シリアスばかりだったからふざけたかった。
そしたらハリーが壊れちゃった。
反省はしない。
それからあっという間に時は過ぎ12月も終わりが見え、休暇まであと少しとなった。
辺りはとっくに雪と氷に覆われ、ホグワーツはクリスマスの準備が始まり出した。
とことん沈み込んでいたハリーはもういつも通りだ。
守護霊の呪文を練習している事がそのまま立ち直る助けになった。
とは言え、精々週に1回程度の練習。その歩みはゆっくりだ。
具体的にはそろそろ盾としてキチンと機能するかなと言った所。
それとは別にニンバスについても吹っ切れたようで、毎日の様にカタログを眺めて悩んでる。
ちなみにクィディッチの練習には学校の箒を使っていて、遅過ぎるだのまともに動かないだの不満タラタラだ。
むしろよくあんな箒を乗りこなせてるもんだけど……
そう、ファイアボルトは未だに届かない。
勿論既にシリウス達がどうやってか購入済み。でも流石は最新最高級、その場で受け渡しにはならなかったそうだ。
結局シリウスの手元に来たのはつい先日。
ハリーが吹っ切って元気になってるのもあってか『ここまで来たらクリスマスに合わせる』と言っていた。
これもまた運命なのかもしれない。
でもって今日は休暇前の最後のホグズミード行きと言う事で、生徒達は大賑わいだ。
私はハーマイオニーとロンと一緒に店を巡って、クリスマス用の買い物やハリーへのお土産を選んでいる。
ハリーは多分……フレッドとジョージから『忍びの地図』を渡されている頃だろう。
「うぇっ……やっぱりこれは駄目。多分吸血鬼用の飴だ」
「なんで分かってて食べちゃったのよ」
まぁそれはともかく。
私達はハニーデュークスの奥まった売り場……『異常な味』コーナーに居る。
どうせなら衝撃的なお土産を、という事だ。
1人で来たって試そうとも思わないコーナーだからこそ、私は私で楽しんでいる。
目に付いた物をなんとなくで買って食べてみるという、場の勢い任せなお遊びだ。
その中で血の味がする飴を舐めてみたけどとんでもない。ちょっぴり後悔。
いや、何かを食べる度に後悔してる気がするけども……そういうコーナーなので仕方ない。
「じゃあこれは? ゴキブリ・ゴソゴソ豆板」
「キショイ」
悪戯っ子な笑顔で最悪なお菓子を突き出してきたロンはバッサリと斬り捨てる。
見せんな。止めろ。
「そんなの絶対嫌だよ」
と、斬り捨てられたロンがしょんぼりすると同時にハリーの声がした。
振り返って見れば晴れやかな顔。待望のホグズミードに来れたからかご機嫌だ。
「ハリー!? どうやってここに!?」
「君、姿現しが出来る様になったの!?」
「違うよ、これだ」
驚くハーマイオニーとロンへ苦笑しながら、ハリーが取り出したのは畳まれた羊皮紙。
おお、実物だ……って危ない危ない。知ってる風な反応しちゃマズイね。
「何それ?」
「フレッドとジョージがくれたんだ。忍びの地図って言う、ホグワーツの抜け道まで描かれた凄い地図さ」
私がとりあえずで訊ねると、ハリーは心躍る様に説明を始めた。
対し、詳しく聞いていく程にロンは不満気になり、ハーマイオニーは不安そうになっていく。
「兄貴達、なんで弟の僕に今まで教えてもくれなかったんだ」
「抜け道まで分かるなんて……先生に伝えた方が良いわ。ブラックはそこを通って城に入ってるかもしれない」
ぶつくさ言っているロンはともかく、ハーマイオニーは一瞬で地図の重要性を理解した。
既に城に入って騒ぎを起こしてるし、抜け道なんて見過ごせる物ではない。
実際は誰かさんが城に連れ込んで匿ってるんだけども。
「そんな筈はないよ。7つある道の内、4つはフィルチが知ってる。残ってるのは崩れてる道と暴れ柳の下と、今僕が通って来たこの店の地下だ」
そして何故か呑気なハリーはキッパリとそれを否定した。本当にどうしてそんなに呑気なんだ……
ていうか崩れた道なんて魔法でどうにかなってしまうだろうに。ならないくらいに酷く崩れてるのか?
