ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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なんだかやたらと2年生編が長引いてますが、一応は先の巻への繋ぎでもあるので……
もうちょっとだけ続くんじゃ。


第42話 努力と成長

 クリスマス休暇は去年同様、学校で過ごす事にした。

 去年と違うのは帰省せずに残る生徒達がちょっと多いという所だ。

 

 そうなった根本的な原因は、先日から定期的に開催されている決闘クラブである。

 

 事件を経てやる気になったのはなにもハリー達だけじゃなかった訳だ。

 あのロックハート主催であろうと糧になる、と多くの人が考えたらしい。

 身近な危険を体感するっていうのは大きく重かったのだろう。血塗れで死にかけた私の所為なんだけど。

 

 その流れで生徒達にお願いされた彼は、クリスマス休暇も残って開催すると宣言。

 学校外で魔法を使うなと言われている以上、それを望む人が多いのは仕方ない。

 生徒達の自主性を重んじて、他の教師陣もそれを認めた。

 

 

 まぁ正直な所、流行りの様な物だとは思う。

 きっと来年度にはこんな活動も消えるだろう。継続する人は殆ど居ないかもしれない。

 

 それでも意味はある。皆の実力が底上げされるのは未来の為にも喜ばしい事だ。

 

 

 

「わーお……去年より凄い山……」

 

 そうしてクリスマスを迎えた私が起きて目の当たりにしたのは、去年よりも更に大きなプレゼントの山だった。

 これ私が飛び込めるくらいあるんじゃない? 何十人分だよ……

 

 また全部チェックしてお礼の手紙を書いたりと忙しくなるな……ちょっぴり憂鬱だ。

 でも今年はハーマイオニーが残ってる。悪いけど助けてもらおう。

 

「……どういう事? プレゼントってそんな山になる物なの?」

 

 その去年を知らない彼女は自分のベッドからこちらを見て困惑していた。

 そんな彼女も決して少なくない量をプレゼントされてるけど……あれは多分、一気に可愛くなって人気出たな。

 

「まぁお爺様の影響だよねー」

 

「そりゃ名前の大きさはあるでしょうけど……意外ね、あなたの事だから『美少女が人気なのは当然でしょ』とか言うかと……」

 

 一番の理由は私がダンブルドアだからだろう。

 そう伝えるとあからさまな私の物真似を見せられた。

 やめてー……それめっちゃ恥ずかしい。

 

「……思わなくはないけど。あんまり言うのは止めようかなって……」

 

「そう、まぁ深くは聞かないけど……それ言っちゃってる時点で同じじゃない?」

 

「あれ?」

 

 こないだのポリジュース薬の件で私は学んだんだ。ナルシストな言動は控えようって。

 しかし早速駄目だった。あれぇ……?

 

「とりあえずそれちゃんと片付けてね。私達しか居なくたって、そのままにして良い物じゃないし」

 

「待って助けてハーマイオニー! これ仕分けてお礼の手紙書くだけでお昼になっちゃうの!」

 

 ハーマイオニーは山をチラリと見てから部屋を出ようとした。

 それを慌てて服を掴んで引き留める。

 今年までクリスマスを半日潰すのは嫌だ!

 

「友達のプレゼントを見るのはなんか微妙に抵抗あるけど……まぁ仕方ないわね。手伝ってあげる」

 

 必死にお願いすると渋々ながら受け入れてくれた。

 良かったー……せめて開封して分けてくれるだけでも全然違うからね。

 

 

 

 という訳で、身嗜みを整えてから改めてプレゼントと向き合う。

 どんどん仕分けていくけど、なんだか差出人不明の物が多いな……中身もおかしいし。

 

 怪我をする程じゃない悪戯グッズやナメクジ事件の写真等々。

 どう考えても嫌がらせか悪戯だろう。良くも悪くも人気者ってのは辛いね。

 とりあえず写真は燃やそう。

 

「……ねぇ、あなた大丈夫? 変な人に襲われたりしない? 凄く心配なんだけど……」

 

「……ちょっと……私も怖くなってきた」

 

 具体的に何かは分からないけど、薬瓶とか怖過ぎる。絶対変な薬だ。

 

 あとこれは……紐? ってパンツじゃねーか!

