怪獣8号短編   作:TuT

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第3部隊のお姉さん

「地区C、小型3体出現」

「くっ、1体逃しました!」

「大丈夫。後衛もいるから慌てずに対処してね」

 

照準を合わせてトリガーを引く。

前衛をすり抜けてきた怪獣は、私の放った炸裂弾によって爆散した。

 

「とりあえずこの地区は一段落かな。負傷した人たちは後衛に下がってて」

「了!」

「私は他の地区の掃討に行ってくる」

 

今回はいつもより余獣の数が多い。

万一にも討ち漏らして民間人に被害が出たら目も当てられないから、掃討は地味に大事だ。

 

「あ、やっぱりいた」

 

見た目は全長2メートルくらいのトカゲ。

するすると瓦礫の山を這い回っている。

 

「結構素早いなぁ」

 

右手の銃に凍結弾を込め射撃。

周囲のコンクリートごと凍らせた後に、左手の銃でトドメを刺す。

一息ついて二丁の愛銃をホルスターにしまうと、イヤホンから通信が入った。

 

『こちら地区A、制圧完了しました』

「地区Cと地区Dも制圧完了。これで全地区は制圧出来たかな。でも警戒は続けてね」

『了』

 

こちらの人的被害は軽微なけが人が数人出ただけで、民間人含めて死傷者ゼロ。

今回もなんとか乗り切れた。

 

 

◆◆

 

 

「ん〜、美味しい」

 

任務終わりの食事は実に美味い。

というか立川基地に限らず、日本防衛隊の食事は質の高さで有名だ。

しかも品数が多くておかわりも自由。

前線で戦う兵士のモチベーションとなっており、テレビの特集も度々組まれている。

 

「食事中失礼するで。ユーリ、今日の試験の事聞いとるか?」

「はい。亜白隊長からの通信で、概要は把握しています」

「話が早いな。あ、食べながらでええよ」

 

なんでも、入隊試験会場で怪獣たちが突然蘇ったらしい。

幸いにも死者は出なかったが、けが人多数。

怪獣が蘇生し、更に怪獣強度(フォルティチュード)が上昇した事などの謎も多い。

 

「フォルティチュード9.8ですか···」

 

立川基地の総力を挙げても討伐できるかどうか怪しいレベルだ。

保科副隊長は周りの隊員に聞こえないよう、声を潜めて言う。

 

「計器の誤作動やと思いたいんやけどな。それと、この画像を見てみい」

「これは···」

 

副隊長のスマホに表示された1枚の写真。

試験会場にいた本獣の死骸らしい。

 

「···討伐者は?」

「四ノ宮キコル()()()()()()()()()()()

「ああ、長官の娘さんですか。···いやいくら優秀でも、これは有り得ません」

 

この怪獣はおそらく一撃で倒されている。

肉片の飛び散り方から察するに、亜白隊長の砲撃に比肩し得る力で···殴られた?

 

「僕もそう思う。最低でも大怪獣クラスが基地を襲撃して、しかも野放しになっている」

「···なるべく公表したくないですね。混乱が大きくなりすぎる」

「そういう事や。勿論この事を知っている人間はごく一部。誰かにチクったらあかんで」

「ええ···それなら何故私に?」

「何かあった時、ユーリならギリギリ対処出来るやろ?」

「Ft9.8相手に戦いたくないです」

 

 

◆◆

 

 

1日の業務を終え、後は風呂に入って寝るだけ。

普段は大浴場でみんなと一緒に入るけど、今日は1人で考え事をしたかった。

 

(怪獣8号か······)

 

個室のシャワーを浴びながら、前世の記憶に思いをはせる。

この世界で20数年過ごしてかなり朧げになってはいるけど、“怪獣8号”という言葉には心当たりがある。

そういう名前の漫画···いやアニメだっけ?···があった気がする。

でも内容や結末は殆ど思い出せない。

知っていることと言えば、おじさんが怪獣になって戦う事くらいだ。

 

(原作通りに進まなかったら即バッドエンド、みたいな作品だったら···)

 

転生者という異物のせいでみんなが死ぬのは嫌だけど···今更除隊しても戦力が減るだけだ。

私に出来ることを全力でやるしかない。

 

 

 

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