でもまぁ、ここで私も警告するのは止めておこう。
早々に地図を手放したり回収されても困る。
「じゃあここの地下の道を知られてたら……」
「それは大丈夫じゃないかな。だって今のホグズミードは夕方以降は吸魂鬼達のパレードだもん」
という訳で、私は一旦ハリーの援護をしておこう。
尚も不安そうなハーマイオニーへ、あえて大丈夫だと笑って見せる。
「逃亡中のシリウスは杖どころか碌に何も持ってない。賑わう店に忍び込むのは大変だし、どうにか吸魂鬼をやり過ごして夜の店に入っても誰かが気付くよ」
「そりゃそうだけど……」
少しでも説得力がある様に、適当にそれっぽい事を並べてみた。
実際動物もどきの事を知らなければ無理があるだろう。
お陰でハーマイオニーも納得しそうになっている。
うん、この様子ならもう話をズラしてやればいいかな。
「誰か気付くと言えば……ハリー、透明マントはある? シリウスの前に先生とか事情を知ってる人に見られたら駄目だよ」
こっちもこっちで気になっていた事だ。
許可されてない上にシリウスの件で警戒されているのだから、ハリーがここに居る事を知られるのはマズイ。
大勢の生徒の目があるから、何時誰に見られるか分からない。
「……無い」
「お馬鹿」
やはり謎に呑気なハリーだった。
しょんぼりするだけマシか。マズイという事だけは理解したみたいだし。
ていうかマントどころかまともな防寒着さえ……本当に馬鹿?
「まぁまぁ。ハリー、店の中を見て回ろう」
「ちょっ――」
「良いじゃないかハーマイオニー。もうクリスマスなんだぜ? ハリーだって楽しまなきゃ!」
そこで気分を盛り上げようとしたのか、ロンが笑顔でハリーの腕を掴んだ。
流石に黙っていられなかったのかハーマイオニーが止めようとするも、振り返りもせずアッサリ歩き去っていった。
「もうっ、お気楽なんだから……」
しかし彼女も形だけの反対だったのか、困った様に呟くだけで追い掛けはしなかった。
彼女だってハリーがどれだけ羨んでいたかくらいは理解してる。その上、別件とは言え沈み込んでいた彼を近くで見ていた。
あえて苦しめたいだなんて思う筈も無いのだ。
「ハリーの事、先生に言い付ける?」
「そんな事しないわよ。でも不安だわ……アリスは不安じゃないの?」
一応念の為に確認してみたけど、やはり秘密にしてくれるらしい。
それでも不安は当然の事。同じく呑気してる私が気になったのか、逆に確認をされた。
「シリウスの事はともかくとして……ハリーが自分の行動をちゃんと理解してるのかなって言う不安はあるかな」
「どういう事?」
色々と事情を知っている私からすれば不安なんて全く無い。
でもそれはまだ説明出来ないので、そこは適当にはぐらかしつつまたもや話をすり替えた。
「一昨年の校則破りの話と同じだよ。理解して動いてるならそれはそれでいいけど……」
「今回に限っては全然良くない気がするわ……」
これは原作でもルーピン先生にお説教される事だ。
皆が心配してる事はハリー自身分かってる。だけどそれを無下にして抜け出して、自分から危険(と思われている)中へ飛び込んでる。
抑圧されてきた所に降って湧いた機会だ、我慢なんてしていられないというのも仕方ないかもしれない。
でもそれを本人が理解しているのかどうか……
「大丈夫。吸魂鬼もそうだけど、お爺様達も居るから。城に入られようがハリーは護るよ」
まぁなんにせよ、ハーマイオニーの不安は出来るだけ取り除いてあげよう。
お爺様の名前を出す事程、安心に繋がる事も無い。そう信じて、私はまたまた適当に返しつつハリーとロンを追い掛けた。
*
なんだかんだ一緒にお菓子を眺めていくつか買った後、僕達は外へ出た。
初めて来たホグズミードはまるでクリスマスカードそのもの。雪深く、沢山の飾りが目を引く。
この光景だけでなんだか楽しくなってくる。
「さ、寒い……」
でも困った事に、あまりにも寒過ぎた。
村を案内してもらおうと歩き出してすぐ。あっという間に吹雪みたいに荒れていき、僕はまともに歩けない程に震えてしまった。
「なんで外に出るってのにコートを着て来なかったの?」
「出るつもりも無かった所に地図を渡されたから……防寒なんて考えなかったんだ」