 送り主はラベンダーだ。こないだそんな冗談を言ってたけど……本当に贈ってくるとは思わなかった。

 他にも似た様な下着がいくつか入ってる。こんな前が最低限しか隠れない紐を下着と言っていいのか?

 

「それ穿くの……?」

 

「いや流石にちょっと……」

 

 しっかり隣で見てたらしく、引き攣った顔をして聞いてきた。

 全く興味無いとは思わないけど……うーん。お試しくらいならアリ?

 とりあえず捨てるのも悪いしとっておこう。

 

 

 

 そのまましばらく作業が続き、昼前には諸々が終わった。

 キッチリ暴露呪文で調べて少しでも怪しい物は処分したし、お礼の手紙も後は送るだけ。

 いやー、この時間で終われたのは本当に良かった。

 

 そして忘れちゃならない物があと1つ。

 

「はい、ハーマイオニー。どーぞ!」

 

「ありがと。私からも、はい」

 

 少し遅れたけど、私達もプレゼントを贈り合う。

 同室なら直接手渡しの方が良いよね。

 

「ふふ……こういうのも良いわね」

 

「えへへ……そうだね」

 

 友達と面と向かって贈り合うのは初めてなんだろう。

 ハーマイオニーは赤い顔で可愛らしく笑った。

 なんだかこっちも自然と笑顔になれる。

 

「中身はー……ってさっきの紐じゃない!」

 

「あ、ごめん。間違えた」

 

「間違えないでしょ! わざとやったわね……」

 

 ウキウキで箱を開いたハーマイオニーは、出てきた紐(下着)を床に叩きつけた。

 そしてぶすっと睨んでくる。

 

 いやー……ちょっと面白いかなって。

 思ったよりほんわかな贈り合いになったから良くなかったな……

 

「穿く? あげよっか?」

 

「穿かないわよ!」

 

「残念……じゃあ、はい」

 

 若干気まずいのを誤魔化す様に冗談を重ねつつ紐を回収。

 そのまま本当のプレゼントを渡す。

 

「もうっ……こっちはちゃんとしてるんでしょうね」

 

「大丈夫。しっかり考えて選んだやつだから」

 

 ぷんすかしながら受け取った彼女はまだ可愛らしく睨んでくる。

 

 ちゃんとしてるもなにも、かなり真剣に用意したさ。

 スリーク・イージーの直毛薬に始まり、ちょっとお高い櫛、その他身嗜みを整える物を詰め込んだ。

 まだ少し早いかもしれないけど、ちょっとした化粧品も少々。

 

「さ、もうお昼だから大広間に行こ」

 

「そうね、流石に朝食が少なかったしお腹空いちゃったわ」

 

 合計でそれなりのお値段になってしまったけど構わないさ。

 でもだからこそ、この場で開封されるとお礼やら遠慮やら言い出しちゃうかもしれない。

 

 そう考えてさっさと昼食に動く事にした。

 そもそも朝は簡単な物を部屋に持ち帰っただけだったからね。

 

 幸いにもハーマイオニーも賛同してくれた。

 さぁ、じゃあたらふく食べようか。

 

 

 

 

 

 

「エクスペリアームス!」

 

「あっ……」

 

 そうして数日が過ぎた、とある日の昼。

 中庭で呪文が閃き、ハーマイオニーの手から杖が弾けた。

 

 今日は皆で決闘ごっこだ。

 ここしばらく学んだ皆のお願いで、私と1人1人戦ってみるというもの。

 クラブ活動の方だと人数の問題から、真面目にやり合うなんて時間と場所が取りづらいからね。

 

 それでも以前言った通り、私が鍛えるという形じゃない。そこは申し訳ないけど、自ら経験して学んでもらおう。

 

「ふっふーん。まだまだ決闘じゃ遅れは取らないよ」

 

