ハリー・ポッターと予言の少女   作:桜寝子

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第9話 変化

 どうやら私の知らない所で大きな変化があったらしい。

 何って、ハリーとロンとハーマイオニーだ。

 この間……決闘騒ぎからのケルベロス騒ぎの夜から、3人の様子ががおかしい。

 

 おかしいってのはちょっと違うかもしれないけど、とにかくなんだか変わった。

 大騒ぎで逃げ回る以外に何があったのか知らないけど、私を仲間外れにしないでほしい。

 

 今までは顔を合わせれば喧嘩……とまでは言わないけど、トゲトゲの言葉を飛ばし合っていたのに。

 すっかりトゲが消えてただの軽口を言い合う関係になった。

 

 

 例えばあの翌日、ハリーに箒が届いた。

 そんな高価な物、私だってマクゴナガル先生に買って貰った事無いのに……いやそうじゃない。

 本当ならそれに気を良くしたハリーとロンに、ハーマイオニーがプンスカと口を挟む筈だったんだ。

 

 なのにそんな事にはならず3人は一緒に歩いていた。

 あまりにも不思議だったものだから、私は数歩離れた位置で彼らを観察していた。

 

「実は、マルフォイのお陰で買っていただきました」

 

 いつも通りに絡んできたマルフォイと言い合いをして、フリットウィック先生が仲裁に入り、あの最高の煽り文句を返す。それは物語通り。

 だけどなんでそこにハーマイオニーが混ざってるのか……謎だ。

 

「校則を破ってご褒美を貰ったと思ってるのね」

 

「う、いや……まぁ」

 

「事実じゃないか。あー、でも、喜ぶばかりじゃダメなんだもんな。難しいよ、全く」

 

 言い表せない物凄い表情のマルフォイが消えた後、それでも彼女らしく小言を飛ばしはしたけど……やっぱりトゲが無い。セリフは同じなのに。

 言われたハリーとロンの反応もおかしい。なんなんだ、誰なんだ君達は。

 

 そのままハリーのクィディッチの練習が始まっても、ロンは勿論ハーマイオニーまで労った。

 早くも宿題の手伝いまでしてるくらいだった。お陰で私は宿題を前にして、全く違う事で頭を悩ませていた。

 

 

 

 しかしそれ以上に極めつけの出来事があるとは思わなかった。

 今日はハロウィン。つまりあの有名過ぎるシーン――浮遊呪文ウィンガーディアム・レヴィオーサの授業がある。というか、始まった所だ。

 

「ウィンガディアム・レヴィオサー!」

 

 やたらめったらに杖を振り回し、間違った呪文を叫ぶロン。それは良い。いや良くないけどそれで良い。

 一体授業で何を聞いていたのか分からないけど、君はそれで良いんだ。

 

「ちょ、ストップ! 間違ってるわ、ガーって長く綺麗に言わなくちゃ。あとレヴィオーサよ、あなたのはレヴィオサー」

 

「そんなによくご存じなら、君がやってみろよ」

 

「いいわよ、見てなさい――ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

 ロンと言い合いながら、ハーマイオニーは自信たっぷりに呪文を唱えて成功させた。うん、それもそれで良い。

 

「オーッ、よく出来ました! 皆さん見てください、グレンジャーさんがやりました!」

 

「……最悪だよ」

 

「ほら、教えてあげるからちゃんと聞いて」

 

 フリットウィック先生が拍手をして叫び、ロンは拗ねた様に悪態を吐いてそっぽを向いた。

 そんな彼にハーマイオニーはまさかの指導を始めた。

 今までの険悪さは何処に行ったんだ。こんなのただの友人だ。

 

 一連の流れを見ながら、私は何度目か頭を抱えた。

 何これ。

 

 君達どうしちゃったの? 喧嘩はどうするの?

 トイレに籠る事ある? トロール要らない子?

 

「ねぇ、ハリー。あれ誰?」

 

「何言ってんの?」

 

 思わず隣のハリーに訊ねてしまった。逆に私がおかしくなったのかと心配そうな顔を向けられた。何故。

 

「よく分かんないけど、とりあえずこの呪文教えてくれない? なんか上手くいかなくてさ」

 

 険悪だった筈の2人なんて、ハリーは気にもしていない。

 真面目に呪文を繰り返して首を傾げ、私に指導を求めた。

 

 仕方ない。というか授業中なんだからちゃんとしなきゃ。

 ちなみにこれは初めてって訳じゃない。彼に限らず色んな人に色んな授業で教えてるからね。

 

「はいはい……これは杖の振りと発音が地味に難しいってだけだよ。良い? こうやってビューン、ヒョイ。ウィンガーディアム・レヴィオーサ。分かった?」

 

 しかし教えると言っても、実技となると先生の様にはいかない。

 

 だから分かりやすく伝える為に、私はハリーの後ろに回った。

 後ろから手を重ねて振り方を体に覚えさせる。そして近くで正確な発音を聞かせてやる。これが一番だろう。

 

「ちょ、近い……あぁ、うん。分かった様な……分からなかった様な……」

 

