ドラマ関連から、最近はハリポタの話題が増えてきましたね。
合わせて更新もどんどん出来たら良いんですけど、ここしばらくは夜を渡っていて――そういえば今日から更に夜が深く……
あぁ忙しい忙しい()
決闘クラブにクィディッチ、いつもの授業。
当たり前の極普通で賑やかな学校生活が続き、気付けば春になっていた。
クィディッチは順調に勝ち続けてるし、殊更に語る様な事も……いや、バレンタインは酷い1日だったな。
ともかくあっという間に時間が過ぎた。事件が起きていた1ヶ月よりずっとずっと早く感じる。
でもまぁ、これが平和な日常ってもんなんだろう。
「さてさて、では今日はここまでとしましょう!」
壇上で笑顔のロックハートが解散を告げた。
もう何回目かも分からない定期開催の決闘クラブは、多少人数が減ったもののまだまだ盛況だ。
むしろ減ったお陰でやりやすくなってるくらいか。
残っているのは未だに熱意のある生徒だし、自然と内容も濃くなった。
ちゃんと学んだ事を実践して助言し合ったりと充実してる。
ロックハートの指導も中々悪くない。
実力は無くとも知識は本物……というか伝えるのが上手いのだ、悔しい事に。
流石、大ヒット作をいくつも書くだけはある。お手本役(私。何故?)さえ居れば問題無い。
こんなまともな指導が続くだなんて予想もしてなかったのに。
細かい文句はあるけど、正直彼を見直した。
授業もそうだ。ナルシストな自己顕示欲は健在とは言え、口を開けば……という程の物じゃなくなった。
以前は著書のシーンを再現するとかいうくだらない寸劇をしていたけど、それが消えた。
と言っても教科書は相変わらず彼の著書。
が、そもそもそれは何処かの誰かの実体験。参考にならない訳が無い。
考えてみれば授業のネタとしては最初から良い物だったんだね……
とにかく、ちょっと鬱陶しいだけの『教師』になってるのだ。
一体彼はどうしちゃったんだろうか。
「すみませんが、ちょっとよろしいですか?」
生徒達がわらわらと出ていく中、そんな彼が私へ声を掛けてきた。
ちょっとよろしくないですけど……私達、もう寮に戻るんですけど。
なんて事を面と向かって言える筈も無い。
どうやら用があるのは私だけみたいなので、皆には先に行っててもらおう。
という訳で皆を見送り向き直る。
さて、何の用なんですかね?
「いやー、相変わらず君のお陰で皆のやる気も充分ですね!」
さっさと用件を言え、という私の内心なんて気付きもせずにご機嫌に話し始めた。
クラブを上手くやれてる事が嬉しいんだろう。ついでにお手本役をやらされてる私を労ってくれてるらしい。
「お役に立ててるなら幸いです。私なんかより先生が手本を見せた方がよっぽど良さそうですけど……」
「いやいや! 同じ生徒の……それもまだ2年生の君がやって見せるからこそ、皆は自分にもきっと出来ると思えるのですよ!」
生徒にやらせてないでアンタがやれば? と分厚いオブラートに包んで伝えてみたが……これも全然届いてくれない。
それっぽい言い訳しやがって。まぁ身近な手本の方が良いと言われると、なんとなく分からなくも無い気がしてしまうけど。
「しかし相変わらずと言えば、君達の熱意はいつも誰よりも高いですね」
言うだけ言ってさっさと話を切り替えてきた。
ちょっと真面目な表情だからこれが本題か。
ハリーとロンとハーマイオニー、そこに加えてネビル。それがここしばらくの私達のグループだ。
実際周りと比べてやる気は数段上だろう。地味にマルフォイも頑張ってるのは知ってるけど、一番目立つのは私達だ。
「実は先程、彼らに理由を聞いてみたのですがね……皆口を揃えて、あなたに追いつきたい並びたいと言っていました。なら、そんなあなたは何故それ程までに努力出来るのだろうと思いましてね」
いつの間に……あぁ、私がトイレで一旦離れた時かな。
まぁいいや、それはともかく皆は随分と恥ずかしい事を言ってくれたもんだ。嬉しいけど。
そんでもって、私が頑張る理由が気になると。
むしろ彼が何故気にするんだと言いたい所だけど……
「強くなりたいから……かな」
まぁ一番大きな所はこれだろう。
スネイプ程にガチな決闘指導じゃなくとも糧になるし。
「あれ程危険な目に遭って、それでも戦おうと言うのですか? そもそもあんなのは早々起こる事じゃないでしょう」
どうやらあんまり納得出来る理由じゃないみたいだ。
でも戦う理由までは気軽に明かせないからなぁ……
あんなのが毎年起こるんです、とは言えない。
なんかもう面倒だから適当にそれっぽい事言っておこう。
「別に戦う為だけじゃないですよ。私はこの大きな名を背負うと同時に環境にも恵まれたから……だからそれに恥じないくらい立派になりたいんです」
人に言うのは初めてだけど、これは紛れも無く本心だ。
勉強は嫌いだし遊んでいたい。スネイプに扱かれるのも辛く苦しい。だけど頑張れる。
誰にも自分にも恥じない様に生きたいから。
「そう……ですか」
するとロックハートは神妙な顔で黙った。
一体なんなんだろう。何か言ってくれないかな……
「あの、どうしてそんな事を?」
「いえ……あぁいや、あなただけに語らせる事ではないかもしれませんね」
沈黙に耐えられず、とりあえずで私が訊ねると彼はフッと笑った。
別に私の方はそんな大した興味は無いですけど……
まぁ語りたいなら聞くだけ聞いてあげるか。
「普段の君達がとても眩しかったのですよ。友人と語り合い高め合い、そうして笑う君達が眩しくて……そんな中心に居るあなたが、ただ興味深かったのです」
勿体ぶった語りによると、どうやらそういう事らしい。
いまいちよく分からないけど……私達の様な学生生活を送りたかったっぽい。
彼はどんな生徒だったのやら。友達とか居たのかな?
