しかもその内の8割程が☆9以上という事で、素直に嬉しいです。ありがとうございます。
その有難い評価を出来るだけ覆さない様に、もっと楽しんで頂ける様にしたいものです。
と言ってもまぁ、殆ど不定期更新みたいになってますが……ぼちぼち上げていきます。
大変過ぎて考えてる暇さえ無かったけど……時間が出来た今、改めて今年の事件について纏めてみよう。
シリウスの脱獄……これは既に大々的に報道されている。今何処に居るのかは分からないけど、鼠を追ってホグワーツに来るのは確実だ。
勿論ルーピンの就職も決まったと聞いている。
大量に配備されるだろう吸魂鬼については、既に守護霊を扱えるから問題は無い……筈。少なくとも私の周りでは。とりあえず、怖くて動けないなんて事にならない様にしなければ。
バックビークの処刑も未然に防ぐ事は可能だ。怪我をする前にマルフォイをフォイしてやればいい。
その場合展開が大きく変わりそうだけれど……なんとかなる範囲だろう。
うん。去年程に大変な事にはならないかな。
立ち向かうべき敵も精々が吸魂鬼くらいだ。
問題はペティグリューがちゃんと逃げるかどうか。嫌な言い方をするなら、逃がす事が出来るかどうか。
諸々上手く運び過ぎて完璧に捕えてしまう、なんてのは避けなきゃね。
奴が無事に逃げ延び、ヴォルデモートに仕え、あの儀式をする事……つまり愛の護りを受けたハリーの血を使う事。
それが何よりも最重要事項であり、勝利の条件の1つだ。これを変える訳にはいかない。
これから先に起こる事は何もかも、奴の逃亡が始まりと言っていいくらいだ。だからこそ逃亡は新たな予言となった訳だ。
とりあえずは原作に沿う様にするのが安牌だろうか……
シリウスが暴走し、ロンごと鼠を連れ去り、大乱闘にルーピン参戦、スネイプ参戦。からのルーピン変身大暴れ。
少なくとも、捕らえた後に目を離さざるを得ない騒動が無ければそのまま連行してしまう。
まぁ最悪何処か警備の緩い適当な所に押し込めて、逃げられちゃいました……でも良いかもしれないけど、ちょっと信用に関わりそうだ。
シリウスやルーピンに情報を伝え協力体制を取る事は出来るし、それはそれで色んな可能性が生まれる。
私だけならともかく、お爺様達が居れば信じてくれるだろう。
そうして打合せをした茶番を演じて逃がす、なんてのもアリっちゃアリだ。
しかしそもそも私が居るという変化がどう影響するか。
ていうか既にハリー達の実力が原作と変わってる。弱ったシリウスが返り討ちにされたらどうしよう……普通にマズイぞ。
逆に私がシリウス側に立つか……?
うーん……この辺りは追々お爺様達と相談だな。
今年はちょっとくらい気楽にいけるかも、なんて思ったけどそんな事は無い。相変わらず考える事は多そうだ。
*
そんなこんなで日が経ち、夏休み最終日。
たっぷり休みながらも時々空を駆けていた私はスッキリ元気一杯だ。
箒で飛ぶのとはまた違って中々素晴らしい。変身もだいぶスムーズになったと思う。
簡単に能力の確認もしてみたけど、少なくとも100キロ近い物を掴んで悠々と飛べる程の力があるという事は分かった。
ついでに飛行速度もかなりのものだ。具体的に時速いくつかなんて分からないけども、箒とは比べるまでもない程遥かに速い。
だけど他の能力についてはまだまだ把握は出来てない。
涙なんて、泣こうと思っても泣けるもんじゃないし(鳥ってどうやって泣けばいいの?)