 流石に近過ぎるからか、ハリーはドギマギしている。顔も赤い。

 コラ、いくら私が美少女だからって気を散らすな。何の為にやってると思ってるんだ。

 

「ごほんっ、ウィンガーディアム・レヴィオーサ!」

 

 ビューン、ヒョイ、と何回か繰り返してる内に意識を入れ替えたのか、ハリーは真面目に呪文を唱えてしっかり成功させた。

 

「凄い、やった! やったよ、アリス!」

 

 はしゃいじゃってまぁ。子供らしくて微笑ましい。

 

「オーッ! ポッター君も成功しましたね! ダンブルドアさん、良い指導でした。特別に2点あげましょう」

 

「え、良いの?」

 

 すると先生がさっきの様に拍手をし、ついでに私に加点してくれた。

 思わず確認をしてしまったけど、教員内で私の扱いはどうなってるんだか。

 

「授業内容では加点しない……確かにそう言われてますが、友人に教える事は授業内容に含んでいません。それに、良い行動には加点を、当然です」

 

 先生は小さい体で目一杯胸を張って、何の問題があるんだとばかりにそう言った。

 そんな屁理屈みたいな……でも評価してくれるのは素直に嬉しい。こういう先生だからこそ、生徒達からも評判が良いんだろうな。

 

 

 そして教室内を見回した先生がまたしても拍手を送った。

 

「オーッ! 今度はウィーズリー君も! グレンジャーさんもまた良い指導でした、2点あげましょう!」

 

 え、今なんて言った?

 

「嘘でしょ」

 

 なんでロンが成功してんの?

 もう意味が分からなさ過ぎて、考えるのも無理だ。

 

「だいぶロンに失礼じゃない?」

 

 ポカンと口を開けて呆けていると、ハリーに笑われた。

 いや、違うんだよ。決してロンが何も出来ない子とか思ってない、ただあまりにも謎な展開過ぎただけなんだ。

 ていうかよくあんな杖で成功したな……いや原作でもトロール相手に成功させるけど。

 

 あぁ……もういいか。これ以上考えたら頭がおかしくなりそうだ。

 

 

「なぁアリス。俺にも教えてくれないか?」

 

 私が内心開き直ると、後ろからシェーマスが声を掛けてきた。

 彼もまた、私に教わる事が多い1人だ。

 

 八方美人と言われようとも、私は出来る限り多くの人に接している。どうせ注目されるなら人気者になってしまえ、ってね。

 

「さっきから何度やっても火が付くだけなんだ」

 

「発火呪文じゃないんだけど……シェーマスってある意味天才?」

 

「かもしれないな」

 

 褒めてないよ。何がどうなったら浮遊呪文で火が付くんだ。

 

 これは手強そうだ……と思いながら、ハリーと同様にしっかり教えてあげた。

 何度か繰り返したものの、どうも不安が拭えない。

 

「……よし、なんとなく分かった気がする。いくぞ、ウィンガード・レヴィオーサ!」

 

 分かってないじゃん! 思いっきり呪文間違って――

 

 ドカンッ、と。心の中のツッコミさえ言い切らない内に、浮く筈だった羽が爆発した。なんでだよ。

 火が付くどころじゃない。割と大きな爆発音を響かせ、教室中が静まり返り全員が驚いて注目した。

 

「……けほっ」

 

 煤塗れになった顔でパチクリと瞬きを繰り返し、咳を1つ。

 私は何も悪くないのに、なんだか物凄く恥ずかしい。

 

 そしてタイミング良く、授業の終わりを告げる鐘の音も響いた。

 これで終わりか、挽回さえ出来ないようだ。

 

「……爆発オチなんてサイテー」

 

「ごめん」

 

 これを言う機会があるなんてね。

 私と同じく、煤で真っ黒になった顔のままシェーマスは静かに謝った。

 

 

 

 

 

 

 

「全く、つまんないったら。なんで僕がハーマイオニーと組まされなきゃならないんだよ」

 

「そんな事私に言われたって知らないわよ。いいじゃない、結局成功したんだから。私のお陰で」

 

「だからつまんないって言ってるんだ」

 

 授業が終わり、私達は揃って歩いていた。ハーマイオニーが加わり、早くも仲良し4人組と認識されているくらいだ。

 しかしまぁ、険悪なのは消えたけど結局噛み合わないんだね、この2人。いや、それはずっとそうか。

 

「あ、でも、アリスとシェーマスが爆発したのは面白かったよ」

 

「なんのフォロー?」

 

 要らないよそんなの。

 

「なんで爆発するのかしら……でも真っ黒になっただけで良かったわね」

 

 煤で真っ黒になった顔を綺麗にしてくれたのはハーマイオニーだった。自分で出来るやい。

 まぁ、火傷とかも無かったのは確かに良かったよ。

 

 そういえば、ハーマイオニーと私は若干気まずい事になっていた筈なんだけど……それもあの夜から消えたな。

 私をズルイと言って、泣きそうな程に悩んでいたのに。

 勝手に解決されるのもちょっと困る。私はどうすればいいんだ。

 

 

