ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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お久しぶりです。
本来は秘密の部屋編を1日1話で終わらせる予定でしたが、途中で展開を大きく変えて書き直し始めたのでそんな予定は消えました。
で、忙しかったり別の作品を進めてたりでこれだけ時間が経った感じです。言い訳です。

2年生終了まで書き終えてから投稿しようと思っていましたが、いつになるのか正直分からないのでボチボチ書いていた分を多少上げていきます。
つまり結局不定期更新です。反省してます。

まぁそれはともかく、引き続きお楽しみ頂けたら幸いです。


第36話 日常へ

 しばらく経ってハリーが私達と合流し、適当に校内を歩きつつ会話をしていく。

 彼の語る所によると、やはりあの後は大体原作通りの流れになったようだ。

 

 被害者が実質私だけで早々に解決してしまったから、ルシウスはお爺様を糾弾しようにも上手く出来なかったそうだけど。

 連れて来られていたドビーの解放もしたらしい。その方法もやはり原作通りだった。

 

 後はまぁ、ハリーが残って話したかった内容も。

 蛇語関連からスリザリンに組み分けされるべきだったんじゃないかと思っていたとか。

 ただそれもグリフィンドールの剣を引き抜いた事でスッキリ納得したっぽい。

 

「ほえー……あの後そんな事があったんだねぇ」

 

 一応知らなかった体で聞き終えた私は、とりあえず呑気な声を返しておいた。

 大丈夫、これくらいなら誤魔化せる。多分。

 

「よくドビーを許せたね。散々嫌がらせ染みた事されて、クィディッチの時は殺されかけてるのに」

 

 というかなんで許して助ける事が出来るのか不思議だ。

 私だったら……どうだろう。

 

 手紙を遮断されて、マグルの家で魔法を使って暴れて、それを自分がやった事にされて。

 元から散々な扱いだったのに悪化して、監禁されて最低限の生活さえ出来なくて。

 汽車に乗れなくて、結果として車で飛んで事故って退学寸前で……いやこれは自業自得か。

 

 そんでもって剛速鉄球で腕を砕かれて、というか殺されかけて。

 その癖なんにも教えてくれなかった。

 

 羅列するとヤバイな……本当になんで許せたの?

 

「それは……まぁ。でもあのマルフォイ家で酷い扱いをされてるなんてさ」

 

 当のハリーは苦笑いでそう言った。

 同情したのか、自分に重ねたのかは知らないけど……全くお優しい事で。

 それがハリーなんだろうけどね。

 

「むしろアリスこそ大怪我させられてるのに……勝手な真似をしてごめん」

 

「いや謝られても……」

 

 今度は私が苦笑い。

 何処に気を遣ってるんだか。

 

 私は思いっきり蹴り飛ばしてスッキリしたから、もう許してるよ。

 

「まぁ、良いか悪いかで言ったら悪いんだろうね。他人ん家の屋敷しもべ妖精を故意に解雇させるなんて」

 

「うっ……やっぱり?」

 

 とは言え、ハリーがした事はぶっちゃけ良い事ではないんだよね。

 具体的にどう悪いのかは正直説明が出来ないけど。そんな法律知らんし。

 

 むしろ向こうはよく引き下がったもんだよね。

 なんでだろ……屋敷しもべ妖精に反抗されるなんて恥だから表沙汰にしたくない……とか?

 新しく雇えば良いって考えもありそうだ。

 

 そもそも彼らの就職ってどうなってるのかさっぱりだけど。ハロワあるの?

 まぁいいや、今それはどうでもいい話だ。

 

「でも、酷く虐げられてる環境から解放してあげる事は間違いなく良い事だと思うよ。ドビーがそう望んでいたなら尚更」

 

「そう言ってくれると助かるよ」

 

 手段はともかく、ドビーを救った事自体は良い事だろう。他に案があるかって言われたら無いし。

 そう伝えるとハリーは安心した様に笑った。

 

 うんうん、自分の意思でやったなら胸を張らなきゃね。

 というか原作と違ってちゃんと考えてたんだな……やっぱり成長してる。

 

 

「それにしても、そんな酷い扱いがまかり通るなんて……信じられないわ」

 

 そして横で話を聞いていたハーマイオニーがぷんぷんしていらっしゃる。

 なんか嫌な予感……

 

「私ちょっと本で見たんだけど、対価も無いらしいじゃない。彼らにだって人権がある筈よ。奴隷の様に働かせるのは――」

 

「ストーップ。ハーマイオニー、気持ちは分かるけど一旦止まろう」

 

 やっぱりだった。その活動は2年早いよ……

 とりあえず止めておこう。 

 

「……なによ」

 

 遮られたからか余計にぷんぷんだ。

 説得……というか上手く宥められるかな。頑張ってみるか。

 

「一部で酷い扱いを受けてるのは事実だけど、彼らは基本的に喜んで主人に仕えるんだ。働く事が生き甲斐なの」

 

 彼ら屋敷しもべ妖精は主人に忠実、且つ無休無償で奉仕するのが名誉……だった筈だ。

 なんなら労働は本能的な物に近いとかなんとか?