 腰に手を当ててドヤ顔しつつ杖をフリフリ。

 勉強どころか一部の呪文の扱いさえ追い付かれ始めてるんだ、これくらいは誇らせてくれ。

 

「なんでアリスの呪文はちゃんと当たるのかしら……」

 

「そりゃちゃんと狙ってるからね。こればっかりは慣れなきゃ無理だよ」

 

 根本的に戦う事に慣れていない彼女は呪文の狙いが甘い。

 まぁ彼女に限った話じゃないけど。

 お互い動きながら当てるってのは中々難しいもんだ。

 

「はぁー……とにかく練習あるのみね」

 

 私のアドバイスを聞いて溜息を吐いたハーマイオニーはトボトボと下がっていった。

 

 結局こんなコツとも言えない様な助言しか出来ないのが今の私である。

 こういう時こういう呪文が使える、というのは私じゃなくても教えられるしね。

 

 むしろそういうのを決闘クラブで扱ってる訳だけども。

 ロックハートの意外とちゃんとした説明の後に私が手本を見せる形で。何故……

 

 

「じゃあ次。ネビルー」

 

「う、うん」

 

 ハリー、ロン、ハーマイオニーと順番に終わり、最後はネビルだ。

 私が呼び掛けるとオドオドしながら出てきた。

 

 彼もこの休暇は残って学んで来いとお婆さんから言われたらしい。

 たった1年で成長したのを見て思う所があったのかもしれない。勿論彼自身もやる気だ。

 

 相変わらず普段は弱気だけど、時折光る物を見せてくれている。

 

「エクスペリアームス!」

 

 礼をして始まった途端、彼は勢いよく呪文を放った。

 そう、既に彼は武装解除をちゃんと放つ事が出来ているのだ。

 

「ちょっ……コラ! そんなに大きく外したら事故が起きちゃうでしょ」

 

「ご、ごめん! 今度こそ……フリペンド!」

 

 ただし狙いは粗過ぎるけど。

 放たれた赤い閃光は私から大きく外れて後ろの壁に弾けた。

 人が居なかったから良いものの、危ないからちゃんと狙いなさいって。

 

 それでも彼は謝りつつすぐさま次の呪文を放った。

 うん、これは真っすぐ飛んできたね。

 

 とは言えわざわざ当たってあげる意味も無し。

 

「タラントアレグラ!」

 

「うわっ、わわわわわ」

 

 軽く弾いて攻撃に転じれば、避ける素振りを見せる前に直撃した。

 

 そうして脚だけは楽し気に踊り出す。

 ほらほら、早く対処しないと疲れ切っても踊り続けてぶっ倒れるよ。

 ちゃんと軽めにしといたから、呪文さえ正確なら対処出来る筈。

 

「フィ、フィニート・インカンターテム!」

 

 少し間は空いたけど、しっかり呪文を唱えて脚を止めた。

 よし、いつものクラブ活動の方で知識も糧に出来てるじゃないか。

 

「良く出来ました。じゃあ今度は……オブスキューロ!」

 

「うわ真っ暗!?」

 

 反撃を許さず畳み掛ける様に目隠し呪文を放った。

 目を塞がれたネビルはワタワタと慌て、直接手で外そうと藻掻いている。 

 さて、こっちは対処出来るかな?

 

「え、えーと……えーと……エマンシパレ!」

 

 さっき以上に時間は掛かったけど、それでも対処してみせた。

 失礼だけど少し意外だ。これもしっかり学んで覚えてるとは。

 なんだか嬉しくなって笑いが零れた。

 

「ふふっ、正解。んじゃ最後、防げるかなー? エヴァーテ・スタティム!」

 

「ッ、プロテ――うわぁっ!?」

 

 ついでだからこれもやってみよう、とわざと分かりやすく宣言してから放つ。

 がしかし……あらら。

 

「残念、ちょっと遅かったね」

 

 ネビルは舞飛び、べしょっと雪の上に転がった。

 一応反応は出来てたけど少し遅かったか。

 

