとハーマイオニーも。

 あのアリスがあんなにやられる様な相手に何が出来るかも分からないけど……大人しくなんてしていられる筈が無い。

 

 血の海に倒れるアリスを見て……そのほんの少し前まで一緒に居て……

 どうしようもなくやるせない気持ちが、やりようのない気持ちが溢れてくる。

 

 

 とは言え昨日の今日で何か動ける訳も無く、騒々しい午前をボケっと過ごしただけだった。

 昼休みにモソモソと食事をしてると、フレッドとジョージが僕達の所に来た。

 

「おい、俺達さっき魔法史の授業だったんだけど……試しにビンズ先生に秘密の部屋について聞いてみたんだ」

 

「透けてるけど堅そうな頭だからな。聞き出すのに苦労したぜ。いいか……」

 

 アリスが襲われてジニーが酷く怯えて、彼らも少しでも何かしようと動いていたようだ。

 その聞いてみた話とやらはこうだ。

 

 

 創設者の1人、サラザール・スリザリンは思想の違いで学校を去った。

 その思想というのが、魔法族の家系のみを選んで教育するべきであり、マグル生まれは資格が無いという物。

 

 そしてスリザリンは城の何処かに、誰にも知られていない部屋を残した。

 部屋は封じられていて、彼の継承者でなければ開く事が出来ない。

 しかし開かれたなら……その中の恐怖が解き放たれ、資格無き者を追放する。

 

 事実かどうかはともかく、そういう伝説があるらしい。

 

 

「秘密の部屋。継承者。その敵ってのはつまりマグル生まれ。言いたかないけど、アリスだってマグル生まれらしいじゃないか。全部この伝説とドンピシャだ」

 

「この話は今まさに広まってる所だ。誰が継承者なのか、恐怖ってのが何なのか……少しでも手掛かりが増えればいいんだけどな」

 

 今の話を聞いて真っ先に僕の頭に思い浮かんだのはマルフォイだ。 

 アイツは如何にもスリザリンって奴だし、マグル生まれを軽蔑してる。何より、あの時アイツは知った風に話していた。

 犯人かどうかはともかく、かなり怪しい。

 

 どうする……こっちから突っ掛かってやるか?

 皆で杖を突きつけて追い込んでやれば、何かしら吐くかもしれない。

 

「俺達は友達を殺されかけて大人しくして居られる程良い子ちゃんじゃない。お前達もだろ。でもな……下手に動き過ぎるなよ?」

 

「継承者に敵と判断されて襲われたら堪ったもんじゃない。アリスが帰ってきた時、お前達が傷付いてたら悲しむ。何よりハーマイオニーだってマグル生まれだ……気を付けろ、いいな?」

 

 なんて考えていたら双子から釘を刺された。

 そうだ……それで僕達が狙われたら元も子もない。上手く立ち回らなきゃ……

 ロンとハーマイオニーも神妙に頷いた。

 

 そうして彼らは離れて行った。きっとあの話を広めて、情報を集めようとしてるんだろう。

 僕達は僕達で、これからどうするかを考えなきゃならない。

 

 

 気を取り直して、それを話そうとしたら梟が飛んで来た。

 揃ってダンブルドアがお呼びだ。これは無視出来ないな……

 

 もしかしてアリスが……と思ったけど、行ってみれば居たのはスネイプ。期待は外れた。

 あの声について後で聞くと言っていたから、それの事だろう。

 

「さて……ではポッター。お前の言う声とは一体どんな物だったのか……何処から聞こえていたのか。今一度話したまえ」

 

「は、はい……あの……アリスは……」

 

 部屋に入るとすぐにスネイプが口を開いた。

 険しい顔で見てくるのは普段通りだけど、声も含めていつも以上に重く厳しい。

 

 話はするとして、何より気になるアリスの事を少しでも聞きたい。

 僕は恐る恐る訊ねてみた。隣でロンとハーマイオニーも前のめりになっている。

 

「返事をしておいて別の話題を口にするとは……ふざけているのかね?」

 

「い、いえ……すみません」

 

 本当にいつも以上に厳しかった。怖い。

 

「セブルス、彼らの心配も当然じゃ。多少寄り道しても構わんじゃろう」

 

「……彼女は現在、またしても聖マンゴ魔法疾患傷害病院に居る。医務室でも良かったかもしれんが、彼女を襲った何者かがまた狙うとも限らん。念の為に詳しく診てもらう必要もあるのでな」

 

 奥に座っていたダンブルドアが口を挟んでくれたお陰で、スネイプは静かに溜息を吐いて説明を始めてくれた。

 

「その……容体は?」

 

「学年末の時よりはマシだ。細かい傷は多かったそうだが、重傷だったのは胸から腹に掛けての物だけだ。それも吾輩が治した故……今は傷跡を消し、流した血を補給し、安静にしている。まだ意識は戻らん」

 

 ハーマイオニーが詳しく訊ねると、彼は一気に説明を終えた。

 これでいいか、とでも言いたげに僕達を見てくる。

 

「わしも心配じゃが……少なくとも体は回復はしておる。マクゴナガル先生も付いておるしの。今はそれで安心してくれぬか?」

 

