怪獣8号短編 作:TuT
一体いつから───15号が死んだと錯覚していた?
···というわけで番外編です。
15号、もといヒルデに寄生された娘の話です。
────────────────────────
人間と同等の知性を持つ怪獣9号を筆頭とした群発災害。入念な対策を採ってもなお、膨大な死者・負傷者を出した、歴史に残る大災害。
物的損害も著しく、3年が経った今でも主要都市の復興は完了していない。
しかし、この一件以降は識別大怪獣は発生しておらず、着々と復興は進んでいる。
うん···新規に
してないけど、存在してる。しかも
いや『2人』と言うべきかもしれないけど。
まず1体目、怪獣8号。
第三部隊小隊長の日比野カフカさんに寄生してる。
本人(本獣?)は、『シンクロ率が高かったから寄生した*1。正直すまんかった』などと供述しており···。
2体目、怪獣
私、朝倉ヨルに寄生してる。
え?15号は群発災害で死んだだろ、って?
···あれねー、分体だったらしいの。
最初聞いた時は、『Ft.9.8が分体とか、ウソォ···』とか思ったけど、『分体にエネルギーを極振りしたから、今いる私は雑魚だよ』とのこと。
それでもパンピーの私にはすんごい力だけど。
しかもパパが9号だとか、でも人類のために頑張るよ☆とか言ってるし···情報量の濁流に押し流されそう。
······あれ、なんの話してたっけ。
あー、群発災害についてか。
群発災害の強度が人類史上断トツだったことに危機感を持ったお偉いさん達が、防衛隊の戦力増強の一環として防衛隊員募集をより大規模化したんだよね。
いろいろ宣伝に力入れてて···ユー◯ューブで毎月配信されてるショートアニメはかなりバズってる。
尺は短いけど、やたらハイクオリティなんだよね。
私の推しは······はっ、また話題が逸れた!
一番私が言いたかったことは、私も防衛隊員になる!ということ!理由はいろいろある。
群発災害の映像をリアタイで観て脳を焼かれたからだとか、こないだ公開された長編アニメ映画に脳を焼かれたからだとか···後はシンプルに高収入だから。
お金は大事、これ真理。
ぶっ壊れた家を建て直すためにも必要だし。
一般隊員の給与でもローンを組めば建て直せるくらい好待遇だから、そこそこに活躍してそこそこのお金を貰いたいところですねグヘヘ。
それじゃあまずは、一次試験頑張りますか!
◆◆
一次試験は筆記テスト。
俗に言う『討伐学』───怪獣の歴史、種類、討伐方法···あとは怪獣兵器についても問われる。
まあこれはそこまで難しいものじゃないから、私でもあっさりパスできた。
問題は、これから行う二次試験だ。
ここ数年だと、500人を超える受験者の中で、突破しているのは僅か10%ほど。
「ぁ゙ー、緊張する···」
『いやヨルちゃんならいけるって。だいじょぶだいじょぶ』
そう言って
私が6歳の頃に、私の口から···言い方は悪いけど侵入してきてから、もう12年の付き合いだ。
「一部が体力検査、二部が資質検査···。二部は毎年内容が変わるから対策のしようが無かったけど···一部は違う」
『そうだねー、ここで点数を取っておきたいよね』
『ヨルちゃんなら一部も二部もヨユーだと思うけど』
「そうかなあ···」
〚これより二次試験一部、適性試験を行います〛
〚受験者は位置に付いてください〛
「ふー······よっし、行こう!」
『頑張れヨルちゃん!』
〚5秒前······3、2、1···〛
パァン!
競技用のピストルが鳴り、受験者達が一斉にスタートした。予め設置された障害を乗り越えつつ、未舗装路8kmとタータントラック2kmを走破する。
練習だと大体20分くらいだったから、同じくらいのペースでいければ問題ないはず。
「「「はっや!?」」」
『Oh、いつもより飛ばすねヨルちゃん』
他の受験者達が遅いんだよヒルデちゃん(失礼)。
部分変身込みとはいえ、カフカさんはもっと速かったでしょ。
そのままぶっちぎって1位でゴール。
腕時計を見ると、タイムは17分だった。よし!