 

「本や勉強が大好きなハーマイオニーに、そんな事をやらせるより外で遊ばせようなんて言ったって余計なお世話じゃない?」

 

 だから価値観なんてまず合う訳が無いんだ。

 それを人間の価値観で変えようとすれば反感を買ってしまう。原作がそれだ。

 

 しかしこの例えで伝わるだろうか……難しいな。

 

「それは……でもそれとこれとは話が……」

 

「同じ。見下さずに礼と敬意を忘れずに接すればそれで良いの。私はそうしてるし」

 

 まぁいい、ゴリ押そう。

 彼女は頭が良いんだからきっと分かってくれる。

 

「……そういえばアリスは彼らにお世話してもらってたんだったわね」

 

「ん。まぁそう思って行動してる人は少ないって事くらいは私も分かってるけどさ」

 

 私は原作からの知識があったし、そもそも世話してもらって下に見る程腐ってるつもりもない。

 ただ、彼らが仕える様な家は大概偉そうな金持ち、且つ思想の強い家だから見下されてしまうんだろう。偏見かもしれないけど……

 

「そんな難しく考える事?」

 

 片やロンは呑気だ。

 自分の家には居なくとも、生粋の魔法族からすればこんなもんだろう。

 同じ人間同士でさえこれくらい価値観の差がある。

 

「誰かが難しく考えなきゃ何も進歩しないよ」

 

 その価値観が良いか悪いかはともかく、考えなくて良いという事は無い筈だ。

 変化を嫌いがちな魔法界だってそうやって色んな事が変わっていく。それこそ、良くも悪くも。

 

「いつか誰かが、皆の価値観を変えるんじゃないかな。お互いに敬意を持って平等に見るべきだっていう価値観に」

 

「むむむ……」

 

 その誰かになり得そうなハーマイオニーは難しい顔で唸っている。

 上手く伝えられたか不安だったけど……うん、多分分かってくれたかな?

 

 

「て、そんな話はいいんだよ。せっかくの休日なんだから楽しまなきゃ」

 

 ならこの話はもう終ろう。今は考える事よりのんびりしたい。

 

「そうは言っても、別に普段通りに過ごすだけじゃないか」

 

「普段通りが良いんじゃん。ほら、適当に外行ったりさ」

 

 それがどれだけ素晴らしい事か。

 丁度良く門の前を通ったから、ロンに言葉を返しつつ私は外へ向かった。 

 

「あ、寒い。戻ろう」

 

 そして1歩で諦めた。

 

「……あのさぁ」

 

 呆れたロンの声を聞き流していそいそと中へ。

 もう12月になるから普通に寒かった。厚着してくれば良かったな。

 

「そういえばポリジュース薬はどんな感じ?」

 

「話があっちこっち行き過ぎじゃない?」

 

 誤魔化す様に話題を変えると、今度はハーマイオニーからツッコミを頂いた。

 うん、これも普段通りだ。

 

「はぁ……まぁ、もうそろそろよ。問題はスネイプ先生に評価されるって所だけど……」

 

 溜息を吐かれたけど薬の進捗はしっかり教えてくれた。

 原作より少し早いか……もう用は無いから早かろうが関係無いけどさ。

 

「絶対扱き下ろされるぜ」

 

「そのつもりだろうねぇ……」

 

 その問題は正直どうしようもない。

 まず間違い無くボロクソに評価して減点してくるだろう。

 つまり考えるだけ無駄だ。

 

「どうせなら皆で変身して遊んでみたいけどね」

 

 私としては提出した薬がどうなるのかが気になる。

 調合中のを没収したって捨てるだけだから、と完成させて評価するなんて言ってたけど……完成した所で結局捨てる事になるのかな。

 だって学校に置いておく様な薬じゃないもんね。

 

 個人的にはニャーマイオニーが見たかったのに……

 なんだったら私も3人に交ざって誰かに変身してみたかった。

 

「「…………っ」」

 

「そこの男子2人。何考えた?」

 

「「いや何も」」

 

 思ったまま呟いたのを聞いて、男子2人がゴクリとなにやら怪しい反応をした。

 なんか思いっきり顔を逸らしてるけど……全く何を考えたのやら。

 

 どうせ私やハーマイオニーに変身して……とかだろう。

 誰がさせるか馬鹿。そんなの変な事されるに決まってる。私でもそうする。

 

「アリスに変身……」

 

「ハーマイオニー……?」

 

 おい、君もか?