瞬間移動だって、そもそも姿あらわしを習得してない私にはさっぱりだ。
歌? ピーピー鳴いてるだけだったよ。鳴く以外に何かが違うのかもしれないけど分からない。
この分だと、単純に滅茶苦茶凄いだけの鳥……という可能性がなくもない。
それは不死鳥なんだろうか……
ちなみにもう1つ判明したのは、フォークスと比べて一回りか二回り程小さいという事。
変身しても小さいのか……私は。
もっと言うとフォークスは中々私に厳しい子だった。簡単な意思疎通が出来る様になって分かったけど、まるで兄貴分だ。
まぁそれはともかくとして。
今日は2ヶ月振りにハリー、ロン、ハーマイオニーと再会だ。
私自身が忙しかったのもあるし、国外に旅行に行ってる2人とは連絡さえ取っていない。
本当に久しぶりに感じる。目的は一応新学期の買い出しだけど、純粋に楽しい1日になりそうだ。
せっかくだからと多少お洒落をし、準備を済ませていざ漏れ鍋へ……と暖炉へ飛び込む。
そして店内をウロウロしていると前方から3人組がにこやかに近付いて来た。
なんだ、もう合流してたのか。
「やっほー、久しぶ……ん?」
そして気付いた。何かおかしい。
「アリス! 久しぶりね、元気してた?」
「僕らもたった今合流したんだよ」
「あぁ、一気にいつも通りって感じだ。会えて嬉しいよ」
口々に再会の挨拶をしてくる彼らと向き合い、私は困惑した。
「え、あ……ど、どちら様で?」
私の知ってる3人じゃない……いや間違いなく本人達なんだけど……
「何言ってるのよ」
「いや……え? 夏休みって2ヶ月だよね? 半年とかじゃないよね? なんで揃いも揃ってそんなに成長してんの?」
そんな私を見て今度はハーマイオニーが困惑している。
君達気付いてないの? まるで半年くらい経ったんじゃないかってくらい変わってるけど?
何その身長。何その顔つき。2年生と3年生とで映画並みに変わっちゃってるよ。
「成長期だし……」
「ねぇ?」
何を当たり前の事を……みたいにロンが呟き、揃って頷いている。
成長期ってなんだ。私にはそんなもん存在してないぞ。
「アリスだって流石に――え、縮んだ?」
「縮んでない!」
ハーマイオニーが隣に立ち、私と背比べしながら頭に手を置いてきた。
失礼な。縮む訳ないだろ、君が伸びたんだよ。ていうか身長もそうだけど、なんだその胸……
日焼けもしてて健康的だ。フランスで充実した夏休みを過ごしたようで何より。
「そうだぜ。僕ら程じゃなくてもアリスだって伸びた筈だよ」
「伸びてない!」
ロン、それはフォローのつもりなのかもしれないけど逆に失礼だぞ。
しかし君は本当にデカくなったな……そばかすも増えた。
「伸びてないんだ……」
「多分……いやちょっとくらいは……」
横でハリーが苦笑い。君も随分と……いや、お世辞にも良い環境とは言えない生活の筈なのにどうして……
むしろ私こそどうして――いや考えるまでも無い。成長するべき時期に過酷過ぎる生活をした所為だ。
多分、秘密の部屋事件を解決してから夏休みに入るまでの約半年しか成長出来てないだろう。
「もういいから店に行けばいいんじゃない? どうせ皆、制服買い直さなきゃでしょ」
曖昧なら調べれば良い、とハーマイオニーが外――ダイアゴン横丁の方を指差した。
「そうだね。あ、でも皆は先に銀行? 僕はお金あるけど……」
「僕もお金なら渡されてるよ」
勿論移動には誰も異論は無い。
頷き合って歩き出すと、ハリーが声を上げた。
そっか、しばらくここで生活してた彼はもうお金を引き出してるのか。
ロンも様子を見るに、必要経費だけじゃなくお小遣いをしっかり渡されてるっぽい。
でも今年のお小遣いは無しって言ってたような……あぁ、ガリオンくじに当たったから余裕があるのか。
「私は換金しなきゃだから……アリスは金庫から?」
「うん。またあのトロッコに乗るのは嫌だけどね……」
「喜ぶ奴なんか居ないよ」
とりあえず銀行に用があるのは私とハーマイオニーだけっぽい。
あぁ……金庫までの道程が苦痛だ。酔いたくない。吐きたくない。
げんなりして答える私の隣で、ロンが辛辣なツッコミをしていた。
