ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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第7話 お説教

「まさか!」

 

 夕食の時になって、ようやくハリーは何があったのかを語った。

 ステーキ・キドニーパイを食べようとしていたロンは、何の為に口を開けたのかを忘れて叫んだ。

 

「シーカーだって? でも1年生は絶対ダメだって……なら君は最年少の寮代表選手だよ。ここ何年来かな……」

 

「100年ぶりだって。ウッドがそう言ってたよ」

 

「ウッドって?」

 

 パイの事を忘れたロンとは対照的に、掻き込む様に食べているハリーがモゴモゴと返した。

 ウッド、というのが誰なのか知らないので、私はとりあえず聞いてみた。なんか聞き覚えはあるんだけど……

 

「オリバー・ウッド。グリフィンドールチームのキャプテンでキーパーだよ」

 

「へー……ロン、パイが落ちるよ」

 

「おっと」

 

 あーそうだ、そうだった。よくクィディッチ狂とか言われてるキャラだ。

 

 答えてくれたロンのパイがとうとう落ちそうになっていたから、流石に教えてあげた。

 割と食いしん坊な彼が食べる事を忘れるなんて、相当に驚いてるんだろうな。 

 

「僕、マクゴナガル先生がフリットウィック先生にウッドを借してくれって言うから……木の事を言ってて僕を叩く棒でも借りるのかと思ったよ。ウッドは人間だった」

 

「ぶっ、げほ」

 

 ハリーが至極真面目にそんな事を言うものだから、私は思わず食べてる物を吹き出しかけた。いや確かにウッドだけどさ。

 

「うわ、汚っ」

 

「失礼な」

 

 ごめんて。そんなに飛んでないでしょ。

 

 しかしまぁ、厳格なマクゴナガル先生が授業中に生徒を連れだして、ルールを曲げてシーカーに抜擢する。ましてや箒までプレゼントする(予定)とは。

 そういう所を考えると、先生もまたグリフィンドール生だったと納得だ。ルールを無視して突っ走る節があるのがグリフィンドール生だものね。

 

 そんな事を考えながら杖を一振りしてとりあえず綺麗にしてあげると、足早に近づいて来る人達が居た。

 

「聞いたぜ、俺達も選手だ」

 

「揃ってビーターだ。今年のクィディッチ・カップは頂きだぜ」

 

 双子のウィーズリーがハリーの背後に立ち、肩に手を乗せ顔を寄せ、小声でそう言った。

 まだ秘密にしておきたいから人に聞かせたくないんだろう。

 

 しかし……相変わらずそっくりで見た目だけじゃどっちがどっちだか分からない。

 喋り方的に、先がジョージで後がフレッドだと思うけど。

 

「今年は抜群のチームになりそうだな」

 

「ウッドときたら小躍りしてたぜ。ハリー、君はよっぽど凄いんだな」

 

「凄いと言えば、アリス。君も相当乗れるらしいな。ロンが言ってたよ」

 

「チェイサーとかどうだい? 来年の君にその気があれば、だけどな」

 

 交互に喋るな、混乱する。

 ていうかロンは何言ってるんだ。確かに今日の飛行訓練の終盤、一緒に好き放題飛んでたけどさ。

 私に直接言わずに、他所で褒めてたのか……へー?

 

「ごほんっ」

 

 ニヤニヤと見てみると、ロンは咳払いをしてそっぽを向いた。ちょっと顔が赤い。

 

「まぁ、考えてみるよ」

 

 ともかく私の選手の話か。それはもうこう答えるしかない。

 嫌では無いけど、そしたら本来のメンバーの席を奪う形になる。それはちょっとなぁ……

 

「そうか、オッケー」

 

「まぁどっちにしろ、試験受けて補欠からになるだろうけどな」

 

「じゃあな、俺達もう行かなきゃ。リーが秘密の抜け穴を見つけたって言うんだ」

 

「それって俺達が最初の週に見つけちまったヤツだと思うけどね。じゃ、またな」

 

 私の答えを聞くと、サッパリした態度で去っていった。

 交互に喋るのはアレだけど、会話のテンポが良くて楽しい人達だ。

 ロンと親しくしてるお陰なのか、私もやたらと可愛がられている……気がする。悪く無い気分だ。

 

 

 

「随分とご機嫌ね」

 

 入れ違いに今度はハーマイオニーがやってきた。言葉とは裏腹に随分と不機嫌だ。

 私に対しての言葉じゃない。ハリーが先生の言い付けを無視したのに、結果的に良い思いをしている……というのが納得いかないらしい。

 まぁ……うん、分からなくはない。

 

