僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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たまには目立ってもいい

 それは帰り道での出来事だった。

 

「はい、これあげる」

「これはなんですか?」

「秘密〜開けてからのお楽しみ」

 

 袋越しの情報だと何か布製のもので輪っか状の物のようにとれた。紫咲さんのことだからいたずらの可能性も考えつつ袋を開けた。

 

「これはリストバンド?」

 

 中身は黒色と紫色が混ざったリストバンドだった。

 

「うん、試合出るんだしあってもいいかな〜って思って、たまにはプレゼントもいいよね」

「そっか、ありがとうございます」

「その代わりいっぱい点決めなかったら罰ゲームね。何がいいかな〜」

「最初からやる前提なのやめてください」

「えーでも決めときゃなきゃやる気も出ないじゃん、うーんじゃあ、今度のお出かけする時ご飯代出してね♡」

「いっぱいっていう基準はなんですか?」

「シオンバスケットあんまりわからないからシオンから見ていっぱい点とったらでいいよ!」

「それ絶対奢るパターンじゃないですか...」

 

 

 

 試合当日は目覚めがいつもより良かった。らしくはないが久しぶりの試合に闘争心が芽生えてるように感じた。今日は色んな人が見に来てくれるという話を聞いている。しらけんの人たちも僕の運動してる姿を見たいということで休日なのに会場に足を運んでくれるらしい。もちろんいろはも来るとのことだ。そのためリラックスしたくても緊張は免れないだろう。

 

「!!びっくりした...」

「何緊張してんだよ」

「いや、久しぶりの試合だからそりゃ緊張もするでしょ...。にしても練習試合なのにギャラリーにこんなに人がいるんだな」

 

 あくまでも練習試合のはずなのにギャラリーには学年問わずたくさんの人が入り乱れていた。

 

「そりゃ〜バスケ部は人気だからな、なんたって俺がい」

「天音さんパスお願いします」

「おい!お前の緊張を解そうと思った俺の気持ちも考えろよ」

 

 柊はいつも通りに見えて少し浮き足たっているように見えた。なんたってあいつのことだ。観客を目の前に血が滾らないわけがないのだろう。

 

「おーい!風真くーん!」

「あ、紫咲さん」

 

 観客席からの呼び掛けに手を振って応える。紫咲さんの周りには大空さんや湊さんといったいつものメンバーが集結していた。個人的に百鬼さんがいることに1番驚いた。なぜなら何となく寝坊しそうだから...。

 

「ッ痛」

 

 殺気がこれでもかというくらいに込められた弾丸が僕の体に直撃した。

 

「風真君、よそ見しちゃダメだよ」

「あ、はいすみません天音さん。僕が悪かったのでもう1回パスをください。あとほんとに怖いです」

「なんでだろう...ねっ!!」

「強っ!」

 

 試合が始まる前に手のひらはりんごの様に真っ赤になってしまった。各チームアップを終え、今にも試合が始まるという雰囲気になった。僕はスタートで出ることを事前に監督に伝えられてはいたが、如何せん緊張は解れていなかった。

 

「大丈夫、風真君はきっとこのチームにいい風を吹かしてくれるから」

「あずき先輩...」

「だから思いっきりやってきて!失敗しても柊君がきっとカバーしてくれるから」

「ええ...俺ですか」

「頼んだぞ柊」

「おうよ」

 

 試合開始1分前。僕はベンチにかけて置いたユニフォームを身に纏い、紫咲さんから貰ったリストバンドを利き手の左手に付ける。40番が僕の背番号だ。観客席を見渡す。本当に練習試合かと疑いたくなるくらいにはたくさんのギャラリーがいた。

 

「実はお前には言ってなかったんだけど、今日は対抗戦なんだ。練習試合って嘘ついて悪かったな」

「は!そんなに大事な試合なのかよ?!」

「だってお前にそれ言ったら断られそうだから仕方ないじゃん〜許してよ〜風真くん〜〜」

「まじで気持ち悪いからやめてくれ柊...。どうりで練習試合なのに人が多いしおまけに大きな体育館でやるわけだ...」

「まあ頼りにしてるぜ」

 

 コート上には各チームのスターティングメンバーが集結した。真ん中のサークルにジャンプボールを飛ぶ選手が相対する。

 

 ピッ!!

 

 試合が始まった。まず先手は僕のチームからだ。作戦通りに動く。相手の選手を払い除けてフリーになったところでパスをもらいシュートを打つ。

 

 スパッ

 

「きゃー!!」

 

 うちの学校にもまるで悲鳴のように歓声をあげる人がいるんだな...。出だしは上場のように思えた。スタートダッシュを上手に切れるかどうかで試合全体にどの程度影響を与えられるかが変わってくる。特に僕みたいなシューターこそスタートで勢いに乗っておきたい。

 

「柊!前!」

 

 味方が相手のボールをカットしたのを見て間髪入れず前を走る。勢いのままそのままレイアップシュートを成功させた。会場も熱気に包まれ互いの応援合戦も加速していった。このまま流れに乗りたいところだったが相手も一筋縄ではいかず多彩なスキルでこっちのチームを翻弄してきた。

 

 

 

 

 前半は互いに譲らずといった展開になり、45-41とこっちのチームが4点リードという状態で前半を終えることができた。

 

