ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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最後に少しだけハリー視点が入ります。


第39話 ポリジュース薬 2

「あー……変身するだけで最悪な気分だよ」

 

「うわ!?」

 

 それからほんの少し待つと変身を済ませた2人がヌッと出てきた。

 割と普通にびっくりして、私は飛び跳ね悲鳴を上げて数歩逃げる。

 

「その反応割と傷付くんだけど」

 

「だってクラッブとゴイルが急に背後に出てきたら怖いよ」

 

「それはごめん」

 

 小柄な私と比べると彼らはデカすぎる。本当に同い年なのか疑問だ。

 普段は近づきもしないから接近されると怖い。

 

「あれ、ハーマイオニーは?」

 

「どっか行っちゃった。まぁ私もすぐ離れるけどね」

 

 クラッブがきょとんとしてる。これはロンだな。

 なんで分かるかって? ゴイルが眼鏡掛けてるからだよ。

 お馬鹿……早く外しなさい。

 

「あーそっか、一緒に居るのはあり得ない組み合わせだもんな」

 

「確かに。誰にも見られない内に――」

 

 残念ながらその指摘をする事は出来なかった。

 

「おい、こんな所に居たのか。クラッブ、ゴイル、お前達一体何処に行ってたんだ?」

 

 今はまだ聞きたくない声を掛けられたからだ。

 ちくしょう、やっぱりマルフォイに探されてた。

 

 私達は揃ってビクリと硬直し、どうしたもんかと必死に高速で思考を巡らせる。

 さっき言っていた通り、私達が一緒に居るのはまずあり得ないんだ。どう説明したものか……

 

「ん? なんだ、小さくて見えなかったが珍しい組み合わせだな」

 

 流石のマルフォイだって即おかしいと気付いてしまった。

 いや小さくて見えなかったってどういう事だコラ。

 

「あぁ……いや」

 

「その……」

 

 私は下手に何も言えず、ロンとハリー……いやクラッブとゴイルは言い淀む。

 

「そこの物置にでも連れ込むのか? ナメクジじゃなくても泣かせてみたいって言ってたもんな」

 

「そうなの!?」

 

 するとマルフォイから不穏な言葉が出てきた。

 思わず私は偽物の2人から距離を取って顔を引き攣らせる。

 

 説明しなくて済んだのは助かったけど、割と真面目に怖い発言だ。泣かせたいって何。

 まさかあの事件が原因で性癖が壊れたのか……?

 あの場に彼らは居なかったと思うけど……あの写真はまだ出回ってるっぽいからな。10枚燃やした時点で諦めた。

 

「もしかして私って狙われてた?」

 

「はっ……目立ちたがりで優等生気取りな『マグル生まれのダンブルドア』がスリザリンで嫌われてないとでも思ってるのか?」

 

 恐る恐る訊ねてみると、マルフォイは見下した様な顔で薄く笑った。

 この様子だとスリザリンからの私の評価は相当悪そうだ。

 万人に好かれるとは思ってないしそのつもりも無いけど……ちょっと残念。

 

 となるとさっきのもマジのイジメ的な意味で泣かせたいって事か?

 一応気を付けた方が良さそうだな。

 

「僕だって父上に言われてなければ……こないだ言っただろう。まぁ嫌うでもなく変な事を言ってる奴も居るみたいだけど……よく分からん」

 

「いやそっちが凄い気になるんだけど……」

 

 そこ重要なんですけど。クラッブとゴイルはどっちの意味だ。

 ていうかやっぱりそういう歪んだ性癖の奴が居るのか……怖い。色んな意味で。

 少なくとも彼の性癖は壊れてない様で安心だな。

 

「僕としてはゴイルの眼鏡が気になるんだが……お前、何だそれは?」

 

 私の言葉は軽く流され、マルフォイは怪訝な顔でハリー……じゃなくゴイルを見た。

 そうだった、眼鏡の指摘をしようとした所だった。

 

「あ、いや……ちょっと本を読んでて……」

 

「……お前、字が読めたのか?」

 

「えぇ……」

 

 適当な嘘を聞いたマルフォイは驚いた様に溢した。

 冗談なんだろうけど、微妙に信じそうになってしまう。だってついさっき頭の悪さを確認したからね……

 

 しかしマルフォイだってこういうくだらない軽口を言うんだな。

 年相応に友達と絡む所を見れたのは初めてかもしれない。友達……なんだよね? 子分?