「いえ……その……大丈夫です」

 

 心配に思ってるのは僕達だけじゃない。彼女の家族である2人だって、なんなら僕達以上に心配してる筈。

 スネイプは……分からない。でもこれ程までに真剣な雰囲気なのは……

 そういえば歓迎会の日に見たけど、本当にアリスが軽口を叩く様な関係なんだよね……彼だってなんとも思ってない事は無さそうだ。

 

 

 僕は少し気持ちを入れ替えて、声について説明した。

 いつから聞こえていたのか。どんな事を言っていたのか。

 そして壁や天井をお構いなしに移動していたという事も。

 

 一応、絶命日パーティに誘われてしまってそっちに行っていた事も。

 アリスが逃げ出して、しばらく後に僕達も逃げた事も。

 

 

 そこまで話しきってから、ダンブルドアが酷く真剣な顔で歩み出た。

 

「……ハリー。君はもしや……蛇と会話が出来るのでは無いか?」

 

「え? はい……でも、動物と話すなんて魔法界じゃそんなに特別な事でもないんじゃ……」

 

 そう、あれは動物園に行った時の事。

 ブラジルに行った事が無いとかなんとか蛇が話し始めて……結果的にガラスが消えて僕が逃がしたみたいになった。

 ダドリーが面白い事になっていたっけ。

 

 蛇と対面するなんてまず無いから、その1度きりしか話した事は無いけど……

 動物と話すくらいは魔法界じゃ珍しくも無さそうだ。

 急になんでそんな事を聞くんだろう。

 

「やはりか……」

 

 僕が答えると、ダンブルドアは険しい表情で何かを考え始めた。

 なんで蛇と話せるだけでそんな反応に……?

 

「ハリー、君ってパーセルマウスだったの?」

 

「僕が……何?」

 

「パーセルマウス。蛇語……パーセルタングが話せるの。そんなの特別も特別よ……なんたって、サラザール・スリザリンがそうだったのよ」

 

 すると隣からロンが驚いた様に聞いてきた。

 聞き返すと今度はハーマイオニーが説明してくれた。

 

 そうか……蛇と話せるのは特別なのか。

 スリザリンがそうだったから……え?

 

「マズイよ……ハリー、蛇と話せるなんて誰にも言っちゃ駄目だ。秘密の部屋だのスリザリンの継承者だの広まってる中で、君がパーセルマウスって知られたら……」

 

「……知られたら?」

 

「スリザリンの子孫だとか継承者だって疑われるに決まってる」

 

 ロンが真面目な顔で言った。そうだよね……蛇と話せるのがそんなに特別な事なら、誰だってそう思う筈だ。

 僕はスリザリンと何か関係が……組分けの時に帽子が言ってたのはそういう?

 行くべき寮を間違えたんだろうか……

 

「でもそんなの……僕は違う」

 

「スリザリンは千年以上も前の人よ。彼の血が何処でどう受け継がれてきたかなんて……可能性だけならいくらでもあるのよ」

 

 自分で考えてすぐに否定したくなった。それが勝手に口から洩れてしまう。

 ハーマイオニーの声を聞き流して、僕はモヤモヤと考えた。

 

 子孫……そういえば僕は結局、家族の事を全然知らない。

 どんな家系だったのかとか、何も分からない。まさか本当に……

 だとしても僕はグリフィンドールだ。帽子がどうしたかったかなんて……

 

 

「お喋りは終わったかね? まぁ、その通り……誰にも明かさぬ方が賢明と言えるであろうな。友人を襲う筈は無い、と疑いから逸れる可能性もあるが、どちらにせよ明かす意味は無いだろう」

 

 考え込む僕を無視して、スネイプが話を戻そうと若干イラついた様に口を開いた。

 ただし珍しく忠告をくれた。癪だけど彼の言う通りだ……気を付けないと。

 

「ハリー。君にしか聞こえぬ声というのはまさしく、その蛇語じゃろう。声の主は……秘密の部屋の怪物とは、バジリスクじゃ」

 

 ダンブルドアが声の正体を教えてくれた。

 バジリスクってなんだろう……蛇なんだろうけど。

 でもそうか、何処か隙間か何かを通ってたから壁も天井も無視して移動してたのか。

 

「バジリスク……何処かで……」

 

「流石の優秀さじゃが、今はさっさと答えを教えてあげようかの。バジリスクとは毒蛇の王……そして目を見るだけで死を齎す怪物じゃ」

 

 ダンブルドアは、記憶を探るハーマイオニーに微笑みながら詳しく語る。

 よりによって毒蛇なのかと思えば、それ以上の言葉が続いた。

 

「死……え?」

 

「目を……見ただけで?」

 

 僕とロンは驚いて、ボケっと口を開いてしまった。

 そんなのありなのか? ただ目を見ただけで死んでしまうなんて……

 魔法界の動物は不思議だらけだけど、これはいくらなんでもぶっ飛び過ぎてる。そんな化け物、どうしろって言うんだ。

 

「左様。過去にも犠牲者が出てしまっておる……わしでさえも、今まで正確な正体を掴めんでいた存在じゃ」

 

「という事は、過去に秘密の部屋が開かれていたんですか?」

 

