怪獣8号短編   作:TuT

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没作品の残骸。


お姉さん系オリ主(になる予定だった)

自分が『怪獣8号』の世界に転生したと気づいたのは、物心ついてすぐだった。

児童養護施設のテレビから耳をつんざく警報と共に流れる空撮映像。

異形が街を闊歩しているのを見た瞬間、前世の記憶を取り戻した。

 

 

「ルカちゃん、危ないから早く避難しようね?」

「あ···はーい」

 

 

前世の記憶には原作知識も含まれている。

近い将来、日本に起こることも知っている。

···地下シェルターで悩んだ末、私は日本防衛隊への入隊を決意した。

私が生まれ変わった意味はきっと“そこ”にある。

 

 

◆◆

 

 

入隊を志して十数年。

第1部隊に編入されて6年。

鳴海くんの厳しい指導を耐え抜き、1年前にようやく第3部隊への異動が叶った。

 

···そして今日、防衛隊員選別二次試験がこの立川基地で行われる。

 

 

「ほい、今回の受験者の履歴書。今年はオモロそうな奴が多いで」

「ありがとうございます」

 

 

保科副隊長から書類の束を受け取り、軽く流し読みする。

東京討伐大や八王子討伐高専、さらには陸上自衛隊などから例年よりも格段に優秀な人材のタマゴがゴロゴロしている。

しかし私が一番気になっているのは──

 

 

「···日比野カフカ」

「え?」

「ああ、今回の受験者の中だと最年長だから何となく気になったんです」

「どれどれ見せてみ···ふーん、32歳か。俺らより年上やなあ」

 

 

防衛隊員が前線に立てる時間はそう長くない。

なにせ少しのミスが死に直結する仕事だ、加齢による衰えは命取りになる。

だから募集年齢の引き上げによる効果も、それほど期待されていなかった。

 

 

「この履歴書、亜白隊長には見せましたか?」

「いや、これから見せるところや」

「そうですか。···きっと喜ぶでしょうね」

「まあ確かに今年は過去1の豊作年かもしれんけど、あの人そんなこと興味あるか? 討伐ジャンキーやで?」

「まあ、見せれば分かりますよ」

 

 

原作通りに日比野カフカ(しゅじんこう)も受験していて一安心。

彼無しでこれからの戦いを切り抜けるのは難しいからね。

 

 

◆◆

 

 

二次試験は第一部と第二部に分かれている。

第一部は体力検査。

そして第二部は毎年内容が変わる資質検査だ。

今年の新人候補は、広大な市街地型演習場に配置された怪獣たちを討伐する。

···防衛隊スーツのシールドが通用するレベルの怪獣とはいえ、いきなり怪獣を討伐させるのはかなりスパルタだよね。

 

司令室から保科副隊長が試験内容を説明し、「命の保証は無い」と最終警告した後に試験が始まった。

 

 

「あ、そうそう。言い忘れてたんやけど、この試験には亜白ミナ隊長と立野(たての)ルカにも審査入ってもらっとるから、みんな張り切ってアピールするように!」

 

 

···私の名前は出さないでほしかった。

 

 

◆◆

 

 

試験はほとんど四ノ宮キコルがひたすら無双するだけで終わった。

片手間に余獣を撃破しながら本獣も瞬殺。

他の追随を許さない、圧倒的な蹂躙劇だったが···これだけでは終わらなかった。

 

 

2016番(四ノ宮キコル)バイタル異常!」

「どういうことや、何が起きてる!?」

「演習場内で死んだはずの怪獣たちの反応が···次々と蘇ってる!?」

 

 

後に“怪獣9号”の名を与えられる、極めて高度な知能を持つ怪獣による襲撃。

本獣の強度(フォルティチュード)も1個中隊相当まで上昇した。

いくら優秀でも未熟な受験者が敵う相手ではない。負傷しているなら尚更だ。

 

 

「まずは私が出ます」

「俺らも行くで」

「···いえ、お二人は他の受験者の避難誘導をお願いします」

 

 

日比野カフカが“怪獣バレ”するのはまだ早い。

せめてもう少し段階を踏まないと、隊員からの信頼を稼げずに···最悪の場合は討伐対象となる。

それに、万が一9号を倒してしまうと自動的に“明暦の大怪獣”も出てくる。

“明暦”は東方師団の総戦力で挑んでも勝てない。

今はまだまだ戦力が足りない。

だから事情を知らない第3部隊のツートップに来られると困るのだ。

 

 

◇◇◇

 

 

「四ノ宮キコルがボロボロになって、本獣を足止めしている」

それをシェルターに駆け込んだ受験者から聞いたカフカは、一切の躊躇無く走り出していた。

 

未曾有の事態に隊員らは気が立っている。

怪獣としての姿を見られれば、審問の間も無く殺処分されるだろう。

ただでさえ、多くの隊員がいる前で怪獣に変身するのは危険だと言うのに···。

 

 

「(それでもあの人は、こういう時には迷い無く変身する···!!)」

 

カフカとはあまり長い付き合いではないが、市川レノは彼の本質の一端を掴んでいた。

モンスタースイーパーでのバイトの初日···余獣に殺されかけた自分を身を挺して守ってくれた。

スーツも武器も、自衛の手段はろくに無かったにも拘らず、彼は他人の為に動いた。

 

 

「お前が頑張ったおかげで、みんな避難できたぞ。──後は俺に任せろ

 

レノの予想は当たっていた。

カフカは“怪獣8号”としての能力を解き放ち、自分の身を顧みずキコルの下へと駆けつけた。

 

 

『本獣周辺に謎の超高エネルギー発生!』

「なんやと!?映像は!?」

『爆発による土煙と通信障害で目視困難···って、何この数値···!フォルティチュード9.8!?』

 

勿論この情報は司令室にも伝わり、オペレーターが保科副隊長へ情報を共有した。

しかし保科は「計器がイカれたんやろ」と一蹴。

もしこの数値が事実なら第3部隊の手には負えないし、そんなエネルギーが何の予兆も無しに発生するとは考えにくい。

とにかく立野ルカが現着すれば、より正確な情報を掴めるはず···そのように判断した。

 

 

「時間ねーから一発で解体するぜ」

 

かくして、この世界でも防衛隊に日比野カフカの“正体”がバレることは無かった。

 

 

 

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