 

 

「しかし秘密の部屋に連れ去られたってのに、随分元気そうじゃないか。残念で仕方ないよ」

 

 呆れる私を見て彼は話を切り替えた。

 ニヤニヤと芝居掛かった様に大袈裟に馬鹿にしてくる。

 

「む……それこそ残念だったね。誰かさんの企みはアッサリ崩れたみたいで」

 

「なんの話やら……サッパリだな。犯人が誰だったのかさえ僕は知らないさ」

 

 全く相変わらずムカつく奴だ。私がどれだけ大変な目に遭ったか……

 思わず私も煽り返したけどあまり意味は無かった。

 

 白々しく開き直ってる様にも聞こえるけど、本当に知らないんだろう。

 父親もわざわざそこまで説明はしてないか。

 

 ちなみに生徒達にされた説明は、過去の継承者が残した強力な闇の魔術が掛かった物がゴーストの様に意思を持って動いていた……という曖昧なものだ。

 そんな事が有り得るのかと疑う人も居るけど、確認しようが無いから信じるしかない。

 

「犯人はヴォルデモートの記憶だよ。闇の魔術がたっぷり掛かった日記」

 

「――っ、はっ……それこそよく無事だったもんだな。悪運の強い奴め」

 

 だけど私はなんとなく、事件の真相を少しだけ明かしてみたくなった。

 彼がそれを聞いてどう反応するのかを見てみたかった。

 

 しかし一瞬目を見開いて驚きはしても、それ以上の反応は無い。

 まだ取り繕える程度……これだけじゃ微妙か。

 

「まったく……バジリスクが学校を徘徊するとんでもない事件を起こすなんて。信じられないよ」

 

「……なんだって? そんなのが……嘘だろう」

 

 オマケでもう少し追加すると大きな反応に変わった。

 どうやらバジリスクがどういう存在なのかは知ってるらしい。流石スリザリンだな。

 

「嘘じゃないよ。私は犯人ともバジリスクとも戦ったし……結局やられたけど」

 

「そんなの純血も穢れた血も関係無く危険じゃないか……そんな日記が何処から……それに父上はやらせておけと……」

 

 私の言葉を聞いているのかいないのか、そのまま彼はボソボソと独り言を呟く。

 何かしら事情を知っていて黙っていた父親の言葉を思い返したらしい。

 継承者が蛇語で操るという所を知らなければそう考えるのも仕方ない。

 

 目を見ただけで死を齎す怪物を解き放つ、という恐ろしさを理解したんだろう。

 純血主義の彼でも好意的には受け止めていない様に見える。

 

「ねぇ。あなたもマグル生まれなんて死ねば良いと思ってるの? 学ぶ価値が無いからって、命まで軽んじるの?」

 

 それなら、と私は更に訊ねてみた。

 良い機会だから、彼の事をもうちょっと知りたい。

 原作の様に悪になりきれない根っこがあるなら……

 

「僕は……クソッ、黙れ」

 

 残念ながら何を考えたのかは分からないけど、明らかに揺らいだ。

 睨み付けて来る彼の表情には怒りや苛立ち以外が混ざっている様に見える。

 

 よし、もっと畳み掛けてみよう。

 ついでに言いたかった事も言わせてもらおう。

 

「大体、アンタ達の言うマグル生まれだって先祖を遡れば魔法族が居るのが大半なんでしょ? それって半純血と一緒じゃん」

 

「黙れと言っている。そんな細かい事なんてどうでもいいんだよ」

 

 そう考えて次は彼の掲げる純血主義を突っついてみた。

 今やマグル生まれの定義は曖昧だ。言ってる通り、細かい事は気にしてないんだろう。

 

 魔法族の血だけを受け継いだ人が純血、マグルの血が混ざった人が半純血。

 なら魔法族の血が混ざっていないのに魔法に目覚めた人がマグル生まれとなる。だからこその『穢れた血』なのだろう。

 だけど現状は両親がマグルなら、と決め付けているに過ぎない。

 

 もしかしたら、彼らがマグル生まれと馬鹿にする人の中にブラック家とかの『高貴な血』が流れてるかもしれない。

 なんせ純血に拘る家はスクイブが生まれたら追放してきたからね。そのスクイブがマグルと結ばれていたら、知らず知らずに血が受け継がれてる事になる。

 