「何の用だよ?」

 

「実力を認められたんだ、そりゃご機嫌にもなるよ」

 

 すると水を差すなと言わんばかりに、ロンとハリーは顔を顰めた。

 まぁ、説教どころか大抜擢じゃあ……やった事を反省出来ないのも仕方ないと思うけどね。マクゴナガル先生、ちゃんと説教してあげてよ。

 て、そうだ私も言わせてもらわなきゃ。

 

「ハリー、言い忘れてたけど10点減点されたよ。ついでにマルフォイも。せっかく私が稼いだのにね……別に点稼ぎにネビルを助けた訳じゃないけどさ。とにかく、そこは反省してね」

 

「う……そ、そうだったんだ。でも……うん、ごめん」

 

 ご機嫌だったのがまたしても萎れていった。

 何か言い返したかったみたいだけど、飲み込んで謝罪してくれた。

 

「別に良いじゃないか、ハリーがクィディッチで勝てば10点なんてどうにでもなるよ」

 

 片やロンは全く反省は無い。いや今回に関しては、彼は反省する事無いんだけどさ。

 全然気にも留めていないってのはちょっと間違ってるかな。

 うーん……どういう風に言ったらいいのやら。

 

「そういう話じゃ――」

 

「そういう話じゃないでしょ! 全く、後でどうにかすれば何をしても良いとでも!?」

 

「――ない……けど。うん、その通り。でもちょっと落ち着こう、ハーマイオニー」

 

 とりあえず口を開いたら、同じ事をハーマイオニーが叫んだ。

 まさしくそれを言いたかったんだけど、そんなに叫ばなくても。

 

 そもそも君は教師じゃない、同じ歳の生徒なんだ。

 頭ごなしに怒鳴りつけても伝わってはくれない。その相手がロンの様な性格なら尚更。

 

「全く、ここじゃ落ち着いて食べる事も出来ないんですかね? 行こうハリー」

 

「う、うん」

 

 案の定、嫌悪感を丸出しにしたロンはハリーを連れて去って行った。

 ハリーでさえも、やはり彼女の言葉には嫌そうな顔をしていたのだからどうしようもない。

 伝わらないどころか、最早聞いても貰えない。

 

「ちょっと――もう!」

 

 追い掛けても同じだと理解したのか、ハーマイオニーは余計不機嫌になって席に座った。

 

「だから落ち着こうって言ったのに」

 

「どうして……私は間違ってない筈よ。なんでなのよ……」

 

 間違ってはいないけども、言い方ってものがある。

 そこはやはりまだまだ子供って事なんだろうな。まぁ大人だってそれが出来るとは限らないしね。

 私だって出来ると自信を持って言える事じゃない。

 

「アリスだったら、きっと言い聞かせられたんでしょうね……ズルイわ」

 

 しょんぼり項垂れて、ポツポツと呟いた。いやいや、そんな自信は無いんだって。ていうかズルイって何だろう。

 しかもなんだか泣きそうにも見える。困った……どう言葉を掛けてあげれば良いかな。

 

「あっ、ごめんなさい……でも本当に……」

 

 すぐに謝ってきた辺り、悪い感情だと自覚してるみたいだけど……うーん?

 ズルイって言葉から察するに、自分で言うのはアレだけど私に対する嫉妬……だよね。

 

 仲良くしようとして出来ないのに、私は輪に入ってる。知識を得ても先行して学んでいた私に届かない。

 私が居る所為で原作以上に苦しめてしまってるのかもしれない。

 私だって彼女に嫉妬してる所はあるんだけどな……

 

 正直、嫉妬なんて昔から散々向けられてきた。優秀な美少女なんだから当然だろう。

 ……まぁ冗談はともかく、いくらでも開き直ってやれるのだ。友達未満のその他大勢が相手なら。

 

 でも彼女はそうじゃない。既に私の友達だ。どうしたものか……

 

 

 そうして……悩む私と、落ち込んでしまったハーマイオニーとで並び、モソモソと食事を続けた。

 この時ばかりは、今日この後に何が起こるのかを忘れていた。

 

 それを思い出したのは、食事を終えて寮に戻る途中にハリーとロンに会った時だった。

 

 

 

 

 

 

「決闘? これまた物騒な事をするね」

 

 ヤバイ忘れてた、という内心の焦りを隠して平静を取り繕う。

 

 廊下を歩きながらだけど、この会話にハーマイオニーは口を挟まないだろう。

 何故なら彼女は私のしばらく後ろをノロノロと歩いているからだ。どうにもあの場だけで解決は出来そうになかった。

 

「ああ、今日の深夜、トロフィー室でハリーとマルフォイがやるんだ。僕は介添人さ」

 

「介添人って……ハリー死んじゃうの?」

 

 介添人とは、つまり世話人。いや、決闘に関しては意味は変わり……死んだら代わりに戦う人の事、らしい。死んだらそこで決着なのでは……?