「私は努力なんてしなかった、出来なかった。だから君を……君達を見ていると、自分がどれほど愚かだったのか思い知ってしまう。けれど何故か目が離せないのですよ。不思議な事です」
他の人に聞かれたくない話なんだろう。すっかり人が居なくなった大広間をチラリと見回して、なんだか悲し気に彼はそう言った。
努力が出来なかった、ね……なるほど。
「だから……まともに呪文が使えない?」
「やはり気付いていましたか……」
こうも本音で語ってくれるなら、と思い切って言ってみる。
すると彼は大きな溜息を吐きながら、物凄く苦い顔で遂に認めた。
「いや多分生徒の9割はとっくに気付いてると思うけど……」
「そ……そう、ですか」
なんでしょんぼりしてるんだよ。まさか気付かれないと思ってたのか?
「いや、まぁ……そんな私でも学生時代はそれなりに優秀だったのですよ」
「えっ、そうなんですか!?」
バレバレだったという事は考えない様にしたのか、さっさと話を切り替えてきた。今度は苦笑いだ。
けど、え? 優秀だった……? この人が? なんの冗談だ?
「そんなに驚かなくても……コホン、しかし所詮それなりでしかなかったのです。優秀ではあっても、決して突出は出来ない程度。それが私でした」
使えないと言うよりは、使えなくなったが正しいのか。
見るも無残な有様からして、せっかくの才能の殆どを無駄にしちゃったんだな。
どうしてそうなるのかちょっとよく分からないけど……忘却呪文を極める中で他の呪文の使い方を忘れちゃったんだとしたら、なんともまぁ……
というかそれを聞かせてどうしたいんだろうか。
どう反応すりゃいいのよ……
「悔しかった。だけど私は、そこで努力が出来なかった。大言、虚言を繰り返して妬むだけだった……」
「はぁ……」
反応に困る私を置いて、彼はまだまだ勝手に語っていく。
自分より優れた人を妬む、それは誰だってあり得る事。
それを向上心に変えて自分を高める事は出来る、と以前私はジニーに伝えた。
それが出来なかったのが彼なんだろう。
そういえばあの時は彼も居たんだったな……思わぬ所で痛烈な一撃を入れてしまっていたらしい。
そういう諸々で思う所があって私に話をしたかったのかな。
こっちとしては対応に困る以外に無いんだけど……
「その虚言の延長線上が今、と……」
「――っ!?」
黙ってないで何か返さないと、と適当に口に出してしまったセリフに彼はビクリと反応した。
やべ、今のナシ……なんて通らないよなぁ……
「……なるほど。それもとっくにお見通しだった、という訳ですか」
他人の功績を奪い自分の物とする虚言。
それを知っていると伝えてしまった……が、彼はまた勝手に納得して諦めた様な表情で呟いた。
お見通しと言うか知ってたと言うか。
ていうかどうしよ……リドルに続いてまた記憶消されちゃうのかな。
いや彼相手なら全力で抵抗すればどうにでもなると思うけども。
「まぁ、忘却呪文だけは正確に使ってましたからね。どうします? 私の記憶を消しますか?」
とりあえず堂々と余裕を見せておこう。
むしろ私がどれくらい戦えるかは彼もよく知ってる訳で。正面から襲ってくる事は無いだろう。
「いえ、止めておきましょう。きっと遅かれ早かれ気付かれる事だったのです」
しかし私の警戒を余所に、彼はゆっくりと首を振った。
なんでそんな諦観してるんだろう。
「ふっ……やはりあの場で忘却呪文を使ったのは良くなかったですね。可愛らしく頼られて、柄にも無く教師らしい事をしてしまうなんて」
いや、教師は生徒に対して忘却呪文を使ったりしないと思うよ。
ともかく、流石私だな……とは言えないか。上目遣いなお願いのお陰と言うより、頼られた嬉しさからだったみたいだ。
しかしとんでもない秘密を知られたってのに、どうして対処しないと言い切るんだろう。
いつかバレると覚悟してた……?