「黙らない。そもそも魔法族の始祖……始まりの世代はどうやって生まれたのさ。同じ人間な以上、突然変異的に生まれたんじゃないの? 本来の意味のマグル生まれと同じ事じゃん」

 

 ともかく、可能性ならいくらでも考えられてしまうような物なんだ。血なんてのは。

 そしてこれが私の持論。ずっとずっと昔まで辿った最初の世代は何処だろうか。それこそ本来の意味のマグル生まれとして目覚めたんじゃないのか。

 

「無理矢理血を繋げるのとは違う。新しい純血、新しい世代……それがマグル生まれ。私はそう考えるけど」

 

 ならマグル生まれは見下す様な物じゃなく、そこから新しく繋げていく純血の第1世代。だと思ってる。

 まぁとっくに誰かが考えてた説かもしれないけどね。

 

「ふざけるな! そんな与太話、誰が信じるものか!」

 

「ちょっ……信じるも何も、考え方の1つってだけ……」

 

 そこまで言い切ると、マルフォイは激昂して杖を突き付けてきた。

 咄嗟に私は両手を上げて無抵抗アピール。やば、流石に刺激し過ぎたか。

 

「聞いていたのが僕達3人だけで良かったな。下手すれば袋叩きだ」

 

「はぁ……分かった。これ以上は止めにする」

 

 杖を突き付け睨まれて、私はもう何も言えなかった。

 むしろ何か言っても余計に刺激するだけだろう。

 

「ならさっさと失せろ。本当に物置に連れ込まれたくなかったらな」

 

「はいはい……」

 

 そうして追いやられる様に私は彼らから離され、トボトボと廊下を歩いていった。

 やっちゃったなぁ……マルフォイとの間に結構な亀裂が入ったかもしれない。

 

 でもいい加減、純血主義には物申したい気持ちもあったしなぁ……

 謝る気は無いけども、とりあえず今後は気を付けよう。

 

 まぁそもそも、事件の真相を少しでも明かした事がもうやっちゃったかもしれないけど。

 実は相当な事件だった事、父親が何かしら関わっていた事を理解したなら言いふらしたりはしないだろう。

 それでも考え無し過ぎた。こっちはしっかり反省しよう。

 

 

 

 

 

 

「チッ……本当に腹の立つ奴だ」

 

 アリスが歩き去った後、マルフォイは苛立たし気に呟いた。

 さっきまでのやり取りは正直冷や汗物だったな……

 

「しかしまさか闇の帝王とはね……そりゃあ、あんな曖昧な説明がされる訳だ」

 

「事件の事、最初から知っていたんだろう?」

 

「おい……知らないと何度言えば分かる。知っていれば協力してたさ」

 

 せっかく事件の話が出たからか、ロンがもう一度訊ねた。

 さっきのは白々しい嘘だったんじゃないか、と僕も少し期待したけど、答えは残念ながら同じだった。

 

 でも知っていたら協力してた、か。

 本当にそうだろうか。

 

「それが命を奪う事になるとしても?」

 

「……うるさいな。お前まで何を言ってる」

 

 なんとなく僕も気になったから、アリスと同じ様な事を聞いてみた。

 するとピクリと反応して怒った風に答えた。

 やっぱり……そこまでするのは違うと考えてるんだ。

 

「……けど、そうだな。死ねば良いとまでは思ってない。生まれが違うのに、同じ場所で対等に学ぶ事が許せないんだ」

 

 そしてアリスには言わなかった事を漏らした。

 正直、意外だ。変身してなければこんな本心を聞く事は出来なかっただろう。

 

 マルフォイの事は嫌いだけど、彼について知ってる事はあまり無い。

 これも良い機会だ。色々聞いてみるのも良いかもしれない。

 もしかしてアリスもそう考えて色々言ったのかな。

 

「僕達は長く魔法界に貢献してきた名家として、上に立たなければならない。奴らはその下に付いてくれば良い」

 

 なるほど。どうやら彼は貴族と平民の様に考えてるらしい。そういえば実際に貴族だったっけ?