 ちなみに原作でのハーマイオニーはハリーとロン以外からも若干煙たがられていた節がある。誰も友達が居ない、とロンが言うくらいには。

 それがどうだ、全然そんな事は無く、私を始め同性でも仲良くやってるし男子連中も毛嫌いはしていない。

 以前なら多少鬱陶しいとか思われてたかもしれないけど、今は全くと言っていい程に人間関係は良好だ。

 

 これじゃここで泣いてトイレに籠るなんてありえない。

 トロールが侵入してきたって、皆で寮に戻ってパーティーをしているだろう。

 

 

 

 そう、本当にそうなった。

 

 何事も無く次の授業をこなし、さぁハロウィンのご馳走だ、と揃って大広間へ。

 飾りつけに興奮してわいわい騒ぎながら、料理を皿によそって――

 

「トロールが……地下室に……お知らせしなくてはと思って」

 

 全速力で駆け込んで来たクィレルが、お爺様の前でヒィヒィ言いながらそう伝えた。

 言うだけ言ってバッタリ気を失ってしまったけど……今ターバンを剥がしたら面白い事になるんじゃないかな。そんな事しないけど。

 

 ともかく、お陰でせっかくの場が大混乱になった。

 

 当然周囲は大騒ぎ、だけどハリー達にはすぐさま私が大丈夫と伝えたから多少落ち着けている。

 この学校でトロールが何を出来るって言うのか。お爺様を始め、教員達は本当に優秀なのだ。その程度何も不安に感じる事は無い。

 

 そしてそんな混乱も、お爺様が杖の先から小さな爆発をいくつも出した事で静まった。

 

「監督生よ、すぐに自分の寮の生徒を引率して戻りなさい」

 

 静かで重い声が響いた。

 

 それを聞いていの一番に動いたのは我らが監督生、パーシー。まるで水を得た魚だ。

 僕に付いて来て、とひたすらに叫び、無駄に監督生だというアピールを繰り返し、どんどんと進んでいく。 

 それでもああやって動ける事自体は素晴らしい事だ。非常時に先導出来る人が居るだけで全く違う。

 

 

 そしてそして、そのまま何事も無く寮へと戻り、事態は解決したという連絡を聞き、そのままパーティーの続きと相成った。

 さらば重要だったイベント。見もしなかったトロール。

 

 そういえば地下に出たって事は、スリザリン生はどうしたんだろうか。彼らの寮は地下の……まぁいいか。

 スリザリンと言えば、寮監のスネイプは大変だったろうな。クィレルの仕業と見て守りに走ってケルベロスに噛まれるんだっけ……お大事に。

 

 

 しかしまぁ……この時点でこんなに大きな変化があるとなると、この先一体どうなるやら。

 あぁ、頭が悪い……じゃない痛い。こうなったらもう、久しぶりに唱えるとしよう。

 なるようになれ。





【ウィンガーディアム・レヴィオーサ「Wingardium Leviosa」】
有名な浮遊呪文。浮かせて操作が出来る。
杖の振りと発音が難しいらしい。
ロコモーターという呪文とどう違うのかは謎。



【レヴィオーソ「Levioso」】
ホグワーツ・レガシーに登場した、上記とは違う浮遊呪文。
名前からして簡略化された物と解釈。

事実ゲーム内でも、こちらは操作出来ず浮かせるだけに留まる。
敵を浮かせる事で行動不能に出来る呪文。



【ロコモーター・〇〇「Locomotor」】
対象を浮かせて移動させる事が出来る。〇〇に対象の名前を入れる。
ウィンガーディアム・レヴィオーサとの違いが分からない。
名前が不明もしくは無い物を操作したい時はあちらを使うのだろうか。

あの有名なピエルトータム・ロコモーターは無機物に命を吹き込み制御する。
魔法のチェスも似た様な魔法なのかもしれない。

ロコモーター・モルティスという足縛りの呪文が存在する。
同じロコモーターだが、こちらは硬直させる効果。もうよく分からない。



【レヴィコーパス「Levicorpus」】
浮遊呪文と言う事でついでに紹介。
何処かの半純血のプリンスが作ったらしい呪文。恐らく彼から死食い人等に伝わっている。
ただの浮遊では無く踵を起点に逆さ吊りにし、回転させたりと余計な操作も可能っぽい。
逆さ吊りにした上で転がして弄ぶという、性格の悪さが見て取れる。





ちなみに……

原作でのトロール事件はハリーとロンが中々にクソガキムーブをする事で有名かもしれません。
ロンはハーマイオニーに一言も謝罪をしませんし、ハリーはそんな事も忘れて50点くらい貰えるかもと期待します。

結果的に点は貰えますが2人で10点は少ないとぶつくさ文句を垂れ、しかも自分達がハーマイオニーを助けたのだと恩着せがましいというオチ。
彼女を泣かせてトイレに籠らせたのも、トロールをそこへ閉じ込めたのも自分達だと言うのに。

今回は事前に仲が深まっているのでイベントが消えました。
戦闘シーンが書きたいのに残念。物語としてもメリハリが無くなった気がするけれど仕方ない。
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