 ダンブルドアは更に驚くべき事を言った。

 もう何も反応出来ない僕達を置いて、ハーマイオニーだけは更に深く知ろうと1歩踏み出した。

 

「50年前の話じゃ。その時の犠牲者が……3階の女子トイレに居るマートルじゃよ」

 

「嘘……」

 

 だけどそんな彼女も、結局は口を開けて呆然としてしまう。

 マートルってあの……そうだったのか。明らかに生徒のゴーストがなんで居るんだろうって思ってたけど……そんな……

 

 

「愚かな真似をする前に、先んじて伝えておいてやろう。余計な首を突っ込むのは控えろ。この事件の危険性は全くもって冗談では済まぬ」

 

 僕達が黙っていると、スネイプが有無を言わせない口調で忠告をした。

 さっきに続いて2回目の忠告だ。あのスネイプが意地悪な事を言うでも無く、こんなに真剣に言うなんて……

 

「危険故に、すぐにでも学校を閉鎖して調査と討伐をせねばならないのじゃが……」

 

 ダンブルドアは渋い表情で付け足した。

 いや、渋いというか……凄く複雑そうな表情だ。

 

「閉鎖……しないんですか?」

 

「犯人が……継承者が誰か分からぬ。閉鎖しては突き止めるのも難しくなるじゃろう。部屋の所在も分からぬしの……」

 

 恐る恐る訊ねるハーマイオニーに、その複雑な表情を深めて答えた。

 なんだか見覚えがある。学年末にヴォルデモートの事を聞いた時と似た表情と雰囲気だ。

 つまり、ダンブルドアは相当悩んでる……?

 

「閉鎖は事件の解決を試みてからでも遅くは無かろう。これだけ大騒ぎになったのであれば犯人も動きづらい筈。今後は生徒の外出を控えさせ、移動の際は集団で且つ教師に先導させるつもりじゃ」

 

 まるで自分に言い聞かせる様に詳しく語る。

 やっぱり悩んだ結果、閉鎖せずに事件を解決しようと考えてるんだ。

 

「この件に関しては現状他言無用であるからして、決して漏らすな。良いな。話は終わりだ、戻りたまえ」

 

 そうしてキッパリとしたスネイプの声で打ち切られた。

 もっと詳しく色んな事を聞きたい、なんて言える筈も無く。僕達は部屋を出ようと歩き出した。

 

「あぁ、そうじゃ……アリスが目を覚ましたら医務室に移動になる。その時は真っ先に君達に教えよう」

 

 そこにダンブルドアの優し気な声が投げ掛けられた。

 その連絡がすぐに来る事を祈ろう。

 

 

 色々と話していたから、もう昼休みも終わってしまう。

 次の授業の準備をしようと歩き出すと、ロンが不満気に口を開いた。

 

「嘘だろ……バジリスクとかいう化け物が居るのに、学校を閉鎖しないなんて」

 

 確かに驚きではあるけど……ほんのちょっぴりだけ安心してしまったなんて言えない。

 閉鎖したらあのダーズリー家に戻らなきゃならないと考えると……どっちにしろ地獄なら皆と一緒がいい。

 

「多分だけど、あの言い方からして生徒の誰かが犯人と考えてるのね……」

 

「あのアリスがやられるくらいだし、生徒だったらかなり絞れそうだけど……」

 

 閉鎖したら突き止められないなんて、きっとそうなんだろう。

 去年のクィレルみたいな人が居ないとも言えないけど……

 

 なんにせよ相当な実力のある人だって事は確かだ。

 いや、隠れて不意打ちだったらアリスでも……駄目だ、いくらでも考えられそうだ。

 

「とりあえず……歯痒いけど、あれだけ釘を刺されちゃったし大人しくしなきゃ……」

 

「そう……だね」

 

 ハーマイオニーは不服そうに呟いた。

 自分も狙われるかもしれないなら、動きたくなるのは当然だもんね。

 でもじゃあどうするんだ、って話だ。

 

 だから僕は彼女の言葉に同意するしかなかった。

 危険なのもそうだし、解決に動く先生達の邪魔になったら最悪だ。

 

 アリスの仇を討ちたいのに……バジリスクの声に気付けるのは僕だけなのに……何も出来ないのか。

 本当に……僕は無力だな。

 

 

 

 

 

 

 わしは悩みに悩んで、学校の閉鎖を後伸ばしにした。

 生徒の事を考えれば即刻閉鎖に動くべきだと分かっておる。

 分かっていて尚、命の危険がある場に生徒達を残す。大人としても教育者としても失格じゃろう。

 

 今度こそ秘密の部屋に纏わる全てを解決したい。そう考えてしもうた。

 つくづく己が、全く教育者に向かぬ冷酷な人間なのだと実感する。

 この心根だけはどれだけ時が経っても変わらぬようじゃ……

 

 そんな自己嫌悪をしながら更に1日が過ぎ、夕方になってアリスが目を覚ましたと連絡を受けて大急ぎで聖マンゴへと向かった。

 あの子を家族として愛し特別に想いながら、他の生徒を見て見ぬ振りをしている事に更に自己嫌悪を抱いた。

 その自己嫌悪さえも見て見ぬ振りをした。

 