 呪文の閃光は基本的に速い。放たれてから唱えたんじゃ間に合わないのが大半だ。

 

「うぅ……全然駄目だ……ちょっとは出来る様になったと思ったのに……」

 

 むくりと体を起こしたネビルはしょげてしまった。

 やべ、私が笑ってるから馬鹿にされてるとか思わせてしまったかも。

 全然そんな事無いのに……とりあえず褒めよう。

 

「いや思いっきり出来る様になってるけどね? 最初はそれこそ殆ど呪文を正確に使えなかったじゃん」

 

「でも……」

 

「焦っちゃ駄目、努力して結果は出てるんだから。ネビルはネビルの速さで歩けば良いの」

 

 失礼を承知でハッキリ言ってしまえば、確かに不器用であまり多くの事は出来なかったのは事実だ。

 一部の人から馬鹿にされてきたし、何も出来ない、どんくさい、と本人さえ卑下してた程。

 

 だけどこうして成長を見せているのもまた事実。

 今はまだ戦いにならずとも、その成長は目覚ましい。

 

 変わろうと前を向いたからこそ、その先が険しく遠いと知ってしまったみたいだけど……

 決して焦る必要なんて無い。ゆっくりでも成長出来る事は素晴らしいのだ。

 それに、本当に困った時には背中を押したり手を引いたり、いくらでもやりようはある。

 

「そうだぜ。僕なんて成長してるんだかしてないんだか分かんないよ。君の方がよっぽど凄いさ!」

 

 私の励ましを聞いて、横からロンが笑いながら近づいてネビルの背中を叩いた。

 彼は相変わらず自分の事だけは見えてないらしい。同じ様に成長してるんだけどねぇ……

 

「うん……」

 

 とは言え彼の偽り無い本心からの誉め言葉は、沈むネビルを立ち直らせるくらいの効果はあったらしい。

 評価される、認められるというのは本当に大きいからね。

 願わくば、そう言っているロンも周りからの評価を素直に受け入れてほしいものだ。

 

 

「随分楽しそうじゃないか。こんな所で温い決闘ごっこなんかやって……」

 

 と、そこへ声が掛けられた。

 こんな見下す様な話し方はもうアイツしかいない。

 

「マルフォイ……」

 

「ふん……お前達に用は無い。黙っていろ」

 

 最早条件反射なんじゃないかと言わんばかりに、ハリーとロンが素早く身構えた。

 しかしそんな2人を横目に、彼はズンズンと私に近づいて来る。いつものお供達も一緒だ。

 

 え、何? 君はともかく、その後ろのデカブツは近づいてほしくないんだけど……

 

「アリス・ダンブルドア……僕と決闘しろ。たった今コイツらとやってたんだ、出来ないとは言わせない」

 

「はぁ?」

 

 まさかの決闘の申し込みだった。なんでよ。

 

「理由なんて語るつもりは無い、いいから構えろ。それとも逃げるか?」

 

 勝手に言いながら杖を抜いた。

 あからさまな挑発だ。なんだか分からないけど、とにかく私と戦いたいらしい。

 

「……はぁ……しょうがないなぁ……戦ってもらえなかったなんて後で泣かれても面倒だし、受けてあげるよ」

 

 少し考えて、私は受け入れる事にした。

 色々言いたそうなハリー達には手で制しておく。

 

 ここで戦うのが一番面倒が少ないだろう。ぶっちゃけ現状では負ける事も無いし。

 それに、なんだかんだ彼と私はやり合う事が無かった。こないだは言い合うだけで終わったし……これも青春だ、きっと。多分。

 

「ほざいてろ。クラッブ、カウントだ」

 

「うす」

 

 そんな訳で、杖を抜いて向き合う。

 どうやら審判はクラッブになったらしい。他の誰かが動く前に勝手に決めやがった……

 なんか企んでそー……

 

「1、2、3で開始だ」

 

「3って言った後? 言うのと同時?」

 

「細かいな!? 同時に決まって……いや言った後? あれ? あーもう後だ、後!」

 

 よし、テキトーな事を言って調子を崩すのには成功した。

 くくくっ……既に戦いは始まっているのだ。何を考えてるのか知らないけど、策を巡らすのがお前達スリザリンだけだと思うなよ。

 ……全然策じゃないな、こんなの。

 

「もういい、早くカウントしろ!」

 

「うす」

 

 イラついた様な指示を飛ばしながらマルフォイは距離を取った。

 おーい、礼は? する訳無いか……全く。

 

 ともかく私も構えよう。

 さぁ来い!

