ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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ハリー視点から主人公視点へ。


第28話 おかしくなっちゃった

 あれだけ釘を刺されまくってハリネズミみたいになった僕達だけど、結局1日経てば刺された釘を気にしなくなってしまっていた。

 話すくらいはいいだろう、なんて色々と好き勝手に言っていたらすっかりその気になっちゃったんだ。

 

 というか、ハーマイオニーの事を考えたら何もしないでいられなかった。

 多分マグル生まれで一番注目されてたのがアリスだ。そして2番目がハーマイオニー。アリスが襲われたなら次は……

 そう考えると充分に可能性はある。

 

 改めて考えてみると、2人共まだ2年生になったばかりなのにとんでもない注目だよね。

 飛び抜けて優秀で……その、凄く可愛い。

 そんな2人といつも一緒に居る僕とロンって、別の意味で狙われるんじゃなかろうか。事件の犯人じゃなく色んな男子に。

 大丈夫かな……ていうか明らかに釣り合ってないよね……どうしよう。

 

 て、そうじゃない。そういう話は今は置いておこう。

 この事件でどうするかって話だ。

 

 ひとまずあの怪し過ぎるマルフォイを調べようって事になった。

 どうにかアイツの知っている情報を吐かせられないかと案を出し合い、ハーマイオニーがポリジュース薬という物を教えてくれた。

 

 なんでも、他人に変身出来る薬だとか。それを使ってスリザリン寮に侵入して、どうせ自慢話をしてるであろうマルフォイに直接聞いてみるという作戦だ。

 回りくどいかもしれないけど、下手に分かりやすく動いちゃ駄目なら慎重にいかないとね。

 

 問題は学校の規則をザっと50は破る事になるって事と、薬の材料をどうやって手に入れるかだ。

 規則はもう仕方ないから諦めよう。こんな危険な事件なら規則とか考えてる場合じゃない。

 

 だから問題は実質1つ。

 そもそもの材料が何なのかを知る為に図書館の禁書の棚にある本を手に入れて、その材料を確保する事……あれ、2つだ。

 

 だけど禁書の棚の本を借りるなんて、そう簡単な話じゃない。

 誰かしら先生のサインが必要になるからだ。誰をどうやって説得してサインを貰うかも考えなきゃならなくて……あれ、問題が増えてるぞ。

 

 駄目だ、問題だらけだ。あーもう、どうしたもんかな……

 

 

 

 とかなんとか、授業を聞き流して考えていたら気付けば昼休み。

 相変わらずモソモソと、美味しくなさそうにつまらなそうに食事をする僕らの元にマクゴナガル先生が来た。

 

「ポッター、ウィーズリー、グレンジャー。食事中に申し訳ありませんが……先程アリスが医務室に到着しましたよ」

 

 先生は少し声を抑えてそう言った。

 唐突過ぎて誰も反応出来ず、ポカンと口を開けて先生を見上げる。

 

「本当ですか!?」

 

 真っ先にハーマイオニーが立ち上がり、食事を置いて走って行った。

 それを見て僕とロンも立ち上がった。

 

「おやまぁ、食事を放り出してまで……あの子は本当に良い友を得ましたね。行ってあげてください」

 

「はい!」

 

 微笑む先生に背を向けて、僕達は走った。

 すぐにハーマイオニーに追い付いて並び、ひたすら医務室に向かって走る。

 

 走って走って、医務室前の廊下まで来た。するとマダム・ポンフリーが階段を降りていくのが遠目に見えた。

 やったぞ、小言を言われずに見舞いに入れる!

 

 そんな内心を、目を合わせるだけで僕達は察し合った。

 そのまま部屋に飛び込もうとして、ギリギリで静かに入った。他に人が居たら迷惑だもんね。

 

 ただ、そんな心配は無用だった。カーテンが掛かってるベッドは1つで、他は空っぽ。つまりあそこにアリスが居る。

 僕達はもう、早く無事なアリスを見たくて……声を掛けるのも忘れてカーテンを開けた。

 

 開けてしまった。

 

「ふぇっ!?」

 

 時間が止まった。

 

 

 お着換え中だったのか、目の前にはすっぽんぽんのアリスが居た。

 わーお……

 