 

 目を覚ました事と、事件の情報が得られる事。2つの安堵と共にアリスの病室へ向かったわしとセブルスを、浮かない表情のミネルバが迎える。

 何故そんな顔をしておるのか、という疑問はすぐに解消された。

 

「なんと……記憶が消されておるのか……」

 

 アリスは事件の記憶を丸ごと消されておった。

 考えてみれば、犯人とバジリスクに対面した彼女をそのまま置いていく筈が無かったのじゃ。

 無事だった事に目を向け過ぎて、そんな当たり前の事に気付けんかったとは……

 

「……こちらを向け」

 

「え? ぶみゅっ」

 

「レジリメンス」

 

 セブルスがアリスの顔を掴み杖を抜いた。

 向けと言いながらなんと強引な……

 

 そしてわしが止める間も無く、おかしな鳴き声を上げたアリスへ呪文を唱える。

 

「――っ」

 

「ほう……?」

 

 しかし数秒の後、アリスは頭を振って手から離れた。

 セブルスが珍しく驚いた顔を……まさか……

 

「よもや開心術を退けるとはな。全く本気では無かったとは言え驚きだ……素直に褒めてやろう」

 

 やはりか……この歳で閉心術を少しでもやってみせるとは。わしも驚きじゃ。

 しかし彼ならば杖どころか呪文さえ必要無い筈。あえてそうしたのは、開心術という学びをついでに与える為じゃろう。

 全く……褒める以外にも素直になれば良いのにのう……

 

「ふ……余程知られたくない事があるらしい」

 

「何をしているのですか!? 子供の心を勝手に覗くなんて!」

 

 嘲るセブルスにミネルバが怒ってしまった。

 まぁ、それは全くもってその通りじゃな。記憶の確認をするにしても、もう少し順序という物があると思うんじゃが……

 

「しかしどうやら本当に記憶が消されているようですな。一番新しい記憶はハロウィンの前日……丸々1日分の記憶が無い」

 

 無視しとる……良い性格じゃの……

 

 しかしこれでは、あの日に何があったのかが分からぬ。

 忘却術は完全に記憶を消し去る物ではなく、戻す事は可能じゃが……呪文を唱えて終わりという訳にはいかぬ。

 すぐに戻せる物ではない以上、今はどうしようもない。

 

「えっと……結局何があったの?」

 

 心を覗かれたのに文句も言わず、ずっと考え込んでいたアリスが口を開いた。

 疑問というよりも確認。記憶を消されたというのに、この落ち着き様は……

 

 いや、まず先に説明が必要じゃろう。

 わしは事の詳細を伝えた。

 と言っても、彼女が寄越した伝言を元に話すだけじゃが。

 

 

「そっか……」

 

 詳細を聞き、アリスは更に考え込む。やはりこの子は……

 これは……わしも遂に予言を話すべき時が来たのかもしれんな。

 

「アリスよ、君は……今回の事件を事前に知っておったのではないかの?」

 

「え」

 

 ひとまず様子見のつもりで訊ねてみると、あっさり分かりやすい反応をしおった。

 硬直したかと思えばキョドキョドと目を逸らしておる。

 

 なんというか……嘘の吐けない子じゃのう……

 

「知っていて、何かの考えの元であの場に向かった……違うかね?」

 

「や、えっと……なんで?」

 

 何故まだ誤魔化そうとしておるんじゃ……

 全然誤魔化せておらんよ……

 

「どういう事です?」

 

「先んじて知っていなければ説明がつかんのじゃよ。例えば、何故バジリスクだと断定出来たのか」

 

 わしが何を言いたいのか、ミネルバにはサッパリじゃろう。

 彼女を見やり説明をしつつ、改めてアリスの寄越した伝言を思い返す。

 

 犯人が誰なのか、何故アリスがあの場に行ったのかはともかくとして、バジリスクに関しては少し無理がある。

 

「アレは精々、体の一部しか無事に見る事は叶わん……しかしそれだけでは判断出来ぬ筈なのじゃよ。結局蛇じゃからの。その目の効力を目の当たりにしたなら別じゃが……」

 

 アリスは奴の目……つまり頭を見ておらん。

 しかし胴体を見ただけでバジリスクと断定出来る程の特徴は無い。見た目はやたら大きな蛇でしかないからじゃ。

 犠牲になった誰かを見たなら断定出来るが、勿論誰も被害にあっておらん。

 犯人が最初から態々バジリスクだと明かすとも思えんしの。

 

「そ、それは……その、あの……えっと……」

 

 わしが意地悪く微笑んでいると、アリスはどうにか弁明しようとアタフタした。

 遭遇した記憶が無いのに、どう答えるか考えてしまっておる時点でおかしいんじゃがな。

 うむ……ここまで分かりやすい子じゃとなんだか心配になってしまうのう……

 

「聞かせてはくれぬか? アリスの知っておる事を……」

 

「う……あう……その……」

 

 極力優しい声を意識して、わしはアリスに詰め寄る。

 すると酷く悩ましい、苦しそうな表情に変わった。

 