 どういうこっちゃ。私に変身してどうするつもりだ。

 同性でも流石に恥ずかしいぞ。

 

「……っこほん。とりあえず薬はこのまま私達3人で完成させるわ。出来たら声掛けるから、一緒にスネイプ先生の所に持って行きましょ」

 

「なんか不安だけど……まぁ、うん。よろしくね」

 

 触れない方が良さそうだ。

 

 うーん……皆おかしくなったな。まぁいいか。

 ぶっとんでるのが魔法界だ。

 

 

 

 

 

 

 なんだかんだ学校内だとやれる事も限られる。

 外は寒くて出たくなかったから、引き続き校内を散歩中だ。

 

 談話室でも良かったけど、まだ事件解決の熱が冷めない皆が居る。

 行けば即囲まれて質問攻めだろう。それは疲れる。

 

「それにしても、あの時の先生達は本当に凄かったわね」

 

 そんな散歩中、ハーマイオニーが思い出した様に話を切り出した。

 

 私はリドルが呑気に話してる所から寝たフリをしていたけど、ちゃんと見てはいない。

 薄目でもバレそうだったから徹底してたのだ。

 結局お母さん達にはバレてたみたいだけど。何故だ。

 

「僕ら何も出来なかったしね……」

 

「正直安心しちゃってたよ」

 

 ハリーとロンは若干しょんぼりしながら返した。

 いやまぁ、仕方ないんじゃないかな。あの3人が来たら誰でも安心するわ。

 

「私なんて、夏休み中にアリスと鍛えたつもりだったのに……」

 

「それを言うなら、僕なんて前日にスネイプに呪文を叩き込まれてるよ。何も活かせなかった」

 

「実戦って難しいな……何をしていいか分からなかったよ」

 

 どうやら彼らは随分と反省してるらしい。

 まだ2年生なんですけどね……

 

「決めた。決闘クラブの継続をお願いしてみましょ」

 

 そしてハーマイオニーは、良い事を思い付いたとでも言わんばかりに手を叩いた。

 おぉ……そうなるのか。あのクラブって今どういう扱いなんだろう。

 

「そうだね……ロックハートはともかく、身になるのは事実だ」

 

「ふふ……それも良いかもね。事件もあって皆の意識も高めだから、同じ様に学ぼうとする人も多いと思うよ」

 

 頷くハリーを見つつ、私も賛成だと乗っかった。

 それ自体は私も継続したら良いんじゃないかと思ってたからね。

 彼らに限らず将来的に意味はあるかもしれないし。

 

「ていうか先生ならここに居るじゃないか。アリス、僕らを鍛えてよ」

 

「無理。私に教わるくらいならスネイプに叩きのめされた方がマシだよ」

 

 ロンは私を先生役にしたいみたいだけど……それはもうまさしくダンブルドア軍団だ。3年くらい早い。

 そもそも私はまだ教えるには未熟。ちょっとした事しか伝えられないだろう。

 夏休みにハーマイオニーとしたのもお互いが学ぶという形であって、まともに教える事が出来たかと言うと微妙だ。

 

「一方的にやられて学べる程の地力が無いわよ」

 

「あー、それもそっか……私もそうだったなぁ……」

 

 しかし尤もな反論を貰ってしまった。

 ただただボコされたって学びにならない。そこから理解と反省が出来る様な、最低限の実力が必要だ。

 私だって最初は何も分からなかったのに、同じ事をさせようとしてしまった。

 

 うん……本当に大変だったなぁ……

 

「……なんか、ご愁傷様?」

 

 遠い目をする私を見てハリーが苦笑した。

 多分君が想像してる倍は大変だったよ。

 

「ま、クラブで私と一緒にやってればいいんじゃないかな」

 

「その時は頼むよ」

 

 なんにせよ、決闘クラブという活動の中で共に学べばいいだろう。

 それより問題はあのクラブが奴の開催という所だ。

 意外と乗り気なロンの声を聞き流して私は悩む。どうにかならないかな……

 

「はぁ……ロックハートじゃなければもっと学べるんだろうけど……」

 

 全く同じ事を考えていたのか、ハリーが深い溜息を吐きながら呟いた。

 決闘チャンピオンだったフリットウィック先生だったら……と思ったけど、そんな人を奴は連れて来ないだろう。

 自分以上と分かり切ってるから。つまりもうスネイプも呼ぼうとはしないかも。

 