私1人が金庫に向かうのもハーマイオニーが換金するのも大して時間は掛からない。
野郎2人には外で待っててもらい、諸々を済ませて戻って来た。
「……酔わなかった!」
銀行を出て早々、私はテンション高く両手を上げて声を上げた。
なんと素晴らしい事か、あのトロッコに乗っても全く問題が無かったのだ。
多分、変身して身一つで飛ぶ事に慣れたからかもしれない。
元々箒じゃ酔ってなかったけど、やっぱり何かしら変わったんだろう。
「成長したみたいでなにより」
ハーマイオニーが背中をポンと叩いて祝福してくれた。
いやちょっと違うかもしれない。その微妙な微笑みは何だ。
「成長って言うの? それ」
「言う! て事でさっさと身体の成長の方も確認しよ」
言葉のチョイスに引っ掛かりを覚えたらしいロンが呟くが、ひとまず押し切った。
たかが乗り物酔いを克服しただけとはいえ、成長は成長だ。多分、きっとそう。
という訳で、マダム・マルキンの洋装店へと皆を促した。
さてさて……実際どれくらい成長出来たかな。不安しかないけど。
「で?」
揃って制服を買い直し、店を出るとハーマイオニーが私を覗き込んできた。
彼らは自分の成長にご満足頂けた様子。
しかし私だけは――
「ひゃく……よんじゅう……ごせんち……」
魂が抜けた様にがっくり項垂れ、ポツポツと答えた。
案の定、去年より成長してないじゃないか……私もう13歳なんですけど。
しかも大概背の低い日本人ならともかく、イギリス人なんですけど。
「何と言うか……まぁ、うん」
凄い渋い顔で肩を叩かれた。素直に慰めてくれない?
「今度は四捨五入した?」
「…………」
「した上でなのね……」
何も言ってないやい。5ミリくらい良いだろ別に。
あぁ……150の大台が遠い……大台? 大台だな。
ハーマイオニーは私よりだいぶ高いけど、もしかして160に届いてたり……いや、考えなくていいや。
多分そこまでの差は無い……筈。だと信じたい。
「アリスって実は僕らより1個下だったりしない……?」
「いや、ジニーより小さいから2個下だな」
「うるさいな!」
会話を聞いていたハリーとロンがなにやら言っている。
君ら本当に失礼だな。誰が新入生並みの身長だコラ。
「ほら次! 教科書買いに行くよ!」
腹立たしいがどうしようもない。
気分を変えて次に行こう。
「しばらく身長の事は触れない方が良さそうだ」
「うん。後が怖い」
肩を怒らせて叫び歩いて行く私の後ろで、男共がボソリと呟いた。
しばらくじゃなくずっと触れるな馬鹿。
「何、あの檻……?」
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に着くと異様な光景が飛び込んできた。
やたらと派手で凄そうな本が飾ってあった筈のショーウィンドウに大きな鉄の檻が置かれている。
その中で何冊もの本が牙をむき出し暴れ回っているのだ。
思わずと言った感じにハーマイオニーが呟いた。
うん、あの教科書だ。実際に見るとあんな感じなのか……ガラス越しでも近づきたくない。
「えーと『怪物的な怪物の本』……え、これが教科書?」
「本じゃないよ」
普通に近付いた彼女は驚き嫌そうに、しかし興味を隠しきれずに言う。
君は本ならなんでも良いのか……?
彼女の後ろからロンの鋭いツッコミが入ったが、多分耳には入っていないだろう。
「一応本だよ……一応」
私が苦笑いしつつ店に入ると皆もそれに続いた。
そうは言いつつも本だとは認めたくないよね、アレは。
だけど実際本当に本なのだから、しかも指定された教科書なのだから困ったもんである。
……本、本、ってうるさいな。
「ホグワーツの新しい教科書かね?」
私達が入店すると、店長が疲れた様子で近づいてきた。
「あ、はい。欲しいのは――」
「またか! しかも4冊!? あぁもうどいてくれ!」
答えようとアレに目を向けた瞬間、察した彼は悲鳴を上げて本の確保に歩き出した。
可哀想に……ずっとアレの対応をし続けてるんだから嫌にもなるか。
「待って、僕は持ってるから大丈夫です」
「そうか……良かった。いやそれでも3冊か……ちょっと待ってなさい」
そこへ慌ててハリーが引き留める。なんで持ってるんだ?