温かそうなコートでしっかり厚着してるアリスが心底呆れた声で、ジトリと吹雪並みに冷たい眼を向けてきた。
仕方ないじゃないか……校内でブラついてたら地図を貰って、目の前に抜け道があって、そのまま来ちゃったんだから。
「でもこれは僕らだって堪んないよ。『三本の箒』に行ってバタービールを飲もう」
「「大賛成」」
庇ってくれたのか、ロンがなにやら提案するとアリスとハーマイオニーが声を揃えた。
よく分からないけど良さそうだ。きっと美味しいんだろうな。
その『三本の箒』とやらは人でごった返していて、うるさくて、そして暖かかった。
そんな中で飲み物を運ぶ女性へ、自然と目が吸い寄せられる。
小粋な雰囲気で、まさに曲線美と言うべきスタイル。如何にも大人の女性って感じで、僕の身近には居ないタイプだ。
ジッと見つめていると、隣でロンが『マダム・ロスメルタ』だと教えてくれた。
彼も見惚れている気がする。仕方ないよね、うん。
「バタービールを買ってくるよ」
そしてロンはなんだか赤い顔でそう言って歩いて行った。
うん、仕方ないよね。分かるよロン。
そんな僕らには気付かずにいてくれたのか、アリスとハーマイオニーはお礼を言いつつコートを脱ぎながら奥のテーブルに向かっていく。
席に着いて5分程経つと、ロンが大ジョッキを4つ抱えてきた。随分ゆっくりだったな……
ジョッキを受け取ると思わず唾を飲み込んだ。
凄く美味しそうだ。泡立っていて熱くて……
「メリー・クリスマス!」
ロンの号令で揃ってジョッキを挙げ、一気に呷った。
僕はもう目を見開いた。こんなに美味しいものは今まで飲んだ事が無い。体の芯から隅々まで温まる。
そうして団欒が始まった――と思いきや。
「まずい、ハリー隠れて! 先生達だ……」
僕はロンにテーブルの下へ押し込まれた。
ドアが開いて吹き込んだ冷たい風の所為じゃなく、ヒヤッとした。
声からしてマクゴナガル先生とフリットウィック先生、ハグリッド、そしてファッジ魔法省大臣だ。
テーブルの下から見える皆の脚は(フリットウィック先生は首から下だけど)こっちに近づいてる。
どうやらすぐ傍のテーブルに着くようだ。なんでよりにもよってこんな近くに……
たっぷり時間を掛けた誰かさんとは違って、注文はすぐに届けられたらしい。
そして大臣の誘いでマダム・ロスメルタも席に着いて一緒に会話を始めた。
「それで、大臣。どうしてこんな片田舎へ?」
「他でもない、シリウス・ブラックの件だ」
ともかく、先生達がどれくらいのんびりするかだ。
城の正面から帰るのは無理だろうし、同じ抜け道を戻らないと……ハニーデュークスが閉まる前に……
そんな事を考えながら姿勢を変えた僕は、危うく声を上げそうになった。
耐えられて本当に良かった。色んな意味で終わる所だった。
何故なら僕の目の前には――アリスの眩しい太ももとその奥、可愛らしい布が。
運の良い事に……じゃない、悪い事に、店が暖かいからコートを脱いでしまっている。
おまけに何故かスカートを短くしてるから、そりゃテーブルに潜れば見えるよね。
ていうかなんでこんな寒い時期に、そんな短いスカートで……しかも生足で……アリスは、って言うか女子は何を考えてるんだ。
全く、こんなの僕は悪くないじゃないか。仕方ない。
「吸魂鬼がパブの中を――商売上がったりで――」
「私だって――用心に越した事は無い――」
「ダンブルドアは校内に連中を入れない――」
「あんな恐ろしいものが――教育が出来ません――」
「我々を護る為に――ブラックの――」
傍のテーブルで先生達が何か話してるけど、そんなのは耳に入らない。
ロン達が黙っているのは多分、聞き耳を立ててるんだろう。
でも僕の意識はもう目の前に釘付けだ。
スカートは短くなったけど、アリスもいい加減学んでしまったのか……残念ながら最近はあまりパンチラしなくなっていた。
なのに急にこれだ。というかこんな近くでなんて今までにも無かった。
本当にこのまま見ていて良いんだろうか。良いか。
太ももは眩しいくらいに白くて、スベスベしてそうで、ぷにぷにしてそうで、細いのに何故かムチッとしてる気がする。
その間にある薄水色の布。フリルなのかなんなのか小さな装飾みたいなのがちょっぴり見える。