「このまま繰り返せば何処かで無理が出る事ですし、何より他にも見抜いている人は居るでしょう。それこそ、ダンブルドア校長とか」
怪訝な表情で固まる私を見て、相変わらず諦観した様に語る。
確かにお爺様なら気付いてるだろうね。むしろ気付いてない先生方が居るのかって感じだけど。
だって彼の学生時代を知る人は他にもまだまだ居るんだし。
「しかし恥を承知でお願いしたい。どうかあと少し、今年1年は教師としてやり切らせて頂きたいのです。それが済めば……私は魔法省に出頭しますよ」
「え」
そのまま驚きのセリフをぶっ込んで来た。
覚悟してたどころじゃない。驚き過ぎて言葉が出て来なかった。
「実はもう決めていた事でしてね。偽りだらけな人生のなんと虚しい事か、と悟ってしまったのです……君のお陰で」
「なんかもう色々訳が分からないです」
これも私!? 私は何処で何をしたんだ……
何がどうなってこうなったの……
「知らぬは本人ばかり、というものですね。きっと君のお陰で変わったものは沢山あると思いますよ」
柔らかく微笑む彼は、なんだかちゃんとした教師っぽかった。
少し嬉しい言葉だ。物語じゃなく現実を、皆と影響し合って生きてる……そう実感させてくれる。
「私が夢見た……友人に囲まれ尊敬され、多くの中心に立つ立派な存在。眩しい程に輝く君は、私なんかは願う事さえ烏滸がましい程根本的に違うのだ……と理解してしまいました」
そりゃ優秀で美少女で人気者な私は輝いてるだろうさ。そうあろうと努力してるからね!
て……あぁ、だからその努力が出来なかったって話か。
成りたかった自分を体現する私を見て、色んな感情が渦巻いたんだろう。
その結果が、罪を重ねて見栄を張ってプライドだけ高めてきた事を止める……か。
開き直ったというか、諦めたというか。
物凄く卑屈で否定的な言葉なのに、彼は依然として微笑んでいた。
「偽り続ける事さえ出来ない。何処までも無才で無能な情けない私ですが、だからこそ最後くらいは真っ当に教師として振舞ってみたいのです――頼られるのは気持ち良いですからね!」
一旦笑みを引っ込めて真面目に語り、そうして最後にまたニコリと笑った。
わざとらしく作ったお馴染みの笑顔だ。だけど嫌な感じは全く無い。
そっか……だから最近はまともな授業をしてたんだ。
クラブの方も精力的に活動して、紛れも無く教師として生徒達と向き合って……
もしかしたら、もっと前からそう考えてたのかもしれない。ズレてただけで彼なりに教師らしくあろうとしてたのかもしれない。
なんなら秘密の部屋に付いて来たのは……教師なら生徒の為に動く筈だと。結果何も出来なくたって、震えて怯えて動かないなんてのは教師らしくないんだと。
そういう事だったのかもしれないな。
いや、半分くらいは自分の功績が増えるかもって期待だったかもしれない。
むしろ殆どそうだったかも。だってクリティカルヒットしちゃった私のセリフはその後だもんね。
うん、これはもういいや。わざわざ考えてあげる事でもない。
「そうですか……まぁ別に私はその、言い触らしたりはしないですよ。見守って……見送ります」
思考があっちこっち行ったのを引き戻して、どうにか言葉をひり出した。
最初から言い触らすつもりは無かったし、自首すると言うならそれで良い。
教師らしい彼を生徒らしく見送って終われたらそれで良い……んじゃないかな。うん。
「ありがとうございます――――いやはや、随分と話が逸れてしまいましたね。もうこんな時間だ、引き留めてしまって申し訳ない」
安心したのか、酷く真面目な顔でお礼を言われた。
そしてキリが良いと考えたのか、ここで話を打ち切った。
全く本当に逸れまくったもんだ。まさかこんな話になるとは思いもしなかった。
だけど、悪い話じゃなかった。
彼のやった事はとんでもない犯罪だし、鬱陶しい程の自己顕示欲は見ててムカつくし、イケメンで腹立つし。
それでも、こうして本心を聞いてしまうとちょっと……嫌いになりきれないというか。
私って単純だなぁ……
「……いえ、色々聞けて良かったです」
なんにせよ聞けた事自体は良かった。それはハッキリ言えるかな。
ペコリと頭を下げて歩き出し、見送られるまま大広間の外へ。
しかし私はすぐに止まった。
「――1つだけ。訂正させてください」
背を向けたまま、少しだけ強めに声を出す。
私も話を聞いて色々思ったけど、これだけは言わせてもらおう。
「あなたは決して、無才で無能なんかじゃない」
くだらない思い違いをしている馬鹿たれには、ちゃんと言ってやらなきゃならない。
ロックハートが無才で無能? そんな事がある筈が無い。
「努力もしないで『それなりに優秀』なんて普通はなれません。私だって沢山沢山努力してやっとです」
明確に努力だと言える事をしなかった、出来なかった?