若干の安堵を見せた店長だったけど、それでも心底嫌そうに向かっていく。
待ってろと言われたし、このまま本と格闘する店長を眺めていよう。
「先に買ってたのかい?」
「いや、ハグリッドが贈ってきたんだ。散々暴れたからベルトで縛り付けてる」
持ってる理由が気になったのか、ロンが意外そうに訊ねた。
あー……そういえばそんなんだったっけ。傍迷惑過ぎるプレゼントな事で。
「困ったわね……アレを縛る様な物は持ってないわ」
確かに。私もすっかり忘れてた。
魔法で縛る事は出来るけど今はまだ夏休み。一応は使っちゃ駄目という事になっている。
私も流石に他の人の目がある中では使えない。
見た感じ本そのものにロックがあるみたいだけど……駄目だな、自力で開けて暴れてるよ。
何の意味があるんだ……根本的に暴れない様に縛るのは必須か。
「流石に店長さんならどうにか出来るんじゃない?」
「……出来てなさそうだけど」
取り扱ってるなら対処も出来るだろう、とハリーが当の店長に視線を向けるが……
うん、苦戦中。ハーマイオニーも不安そうだ。
もっとしっかり魔法を使えばいいのに。あ、捕まえた……頑張れー。
「でもまぁ、背表紙を撫でてあげれば大人しくなるから」
しかし安心したまえ君達、私は知っているのだ。アレを大人しくさせる方法を。
そもそも撫でるのが大変そうだけどね。触れる前に噛まれるかもしれない。
「……何故それを先に言わないのかね?」
と、そこへ店長が捕らえた3匹(?)をベルトで縛り戻って来た。
だけど疲労困憊、恨めしそうに私を見てくる。
ごめんなさい、だって縛るだのなんだの話してて思い出したんだもん……
「いや……知ってるものかと思いまして……」
「知る訳ないだろう! 入荷してから一体何度噛まれたと思う!? 今日だけでもう5回も――あぁっ、やめろ! やめてくれ!」
適当に誤魔化すと店長が爆発してしまった。
本当に大変だったんだな……しかもようやくコツを知ったのに今日で夏休みは終わる。教科書として買いにくる客は殆ど居ないだろう。
そしてその間にも檻の中では大暴れ。千切れたページが舞い踊っている。
今度こそ店長は悲鳴を上げて止めに走って行った。
「もう二度と仕入れるものか! 大人しく出来たとしても、もうごめんだ! 『透明術の透明本』を200冊仕入れた時が最悪だと思ったのに――高い金を出して、結局何処にあるのか見つからず仕舞いだった――」
爆発したついでに過去の怒りまで思い出してしまったらしい。
なにやら相当な恨み言が聞こえて来る。
「とりあえず、他の教科書を揃えてこようか」
「そうね……」
キッチリとベルトで押さえつけられ藻掻く本達をそっと隅に置き、私達は店内を回る事にした。
揃えて戻ってきた頃には店長も戻ってるだろう。
「ハーマイオニー、君、これから1年食べたり眠ったりする予定はあるの?」
教科書を買い終わり歩き出すと、ハリーが信じられないものを見る様に言った。隣ではロンが笑っている。
そう言いたくなるのも分かる。なんせ彼女は教科書を詰め込んだはち切れそうな袋を3つも持っているのだ。
「失礼ね。ちゃんと色々考えてるわよ」
見た所彼女は選択科目を全て履修するつもりだろう。
予想はしてたけど……本当にやっちゃうのか。私には絶対に無理だ。
ちなみにハリーとロンが選んだのは魔法生物飼育学と占い学だ。
私はそこに加えて数占いを追加。ちょっとくらいは頑張ろうと思う。
「無理だけはしないようにね」
科目について相談は受けてないし、彼女なりに考えて選んだ筈だ。
止める気は無い……けど、無理したばかりの私としては忠告をしない訳にはいかない。
やれると思ってもそう上手くいくもんじゃないのだ。
「分かってるわ。一応、明日学校で最終決定をする事になったの。改めてマクゴナガル先生から連絡が来たわ」
しかしなんと、原作とは違ってまだ確定じゃないらしい。どういう事だ……
本来ならお母さんが背を押していた筈なのに。