 そんな顔をさせたい訳では無い……やはり秘密を明かす事は出来ないと思っておるんじゃろう。

 ならばわしが先に話すべきじゃな。

 

 

「では、わしから話そう。アリス、君を引き取った理由を」

 

「え?」

 

 ようやくわしの腹も決まった。

 今度こそ伝えよう。数ヶ月前は言えなかった真実を……

 

 

「予言があったのじゃよ。『闇の帝王を打ち倒す者に連なる少女が生まれる。かの者は未来を知り、戦いを勝利に導くであろう』とな。探しに探して見つけたのがアリス、君じゃよ」

 

「なっ……それは一体、どういう事ですか!?」

 

 アリスはあまり驚かなかった。何処かで予想していたのか、この未来さえ知っていたのか……それは分からぬが。

 驚きはむしろミネルバの方が大きかった。

 

「聞きたい事は1つ2つじゃありませんが……まさかこの子を戦いの駒として育てるつもりで引き取ったと言うのですか!? だから入学前や夏休みに鍛える様な真似をっ……」

 

「それについてはどんな償いもしよう。どれ程恨まれようとも、全て受け入れよう。しかしわしはアリスを家族として愛しておる。それは嘘偽り無く本心じゃ」

 

 彼女の怒りも尤もじゃろう。なんの反論も出来ぬ。

 それでもアリス本人から責められないだけで救われたと思ってしまう。

 

「うへへ……」

 

 その本人はわしを見て優しく微笑んでくれた。

 何故これを聞いてそんな風に笑ってくれるんじゃ……本当に、この子は……

 じゃがお陰で心が軽くなれた。話を進めさせてもらうとしようかの。

 

 

「つまり、予言通りにアリスは事件の前から何かを……未来を知って動いていた。そうじゃな?」

 

「……うん」

 

 改めてアリスに確認してみれば、もう下手な誤魔化しもせず諦めた様に頷いた。

 

「どうして1人で……私達は頼れないと――」

 

「違う! 違うんだよ……」

 

 彼女が認めた事で、ミネルバは悲し気に口を開いた。

 しかしそれをすぐに遮って、辛そうに顔を歪めた。

 

 どうやら未来を知るというのも、単純な話では無さそうじゃの……

 

「あのね……私が知ってる未来は……断片的で……不確かな物なの」

 

 アリスはポツポツと語り始めた。

 断片的で不確か……予言だってそんな物じゃし、それはそうじゃろう。

 そう思ったが、彼女の真実は予想を上回る物じゃった。

 

「何より……その未来には私が居ない。自分が居ない未来を知ったって、そんなのどんどん変わっていくんだよ!」

 

 今まで抱え込んでいた物を吐き出す様に、アリスは叫んだ。

 自分が居ない未来とは……それは確かに不確かじゃ。そんなのは生きているだけでいくらでも変わるじゃろう。出来事だけではなく、人もじゃ。

 わしもこの子のお陰で変わった面があるじゃろうし、友人達だって影響を受けておる筈。

 

 心が変われば行動も変わり、結果も変わっていく。

 つまり精々参考程度にしかならんという事か……

 

「もう全然違う未来になってる! 何をどうしたら良くなるのか悪くなるのか……なんにも分かんないんだよ……」

 

 いくらでも変わる未来をどうするのか。それが危険な未来なら尚更に悩ましいじゃろう。

 今まで言わなかった、言えなかったのは……ただ大きな秘密だからではなかった。

 きっとこうして誰かに明かす事さえも、未来を更に大きく変える要素になってしまうと悩んできたのじゃろう。

 

 わしでも最善の動きなど分かる物ではない。一体今までどれだけ悩み苦しんで来たのか……

 

 

「……ずっと知っておったのかね?」

 

「……うん。引き取られるずっと前から……今よりずっと先の事まで……」

 

 顔を歪めて吐き出す彼女を見て、いつからそうだったのかを訊ねてみた。

 魔法界への順応の早さからもしかしたらと思っておったが、まさか本当にその頃から未来を知っておったとは……

 

「なんて事……そんな」

 

 ミネルバもわしも、もう言葉も無かった。なんと言えば良いのか分からなかった。

 どれだけ抱え込んできたのか……何故こんな小さな子が、そんな大きな物を背負わねばならぬのじゃ……

 

 

「教えておくれ、アリス。君の知る、今回の事件についてを」

 

 ならばもう、この子の力になるしかない。

 少しでも軽くしてやれる様に。

 

 その為にはやはり詳しく聞いてみるとしよう。

 なにはともあれ、まずは直面している問題を解決せねばなるまい。

 

 するとアリスは尚も悩み、口を開いては閉じる。

 真実や未来を本当に話してしまって良いのか。相当に悩んでいるのじゃろう。

 

 

「元凶は……トム・リドルの日記。それをルシウス・マルフォイがジニーの荷物に紛れさせたの」

 

 それでも間を置いてポツポツと語り出した。

 いきなりトムの名前が出て驚いたが、今は口を挟まず聞いていよう。

 

「それに書き込んでしまったジニーが操られて……事件を起こしていく。でも犠牲者は全員、偶然石化で済んで……結果的には無事に解決される」

 