 

「1…………2、3!」

 

「スラグラス・エルクト!」

 

 ちょっ……!?

 

「ひゃっ!? ズルいなもう!」

 

 案の定やりやがったけど、警戒してたのでギリギリで弾く事が出来た。

 カウントをズラすとか小賢しいなぁ……ていうかそれナメクジ……嫌がらせかこの野郎。

 

「げぼろろろろろ……」

 

「「あ」」

 

 そして横から嫌な音と声が聞こえ、私とマルフォイは思わず目を向けた。

 クラッブが蹲ってナメクジを吐いている。

 

 ……うん、咄嗟に弾いたから逸れて当たっちゃったんだね。

 まぁいいか、知らん。

 

「私は悪くない!」

 

「ちっ……全くこのウスノロめ! さっさと離れていろ!」

 

 とりあえず見なかった事にして続行。

 

「僕はアイツらみたいに温くはないぞ! ステューピファイ!」

 

「っ確かに……そうみたいだね!」

 

 彼の言う通り、中々に激しい撃ち合いだ。

 とにかくひたすら火花を飛ばして牽制しつつ、合間にしっかり呪文を入れて来る。

 

「僕だってやれるんだ! いつまでもマグル生まれのお前達に劣ってなんかっ……」

 

 まだ多くの呪文が扱えないからこそ、威力に乏しい火花であろうと数を撃つ。

 決闘クラブでロックハートはこんな具体的な戦法を教えてない……スネイプあたりか?

 

 マルフォイに対してならスネイプも簡単なアドバイスくらいはする。

 でもそれは彼から聞かなきゃわざわざ教えないだろう。つまり彼もまた彼なりに学び成長してると言う事だ。

 

 というかなんだか決闘の理由が垣間見えたな……今は触れないでおこう。

 

「ちょっと驚いたけどっ……まだまだ!」

 

 プロテゴの反応は遅れがちだけど、それを補う様にしっかり動き回って避けて反撃を入れてくる。

 立ち回りはハリーと似てるな……流石ライバル。

 

 なんにせよ、予想外だったけど私の負けは無い。

 様子見は止めて終わりにしよう。グダグダと手を抜くのも失礼ってもんだ。

 

「そんなに動き回ってちゃ足元を掬われるよ! デイフォディオ!」

 

「なにっ……うわ!?」

 

 動けば当たりづらいのは確かだけど、だからってひたすら動き回れば良いってもんでも無い。

 

 彼の脚の向く先を読んで地面をゴリっと削り取る。

 全く警戒してなかったんだろう、彼は躓いて転んだ。

 

 後は武装解除なりなんなりで良いけど……ちょっとだけ悪戯心が湧いた。

 

「もう立たせないよ。ロコモーター・ウィブリー!」

 

 無駄に呪文を放ち、マルフォイの脚をプルンプルンにした。

 まるで骨が消えゼリーの様になった脚じゃ立つ事は出来ない。つまりまともに戦えない。

 

「ぐっ……くそ! こんな……何の真似だ!?」

 

 嫌がらせなのは彼も分かったらしい。プンプンお怒りだ。

 こういうのは君も大好きだろう。たまには食らってみろ。

 

「ふははははっ……見下される気分はどう? ついでにもいっちょ、タラントアレグラ」

 

 いつも偉そうな奴が地面に這い蹲ってるのを見るのは気分が良いな!