 驚いて硬直した彼女の手から、何か可愛らしい小さな布が落ちるのもハッキリ見えた。それがなんなのかも理解出来た。

 凄い、途轍もない速さで思考と情報が処理されていく。

 きっと本当は1秒くらいの時間なのに、何十秒にも感じた。

 

 全裸のアリスは綺麗だった。

 傷跡1つ無い、すべすべでぷにぷにで柔らかそうな肌、小さな体。

 膨らみかけた胸……その先端。あぁ……アリスもちゃんと成長してるんだ……そういえばブラもしてた……

 細い腰に、おへそに、その下……

 何も隠されていないその姿を、余す所無く目に焼き付けた。

 

 あぁ。これが女の子か。

 

 

「ほぎゃぁぁああああっ!!???」

 

 時間が動き出した。

 アリスは爆発する様に真っ赤になった顔で悲鳴を上げて、腕で体を隠して背中を向けてしゃがみこんだ。

 あ、お尻……

 

「でっ、デパルソォ!!!」

 

「「うわぁああ!?」」

 

 ハーマイオニーも叫び、僕とロンはベッドから反対側の壁まで吹っ飛ばされた。

 揃って床に転がり、顔を上げた時にはもうカーテンが閉まっていた。

 クソ、なんてこった。

 

「ハーマイオニー離して! アイツら殺せない!」

 

「ちょ、駄目、落ち着いて! 気持ちは分かるけど待って!」

 

「離してって――ひゃあん!? 何処触って……ちょっ!?」

 

「あ、違っ、馬鹿、暴れるから! とにかく落ち着いてってば! 素っ裸でまたアイツらの前に出る気!?」

 

 なんでカーテンが閉まってるんだよ。中で何が起きてるんだ……

 気になる……気になるけど、流石に突入出来ない。

 クソ、何が勇気のグリフィンドールだ。カーテン1枚突破する勇気も持てやしない。

 

「ハリー……僕ら殺されるかな?」

 

「どうかな……少なくとも許してはもらえないと思うよ」

 

 ロンの声で僕はやっと冷静になれた気がした。

 さっきまではどうにかなっていたみたいだ。

 

「僕、さっきの光景は一生忘れないと思う」

 

「うん……忘れたくもないけど」

 

 しみじみとロンが言うものだから、僕も素直に答えた。

 今だってほら……目を瞑ればさっきの姿が鮮明に……

 駄目だ、またおかしくなりそうだ。

 

「ハリーも割と……」

 

「僕だって男だよ……」

 

 学年で1番可愛いアリスと、2番目に可愛いハーマイオニー。そんな2人といつも一緒に居たらおかしくなっても当然だろう。

 アリスなんてただでさえよくパンツを見せてくれるのに、そんな子の裸を見たりなんかしたらもう……

 

 そうさ、僕は悪く無い。誰だっておかしくなる。当然の話だ。

 

「とりあえず……もうちょっと寝てようかな」

 

「そうだね……」

 

 僕達は何故か立つ事が出来ず、アリスが着替え終わるまで床に転がっていた。

 

 

 

 

 

 大急ぎで患者衣に着替え直した私は、ハリーとロンに1発ずつ全力で顔面パンチ。だけど全く気は晴れない。

 どうしてやろうか、と魔法で縛り上げ床に座らせ杖を突きつけた。

 

 まさかあんなタイミングでカーテンを開けられるとは……本当に冗談抜きで恥ずかしかった。

 しかもほぎゃーって……可愛らしくきゃーって叫ぶ事が出来なかったのも謎に恥ずかしい。

 

 そもそもなんで裸だったのかって?

