僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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天音さんはゴリラなんかではない

「紫咲さん結構頭いいですね。別に僕が教えなくても良かったんじゃないですか?」

「まあ定期テストくらい誰でも解けるしょ〜。でも英語は苦手だったから助かったわ〜秀才君」

「その名前で言わないでください。別に秀才じゃないですって、現に紫咲さんに生物で負けてるじゃないですか」

「確かに!シオンの方が高い〜、や〜いや〜い」

「僕は生物が苦手なんです。なんかこう体内の物質とか器官の機能とか覚えるのがどうしても苦手で」

「えー、全然簡単でしょ〜。じゃあシオン勝ったからジュース奢って!」

「1本だけですよ」

「ちぇー」

「買ってるの生物だけなので当たり前です」

「じゃあシオン動きたくないから買ってきて〜」

「なんで僕だけで行かなきゃならないんですか」

「うるさい!負けた人がつべこべ言わないの」

「ほか全部勝ってるんだけどなぁ...」

 

僕たちはテスト勉強の成果を存分に発揮できたように思う。僕は現状維持であったがシオンは1年生の頃よりもぐんと成績が伸びたそうだ。担当の先生も驚いていたのが見て取れる。ちなみに僕たちは名前で呼び合うことを学校ではしないことにした。シオンが提案したものだ。なんか2人だけの秘密っていいじゃん!ということらしい。確かにいきなり名前で呼ぶと周囲の男子にもみくちゃにされそうな気がするので控えるのに僕も賛成した。

 

「で、お前今日の練習来るのか?」

「さすがにそろそろ練習参加しないとブランクがやばいからね」

「お、遂にか!バスケ部一同待ってたぞ!特に1年生には秘密兵器ってことで紹介してるから」

「ハードル上げないでくれよ...」

「にしても購買会はいっぱい人がいるな。俺はとりあえずスポーツドリンクでいいや」

「じゃあ僕はお茶かな。なあ紫咲さんって何飲むと思う?」

「なんで紫咲さんの分まで買うんだよお前」

「生物のテストで負けちゃったからな」

「お前でも負ける時があるんだな、にしても紫咲さんも頭良かったんだな」

「僕ももっと勉強しないとな」

「赤点3つあった俺はどうすんだよ!」

「柊はもっと勉強しろ。試合出れなくなるんじゃないか?」

「5つまでだからまだ大丈夫だ!」

「そんな自信満々に言わなくても...」

 

テストが終わってから僕にバスケ部の助っ人の話しは本格化した。現に今日に練習に参加することは決まっている。進級してから初めての助っ人だ。

 

「あ、あずき先輩!お疲れ様です!」

「あ、柊君お疲れ様、今日から練習再開だね」

「そうっすね!今日は風真も来ますよ」

「え!そうなんだ。風真君、今度の試合出てくれるの?」

「はい、その方向で進んでます」

「柊君、こっちとしては嬉しいね。今回は負けれない相手だから風真君がいたらきっと安心だよ」

「きっと勝ちますよ!」

「そんなに期待しないでください...」

 

あずき先輩はバスケ部のマネージャーだ。そして何より人気だ。あずき先輩目当てで入部を希望する人も一定数いるくらいには。不埒な理由ではあると思うがまあ相手の意見も尊重しておく。

 

「いやー人に買ってもらったお茶はおいしいね!」

「言い方を考えてください、あとそれと今日はバスケ部の練習に顔を出さなきゃいけないので先に帰っててください」

「え!風真君バスケ部行くの?」

「はい、助っ人話が遂に本格化したので、あと今週にはもう練習試合があるそうです」

「へーそうなんだ。実はシオンも今日別に用事あったからちょうどよかった」

「奇遇ですね」

「まあ練習頑張ってね〜」

「はい、頑張ります」

 

 

 

久しぶりに入る部室は以前よりも綺麗になっていたような気がした。

 

「なんか部室綺麗になってないか?気のせい?」

「掃除に熱心な1年生マネージャーが来てくれたからな。おかげで男のむさ苦しい空間も少しはマシになった」

「へー、良かったな」

「良かったなってお前も使うんだからもっと感動しろよ!」

「いや僕は部員じゃないし...」

「でもお前も使うだろうがよ!」

 

荷物を置き着替え終わったあと、まだ練習開始まで時間があるので軽く汗を流そうと思った。

 

「あれ?風真君今日練習するの?」

「はい、今日から参加することになったんです」

「そうなんだ!今からシュート打つの?僕がパス出してあげるよ」

「ありがとうございます、天音さん」

 

天音さんもあずきさんと同じマネージャーだ。同じ学年にマネージャーがいるだけでなんか心強い。ちなみに天音さんは僕よりも握力が強い。と言っても僕が非力すぎるのか天音さんが怪力すぎるのか...。

 

「それにしても風真君はシュート落とさないね〜。僕もボールに向かって走り回らなくて助かるわ〜」

「いや調子がいいだけですよ」

「バスケ部入っちゃえばいいのに、小中とずっとやってたのに高校でいきなりやめちゃうなんてもったいないよ」

「やっぱ練習疲れるので」

「それだけかよ?!」

「あれ?かなた先輩この人誰ですか?」

「あーこの人が秘密兵器だよ沙花叉。どう?秘密兵器感ある?