◆◆
「今回の受験者です。今年もオモロそうな奴が多いですよ、亜白隊長」
保科宗四郎から手渡されたデータに、亜白ミナが目を通す。
「······!そうか、朝倉ヨルが来たか···!」
「ええ。東京討伐大学首席卒業の超エリートにして、怪獣15号の被寄生者。亜白隊長とも仲良くしとると聞いてます」
「ああ、彼女とは縁があってな。かふ···日比野隊員とも交流している」
「僕はまだ会ったことはありませんが、噂は聞いとります。彼女、“上”に行くのを嫌っとるそうで」
「真面目なのだが···なんというか···矛盾しているようだが、自由人というか、怠け者のきらいがあるんだ。だからか、責任ある立場を嫌がる」
「控えめに見ても一般隊員の器やないんですが···」
────────────────────────
◯
群発災害を打倒した人類の可能性に脳を焼かれた。9号の遺志を継ぎ、人類に貢献していくことを決意した。
でも基本的には能天気。
「見ててね、パパ」
◯朝倉ヨル
フィジカルお化け。怪獣化しなくても一般的な
でも小市民気質。そしてアホの子。
「私はそこそこの怪獣を倒して下山する」
防衛隊入隊試験を受けられるのは18〜32歳です。*2
なので朝倉ヨルちゃんの年齢も18歳です。
*きこるんは16歳で入隊していますが、討伐大学を飛び級かつ首席で卒業しているので、例外的に認可されました。
────────────────────────
〚これより二次試験二部、適性試験を行います〛
〚受験者は第二演習場に集まってください〛
「ふー、次はいよいよ資質試験か···」
『ここ数年、二部には怪獣の討伐試験が採用されてる。大怪獣未満ならヨユーだろうし···勝ったなガハハ!』
「舐めすぎだよヒルデちゃん。フォルティチュードなんか関係ない、普通に死ぬ時は死ぬよ」
『大丈夫だと思うけどなあ······』
っと、お喋りしていたらもう着いたね。
大きなゲートだなあ···ここが第二演習場か。
「みんな、お早うさん。僕は今回選別試験の選考委員長を任されとる、第三部隊副隊長の保科や。
二部では、この演習場で怪獣を討伐してもらう」
「やっぱり討伐か···ヒルデちゃん、参考までに聞くけど、推定フォルティチュードはいくつくらい?」
『フォルティチュード気にしてるじゃん。えーとね···本獣含めて全部6.0未満だね』
よし、なら多分大丈夫···!
お家に生きて帰って、ダラダラするんだ···!
「とは言え、丸腰で怪獣を討伐するんは
◆◆
〚身体計測及び形状同化完了〛
〚怪獣筋肉繊維正常動作〛
〚解放戦力、測定します〛
初めて味わう、スーツと身体が一体化するような感覚···それに、筋力が
うーーーん、これは多分······。
〚解放戦力──0%〛
「だよねチクショウ!」
『やっぱり一発で私に“適合”させるのは無理だったわごめん。一応、0.3%くらいは引き出せてると思うんだけど···』
上にある一面ガラス張りのオペレータールームを見ると、保科副隊長が笑いを堪えている。
すごいプルプルしてる。
「まあでも、なんとなくスーツと“繋がってる”感じはあるし、どうにかなりそう───」
〚解放戦力の上昇を確認、再測定します〛
〚解放戦力──2%〛
他の受験者達がザワつく。
ごく短期間に解放戦力が上昇するなんて、聞いたことないもんね。ふふ、みんな驚いてる。
私もすんごいびっくりしてる(震え)。
「私ちょっと探知に集中しただけだよ?こんなに効果あるの???」
『どうにかなるって言ったのはそっちでしょ』
「さすがというべきか···驚異的やな。
まあええわ。それじゃみんなスーツ着れたし、最終審査始めんで」
「それと、朝倉ヨルはここに残れ。以上」
「え?」
◆◆
「─────君たちにはそれぞれ1台の自動追尾ドローンが付き、行動をこちらでモニターする。
こちらの判断で命の危険と察した場合、遠隔でスーツのシールドを発動させるけど、それは同時に失格を意味すると思ってくれ」
副隊長の言葉が右から左に流れていく。
「─────正直、ここから先に命の保証はない。
それでも行くという覚悟のある者だけ···進め」
副隊長の号令を合図に、
「さて次······朝倉ヨル。かかってこい」
「嫌ですぅ······」
どうしてこうなった???