 学年末から大して間を置かずに大怪我をした私は、マダム・ポンフリーにそりゃあもう丁寧過ぎる程に検査されたのだ。

 前回は下着までだったけど、今回は完全に裸にされてしまった。何の意味があるんだよ……

 

 検査が終わって、改めて自分で体を確認して、傷跡1つ無い事に安心して……

 それで着替えようとパンツを手に取った瞬間だった。

 

 出て行ったポンフリーがすぐに戻ってきたのかと思って、なんの警戒もしてなかった。

 全く……とんでもない大サービスだ。

 せめてパンツを穿いていたらまだマシだったのに……素っ裸を真正面から見られるなんて。

 何もかも全て丸出しで硬直してしまった。

 

 マジでどうしてくれようかコイツら。

 

 

「本当にごめんなさい……許してください」

 

「僕ら全然見てないから……大丈夫だから……」

 

 顔を腫らした2人がボソボソと謝罪をする。

 こんなにも信用ならん謝罪があるのだろうか。男子としては一生の想い出だろうよ。 

 

「嘘吐け馬鹿。鼻血なんて流して……変態!」

 

「いやこれは君が殴ったから……」

 

「あ?」

 

「ごめんなさい、変態です。変態でいいです」

 

 言い返してくる余裕があるとは。

 とりあえず場をやり過ごそうとしてるだけなのが丸分かりだ。

 

 こんな事なら忘却術を学んでおくべきだった。

 難しいし早々使う事は無いだろうと後回しにしてたからなぁ……

 

 

「おやおや、どうしましたか? 何やら悲鳴らしきものが聞こえたので飛んで来たのですが……一体どういう状況で?」

 

 と、そこに鬱陶しい男が胡散臭い笑顔で入ってきた。

 しかし状況を見てパチクリと目を瞬かせる。まぁ……彼じゃなくても首を傾げるだろうよ。

 ていうか急いで来たにしてはおっせぇな。何処から来たんだよ。

 

 まぁいい、珍しく素晴らしいタイミングで来てくれたもんだ。

 

「ロックハート先生! 丁度良い所に!」

 

 思わず普通に、忘却術でコイツらの記憶を消してくれとお願いしようとして踏み止まった。

 まるで使える事を知ってるかの様に言うのはマズイ。

 

「えっと……先生は忘却術は使えますか?」

 

「……んーまぁ……ええ、使えないという事もありませんね。多少は心得があります。本当に多少ですよ、あまり使えたものではありませんが……」

 

 だからひとまず確認を入れてみた。

 なんだその曖昧な言い方。普段はそんなんじゃないだろアンタ。

 

 流石の彼でも、忘却術については慎重……いや警戒してるのか?

 それでも使えないとは言わない辺りが彼らしいな。

 

「なんでもいいんで、とりあえずコイツらの記憶を消してください。せめて数分前の出来事だけでも」

 

 でもそんなのはどうでもいい。

 軽く聞き流して杖でハリーとロンを指した。

 

「そんな!? アレを忘れろって言うのか!?」

 

「頼むよアリス! 態々記憶を消すまでも無いでしょ!?」

 

 おい。どうした、頭が壊れちゃったか?

 君達そんなんだったっけ? すっかり男の子になったな……ここまで正直になるとは。

 

「何がなんだか分かりませんが……その、忘却術はあまり……ほら、生徒に使うというのも良くはない……かもしれませんし」

 

 あーもううるせぇな。いつまでグチグチ言ってるんだ。はよ消せ。

 

「先生! お願いします! 頼れるのは先生だけなんです!」

 

「……んー……仕方ありませんね。いいでしょう、やってあげますとも」

 

 とにかく、せっかく良いタイミングで来てくれたんだから逃がす訳にはいかない。

 上目遣いで可愛らしくおねだりをしてみる。彼なら頼られるだけで嬉しいだろう。

 

 すると渋々ながら承諾してくれた。

 よっしゃ。

 

「では……今から数分前までの君達の記憶を消させて頂きますよ。大丈夫、一瞬ですから。何も心配は要りません」

 

 やたらカッコつけながら杖を抜いたロックハートが、ハリーとロンに向かう。

 当の2人は逃げようと藻掻くが縛られているのでどうにもならない。

 そうして絶望した顔で彼を見つめた。

 

 そんなに私の裸を覚えていたいのか……?