「柊もうちょっとちゃんとディフェンスしてよ、抜かれすぎ」

「ごめんって〜。ディフェンス苦手なの知ってるでしょ許してよ〜」

「じゃあ少しはディフェンスに集中してくれよ...。後半は俺にボール集めてください。柊にディフェンスさせたいので」

 

 柊はThe・脳筋といった感じでチームの1番の点取り屋だった。しかし同時にディフェンスの時は穴となり、そこを上手く相手チームにつかれていることは素人目から見ても明らかだと思う。

 

「じゃあ後半は風真中心でいこう」

 

 前半は黒子役に徹してきたんだ。少しワガママ言っても許されるだろう。

 あとこんなに観客がいるんだ。たまには目立ってもいいよね?

 

 

 

 後半は宣言通り僕中心にオフェンスが回っていった。僕のデータはあまりないことを利用し着実に点数を重ねていった。おまけに柊のディフェンスも締まりチームは強固なディフェンスを敷くことができた。後半終了10分前で僕はスリーポイント6本を含めた27得点。柊は前半ほど得点には絡まなかったが20得点にのせた。

 

 スパッ

 

 試合終了3分前、僕の今日8本目のスリーポイントは相手の勝てるかも、という希望を打ち砕くには十分だったと思う。そのまま最後は一方的な展開になり試合は94-80で幕を閉じた。

 

 

 

「にしてもお前は久しぶりの試合で33得点か!いや〜参った参った」

「そりゃあ僕中心でいかせてくれって豪語したんだから期待には答えなきゃいけないなって」

「でもお前結構熱くなってたな、相手に詰め寄る姿なんて初めて見たぞ」

「いや〜あれはなんというか、試合の雰囲気に呑まれちゃったというか」

 

 実は試合中相手に故意的に押されたため、ついかっとなってしまった。会場は少しどよめきがあったと言っているが、集中していたため全く気にはならなかった。

 

「風真君お疲れ〜」

「ああ、紫咲さん。そしてみんなも」

「スバルはずっとヒヤヒヤしてたんだからな!特に前半。風真君最初から本気出してたら結構余裕だったんじゃない?」

「スバルはずっと叫んでたんだよ。あてぃしの鼓膜破れちゃうんじゃないかって思った...」

「実はコートの上でも少しだけ聞こえてましたよ。試合に関してはそんなことはないと思います。相手もしっかり強いので」

「余は風真くんが怒った時が1番恐怖を感じた余...」

「ちょこもそれにはびっくりした〜」

「あれはまあ...熱くなっちゃっただけで怒ってはないですよ」

「風真意外と熱いんですよ、試合中はずっと俺にパスくれ!!っていつもでは見られない意外な一面を...」

「あーそれ以上は恥ずかしいから言わないでくれ!」

 

 

 

「案外ミーティングって早く終わるんだな。紫咲さんに一緒に帰ろうよって言われてたのに、これだったら断らなくて良かったな」

「...お疲れ様」

「あれ、星街先輩、誰か待ってるんですか?」

「...だよ」

「え?」

「風真君を待ってたの!」

「え、そうなんですか?」

「うん、良かったらすいちゃんと一緒に帰ってくれないかなって」

「ちょうど誰も一緒に帰る人いなかったので大丈夫ですよ」

「ほんと?やった」

「はい。今日の試合どうでしたか?」

「うーん、なんかいっぱいシュート入るなーって思った。後はバスケットしてる時に風真君すごい楽しそうだな〜ってすいちゃんは思った」

「そうなんですか?自分では全くそんな感じしないです」

「しらけんのみんなもきっと思ってたよ、それくらい楽しそうだった。いつもは静かなキャラなのに熱い1面もあること知れてなんか少し得した気分」

「でも少し恥ずかしいです、普段は目立たないようにしてるので」

「目立たないようにしてるって言うかね〜風真君は前々から結構目立ってたよ?」

「え?」

「うん、おまけに今日の活躍で女子の人気はまた増えたと思う」

「...それは困ります」

「もう取り返しはつかないよ。精々運命に抗えるように努力するんだね」

「善処します...」

「でも風真くんの周りにたかってくる女子は全員すいちゃんが始末するから安心して?」

「サラッと怖いこと言わないでください...」

 

 その後も他愛もない話が続いた。星街先輩とサシで話して、しかも一緒に帰ってるなんてことが学校中に広がったらファンの人たちに滅多刺しされるんじゃないかと思い言葉にはならない恐怖感が僕を襲った。

 

「星街先輩、今日はありがとうございました」

「?なんで?」

「まさか2人で帰れるなんて思ってなかったので、あれだけ歓声貰って1人で帰るのはやっぱり虚しいじゃないですか。先輩と一緒に帰れて僕すごく楽しかったです」

「...うん。すいちゃんも風真君と一緒に帰れて良かった」

「はい、それじゃあ僕はこっちなので」

「ねえ!」

「はい?」

「その...、今日かっこよかった!すごいかっこよかった!」

「...ありがとうございます」

「じゃ、じゃあね!またしらけんで!」

 

 試合の熱気が冷めやまぬのか星街先輩のせいなのか、僕の体は再び感情が沸き立ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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