あ、もしかして私が無理をし過ぎたのを見たから……背を押すだけじゃ駄目なんだと考え直したのかな。
「まぁ止めたとしても、少しずつ自分で学ぶ事は出来るから。無駄にはならないわよ」
しかし彼女は特に不満を見せる事は無く、教科書の入った袋をポンと叩いて笑った。
教科書さえあれば自習が出来ると。なんともまぁ……流石過ぎるな。
「そんな事より、次よ次。私、魔法動物ペットショップに行きたいわ」
今はそれ以上難しい話は無し、と今度は彼女が次の目的地を上げた。
お、遂に猫ちゃん来た。楽しみだ。
「あ、僕も行かなきゃだ。スキャバーズが元気無いんだよ……エジプトの水が合わなかったのかもしれない」
あぁ、ソイツはどうでもいい。
それに、下手に奴の話題に乗って警戒されちゃ困る。だって私って凄く分かりやすいらしいし……
「ハーマイオニー、どんなペットを飼うの?」
「梟が欲しいの。ハリーにはヘドウィグが、ロンにはエロールが居て……アリスはダンブルドア校長の不死鳥が傍に居るじゃない」
なのでさっさと話題を移した。
あれ、最初はそうだったんだっけ? 梟が欲しいのに選ぶくらいに猫が魅力的だったのか。
しかし梟と一緒にされるフォークス……隣に居たら怒ってそうだ。
「家族全員の梟だよ。僕のペットはコイツしか居ない」
「フォークスとはそんな頻繁に会わないけどね……」
ペットさえお下がりだという不満からか、ロンが不貞腐れた様に訂正した。
本当は自分だけの新しいペットが欲しいんだもんね。
一応私も訂正しておこうかな。この夏休みの間だって数える程度しか会ってないし。
ていうか不死鳥ならここに居るよー……色違いの珍しいのが。言えないけど。
なんて事を話しながら到着。
店に入ると咽返る程の獣臭と騒がしい鳴き声がした。
所狭しとケージが並び、壁なんて一切の隙間が無い。
「じゃあ、とりあえず私はその辺の子を見てるね」
「僕も。終わったら声掛けてよ」
とりあえず用があるのはハーマイオニーとロンだけだ。
私はのんびりとケージを眺めていよう。見てるだけでも中々面白そうだし。
そう伝えて歩き出すと、後ろからハリーも付いて来た。
いやー……随分と沢山の生物が居るもんだ。
一般的にペットとして飼われるものだけじゃない。壮観だな。
私なんて食べられちゃいそうな巨大な蛙、甲羅に宝石が散りばめられた亀。オレンジ色の毒カタツムリ……これはいいや、次。
太った白兎なんて、私が顔を覗かせるとポンッとシルクハットに変身してみせた。
あ、パフスケイン……この子も可愛いんだよね。舌はちょっとアレだけど。
こっちは誰かさんと違って真っ当な鼠だ。いや、尻尾で縄跳びし始めた……真っ当ではないな。
「痛っ」
そんな感じでハリーと2人、時間を潰しているとカウンターの方からロンの悲鳴と物音が聞こえた。
「コラッ! クルックシャンクス、駄目!」
次いで店員の魔女の叫び声と、滅茶苦茶に威嚇している猫の声。
「何事?」
「あ、スキャバーズ……ロンも行っちゃった」
一体なんだ、とハリーが音の方向へ顔を向けると同時、鼠が勢いよく店を飛び出して行った。
それを追いかけて酷く慌てたロンも続く。
「よく分からないけど、ひとまずロンと一緒にスキャバーズを追おう」
「そうだね」
これで知らんぷりは無いだろう。流石に一緒に探すくらいはしてやらねば。
という事で鼠探しが始まり、約十分後。
高級箒用具店の外にあるゴミ箱の下で震えているのを発見した。
全く、余計な手間を掛けさせるな。
「見つかったんなら戻ろっか」
「うん。全く、アレは一体なんだったんだ……巨大な猫か小さな虎か……」
多少ペットショップから離れてしまった事だし、さっさと戻ろう。
ハーマイオニーが待ってるかもしれない。
そう促すと、ロンは鼠をポケットにしまい頭をさすった。
頭にクルックシャンクスが着地してきたそうだから、多分爪でやられちゃったんだろう。
あんまり痛そうにしてたら治してあげても……あぁ、魔法は駄目なんだった。じゃあ我慢してくれ。