「そういえば、彼はなんで秘密の部屋に付いて来たのかしら」

 

「結局何もしてなかったよな」

 

 首を傾げるハーマイオニーにロンが笑って返した。

 本当になんで居たんだろうね……私にもさっぱり分からない。

 

「忘却術は使えてたから、隠してるだけで実力はあるのかもと思ったのに」

 

 どうやら彼女は以前気付いた事を忘れていなかったようだ。

 犯人説は完全に消えたし、あの場面で何もしないなら隠す程の実力も無いと確信したらしい。

 

「それこそ隠してるのは忘却術だろうね。お願いされて使っちゃってるけど」

 

 ここまで来たらもうヒントを出してもいいかもしれない。

 どうしてあの時、忘却術をあっさり使ってくれたのかは分からないけど……隠したいのはそれだけの筈だ。

 

「どういう事さ?」

 

「ハーマイオニーには言ったけど……彼の逸話は事実としては確認されてないんだ。誰も知らない」

 

「ご本人はやったと仰いますけどねぇ……」

 

 ロンの質問に答えると呆れた様な声が返ってきた。

 彼もロックハートの実力は全く信じてないからか、とっくに嘘は見抜いていたようだ。

 

「誰も知らなくて、それだけの実力も無くて、忘却術を隠してる?」

 

 横で聞いていたハリーは纏める様に呟くも……なんのこっちゃ、とさっぱり分かっていない。

 いや、まだ分かる筈も無いんだけどね。

 

 それは既に私の忠告を伝えているハーマイオニーくらいだろう。

 

「……嘘。ううん、そうでもなければ……」

 

 そんな彼女はやはり真実に辿り着いたらしい。

 信じられない、だけどそれなら……と言った感じで、俯いて考え込む。

 

「何?」 

 

「彼の話は創作にしてはリアリティがあるの。どの物語も、本当にあった事の様に描かれてる」

 

 促す様なロンの声で、ハーマイオニーは顔を上げて話し始めた。

 

「でもそれが出来る様な実力は無いし、そもそもそんな話は誰も知らない。なら、何処かの誰かの事を物語として描いていて、関わっていた人達の記憶を消してるとしたら……」

 

 正解。よくもまぁ、世界中を旅してそんな人達を見つけたもんだよね。

 しかも記憶を消して本に纏めて売り出して大ヒット、とんでもない才能と行動力だ。

 それを良い方向に使っていたら……

 

「じゃあアイツは、他人の活躍を奪って自分の物にしてるって事?」

 

「もしかしたら、よ。証拠なんて無いけど、忘却術だけがまともに使える理由としては……」

 

 おったまげたロンに対し、彼女はまだ冷静だった。

 証拠ねぇ……困った事に本当に無いんだよね。だから世間にはバレないんだ。

 

「細かい事は分からないけど、正直納得は出来るかな。だってアイツ、とにかく名声に拘ってるもの」

 

「ハリーにやたら絡むのもそういう事なんじゃないか? 自分以上に注目されるハリーに嫉妬しつつ、利用して自分の名声を高めたいんだ」

 

 考え込むハーマイオニーを置いて、ハリーとロンはもうほぼ確定の様に話している。

 

 というか原作から随分状況が変わっちゃってるけど、実際どうしたもんかね。

 もう彼の記憶が吹き飛ぶ事はまずあり得ないし……

 別に放置でも良いんだけど、それはちょっと嫌だよね。

 

「まぁ……直接彼に追及するのは止めた方が良さそうだね。記憶を消されたら大変だし」

 

 とは言え考えたって仕方ないのも事実。下手に問い詰めたって面倒になるだけだろう。

 それを伝えると、ハーマイオニーも考えるのを止めて頷いた。

 

「気になるなら先生達に言うしかないんじゃないかな」

 

「ちぇっ……」

 

 一応ハリーとロンには忠告っぽい事は伝えておこう。

 彼らの様子だと、いけ好かないロックハートのとんでもない真実を明かしてやる、とか言い出しかねない。

 随分不満そうだけど理解はしてくれただろう。

 

「なんにせよ、事件が解決したんだから普通の学校生活を送ろうよ。嫌だけど勉強して、クラブに行って、クィディッチやって……」

 

「その前に罰則があるけどね……」

 

 とりあえず今はのんびりしたい。事件は終わったんだし、普通に過ごそう。

 これ以上私の胃を苛めないで……

 

 と思ったけど罰則の事を忘れてた。まだ内容は分からないけど、これもどうしよう。

 

 私の甘い考えで彼らを行動させた結果だし、私も受けるべきか……

 止めるどころか背中押しちゃったもんなぁ……

 

 はぁ……本当にどうしよう。

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