 普段なら出来ないけど、決闘の中の話なら別に構わないだろ。多分。

 

 なので更に嫌がらせ追加。というかちょっと好奇心で試してみた。

 この脚を踊らせたらどうなるんだろう……

 

「……うわ、キモ……気持ち悪い」

 

「言い直すな! 引くな! お前がやった事だろ!」

 

 普通に後悔した。

 プルンプルンの脚がブルンブルン振り回される様に動いてる。

 ちょっとどころじゃなく気持ち悪いな……

 

「や、やだ! その状態で迫ってこないで! 気持ち悪いってば!」

 

「だから! お前が! やったんだろうが!」

 

「分かった、分かったから止まって! 終わらせるから!」

 

 しかもそのままズリズリと這ってくるものだからキツイ。

 マルフォイはもう怒り過ぎて血管がブチ切れそうだ。やりすぎたかな……

 とりあえずさっさとあの脚を戻してあげよう。聞いてるか分からんけど。

 

「フィニート!」

 

「思い知れ、ヴェンタス!」

 

 そう私が杖を突き出すのと、彼がなけなしの反撃をするのは同時だった。

 ていうか、ちょっ……

 

「「「……」」」

 

 暴れ回る脚がふにゃりと元に戻り、下からの突風が過ぎ去り、場は静寂に包まれた。

 私はもう顔が真っ赤だ。これ以上無い程に。

 何故なら――

 

「ア、アリス……あなたそのパンツ穿いちゃったの?」

 

 曝け出された今日の私の下着は、例の紐だったからだ。

 驚くハーマイオニーの顔も赤い。

 

「お、おま……お前っ、なんてとんでもない物を……!?」

 

「違っ……ク、クリスマスのプレゼントで! どうせなら試しに穿いてみようかなって……普段からこんなの穿かないからぁ!」

 

 地面に這い蹲って私を見上げていたマルフォイからどう見えてしまったのか……もう考えたくない。

 彼も彼で真っ赤な顔をしてるけど、同時にドン引きもしていた。

 違うんだ……これは本当に偶々今日お試しで穿いてみてしまっただけで……

 

「尻……」

 

「丸出し……」

 

 少し離れた所に居るナメクジクラッブと介抱をしていたゴイル、彼らには後ろから見られていたらしい。

 揃って鼻血が……いやお尻で!?

 ていうか本当に最悪なんだけど!

 

「「マルフォイ……」」

 

 そして地面のマルフォイへ、ハリーとロンが近づいて其々が肩を叩いた。

 いやそんなんじゃなく顔を思いっきり殴れ!

 

「「君は英雄だ」」

 

 駄目だコイツら。

 

「やめろ! 気安く触るなっ……ていうかなんだその生暖かい顔は!? 僕はただ辱められた仕返しにっ……」

 

 真っ赤なまま涙目でプルプル震える私を誰も気遣わない。

 いや気遣われても嫌なんだけどさ……

 

 とか思ってたらハーマイオニーが来て、同じく肩を優しく叩かれた。

 

「その……最低限は隠れてたから……」

 

「最低限しか隠れてないの! もうやだぁ! 帰るぅ!」

 

 とりあえず私としてはもう限界だった。

 恥ずかし過ぎてこの場に居られない。

 涙目で叫び全速力で逃げた。

 こんなパンツ脱いで寝る! 不貞寝してやる!

 

「なんで私はこんなんばっかりなんだーっ!?」

 

 殆ど人の居ない廊下に、私の嘆きが空しく響いていった。

 

 

 

「努力……ね。何故……あの子達はあんなにも……」

 

 そして廊下から覗き見ていたロックハートには誰も気付く事が無かった。

 複雑な表情で何を考えていたのか、それを知るのはしばらく後の事だった。

 

「しかしあの下着は一体……? 幼い外見に似合わずあんな趣味があったとは……見なかった事にするのが紳士でしょうかね」

 