大人っぽいとは違うけどお洒落だ。去年とかに見えてた、縞々とか水玉とかも良かったけど……これはこれで。
しかし流石のアリスだって大きく脚を広げて座りはしないか。クソ……もう少しで良いのに……
「でも私にはまだ信じられない――シリウス・ブラックだけは闇に加担しないと――彼が学生だった時――」
「大量殺人なんて話の半分でしか――彼はそれ以上に最悪の事を――」
「彼の1番の親友は――」
「えぇ覚えています。ここにはしょっちゅう――彼とジェームズ・ポッターは――」
「あの2人はずば抜けて賢かった――あんなに手を焼かされた生徒も居なかった――」
「皆、彼らが兄弟なんじゃないかと思っただろう――」
「ポッターは誰よりもブラックを――ハリーのゴッドファーザーに――こんな事を知ったらどんな辛い思いを――」
なんか呼ばれた気がする。多分気の所為だ。
あ、アリスの脚が動いて……おぉ……バッチリだ。さっきよりも見えるようになった。
ピッチリ食い込むというか張り付くというか、窮屈そうに見えるのは僕が男だからか。
男と違って何も無い筈なのに、確かに何かがそこにある様に見える。
いや、何かはある筈なんだ。どれだけ目を凝らしても分からないけど、この更に奥は一体どうなって……
しかしどうして細いのにこんなにムチムチしてる様に見えるんだろう。不思議だ。
なんだか良い匂いがする気がしてしまう。バタービールの匂いしかしないってのに。
無意識に手を伸ばそうとしてしまう。それでどうしようって言うんだ僕は。
もう頭が沸騰しそうだ。クラクラしてくる。
頭……そうだ、ここに頭を突っ込んだら守護霊も出せるんじゃなかろうか。
いやいや、それはもうただの変態だ。何を馬鹿な事を考えてるんだ。
「夫妻は狙われていると――スパイから情報を聞いて――ダンブルドアは『忠誠の術』を」
「恐ろしく複雑な術で――秘密を封じ込める――『秘密の守人』となって――」
「ダンブルドアは誰かが裏切って情報を流していると――」
「そして術を掛けてから1週間も経たない内に――」
「裏切ったのに旗頭が居なくなった――逃げる他無かった――」
布の皺1つ1つまで目に焼き付けんばかりに観察していたものの、流石に狭くて姿勢が苦しくなってきた。
モゾモゾと動いてふと視線をズラした先には……ハーマイオニー。
そうだった。アリスの隣には彼女も居る。
同じ様にスカートを短くしていて、同じく眩しい太ももが曝け出されている。
アリスよりも若干脚を閉じてるけど、それでも隙間から白い布がチラリと見える。
なんてこった。こんな新しい景色が見えるなんて。
スリザリンの誰だかにスカートを捲られた時を思い出す。あれは素晴らしかった……
誰かさんと違って普段絶対に見えないから、これはこれで目を逸らせない。貴重過ぎる。
「クソッたれのアホンダラの裏切者め!」
「しっ……お黙りなさいハグリッド」
「奴に最後に会ったのは俺に違いねぇ――いつもの空飛ぶバイクで――奴が守人だとは知らんかった――真っ青になって震えて――」
「俺は殺人者の裏切者を慰めたんだ!」
「ハグリッド! お願いだから黙りなさい!」
「奴が取り乱してた理由が――もう必要無いからバイクを使えと――おかしいとその時に気付くべきだった――」
新たな景色を堪能していると、ハグリッドの大声が聞こえてビックリした。
マクゴナガル先生が怒っているけど、全く聞かず吐き出す様に喋り続ける。
先生達は何の話をしてたんだっけ? ブラックがどうたらこうたら……えーっと……
って、ハーマイオニーの姿勢が……より聞き耳を立てようと身を乗り出す様にしたのか、脚が動いてパンツがバッチリ見え……あ。
クソ、やっぱりアリスとは違う。すぐにさっきと同じくらいまで脚を閉じられてしまった。
でもこの一瞬でしっかり目に焼き付けたぞ。
「奴を見つけたのはピーター・ペティグリューだった――ブラックが守人だと知っていた彼は――」
「いつもあの2人にくっついていた――彼らを英雄の様に崇めていた子で――」
「ペティグリューは英雄として死んだ――木端微塵に吹っ飛ばされて――」
おっと、アリスの姿勢がまた変わってる。これは中々……
もう少しくらい近づいても良いんじゃないか?