 純血として、貴族として、優れた自分達が上だって考えなんだろう。

 過激な思想になる人も居るし、それに影響される事もあるけど、彼の根本はこれなのかもしれない。

 血だけじゃなく、諸々合わさった自信と誇りなんだ。

 

 だから最初、僕に言ったんだ。付き合う相手は選べ、って。

 下の人間と慣れ合うなんて有り得ない、そういう事だ。

 

 だから、同じ立場の筈なのにそうしないウィーズリー家を嫌ってる。

 だから、同じ立場の筈なのにとことん不器用なネビルを苛める。

 こうであれ、という思想にそぐわないから。

 

「なのに……クソッ、あのダンブルドアと言いグレンジャーと言い、なんでマグル生まれが成績でトップに立つんだ。それで僕がどれだけ父上に失望されたかっ!」

 

 そしてだからこそ、アリスやハーマイオニーが自分の上に居るのが我慢ならないんだろう。

 彼は寄り掛かったまま、壁に拳を叩き付けた。

 

「しかも今度は闇の帝王と戦っただって? 一体どれだけの差がっ……」

 

 見た事も無い、悲痛な表情だ。

 彼も彼で背負ってる物がある……って事か。

 

 やっぱり、僕は彼の事を何も知らなかったんだな。表面だけを見て嫌ってた。

 結局気に入らないのは変わらないし、早々好きになれる気もしないけど……でも。

 

 ほんの少しだけ、彼の印象が変わった。嫌いだけどね。

 

「チッ、こんな事をお前達に言ったって仕方ない話か……良いか、今僕が言った事は誰にも漏らすな。さっきの話も全部だ。さっさと忘れろ」

 

「ああ」

 

「うん」

 

 そこまで言って、彼は僕達に向き直った。

 ずっと無言なのもおかしいと思って、とりあえず適当に返事は返したけど……こんなんで大丈夫なんだろうか。

 

「まぁ言わなくてもどうせすぐに忘れるんだろうけどな」

 

 大丈夫そうだ。いつも一緒に居るマルフォイからもこんな評価なのか……

 逆に大丈夫なのか? クラッブとゴイルの頭は……

 

「はぁ……行くぞ。宿題を手伝ってくれって言ったのはお前達だろう」

 

 溜息を吐いたマルフォイが歩き出した。

 面倒臭そうに笑って言うのを見て、もう一度彼の印象が少しだけ変わった。

 とことん馬鹿な2人相手に、結構世話を焼いてるのかもしれない。

 

「そうだ、さっき面白い物を見つけてさ。後で見せてやろう」

 

「何だ?」

 

「日刊予言者新聞さ。ポッターとウィーズリーが馬鹿な事をしでかしたのは知ってるだろう。お陰でアーサー・ウィーズリーの尋問がされたんだ」

 

 横に並んで会話を始めた途端、僕とロンは揃って足を止めた。

 多分同じ表情をしているだろう。

 

「……お前達、どうした?」

 

「「……腹が痛い」」

 

 そして同じ様に腹に手を当てた。

 腹というか、胃が痛い。

 

「またどうせ拾い食いでもしたんだろう」

 

 その通りだ。よく分かってる。

 

 まぁそんな事はともかく、どうにか色々と情報を引き出さなきゃな……

 ちょうどアーサーさんの話題も出たし、なんとか立ち入り検査の話に移そう。

 

 そして頃合いを見て、今度こそ腹が痛いと言って走って逃げれば良いだろう。




キャラ人気の高いマルフォイですが、この時点の原作では思いっきり嫌な奴でしかありません。
石にされたコリンに対し、これでもかと散々馬鹿にした挙句に蹴り飛ばせと言うくらいにはクソガキです。
あくまで石化で済み、死んではいないからこその態度なのかもしれませんが……
それも全てマグル生まれを見下す思想の所為なのでしょう。

その辺を承知の上で、ここでは彼の性格を若干マイルドに変えています。



魔法族がいつ頃どうやって生まれたのかは分かりません。あくまで考察の1つを引っ張ってきました。

マグルとは生物として根本的に違う存在が進化してきた結果似たのか、何処かで進化が分岐したのか。
前者なら、魔法族の血が混ざらないと絶対に魔法に目覚めない。
後者なら、血以外にも突然変異的に魔法に目覚める可能性がある。

とてもじゃないけれどここに書き切れる様な話ではありません。
そういう考察を元にしました、とだけ。
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