 あ、ロックハートだからか。彼がまともに呪文を成功させてる所なんて誰も見ちゃいないからな。そりゃ絶望か。

 

 まぁ安心しなよ、忘却術なら絶対に失敗しないさ。

 

「オブリビエイト!」

 

 そうして緑色の閃光が奔り、場が静かになった。

 

 

「え? あれ、アリス!?」

 

「なっ、えぇ!? 僕、走ってたのに……なんで医務室に……」

 

 へー、意識があって記憶を消されるとこうなるんだな。

 瞬きをしたら全てが変わってた様な感覚なんだろうか。ハリーとロンは酷く困惑している。

 

「痛っ……なんか体中痛い! 特に顔が痛い! ていうかなんで僕ら縛られてるの!?」

 

「ロン、鼻血が……あ、僕もだ」

 

 困惑は続き、2人は縛られたままオロオロモゾモゾと忙しい。

 

「よしよし、ちゃんと記憶が消えてくれたみたいだね。ありがとう、先生」

 

「いえいえ、お力になれて私も嬉しいですよ! また何かあれば是非とも頼ってくださいね!」

 

 そんな彼らを眺め、私は安堵の息を吐いてロックハートに向き直り素直に笑顔でお礼を言った。

 本当に助かった……これで私の尊厳は保たれた。

 

 気を良くしたのか、彼は嬉しそうに医務室を出ていく。

 嬉しそうだけど……若干、そそくさと出て行った様にも見えた。いつもだったら軽く倍は口が動いてるだろうに。

 やっぱり忘却術を深堀されるのを警戒してるのか……?

 

 

「なんでロックハートが居たんだ?」

 

「ていうか記憶を消したってどういう事!?」

 

 アイツの事はさておき、未だに困惑中の2人をどうしてやるかな。

 あんなに記憶を消されるのを嫌がったなら……いっそこれが良さそうだ。

 

「くふふ……聞きたい? 君達は私の全裸をそれはもうバッチリじっくり見てくれてね……なんか知らないけどロックハートが来たからお願いしたんだよ」

 

 更なる罰を与える為に、私は何があったのかをニヤニヤと正直に伝えてあげる。

 

「え、言っちゃうの?」

 

「うん。だって、ほら……」

 

 ハーマイオニーが驚いて慌てるが、効果は彼らを見れば分かる。

 

「嘘だろ……そんなとんでもない事があったのに忘れさせられたの……?」

 

「なんで……あんまりだよ……」

 

 さっきと同じくらい絶望している。

 本当に正直な男になったな君達……なんでそんなおかしくなっちゃったの?

 

 まぁいいや。記憶は消えて、尊厳は保たれて、それでこの絶望の表情を見れたなら充分溜飲が下がるってもんだ。

 

「ね?」

 

「……なんていうか、本当に男の子ね……」

 

 満足そうに笑う私を見て、絶望する2人を見て、ハーマイオニーは大きな溜息を吐いた。

 

「くそぉ……だから縛られてるのか。顔が痛いのは殴られたの?」

 

「鼻血もそういう事なんだね……」

 

 ショックを受けつつも状況は理解出来たらしい。

 ハリーとロンもまた大きな溜息を吐いた。

 

「あ、鼻血は私の裸に興奮して噴き出したやつね」

 

「「そんな馬鹿な」」

 

 とりあえず鼻血は知らん振りしとこ。

 興奮して鼻血を噴いたって事にした方が面白そうだし。うん、そんな事が本当にあるのかってのは置いておこう。

 

 

 

 

 

 

 気を取り直して、ひとまず私が完治して戻ってきた事を喜ばれた。

 それから、あの日に一体何があったのかを聞かれた。

 

 だけど私も記憶が無いから話しようが無い。

 お爺様から聞かされた事を答えるしかなかった。

 

「まぁ記憶の無い私の話はともかく……皆はどうしてたの? どうせ犯人を捜そうとかなんかやってたんでしょ?」

 

 だから逆に彼らが何を考え、どうしようとしているのかを聞いた。

 一応、彼らには詳しく説明がされたとは聞いてるけど、その上でどう考えたのかを知りたい。

 

「う……それは、まぁ」

 

「先生方に話を聞かされて、深々と釘をいっぱい刺されたわ。でも、アリスがあんな目に遭って……しかも私まで狙われるかもしれないのに、大人しくなんてしてられないわよ」

 

 ハリーとロンはバツの悪い顔をしたけど、ハーマイオニーは違った。

 うーん……逞しい。

 

「勿論、慎重に行くつもりよ。余計な事をして先生方の邪魔をしても仕方ないし、犯人に目を付けられない様にしなきゃ」

 