そうして店の前まで来ると、案の定ハーマイオニーがポツンと待ってくれていた。
しかもその腕には大きなオレンジ色の猫を抱えている。
「……君、あの怪物を買ったのか?」
「この子、素敵でしょう?」
それを見てロンは顔を引き攣らせた。早速小さなトラウマが生まれたようだ。
片やハーマイオニーは嬉しそうに笑っている。ちょっと私にも抱かせてほしい。
「ソイツは僕の頭の皮を剥ぐ所だったんだぞ」
「そんなつもりは無かったのよ。ねぇ、クルックシャンクス」
吸い寄せられていく私の後ろでロンはまだぶつくさ言っているが、無視だ無視。
今はこの可愛い猫を愛でよう。
しかしやたらデカイな……何歳なんだろう。
赤毛でふかふかふわふわ、気の強そうな不機嫌っぽい顔とは裏腹にゴロゴロと甘えてる。
その顔は言葉を選ばずに言うなら、何かにぶつかったみたいにべちゃっと潰れてるけど……それはそれで個性。
「可愛いねぇー……ブチャイクだねぇー……うりうり」
結論、猫は可愛いのだ。
わしゃわしゃと撫でると、私にも甘える様な仕草を見せた。
ああなんて人懐っこい……いや、確かこの子はニーズルとの交配種。私を信頼出来る人物と認識してくれたんだろう。
お猫様に認められた。最高か? 今の私は顔が緩みまくってるかもしれない。
「どっち?」
「両立するんだよ。ブチャかわ」
若干呆れた様なハリーの声に自信を持って返す。
両立してしまうのが猫の……いや動物達の素晴らしい所だ。
「どうでもいいけど、スキャバーズの事はどうしてくれるんだよ。コイツは安静にさせたいんだ、そんなのにウロウロされたら安心出来ないだろ」
そんなゆるゆるな私達を見て、ロンは不機嫌を隠そうともしなかった。
彼には悪いけど、その鼠を気遣うつもりは一切無い。
「大丈夫よ。私は女子寮、あなたは男子寮……お互いちゃんと管理出来れば問題無いわ」
「そうそう。この子はきっととっても頭の良い子だから。言って聞かせれば理解してくれるよ」
だけどよく考えたら、この所為でハーマイオニーとロンは険悪になってしまう。
それは友人として避けたい。というかあんなの胃に穴が空きそうだ。
うん、クルックシャンクスにはちゃんと言い聞かせた方が良いだろう。
変身すれば簡単な意思疎通も出来るし、あの鼠がどういう存在か気付いた上で泳がせてるんだと伝えれば理解してくれる筈。
それで展開が変わる分はどうにか修正していこう。
「猫って凄いな……アリスとハーマイオニーが骨抜きだ」
そうだよ、猫は凄いんだよ。
あぁ……動物もどきが猫だったら、猫になって猫達の輪に入れるんだろうな。しかも意思疎通出来る。天国か。
考えてみればお母さんはそれが出来るのか……羨ましい。
*
そうして買い出しを終えたら漏れ鍋のハリーの部屋に荷物を置き、再度遊びに出かけた。
たっぷり1日使って、漏れ鍋に戻った頃には充足した疲労に包まれていた。
「僕ら、今日はこの宿に泊まるんだ。そしたらハリー、明日は君と一緒に駅まで行けるよ」
そういえば伝えてなかった、とロンはハリーに向き直ってそう言った。
それを聞いたハリーはとても嬉しそう。
「私もそのつもりよ。アリスは……お家に帰っちゃう?」
そしてハーマイオニーも泊まる事にしたらしい。
しかもなんだか切なそうに訊ねてくるものだからもう駄目だ。
帰る選択肢なんて無い。
「……ちょっと急いで荷物を纏めて戻って来る!」
これからウィーズリー家と一緒に夕食だけど、それまでに戻れば良いだろう。
大きな荷物の準備は事前に終わらせて来ている。今日買った物を纏めてトランクに放り込めば大丈夫だ。
念の為に汽車には乗るつもりだったし、困る事も無い。
賑やかで楽しい1日はまだまだ終わらない。
夏休み最終日だというのに、ワクワクは途切れなかった。
【愛の護り】
正式名称は不明。古代から存在する強力な魔法。
古代魔法とは言うが、レガシーで出てきた物とは別。特に何か選ばれた者が使えるという訳では無さそうだ。