 ついでに全くどうでもいい、おかしな勘違いも生まれた。





【タラントアレグラ「Tarantallegra」】
対象の脚を踊っているかの様に動かす。
一見楽し気な呪文だが、実は遥か昔に大事故を起こしている。

西暦79年、とある魔法使いがこの呪文を火山に使用した結果噴火を引き起こした。
そうしていくつかの都市が壊滅し1500人以上が死亡したとか。なにしてんの……

この呪文は対象に脚が無いと適切に作用しないらしい。
脚が無いならまず脚を生やす呪文を使う。

神秘部の戦いで何故か踊らされたネビルが予言を粉々にしたのは有名。
他にも、恐らくだが1年生の学期末試験で使われた可能性が高い。パイナップルを踊らせるやつ。

結構簡単な呪文であり、術者の意思次第で制御も可能なのだろう。



【オブスキューロ「Obscuro」】
対象に黒い目隠しをして視界を遮る呪文。
生身どころか肖像画の人物さえ対象に出来る。

もし動物にも効くとしたら、この呪文だけでバジリスクの目を封じられる……?
と思ってしまうが、普通なら放つ前に目を見て終わるだろう。
対象を全く見ずに呪文を当てる芸当が出来るなら可能かもしれない。

エマンシパレで解除出来るのかは分からないが、物理的に塞いでいる=拘束と考えてここでは解除出来る設定に。

ちなみにオブスキュラスとは同じ語源というだけで関係は一切無い。



【デイフォディオ「Defodio」】
土や石を削る呪文。穴を掘ったりするのに便利らしい。
上手く使えばこれだけでトンネル等の掘削作業が出来、しかも周囲は無傷で済ませられるとか。
本当になんて便利なんだ。



【ロコモーター・ウィブリー「Locomotor Wibbly」】
ゼリー脚の呪い。日本語訳ではくらげ脚になっているが、対象の脚をまるでゼリーの様にぷるんぷるんにする。
なんなんだそのキモ怖い呪文は。
ていうかまたロコモーターだよ……どんな効果なのか不安定過ぎる。

他にもゼリー指の呪いや、ゼリー脳の呪いがある。
其々、指をプルプルフラフラにする、精神を不安定に低下させる、という効果。

割と気軽に使われているが、一応は医務室送りレベルの呪文っぽい?
とは言えここではフィニートで戻せるという設定に。

ファーナンキュラスと合わせると顔中から小さな触手が現れる。キショイ。
ここからくらげ脚になったのかもしれない。


【ファーナンキュラス「Furnuculus」】
鼻呪いと言うが、顔中に酷い腫物を発生させる。
毒キノコの本に載っていてもおかしくない顔になるとか。
地味にハリーのお気に入りの悪戯らしい。流石。



【ヴァーミリアス「Vermillious」】
もしくはヴェーミリアス。レッドスパークス、つまり赤い火花に分類される呪文。
由来もそのまま赤色のヴァーミリオン。何故かLが多いけど。

小規模且つ基礎的な攻撃呪文とされ、こういった用途の呪文はゲーム等で度々作られたりする。

レガシーの通常攻撃もこれに類する物かもしれないが、こっちは威力がかなり低いようだ。
なので未熟でもどんどん使える、という設定にした。
まぁ入学間もない1年生でも火花を飛ばして決闘ごっこが出来るらしいので、多分それの事なのだろう。

ヴァーディリアス(ヴァーディミリアス)という緑色の火花を飛ばすのもある。
それはグリーンスパークスという分類。

更に詳細不明だが、ボービリアスという白い火花の呪文もあるっぽい。
多種多様な色があるんだろう、多分。

むしろ呪文はそもそも必要無く魔力を込めて放ってるだけで、その魔力次第で色が分かれる事にそれっぽい名前を付けてるだけかもしれない。


【ペリキュラム「Periculum」】
赤い火花、というより信号弾の様な物を放つ呪文。上記のレッドスパークスに分類される。
映画からの登場だったが、1巻でハグリッドが使えと言った赤い火花はこれの事だと思われる。
つまり新入生でも、なんなら当時のネビルでさえ使える様な難易度である。
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