そうだ。どうせバレたら終わりだし、バレない前提で行こう。
あぁ、凄いぞ。ハッキリクッキリバッチリだ。
こんなに素晴らしい景色を眺められるなんて。ホグズミードに来て良かった。
「おーい、ハリー? いつまで隠れてるんだ、もう先生達は行ったぜ」
「はっ……そうか、僕は隠れてたんだった」
ロンに言われるまで、先生達が店を出た事に気付かなかった。
なんだかとても濃密な時間だった気がする。話は全く聞いてなかった。
残念だけどここまでか。声を掛けられてもテーブルの下に居座ってちゃ怪しまれる。
名残惜しくも、僕はノロノロと這い上がって椅子に戻った。
はぁ……本当にとんでもない時間だった。
「随分ボーっとしてるけど……まぁ仕方ないか、あんな話聞いたんじゃ」
「そうね……ハリー、あまり思い詰めないでね」
呆ける僕を見て、ロンとハーマイオニーが物凄く気を遣った様な表情になる。
何が何やら分からない。
「……ごめん、何の話?」
「「「はぁ?」」」
素直に聞いてみると、3人揃って驚きと呆れの混ざった声を返された。
「え、聞いてなかったの? あんな近くで重大な話されてて?」
「えーっと、うん……」
「聞こえなかった訳ないでしょう? 何してたのよ」
「いやぁ……まぁ、その……」
アリスとハーマイオニーに詰められても、思い返されるのは太ももとパンツだけだ。
とてもじゃないけど顔を見れない。
なんか今更になって罪悪感が……
でも謝る事は出来ない。何をしてたかなんて、口が裂けても言えやしない。言ったら殺される。
「いい? 掻い摘んで話すから今度こそ聞きなさい」
ともかく、本当に重要な話だったんだろう。ハーマイオニーがわざわざ話を纏めつつ説明してくれた。
それを聞いて僕は自分がどれだけ馬鹿な事をしていたのかと自己嫌悪した。
そんな話を聞き流してパンツに夢中だったなんて……どうかしてる。どうかしてた。
まさかシリウス・ブラックが僕のパパとそんな関係だったなんて。
その上で裏切って……駄目だ、頭がグチャグチャだ。
ちょっとさっきまでの光景を思い出して落ち着こう。いや落ち着ける訳無いじゃないか。
「聞かせておいてなんだけど、さっき言った通りあまり思い詰めないでね」
「うん……」
もう一度、ハーマイオニーが気遣ってくれたけど返事を返すだけで精一杯だった。
色んな意味で混乱してる。
でも、そりゃハグリッドも叫ぶよね……
そういえば、そこだけは大声だったから一応聞いてたけど、どうしてマクゴナガル先生は怒ってたんだろう。
大勢居る場で声を荒げた事に対する叱り方じゃなかった気がする。なんだか不機嫌な感じというか……
いや、まともに話を聞いてなかった僕に判断出来る事じゃないか。
なんにせよ今日はもう帰ろう。
そうして4人で荒れた大雪の中をトボトボ歩いて行くと、ロンが隣にすり寄って来た。
「ハリー」
「何?」
気遣う様な表情でも声でもなく、あえて楽しそうに振舞ってくれている。
それが分かったから普通に応える事が出来た。
「後で詳しく教えろよな」
「勿論さ、親友」
そして全てお見通しだった。流石だ、ロン。
【忍びの地図】
マローダーズ・マップ。ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングスら『マローダーズ』が作ったホグワーツの地図。
合わせてついでに説明しておくと、彼らの名前はそれぞれの変身に由来し「月」「鼠の尻尾」「肉球」「枝角」となる。しかしプロングスについてはしっくりこない人も少なくないらしい?