 ふむ。ルシウスが何故そんな事をしたのかは分からぬが……問題はその日記じゃな。 

 

「トムの日記……操るとなるとただの日記ではないのう。まさか……」

 

「分霊箱。それをバジリスクの牙で貫いて解決するんだ」

 

 一旦アリスの言葉が途切れた所で、わしは呟く。思い当たる物が1つだけあった。

 そうと思いたくなかったが、あっさりと肯定されてしまった。

 

 トムの名前という事は学生時代の物。あの頃から既に分霊箱を作っていたとは……恐らくマートルを殺害した時の物じゃろう。

 そして分霊箱とハッキリ言ったという事は……つまりそれがなんなのかをアリスは知っておる。

 未来を知り勝利に導く……まさしく途轍もなく有利になる情報じゃな。

 

「なるほど……偶然石化で済むというのはどういう事じゃ?」

 

「バジリスクの目を間接的に見ると石化になるみたい。廊下の水や鏡に反射したり、何かを透して見たり……」

 

 少し逸れた思考を戻し、詳しく事件について訊ねた。

 驚きじゃ。まさかバジリスクの目にそんな特性があるとはの。

 

「確かにそれは頭を悩ませて当然じゃな……あまりにも偶然過ぎる」

 

 そんなのは偶然でしかない。何かが少し変わるだけで、石化は死に変わるじゃろう。

 むしろ誰が犠牲になるか、その数さえも予測が出来ぬと言って良い。

 

 しかしそれなら事件を未然に防げば良い話じゃ。原因が日記と分かっているなら……

 いや、ならばこそ出来ない理由があったのかもしれぬ。

 

「あと1つ大事な事があるの。バジリスクはグリフィンドールの剣で倒さなきゃ……」

 

 それを肯定するであろう言葉が出てきた。

 態々グリフィンドールの剣で倒す事に大きな意味があるらしい。

 あれは厳重に保管してある故、真のグリフィンドール生にしか扱えぬ……つまり誰かが剣を抜き倒すという事。

 それが誰なのかはともかくとして、最も重要なのは剣の能力じゃろう。

 

「あの剣は斬った物の力を吸収して強くなる……バジリスクの毒じゃな?」

 

「それが将来必要になるの。でも……その為には石化で済むか分からない事件を放置しないと……そんなの無理だと思ったから……」

 

 わしが確認するとアリスは神妙に頷いた。やはりか……

 分霊箱を破壊し得る程の毒を吸収した剣が必要……それはつまり……

 何と言う事じゃ……一体いくつ存在するのか……いや、それさえもアリスは知っておるかもしれぬな。

 

 しかしここまでを聞いて、アリスが何を考え動いたのかが理解出来た。

 

「事件を未然に防ぐのではなく、未来を考え最善を探した……しかし事件が目前に迫り、せめて犯人を捕らえようとした。それで合ってるかの?」

 

「……うん。結局それも出来なくて……なにしてたんだろ……私」

 

 確認してみるとアリスは酷くしょんぼりと頷いた。

 運命に背負わされたのじゃから仕方の無い事じゃが……見ていて辛くなる程に背負い過ぎじゃな。

 何故この子が自分を責めねばならんのじゃ。誰も責めはしないと言うのに……

 

「アリス、自分を責めてはならん。未来など1人でどうにか出来る物では無いのじゃ……」

 

「でも……私に力があったら……」

 

 ある程度の未来を知っているという事の意味を、彼女はよくよく理解しておる。

 理解出来ているからこそ重く捉えておるようじゃな。

 ふむ……どう伝えたものか……

 

「失敗した後のたらればを聞きたい訳では無い。そんな話にはなんの価値も無い。価値があるのはお前の知る未来だけだ」

 

 項垂れるアリスへ、セブルスが厳しい声を掛けた。

 前言撤回しよう、責める者がおったわ……

 しかし彼も本気で責めるだけのつもりではあるまい。ひとまず任せてみるとしようかの。

 

 そう思い、わしは口を挟もうとしたミネルバを止めた。

 厳し過ぎるとも思うが……わしや彼女ではここまで言えぬじゃろう。

 

「未熟な子供が驕るな。馬鹿者が」

 

「……っ、じゃあどうすれば良かったの!? 最善は何だったの!? 私は精一杯――」

 

「最善の行動は今しているではないか。いつまで寝呆けているのだ?」

 

「……え?」

 

 更に続いた厳しい言葉に、アリスは泣きそうになりながら叫ぶ。

 しかし淡々と返すセブルスを見てキョトンとした。 

 

「お前がお前なりに、馬鹿なりに考えて動いていた事は分かる。それでも言わせてもらおう……初めから吾輩達を頼りたまえ」

 

 なんとまぁ……セブルスとは思えぬ優し気なセリフが出て来おった。

 何か余計な言葉が付いていた気がするが……

 

「未来は1人で背負う物ではない。だから驕るなと言うのだ、大馬鹿者が」

 

 さっき以上に厳しい筈の言葉は、やはり優し気じゃった。

 こやつも多少は変わったようじゃの。

 

 まぁ、それが本当に最善なのかどうかは分からぬがな……。

 後から考えてみれば他にやり様があったと反省するかもしれぬ。

 