誰かを護り救う為に、自らの命を犠牲にする事が条件とされている。
具体的にどんな護りになるのかは分からない。少なくとも作中ではヴォルデモートから護るという意思の為か、彼に関わる事象しか見受けられない。
重要なのは、生き残る術が他にあるにも関わらず自らの意思で死を選ぶという事。
実はヴォルデモートはスネイプの懇願をしっかり聞いてくれており、リリーだけは見逃そうと考えていた。
しかし彼女は「子を差し出せば助かる」という生き残る選択肢を自ら投げ捨て死を選んだ。その為、彼女の犠牲によってハリーが護られる事になった。
物語最終盤、ハリーはそのまま逃げ出す事が出来たにも関わらず、自らの意思でヴォルデモートの死の呪文を受け入れた。
それは自分に宿るヴォルデモートの魂を破壊すると同時に、共に戦う仲間達を守る為でもあった。
その後は仲間達に呪文が放たれても効果を殆ど発揮しなかった。
結果的にハリーは生きていた(生き返った?)が、本人は死ぬ覚悟が出来ていた為に発動したようだ。
ヴォルデモートはハリーの血を取り込む事で、この護りを突破しようと考えた。
実際その通り突破してみせたが、血が繋がった事で命まで繋がってしまった。
予言にあった、お互いがお互いを生かす的な言葉はこれの事。
ヴォルデモートは分霊箱であるハリーの中にある魂の欠片によって生きる。
ハリーもまた、まるで分霊箱の様にヴォルデモートが命を繋ぎ止める。
4巻で彼の復活の詳細を聞いたダンブルドアが勝利を確信したのはこれを察した為である。
そしてその通り、結果的に宿っていたヴォルデモートの魂の欠片だけが破壊された。
死の呪文を受けても血によって魂が繋ぎ止められ、リンボから引き返す事が出来た……という訳である。
一応念の為、リンボとは生と死の狭間、あの世とこの世の境とされている。
ちなみに、最終的にハリーが勝利したのはニワトコの杖の主がハリーだったから。
負けはしないけれど勝てる程の実力が無い……という状況で、杖の所有権の差で勝った。
というか一回死の呪文を受けたのは杖的には負け扱いではないようだ。
殺す為の呪文を受けて生きてるなら、まぁ確かに負けてはいないかもしれないが……
【血の絆】
正式名称は不明。これもまた古代から存在する魔法らしい。
混同してしまいがちだが、愛の護りとはまた別である。こちらはダンブルドアがハリーに掛けた物。
これは愛の護りを掛けた犠牲者の血縁……つまりリリーの姉であるペチュニアの下で生活する間、更なる加護を与える。らしい。
詳細はともかく、愛の護りを更に強化する為の魔法と見て良いだろう。
これによってヴォルデモートはハリーに危害を加える事が不可能となっていた。
元々の愛の護りがどれくらいの物なのかは不明。
ハリーは死の呪文を跳ね返してはいるが……ハリーが仲間達に掛けた護りでは呪文を完全に防ぐ事は出来ず、効果を薄めるというものだった(対象が個人か集団かの違いがあるので比較とするには若干怪しい)
そしてこの魔法には条件があり、ペチュニアがハリーを自ら迎え入れなければならない。
ハリーが彼女の下、家を自分の居場所として認識していなければならない。
そして完全に家を出てしまうか、英国魔法界の成人年齢である17歳を迎えるか、で解除されてしまう。
余談だが、この魔法に関わる事で1つの説がある。
もしシリウスがアズカバンに行かずに残っていたなら確実にハリーを引き取る。そうなっては絶対的な護りの中で育てられない。
だからダンブルドアは彼が無実かもしれないと思いながらも、あえてアズカバンへ見送った……というもの。
ダンブルドアがより冷酷で計算高い人物であるという主張の説であるが、まぁ個人的にはナシ。
【クルックシャンクス】
ハーマイオニーが3年生時から飼い始めた猫。魔法生物ニーズルとの交配種であり、年齢は不明だがオス。
ニーズルは非常に高度な知能を持つ。信頼出来る人物かどうか、もっと言えば怪しい人物を見抜く能力も。そして良き主と出会えば絆を結び守ってくれる。