◆◆
「災難だな、ヨル···」
「いやホントですよ!?」
だよねカフカさん!
「だが仕方ないだろう。並の本獣ではあまりにも
「ぅ゙、それはそうですけど···」
ひどいよミナさん嫌い!好きだけど嫌い!
「そういうことや···さ、やるで」
「百歩譲って戦うのは良しとして、あのー···刀だけどうにかしまっていただけませんか?」
保科副隊長に刀持たせちゃあかんでしょ。
カフカさんも言ってた、『刀を持った副隊長はヤバい』って。多少の実戦経験があるとは言え、識別大怪獣クラスは無理······。
「いやー刀無しはキツいやろ。カフカからいろいろ聞いとるもん」
「嘘でしょカフカさん、何吹き込んだんですか!?」
「えー?模擬戦したとき部分変身した俺に
「余計なことを······!」
「·········う〜〜〜分かりました。それじゃあルールを整理させてください」
1、怪獣化は無し、部分変身は有り。
2、識別怪獣兵器は無し、通常スーツは有り。
3、副隊長を吹っ飛ばしたら私の勝ち。
4、副隊長に峰打ちされたら私の負け。
「ん。ほな、今度こそ···かかってこい」
◆◆
────────────────────────
◯保科宗四郎
軽く30分は全開放出来るし、寿命もほとんど削らない。チートかな?
「カフカ、亜白隊長の隣はまだまだ遠いで(^^)」
◯日比野カフカ
“対話”や治療により、怪獣化によって人に戻れなくなる···ということが無くなった。
それでも怪獣化は負荷が大きいため、普段は部分変身で戦っている。
「解放戦力10%!二桁いったぜよっしゃー!!」
◯亜白ミナ
対大型戦だけでなく、近接格闘術や近接兵器の鍛錬にも比重を置くようになった。
弱点どこ···?ここ···?
「頑張れカフカくん。ずっと待ってるよ」
────────────────────────
●If・幼児退行√
私は生き残った。
たった独りぼっちで、生き残ってしまった。
私の愛したパパはもういないのに。
なんで私は生きているのだろう。
ごった返す喧騒の中で、かえって強い孤独を感じる。
君は何を見ている?
私と同じ景色が見えている?
ああ、この世界には、誰も······。
だけど。
だからこそ。
◆◆
──月──日
こびとのおんなのこがわたしのくちから、からだにはいってきた。
たぶんわるいこではないけど、すこしこわいようなきがする。
──月──日
こびとのおんなのこがきてからいっしゅうかん。
かのじょのなまえはヒルデ。
パパがくれたなまえなんだって。
──月──日
おとなのひとたちがおうちにきた。
ヒルデちゃんとわたしにようじがあるんだって。
──月──日
ヒルデちゃんはすごくつよいかいじゅうだといわれた。
あぶないからおそとにだしたほうがいいんだって。
でも、ヒルデちゃんがすごくこわがってたから、おそとにはださない。
──月──日
テレビでみたことがあるひとたちにあわせてもらった。
カフカしょーたいちょうと、ミナたいちょう。
わたしたちのおはなしをきいてくれた。
──月──日
びょういんみたいなところでいろいろされた。
すごくつかれた。
──月──日
カフカしょーたいちょうのところでおとまり!
うれしい。
──月──日
きょうカフカしょーたいちょうを「カフカおじちゃん」っていったら「うっ」ってなってた。
くるしいのかな?
──月──日
カフカおじちゃんからヒルデちゃんといっしょにいていいっていわれた。うれしい。
◆◆
被寄生者:朝倉ヨル
・知能が著しく減退している。