 アリスが言えなかった理由……未来を明かした事で悪い方向へ変わってしまう可能性がある事を忘れてはならん。

 その時その場では良くとも、後々に影響し結果的に状況が悪化するというのも充分に考えられる。

 

 じゃがそれでも。いくらでも変わる未来なら、どうせ変わってしまうなら。

 1人ではなく皆で受け止め考えた方がマシじゃと、わしも思う。

 

 なによりも……そうしなければきっと、アリスは近い内に潰れてしまう。

 この子が1人で背負うには重過ぎる。

 

 

「全てを話せとは言わぬ。今明かすには不都合な情報もきっとあるじゃろう。何を明かすかはアリスに委ねよう。しかしその責任を負う必要は無い……そして1人でやる必要も無い。それだけは心に置いていておくれ」

 

 言われた事を噛み締める様にしているアリスへ、わしも考えを伝える。

 

 悔しいが情報の選択は任せるべきじゃ。全てを知りたいとは思うが、知ってしまえば己がどれ程変わるか想像も出来ぬ。

 なれば未来もまた確実に大きく変わっていくじゃろう。

 それこそがアリスの危惧している事じゃ。

 

 必要だと思った事を共有してもらい、皆で動く。

 その判断を代わってやれぬのが心苦しいが……そうするのがまさしく最善じゃろう。

 出来る限りアリス1人に責任を負わせず、より多くの可能性を考え動ける様に。

 

「お言葉ですが……そんな甘い事を言っていては、せっかくの情報というアドバンテージを捨てるに等しい。ここは洗い浚い全てを――」

 

「セブルス、良いのじゃ」

 

 わしはセブルスの言葉を遮って止めた。

 責任や可能性だけの話では無い。強制するのは違う、とわしの直感が言っておる。

 この子が自らの意思で考え動く、だからこその『導く』という予言なのじゃと……

 

「アリス、良いな? 繰り返すが……決して1人でどうにかしようとはせんでおくれ」

 

「……うん」

 

 わしはアリスの頭を撫で、努めて優しく言い聞かせた。

 これでこの子がどれ程楽になるかは分からぬが……わしらの想いだけは伝わってほしいと願う。

 

「良い子じゃ……今は休むがよい。明日になったらホグワーツに戻るとしよう。まぁ、まずは医務室じゃがの」

 

 一気に話しても病み上がりには厳しいじゃろう。

 話を切り上げ、アリスをベッドに寝かせてセブルス達へ向き直る。

 

「さぁ、わしらも行くとしようかの。ミネルバにも全てを話さねばなるまい」

 

「ええ、それはもうしっかりたっぷり聞かせてもらいましょうとも」

 

 そう言ってわしらは病室を後にした。

 

 ミネルバに真実を全て明かすと同時に、今回の事件についても考えねばな。

 どうするべきか……全く、アリスがあれだけ悩む訳じゃ。わしでもすぐには答えが出ん。

 

 じゃがそれでも、悩む頭が3つも増えれば何か変わるじゃろうて。





【蛇語】
パーセルタング。話せる人をパーセルマウスと言う。
しゃーしゃーしゅーしゅー言ってるだけだが、何故かハッキリ会話が出来るらしい。

話す事が出来る、出来た人物の殆どがサラザール・スリザリンの子孫で、その家系に先天的な才能で備わっている物。
とは言え世界的に見れば話せる人は居るだろうとかなんとか。

後天的に学ぶ事も出来るが、そうした者についての描写はあまり無い。

ダンブルドアは蛇語を理解出来るが、完璧に話せる訳ではないそうだ。簡単な受け答えが出来る程度だろう。
音が音なので、蛇語を話していると認識しなければそもそも言語として聞き取れないかもしれない。
そうでなければ、独り言を言って動き回っているバジリスクに気付けていたかもしれない。

ちなみにロンは物語終盤、学ぶのではなくハリーの物真似をする事で秘密の部屋を開けた。そんな馬鹿な……



【開心術】
記憶、思考、感情といった心を覗く。
レジリメンスという呪文を使うが、極まった術者は目を見るだけで覗く事が出来る。
しかし目を見るというのは手段の1つであり、必ずしも必要な行為ではないかも?

戦闘に際しても有用であり、相手がどんな呪文を使おうとしているのかを読み取り素早く正確な対処が可能になる。

それだけでなく、イメージを送る事も可能。
なんなら術者同士でテレパシーの様にコミュニケーションをとる事が出来るらしい。しかも離れていても可能だとか。本当かよ。

ハリーはヴォルデモートと繋がっていた為、真実と思い込む程のイメージを送られ神秘部に誘き寄せられた。

歴史上最も優れた開心術者はヴォルデモートらしい。



【閉心術】
こちらは心を閉ざす、開心術に対抗するもの。
オクルメンスという呪文があるのかどうかは不明。

心を閉ざすとは言うが、感情等を捨て心を空っぽにすると言った方が近い。
優れた実力があれば嘘の記憶や感情を作り、本来の心を完璧に覆い隠す応用も出来る。
そうする事で、開心術で入り込んだ相手に嘘を真実だと思わせる、もしくは混乱させてしまう。