「んー沙花叉的には身長めっちゃデカイの想像してたのでーちょっと残念です」

「なんで勝手に失望されてるんだ...」

 

沙花叉さんは今年入部したピッチピチの高校一年生だ。バスケのルールはまだあんまり理解出来ていないらしい。

 

「風真先輩ってー、いろはのお兄ちゃんですか?」

「はい、そうですよ」

「やっぱりそうなんですね〜。いろはも言ってましたよ、お兄ちゃんはバスケットとってもうまいでござるよ、って」

「そんなこと言ってくれてるんだ」

「風真先輩のこと熱弁してましたよ」

「いや熱弁まではしないで欲しいな...」

「ほら沙花叉、雑談はこれまでにして給水ボトル準備するよ〜」

「あ〜沙花叉お腹痛くなってきたな〜。かなた先輩トイレ行ってきます〜

「おい沙花叉!!」

「ぽえぽえぽえ〜?」

「まったくもう...」

「僕が手伝いますよ天音さん」

「え!いいの?助かる〜」

 

普段はあずき先輩が体育館のゴール出しだったりビブスの用意、天音さんと沙花叉さんで給水ボトルを準備しているらしい。

 

「マネージャーっていつもこういうことやってるんですね」

「そうだね〜でも今はもう慣れたよ〜」

「選手目線からしたら感謝しなきゃいけないですね、ありがとうございます」

「良いって良いって、僕たちはコートに出ない分選手たちには頑張って欲しいってあずちゃんも言ってたし」

「これで最後ですね」

「「あっ」」

 

最後のひとつに手を伸ばそうとした時、アクシデントで天音さんの手とぶつかってしまった。

 

「ごめんなさい」

「いや全然良いって!気にしないで、あとこれは僕に任せてよ!」

「じゃあお言葉に甘えます」

 

天音さんの手、小さかったな。

 

僕の自己紹介を終えたあと、練習が開始した。僕はブランク持ちなのにも関わらずランメニューまでみっちりやらされてしまい、おかげで体はヘトヘトだった。

 

「柊君、これ」

「お、あずき先輩ありがとうございます!くぅ〜!染みるぅ!」

「風真君もこれどうぞ〜、って言っても僕と一緒に作ったやつだけど」

「ありがとうございます、なんかいつもより美味しい気がします」

 

ゲーム形式の練習を終えたあとは各自自由に練習するのがこの部の方針だ。残って自主練する人もいればそそくさと荷物をまとめてお暇する人もいる。僕はブランクを取り戻したいので今日は残ることにした。

 

「風真君残るの?僕がパスだししてあげよっか?」

「はい、そうしてくれるとすごい助かります」

「じゃあ、とことんやろ!」

 

天音さんも疲れているはずなのに付き合ってくれるなんて優しいんだな。ゴリラって呼ばれてる人とは思えない。

 

「すみません!あと10本!」

 

久しぶりにすると楽しいんだけどな、久しぶりくらいがちょうどいいな

 

スパッ

 

「じゃあ僕はこれで上がります、今日はありがとうございました」

「お疲れ様、かなたちゃんも上がっちゃいな。後はあずきが見てるから」

「え?いいの?」

「まだ柊君頑張ってるし、あずきも頑張んなきゃなって」

「じゃあ帰ろうかな」

「その代わり、風真君、かなたちゃんのこと送って行ってくれないかな?夜道は危ないし風真君が一緒だったらあずきも安心なんだけど」

「はい、いいですよ」

「何言ってるのあずちゃん!?いいっていいって!!」

「何言ってるのかなたちゃん。夜に女の子一人は危ないよ」

「そうですよ、僕も心配です」

「うぅ...。わかったよ」

 

こうして一緒に帰ることになった。先程のラフな感じとは打って変わって天音さんはずっと黙っていて歩く音だけが廊下に響いていた。

 

「雨降ってるんですね」

「え!僕傘なんて持ってきてないよ!」

「折りたたみ傘持ってますよ、使ってください」

「なんで風真君が入んないんだよ!」

「だって僕と入るの嫌かなって。さっきもずっと黙ってましたし」

「そういう訳じゃないよ、ただ...。ああもう!一緒に傘入って!それでいいでしょ!!」

 

 

 

「でも2人となるとやっぱり狭いですね」

「そうだね...。ああ!風真くん肩濡れてるよ、もっとこっち寄って」

 

柔軟剤のいい香りが僕の鼻腔をくすぐる。

 

「汗臭くないですか?」

「ううん、すごいいい匂いだよ」

「それなら良かったです」

「今日の練習楽しかったかな?」

「はい、疲れたけど楽しかったです」

「風真君は気づいて無いかもしれないけど、練習してる時ずっと笑顔だったよ。バスケが好きなんだなって思った」

「そうなんですね、ちょっとお恥ずかしいです」

「うん、僕ずっと風真君のこと見てたから」

「え?ずっとって...」

「いや!今のなし!忘れてお願い!」

「わかりました。でも今日は天音さんのサポートもあったのでいっぱいシュート打てて良かったです。ありがとうございます」

「助けになったなら良かったよ〜」

「...狭くないですか?」

「...えい!」

「ちょっと天音さん」

「だめ、かな?」

「...今だけですよ」

 

さっきよりも天音さんは僕へ寄りかかってきた。僕は恥ずかしくていちごのように真っ赤に染まっているに違いない。

 

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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