そんな特徴を受け継いでいる為、彼は一目でペティグリューを看破し執拗に狙っていた。
身体は大きく赤毛、不機嫌且つ若干潰れた様な顔。潰れているとは言うが、ただギュッとなってるだけなので猫好きからすれば普通に可愛い部類だろう。
尻尾はニーズルの特徴が混ざり、先がブラシの様に広がっている。
長年売れ残っていたらしいが、理由は謎。
何かしらを見抜き、気に入った人物にしか懐かなかったとかだろうか。ハーマイオニーに初対面でゴロゴロ甘えていたのは原作通り。
恐らくホグワーツの敷地内を散歩中にシリウスと出会い、以降彼に協力していた。
動物もどきは変身中に他の動物と意思疎通が出来る為、シリウスの狙いを知って手を貸していたのだろう。ネビルの合言葉メモを盗み渡したのも彼である。
ハリー達がシリウスを追い掛けた際はあくまでシリウスに味方し敵対。普通に襲ってきた。
主や主の友人であるにも関わらずである。それだけペティグリューが信頼出来ず排除しなければならない者、逆にシリウスは信頼出来る者と判断したようだ。
もしくは、そうする事こそ主達の為になると判断したのかもしれない。
そんな彼と揉み合い、遂に杖を向けようかと躊躇っている間にルーピンの到着となる。
が、そういった諸々は映画ではカットされている。
その後は普通に仲良くしているようで、よくハリーの膝の上で丸まっている。
そして猫らしく遊び好き。可愛い。
物語終盤、隠れ穴襲撃の際に置いて行かざるを得なくなり、そのまま分霊箱探しの旅になった。
襲撃以降彼がどうなったのか詳細は不明だが、恐らくウィーズリー家が預かっていたと思われる。
物語終了後はちゃんとハーマイオニーと再会、ニーズルの血のお陰でかなり長生きしたそうだ。
ちなみに1つの説があり、それは彼がリリーの飼い猫だったという物。
ハリーが生まれた頃に猫を飼っているという描写があるのだが、ポッター家襲撃時点では居ない。
ある意味極端と言っていい程に、シリウスを信頼しペティグリューに敵意を向ける。ハリーにもよく懐く。
そしてハリーを近所から密かに見守っている、スクイブでありながら騎士団に所属するフィッグ婆さんは猫とニーズルの交配を仕事にしている(当然リリー達と親交があった筈)
おまけに寿命も長いのでおかしくもない。
粗があるのになんだか無駄に説得力がある気がしてしまう説である。
あくまでファンの妄想ではあるのだけども。
【怪物的な怪物の本】
新しく魔法生物飼育学の教授になったハグリッドが面白いと思って指定した教科書。
英語では「The Monster Book of Monsters」となる。
ハグリッドが教科書に選ぶだけあって、情報量は結構な物らしい。
ただしその中身を見るのは困難。背表紙を撫でれば大人しくなる、というのはあまり知られていないかもしれない。
とにかく暴れまわり、下手をすれば指を食い千切られる。
本同士でも喧嘩しており、ロックがあるものの意味は無い。
生徒達は各々ベルト等で縛り押さえつけていた。
本の癖に自らページをバラバラに食い千切っているので、せっかく中を読んでも悲しい事になりそうだ。
映画アズカバンのエンドクレジットに映る忍びの地図に専門の修理工房があるのは有名な話。
あくまでオマケ的な描写だろうけれど、実際何処かで治すのだろう。
以下、余談。
原作ではハリーの誕生日プレゼントを皆が贈ってましたが、ここでは後回しという形にしました。
なんせヘドウィグが自発的にフランスまで受け取りに飛び、死にかけのエロールがエジプトから飛んでくるのです。
しかもエロールは気絶しており、ヘドウィグとハグリッドの送った梟に支えられて飛んでくるというオチ。面白いけど流石に無理がある気がする。
その辺りを次話で書くか描写外で済ませるかは未定です。
こういう日常回みたいなのを増やしたいと思いつつ、それだと話がかなりゆっくりになりそうで悩ましい……なんか前にも同じ様な事を書いた気がする。