閉心術は真実薬にも対抗出来るらしいが、それも当然ながら相当な意思と実力を必要とする。

4年目でムーディに変身して潜入したクラウチ・ジュニアは閉心術にかなり優れていたそうだ。
意識が朦朧としていなければ真実薬にも抗えたらしい。

ハリーはスネイプから厳し過ぎる指導を受けたが、色々あって結局習得を放棄した。
それでいいのかとも思うが、後々ヴォルデモートの方から実はマズイかもと判断され閉心術で繋がりを断たれた。
しかし物語終盤、死食い人の度重なる失態でイライラMAXな彼は閉心術を忘れてハリーに情報を流してしまう。うっかりさん。

ちなみにグリンデルバルドはヴォルデモートでさえも突破出来ない程の閉心術者らしい。



【真実薬】
作る事も使う事も簡単ではない薬。無色無臭で何に混ぜても気付く事は難しい。
たった3滴でも飲まされると、質問等に噓偽り無く真実を答えてしまう。
一応は魔法省が厳しく使用を取り締まっているが、割とぽんぽこ使われる。

上記の通り優れた閉心術ならば対抗する事が出来る他、解毒剤もある。
その2つの対策を取れてしまうスラグホーン相手にはダンブルドアも上手く取り入る事が出来ず、強引な手段で信頼を裏切るとより一層難しくなるからとハリー頼りになってしまったらしい。

効果は強力なものの、弱点もある。
飲んだ人が真実だと認識している事を答える為、誠実であっても真実であるとは限らない。
その弱点と、抵抗出来る者と出来ない者の差等から、裁判では信頼性に欠けるとされ決定的な証拠にはならない。

開心術と真実薬、どちらがより正確な情報を得られるのだろうか。
同じ閉心術で対抗出来てしまう為、同程度なのかもしれない。

クラウチ・ジュニアを捕らえた時、ダンブルドアとスネイプという実力者が居て開心術ではなく真実薬を使った理由は不明。
開心術では術者しか読み取れない故に、その場の全員が分かる様に薬を使ったのだろうか。



【分霊箱】
ホークラックス。最も邪悪な魔法。
自分の為だけに、自分の意思で、後悔や良心の呵責も無く殺人を犯すと魂が傷付く。それを利用して魂を分割し、何かしらを入れ物として封印する。
入れ物はその辺の石ころから生物まで何でも良いらしい。
あまりに邪悪な為に知識として得るだけでも簡単ではない。

これがあれば肉体が滅んだとしても魂の欠片が現世に繋ぎ止めてくれる。
肉体を復活させる手段さえ用意出来るなら、実質不死になれると言っていい。
しかし逆に言うと、分霊箱を破壊されたなら残るは弱った魂となる。


分かりづらい設定だが、入れ物が壊れる事で中の魂も壊れるという流れなので、入れ物を壊せないならどう足掻いても無理。

そして当然壊されない様に対策を重ねるし、分霊箱自体が途轍もなく強固な為壊そうと思っても壊せない。
ただし生物を入れ物にした場合はその限りではない。


ハリーはヴォルデモートが意図せず作ってしまった分霊箱であるが、決して特別な強固さは無い。その反面、バジリスクに噛まれても魂は破壊されなかった。
これもつまり、入れ物が無事だったから中の魂も無事という事。

だからこそ確実な死を齎す死の呪文では入れ物が死に、魂も同時に破壊されてしまう。
物語では様々な要因からハリーだけは無事だった訳だが……そこを語ると長過ぎるので割愛。


なので死の呪文で生物以外の分霊箱を破壊出来るかどうかは不明。
死の呪文は文字通り死を与えるものであって、特別頑丈な物を破壊する呪文ではない為、個人的には通用しないと思っている。


ちなみにナギニはハリーと違い魔法を弾く防御を見せているが、これはヴォルデモートが何かしらの守護の魔法を掛けていたと思われる。
彼が唯一大切に想っている存在であり守らなければならない分霊箱ならばこそ、対策を施していてもおかしくはない。



拘りの強いヴォルデモートは、通常1つの想定である分霊箱を6つ作る予定でいた。つまり自身と合わせて7つの魂になろうとしていた。
魔法界では7という数字が力を持つとされるから、らしい。実際作中でも7という数字はやたら出て来る。
入れ物や隠し場所までとことん拘ったが、そのお陰で逆に分かりやすくなってしまった。


魂を切り分ける程に、身体的精神的に異常が表れる。
一応、分割した魂を1つに戻す事も可能らしいが……それには術者が心の底から後悔し自責の念を抱く必要がある。
しかも耐え難い苦痛がある上、場合によってはそれで死ぬとかなんとか。

分霊箱は近くの人間の精神に影響を与える。
物語終盤の旅で、スリザリンのロケットを運んでいたハリー達はその影響を強く受けた。
特に感情的に近づく……つまり心を開き無防備になると支配されてしまう。ジニーがそれ。

ただし最初から邪悪な人間は影響を受けないので、アンブリッジはケロリとしていた。流石ヒキガエル。

余談だが、ダーズリー家の異常な環境はハリーが分霊箱である事に影響を受けていたのではないかという説がある。
でも多分無い。
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