なのにそれなりの結果が出るなんて、それを才能と言わずに何て言うんだ。
なんならその忘却呪文。それは魔法省の中でも超重要な専門の職業として扱われる程の魔法だ。
決して簡単な物じゃない。それ程の腕になるまでの研鑽は間違いなく努力だろう。
「世界中を旅して、多くの人と関わって、そうして奪ったとは言え沢山の出来事を本にして、これ程に売り上げた。そんなの、才能が無きゃ出来る事じゃないんです。あなたの本は本当に評価通り面白いんです。でなければ人気になんてならないんですよ」
そして行動力、語学力、話術、知識、執筆、演技、その他諸々。
目的こそとんでもない方向に向いていただけ。一体どれ程の才能と努力があったのか、何故それに気付かない。
偽りだらけだろうと、嘘じゃない物だって沢山あったんだよ。
なのにくだらない目的以外は何も、自分さえも見えなくなって……そんなの……
「あなたはきっと、これでもかと言うくらいに沢山の才能に溢れる人だった。だけどそれに気付けず、方向を間違えてしまった」
そんなの……悲しいじゃないか。
きっと何処かで歪んでしまったんだろう。それが何時だったのかは分からないけど……
もし歪まずにいたなら……本当に教師としてここに居たのかもしれない。本当に英雄的な事を成したかもしれない。
物凄い可能性があった筈なのに……
悲しくて……なんだか自分の事の様に悔しいじゃないか。
「まるで人生の終わりみたいに言ってますけど、裁かれて終わりにしようなんて駄目です。罪を償うのは難しいかもしれないけど……願わくば、いつかあなたの才能を活かせる新しい人生が始まる事を祈ります」
世界中で記憶を奪って、証拠なんて残っちゃいない。
それがどれ程の罪になるかさえ分からない。どんな罰になるかなんて全く分からない。
だけど、いつか……
そう願ってしまう。
「――っ、ありがとう……ございます」
言うだけ言って歩き出した私の背に、小さな涙声が届いた。
*
「私何言ってんの!?」
しばらく歩いた所で、私は恥ずかしさから壁に頭を打ち付けた。
痛くないように控えめにだけど……とりあえず顔は赤いだろう。
「あんなクサいセリフばっかり……恥っず。絶対ロックハートの所為だ」
流石と言うか、超人気な小説家なだけあって出て来るセリフがやたらとこう……
それに引き摺られたんだ、きっと。
「でもまぁ……私も本心なのは変わらないか。こういう未来の変化なら良いよね」
私が居る事による変化。出来事が変われば人も変わる。
まさか改心みたいな事が起こるとは思ってなかったけど、これはこれで。罪を償った上なら救いがあっても良いだろう。
「うむ。わしも多少肩の荷が下りたのう。あやつがこうも変わるとは思わなんだ」
「ぴゃっ!?」
そして背後から呑気な声で私は飛び上がった。
そこには髭を撫で微笑むお爺様。どうやらさっきまでのやり取りは見られていたらしい。
「お爺様……居たんだ……」
「万が一があっては大変じゃからの。しかしもうそんな警戒は必要なかろう……わしも彼の意思を尊重して見守るとしよう」
もしかして私が何かされる可能性を考えて……?
確かに色々やらかしてる犯罪者と1対1ってなると警戒は当然か。
何処に何時から居たのかは気になるけど……うん、突っ込まなくていいか。
とりあえずこれだけは書きたかった、ロックハート関連です。
やらかした事は大きいけれど、才能に気付けず歪んだ人生を送った末路がアレというのも可哀想なので少しばかりの救済を。
ただ、無駄に長くなり過ぎない様に纏めた結果、少々駆け足というかなんと言うか。
もっと深堀すれば上手く書けた気がするんですけど、いい加減2年生編そのものが冗長になってきているので……