 ともかく、たかが11歳の決闘ごっこで用意する物じゃない。いや、ごっこだからこそなのかな?

 

「やっぱり危険なんじゃないか!? アリスだってこう言ってるよ!」

 

 私がクスクスと笑っていると、ハリーは顔色を悪くしてロンに向き直った。

 あー……分からないまま、ロンとマルフォイに言いくるめられたんだろうな。実はハリーをハメる仲間なんじゃないのか?

 

「大丈夫だって。本格的な決闘じゃない、君とマルフォイだったら精々火花をぶつけ合う程度だよ。怪我をする事も無いだろうさ」

 

 それの何処が決闘なのやら。まぁ実際やるとしたら、今はまだそんなもんだろう。2年生時の2人でさえ大した戦いにならないのだから。

 

「じゃあなんで決闘なんて持ちかけて来たんだって話だけど……まぁいいか。頑張ってね」

 

「……てっきり止めるかと思ってた」

 

 なんにせよこれに関しては私はノータッチ。見送るだけにさせてもらおうかな。

 て、それなら忘れてても問題無かったじゃん。無駄に焦っちゃったよ。

 

 そして私の言葉にハリーは驚いた様にこちらを見てくる。

 おいおい、そこに反応するのか。わざとヒントを出してやったってのに。気付け気付けー……いや気付いたら話が進まないか。

 

「私が? んー、確かに止めるべきだろうけど……そんなのつまんないじゃん。先生にも言わないから安心してよ」

 

 物語的な理由は確かにあるけど、それを抜きにしても止める事はしない。

 校則違反がなんだ。それに、フレッドとジョージの起こす騒ぎを見て楽しむのは良くてこれは駄目って言うのもおかしな話だ。

 

「君って最高だね」

 

「でしょう? なんなら私がマルフォイをぶっ飛ばしてあげようか? 決闘ならなんでか物凄く厳しく教え込まれてるから、ボッコボコに叩きのめして――」

 

 ロンの言葉に、私は自信たっぷりに杖を取り出し手の中でクルクルと弄んだ。

 私もせめて1発でいいからアイツを痛い目に遭わせてやりたいものだ。

 

 しかしまぁ……明らかにハーマイオニーと比較しての言葉だな。こういう扱いの差も彼女を苦しめてしまうのだろうか。

 

「いや、いい。是非とも見たいけど、絶対ダメな気がする」

 

「あら残念」

 

 私の相当な自信を見たからか、ロンは若干引いていた。

 どれくらいの実力なのかは知らない筈だけど、中々に評価してくれているらしい。

 

「まぁどっちにしろ、私は深夜徘徊なんて出来ないけどね。そんなんで退学とかは無いけど、流石にちょっと……何を言われるか怖い。無理」

 

「あぁ……そりゃあ、うん」

 

 本当に残念ながら、基本的に深夜のイベントはスルーしかない。眠いのもそうだけど、別の理由がある。

 ダンブルドアの名前を背負って規則破りは、万が一の時に批難の声が大きそうだ。リスクがあるし、何よりマクゴナガル先生の説教がとんでもない事になるだろう。

 

 あ、でもみぞの鏡のイベントはちょっと行きたいかな……透明マントがあって、お爺様も分かった上でのイベントなら大丈夫か。頑張って起きよう。

 

 

「杖を振っても何も起こらなかったらどうしよう……」

 

「杖なんか捨てちゃえ。鼻にパンチを食らわせろ」

 

 私が杖を抜いたのを見て思ったのか、ハリーは不安そうに呟いた。

 そりゃまともに呪文も習ってないんだから当たり前ではある。

 

 それに対し、ロンは魔法使いとは思えないセリフを返した。

 しかしそれもまた戦い。充分にアリだろう。

 

「その通り。魔法使いだからって、杖だけで戦わなきゃいけない訳じゃないもの。殴って蹴ってぶん投げちゃえ」

 