「それがいいよ。バジリスクってだけでも危険だし……私は普通に戦って負けたみたいだから」

 

 どうやらちゃんと状況を理解した上で、我慢ならないから何かしたいってだけっぽいね。

 原作とは変わって既に怪物の正体を知っているのに、それでも動こうってのは中々驚きだ。

 

「少なくともバジリスクなら声が聞こえる。やたら独り言を言う奴みたいだし、僕が居れば警戒は出来るよ」

 

 あ、そうか。逆に正体が分かってるから声で対策が取れるのか。

 声が聞こえてから逃げる余裕があるのかはともかく、分からずいきなり現れるよりよっぽどマシなのは確かだ。

 

「アリスが負けるくらい強い犯人は……正直どうしようもない。でも犯人が動きづらい様に授業には集団で移動して先生が付くし、夜は寮に居ろって通達が出てるからさ」

 

「昼休みとか放課後しばらくは逆に生徒がそこら中に居るけど、だからこそ犯人は動けない。先生に言われなくたって、生徒は皆集団で動く様になったからね」

 

 ロンとハリーが学校の現状を教えつつ、自分達が動いても安心出来る要素を並べた。

 

 うーむ……意外と大丈夫そうに感じてしまったぞ。

 どうしたって滅茶苦茶危険なのは変わらない筈なのに。

 

 しかし状況を理解してるどころか、自分達じゃ犯人をどうにも出来ない事も分かってるのか。

 それでも、どうしても、何かしたいんだね……

 

「とりあえず、やたら怪しいマルフォイを調べてみるつもりだよ。ポリ……なんとかって言うやつで」

 

 続いてロンが曖昧な説明をしてくれた。

 なるほど、物語通りポリジュース薬で無茶しようとしてるのか。

 うん、これはまぁ……スネイプが困るだけで別に問題は無いな。

 

「面白そうだけど、私は1抜け。もう襲われちゃってるから、下手な事は出来ないよ」

 

「そっか……いや、うん。そうだよね」

 

 多少は安心出来るのも事実だし……今は皆のやりたい様にさせておこう。

 ただ残念ながら私は交ざれない。私はお爺様達と動くからだ。

 

 今朝の時点で、改めてこの事件でどう動くべきかはお爺様達と話してる。

 だけどそれを彼らに伝えるのは……私としては良くないと思うし、お爺様達だって困るだろう。

 しばらくは秘密でいるしかない。

 

 私が申し訳無さそうに嘘の理由を伝えると、ハリーは残念そうに俯いた。

 しかしすぐに納得したのか、逆にやる気を見せた。

 

 いや、むしろ皆がそうだった。

 なんだろう……自分で言うのは自意識過剰かもだけど、私が襲われた事を許せなくて、私を想って動こうとしてるのが分かる。

 それが数ある理由の1つでしかなくても、そう感じてくれてるのが伝わって来る。

 

 素直に嬉しい。

 だからこそ、私も陰で皆を守らなきゃ……

 

 

 決意を新たにした所で、私はちょっとだけ皆を手助けする事にした。

 

「一応助言くらいはしとこうかな。多分禁書の棚の本を借りたいんだろうけど……サインをどうするかをまず考えてる。違う?」

 

「本当にアリスってなんでもお見通しね……その通りよ」

 

 訳知り顔で指摘すると、ハーマイオニーが苦笑いで答えた。

 知ってるからねぇ……大抵の事はお見通しさ。全然自分の力じゃないけど。

 

「先生の中に1人、やたらとサインを書くのが大好きな人が居るんじゃないかな」

 

「あっ……そっか、確かにさっきも煽てられて簡単に乗ってたわ!」

 

 これでロックハートのサインを手に入れて禁書の棚から借りる事が出来る。

 まぁこんな助言なんて無くてもすぐに借りてたと思うけどね。

 

 私も私で、皆の為に何かしたいんだな……変な事で実感してしまった。

 

「あれ……ちょっと待って……そういえばあの人、なんで忘却術だけは完璧だったの……? 碌に呪文を成功させてないのに、あんな複雑で難しい呪文を……」

 