ちなみに名前を並べる順番は決まっているようで、これは死亡する逆順となっている。
話を戻して。
この地図は白紙の羊皮紙に偽装されており、杖で軽く叩きながら「我、ここに誓う。我、良からぬ事を企む者なり」と唱えると地図が現れる。消す時は「いたずら完了」と唱える。
英語では「I solemnly swear that I am up to no good.」と「Mischief managed.」になる。
ホグワーツの教室、廊下、秘密の通路、その隅々までほぼ全てを明らかにした魔法の地図で、便利なんてもんじゃない途轍もない逸品。
おまけにホムンクルスの呪文とか言う高度な魔法により、敷地内の人物を名前付きで漏れ無くリアルタイムで追跡可能。それどころかゴーストやピーブズ、動物まで識別しているらしい。
ただし同名の場合は区別が付かなくなる(〇〇ジュニア、シニア等は省略される)
人物は点で描かれるが、場合によっては人型になったりする。
抜け道の所に行けば、そこで必要な事を教える為に吹き出しが出て来たりする。
映画版では点ではなく足跡が動いている。
残念ながらホムンクルスの呪文については詳細が無い為、説明不可能。
ついでにもう1つ魔法が掛けられている。
敵対していたスネイプに奪われた時を考えていたのか、彼が暴こうとすると侮辱する言葉が出て来るのだが……
スネイプが教授になれた事に驚いていたので、設定された言葉ではなく、肖像画の様に4人の知性と記憶を与えたのかもしれない?
全く持って意味不明な程に優秀である。
彼らは夜な夜な徘徊し、動物もどきを駆使して詳細を記していった。
体の大きなジェームズとシリウスはともかく、鼠のペティグリューはさぞ活躍した事だろう。
自由に変身出来ないルーピンはどうしていたのか分からないが、透明マントも使っていたそうなのでそっちの担当だったのかもしれない。
女子トイレやシャワールーム等も記されているだろうと考えると、中々にやってる奴らである。
秘密の部屋や必要の部屋は載っていない。
4寮はどうなのかハッキリしていないが、城中を隈なく探索した彼らが他寮を見ようとしないとも思えないので、どうにか侵入したのかもしれない。
ハリーがマルフォイを監視していた際、マルフォイが地図から消える(必要の部屋に入った)事に気付いて話が進む。
寮が描かれていないなら消えるのはおかしな事では無い為、逆説的に寮も把握出来ると考えて良いだろう。
最終学年の時にフィルチに没収された事、動物もどき前提の手段である事から、この地図はほんの2年程度で作られた事になる。
まぁそれ以前から透明マントで動いていた可能性は充分にあるが。
後にフレッドとジョージが盗み出したが、なんと1年生の時。恐ろしい双子である。
ただし地図の起動の仕方が分からず、活用し始めたのはもっと後になる。いつどうやって起動に漕ぎ着けたのかは曖昧。地図が自ら手掛かりをくれたとかなんとか。
そうしてハリーの助けになるだろう、と譲った。
以降は物語としても欠かす事の出来ない重要な道具として使われた。
卒業後はもう使い道も無いが、それでもハリーは手元に残していたようだ。
呪いの子では、この地図を使ってアルバスとスコーピウスの監視をしろとマクゴナガルに脅迫した。
渋々受け取ったマクゴナガルは見なかった事にして流した。
最終的には子に受け継がれたかもしれない。
余談だが英名の「Marauder's Map」だと、マローダーの地図となり個人の印象になる。
正しく書くなら「Marauders' Map」になるらしい。これならマローダーズの地図だとか。
原作者としては、ハリーに情報を与え過ぎるからとこの地図の扱いに悩んだそうだ。
それでも終盤でハリーが地図のジニーの点を眺めているシーンは好きらしい。
【ハニーデュークスのお菓子】
数が多過ぎて解説のしようが無い。
普通に美味しそうな物から変な物まで様々。
とりあえず今回上げた物で言うと……
血の味がするペロペロキャンディはそのまんま。ただし本当に吸血鬼用なのかは分からない。
ゴキブリ・ゴソゴソ豆板は名前から想像出来る通り、ゴキブリの姿をしたピーナッツか何かのお菓子らしい。
これは現実でもジョークグッズとして売られているらしい。食べたくないけど一応食べられる。
【ディセンディウム】
ホグワーツの抜け道の1つ、隻眼の魔女の像のコブに使う呪文。
合言葉かと思いきや普通に呪文らしい。
ディセンドと同じく降下させる効果。
像は腰の曲がった老婆で、コブとやらは背中の何かと思われる。
唱えるとコブに割れ目が出来、どうにか潜り込むと滑り台の様に滑って地下の洞窟に着く。
何を降下させて道が開けているのかは分からない。
そのまま洞窟を進むと石段があり、その更に先の天井に扉があり、ハニーデュークスの地下室に入れる。
具体的な距離はともかく、ハリーの体感では大体1時間程歩いた。
恐らく元から何かしらの目的で洞窟に繋がる地下扉が作られていて、そこに後から誰かが作った城の抜け道が繋がったのだろう。