 決闘じゃそこまでやらないだろうけど、命を懸けた戦いなら手段なんて選んじゃいられない。

 そもそも呪文を避けたりと必要な動きもある訳だし。

 

 だからこそ、私は体を動かす事もしてきた。格闘技なんて立派なもんじゃないけど、喧嘩くらいは出来る程度に鍛えた……つもりだ。

 言いながら実際にパンチやらキックやらを見せてやる。ほら、こんな小柄な女の子でもやれそうだろう? 自信を持てハリー。

 

「やっぱり君って最高だね」

 

「でしょう?」

 

 気が合うという意味なのか、ロンが再度褒めてくれた。

 こうしてみると、とことん中身は男なんだと実感する。まぁともかく好意的に見られるのは気分が良い。

 無い胸を張ってドヤ顔を返しておいた。

 

 

 

 

 

 

 寮に戻り階段で別れる時になって、私はもっと大事な事を忘れていたのだと気付いた。

 彼らの為にもハーマイオニーの為にも、言っておかなければならない。

 

「でも2人共、これだけは覚えておいて。何をするにしても責任はあるって事を。もし見つかったら相当なお説教と減点がある……つまり寮全体に迷惑を掛ける事になるんだ」

 

 振り返って2人を呼び、真面目な顔で私は口を開いた。

 上から目線と思われようとも、鬱陶しく思われようと、それでも伝えなきゃ。

 

「規則を破る、言い付けを無視する。そういう行動を取るなら、その責任を負う覚悟を持って。だからハーマイオニーは怒ってたんだよ。決して軽い気持ちでやるべきじゃない」

 

 そんな私の気持ちを少しでも察したのか、ハリーどころかロンでさえも黙って聞いていた。

 まだ11歳の子供同士だからこそ、ただ叫んだって伝わっちゃくれない。そもそも本当は大人が言い聞かせる事だ。

 だからこそ大人の様に、落ち着いて優しく真面目に語る。そうすればきっと、少しでも伝わる。

 

「ね、ハリー。言い付けを無視して、何故か良い結果になった。それで喜ぶだけ?」

 

「それは……」

 

 ガミガミ言われたら反発したくもなる。それが子供同士なら尚更。

 だけどこうして語れば、考える余裕が生まれる。

 まさしく今、ハリーは問い掛けられた事について考える事が出来てる。

 

「遵守して余計な事をするな、なんて言わないよ。してもいいけど、よく考えた上でやろうね、ってだけ。例えばロンのお兄さん達――あの双子は怒られる事も全部理解した上でやってるでしょ?」

 

「うん……」

 

 今度はロンに向き直った。果たしてこれで彼がどう変わるかは分からない。

 それでも返事をしてくれたなら、多少なりとも意味はあるんだと思いたい。

 

「ま、説教だけじゃなんだし……ハリー、君が飛んでた姿は本当に素晴らしかったよ。選手、頑張ってね」

 

 思った以上にハリーを考えさせてしまったのか、沈痛な表情をしていた。

 だから、これも伝えておこう。悪い事は悪いと叱り、褒めるべき所は誉めよう。

 つまり……再三食らえ、美少女スマイル。

 

 

 言うだけ言って私は階段を上った。地味に恥ずかしいんだ、コレ。

 ていうかよく考えたら、何日も経ってるからもうとっくに再三どころじゃなかったな。

 

 まぁいいか、決闘も頑張――いや奴は来ないんだったか。逃げ回るの頑張れー。私は寝る。





【エバネスコ「Evanesco」】
対象を消し去る、なんとも恐ろしい呪文。
非存在へ行く、と言っているがそれが何処で何なのかは謎。
存在が消えるのか亜空間に飛ぶのか、よく分からない。

昔は汚物等も全てこれで解決していたらしいので、どうか完全に存在が消える説でいってほしい。汚物だらけの亜空間なんて想像したくもない。

生物も消し去る事が出来るが相応に難しい。というか生物も同じ場所に行くと考えるとむしろ存在を消してあげてほしい。



【スコージファイ「Scourgify」】
掃除や洗濯に便利な呪文。対象を清める。
汚れやゴミが消えるが、やはり消える先は謎。
エバネスコの対象を細かく限定した様な物なのだろうか。

人に使うと何故か口から大量の泡が出てくるらしい。
なので汚れたからと体に使おうとしたら大変な事になりそうだ。

体を綺麗にする呪文は不明だが、汚物まで魔法で処理するような魔法族が作らない訳が無い。
なんならこれも体の末端や一部だけなら大丈夫とか有り得るかもしれない。
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