 作戦を考え始めていた筈のハーマイオニーは別の事に気付いたらしい。ブツブツと独り言を漏らしている。

 おっと、これは……うん、まぁいいか。

 

「まさか犯人って……いえ、だったらアリスは負けないわ……事件とは別……?」

 

 なんか変な方向に飛躍してる気がするけど……着地しようとしたら修正してやろう。

 ちゃんと真実に辿り着ける事を祈るよ。

 

 そんな彼女を見てハリーとロンはキョトンとしている。

 しかし残念。何を言い出したんだ、と彼らが反応するより前に医務室の扉が開いた。

 

「あなた達、いつの間に!? いけません! 彼女は今日1日は安静にしているんですから!」

 

「「あ」」

 

 遂にマダム・ポンフリーが戻って来て、ハリー達はあっという間に追い出されて行った。

 ばいばーい……

 

 名残惜しいけどこれ以上は無理だ。

 大人しく寝てるとしよう。

 

 彼女の言う通り、私は明日から復帰になる。

 それはそれで良い。急に戻っても話を聞こうと囲まれるだけだ。

 ハリー達が先んじて話を広めてくれれば私としても楽が出来る。

 

 ふぅー……しかしまぁ……考える事が多くてストレスで胃が痛い。

 白髪がめっちゃ増えそう……あ、最初から白いや……




新年1発目からコレか……



【インカーセラス「Incarcerous」】
紐やロープを生み出し対象を縛る呪文。
そのロープの色や形状、縛り方まで自在と思われる。
拘束だけでなく首を絞める事も出来るし、蛇の様に締め付ける事も出来る。



【ブラキアビンド「Brachiabindo」】
インカーセラスと似ているが、腕に限定した拘束。
ただしこちらは目に見えないらしい。



【フルガーリ「Fulgari」】
こちらも腕を拘束する呪文。
恐らくはブラキアビンドよりも強く、邪悪な光で縛る。
もしかしたら腕限定という訳ではないかもしれない。



【エマンシパレ「Emancipare」】
束縛を解く呪文。当然実力次第になるだろうが、上記全てにこれで対抗出来るようだ。



【レラシオ「Relashio」】
エマンシパレと少し似ているが別の効果。拒絶の呪文らしい。

用途は多岐に渡る。相手の杖を手放させる、拘束から解放する、対象を押し退ける、襲って来る敵を追い払う等々……
確かにどれも拒絶していると言えるが、幅が広過ぎる。



【ポリジュース薬】
複雑で時間の掛かる調合が必要な魔法薬。少なくとも2年生が作れる様な物ではない……筈。
まぁそもそもの材料さえ揃えられないのだが、スネイプの物を盗む事で解決してしまう。
この薬は便利過ぎる故に作中でも多用された。

1ヶ月程の工程を経て、最後に他人の体の一部を加える事で完成する。
髪の毛を使う事が一般的だが、ぶっちゃけ何でもいいらしい。多分気分的な問題なのかもしれない。
効果時間に関してハーマイオニーはキッカリ1時間と言っていたが、実際は調合の上手さによって変わるそうだ。

年齢、性別、人種を問わず他人に変身出来るが、異種族にはなれない。
恐らくハーマイオニーの様に失敗した姿になってしまうのだろう。

クラウチJrはムーディに変身し続ける為に、彼を態々トランクに監禁していた。
先に根こそぎ髪や血を抜いて保存した上で殺してしまえば、厄介な敵を減らせるというのに。

つまり対象の体の一部というのは鮮度の様な有効期限的な物があるか、もしくは対象が死んでいる場合は変身出来ないと思われる。
調べた限りでは後者が有力だが、その理由までは分からない。


しかし異性に変身したら色々歪むと思うのだけど……別に良いか。
やろうと思ったら児童書ではとても描けない事がいくらでも出来てしまうだろう。
色々捗る素晴らしい薬と言える。

完成した薬の見た目や味は対象によって違い、身体的な見た目や心の在り方が反映されているっぽい。
7人のポッター作戦にて、ハリーを対象にした薬を飲んだ際は透き通った明るい金色、しかも美味しかったらしい。

男のハリーに変身したハーマイオニーやフラーは何を思ったのだろうか。とても気になる。
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