学園祭が終わってからというと、僕たちは普段と変わらない生活を送っていた。興奮冷めやまぬといったわけでもなく、2日、3日経てばみんな普段と何変わらなぬ顔になっていた。学園祭マジックの魔法は解け、12時を回ったシンデレラのようだった。
「そういえば、風真君はいろはのお兄さんだったんだな、スバル驚いたわ。だってあんまり似てないし」
「いやよく言われますよ」
「だろ!俺も似てないって何回も思ってる!」
「...いやまあ、そうだね。それにしても今日で学校終わりですね」
「ついに明日から夏休みだ余〜」
「だね〜シオンは今年はいっぱい遊ぶんだ!」
「いいわね〜シオン様去年は補習があったものね」
「あれは事故だってw事故」
「今年はなくてよかったね、シオンちゃん」
「まあ当たり前でしょ〜」
今日は夏休み前最後の登校日だ。もう既にホームルームは終わっていて、仲のいい人たちで教室に残ってただただ駄べっていた。
「じゃあみんな、また」
「おう!」
「ばいばい〜」
僕たちは夏休みの予定を立てたあとそれぞれの帰路についた。みんなでプール行こうぜ!という柊の鶴の一声のあと、トントン拍子で話が進んで行った。水着姿の女子を見れるだけで眼福である。
「ちょっと、なににやけてんの?気持ち悪いんだけど」
「いや、特に何も...」
「じゃあ尚更キモイんですけど〜w」
「ていうかこんなに天気悪かったですっけ?今にも雨が降りそうですね」
「それな〜、シオン今日折りたたみ傘持ってきてないよ」
「僕もですよ...って降ってきましたね」
「しかも結構強くない?雨粒も大きいし」
「走ります?」
「え〜おぶってよ」
「それは無理です、走りますよ」
僕らは強まる雨足中走り続けた。シオンさんのペースに合わせながらだったから僕は駆け足に近かった。
「僕の家寄ってください」
「え?シオンの家結構近いから大丈夫だよ」
「いや、まだ強くなりそうなのでとりあえず1回避難しましょう。なにかあってからでは遅いので」
体を少しでも雨に当てないようバッグを頭の上に持っていったが、それは最早気休めでしか無かった。おかげで僕もシオンさんも濡れに濡れ僕の家の玄関には雨粒が滴り落ちていた。
「ちょっと待っててシオンさん、今すぐタオル持ってきてお風呂も沸かすから」
まずはシオンさんが風邪を引いてしまわないようにバスタオル、後はお風呂の準備も合わせて始めた。幸いにも昨日お風呂掃除をしていたため、浴槽は客人に入ってもらっても大丈夫なくらいには綺麗なはずだ。
「シオンさん、これ。あと今浴槽にお湯ためてるから少し待ってて。シャワーでいいならもう入れますよ」
「うんありがとう。それにしても遥の家は綺麗だね〜。え!なにこれ、小さい頃の遥の写真?可愛い時もあったんだ〜。でもなんかお母さんとお父さんはいろはちゃんに似てるけど遥は似てないね」
「...一応飾ってるんです、家族のこと思い出せるように。って言っても別に亡くなったわけじゃなくて進学に際して一人暮らししてるだけなんですけど」
「いいな〜一人暮らし、でもいろはちゃんがいるじゃん」
「でも去年までは1人でしたよ、今のように帰ってきても誰からもおかえりなんて言ってもらえませんでした。って考えたらいろはが来てくれて良かったし、もう1回家族と暮らしてみたいなって思います」
「へ〜意外と寂しがり屋なんだ。なんか可愛いねw」
「否定はしませんよ。人肌恋しくなる時は僕にだってありますから」
「ふ〜ん、女子の間では硬派って言われてる遥にもこんな一面があるんだね〜。広めちゃお〜ww」
「それだけはやめてください」
「女子の情報網舐めてもらったら困るから!じゃあシオンはお風呂入ってくるね、お先失礼します〜」
「...黒なんだ」
実を言うと雨のせいで下着が透けて見えてしまっていた。白色の制服に黒のキャミソールなため余計に際立って見えてしまった。シオンさんは気づいていたんだろうか...。
「着替え置いておきますから。ゆっくり入ってもらって大丈夫です」
「ありがとう〜!」
テスト勉強の時に家に上がってもらったはずなのにやけに意識してしまっている自分がいた。ドアを隔てた先に生まれたままの姿で浴槽に浸かるシオンさんがいる。呑気に鼻歌を口ずさむシオンさんとは対称的に僕の脳内には様々なことが錯綜していた。
真っ暗なリビングに打ち付けるのは激しい雨の音、僕の鼓動のペースと全く同じように感じた。何故だか電気をつけるという選択肢は僕にはなく、ベチャベチャな制服のままソファに腰を下ろす。今日いろはは学校最後の日という名目で友達の家に泊まりに行くようだ。僕たちと同じように雨に当たってないことを切に願った。
<似てないね>
柊にも言われた。おまけに大空さんにも。むしろいろはと僕、両方を見たことある人ならば声に出してないだけで違和感に気づいてるはずだ。そりゃあ似てるわけなんてない。
「おっまたせー。遥のTシャツ大きすぎでしょwやばすぎ〜w」
「ああ、シオンさん。どうでしたか?湯加減は」
「体冷えてたし最高だったよ〜、ってなんで電気も付けてないのさw、ほら電気つけるよ〜。え!しかも制服着たまんまだしベチャベチャじゃん!w、しっかりしてよも〜」
「...ごめんなさい」
「...どうしたの?」
「...」
お風呂へと一直線だった。シオンさんの問いに答えようという気分ではなかった。しかし湯船に浸かって後悔した。着替えてリビングに行けばシオンさんがきっといるはずだ。気まずい。勝手に辛気臭くなってこの様だった。柊にも散々言われてきたはずなのに、似てないの一言は僕をダウンさせるには十分な威力だった。シャンプーを一生していたい気分だった。
「...すみません今戻りました」
切り替えは終わっていなかったがもういっそのこと振り切れてしまっていた。
「...隣来てよ」
「え?」
「いいから早く!ここ!」
僕は言われるがままシオンさんの隣に座った。初めて躾される犬のようだった。
「シオンには遥の考えてることなんてわからない。もし魔法少女だったらわかってたのかもしれないけど。でもシオンはそんなことできない。話してよ、1人で落ち込むくらいならシオンも一緒に落ち込ませてよ」
「...わかりました。長くなるんですけどいいですか?」
「うん、吐き出せばきっとスッキリする」
無言で頷くシオンさん。僕のダムは決壊した。
「さっき似てないって言ってましたよね。そうなんです、似てないのは当然なんです。僕だけ家族とは血が繋がってません。そりゃあブロンド髪の家族に1人だけ黒い髪が紛れ込んでたらおかしいじゃないですか。僕は1歳の時に捨てられてたみたいなんです。それを偶然風真家に拾ってもらったんです」
「...拾われたって...」
「漫画でしかありえないと思っていました。でも今の両親に聞いてみたんです、中学3年生の時に。でも聞かなきゃ良かったなって思ったんです。だって聞かなかったら僕には今の両親しかいないってずっと思い続けれたはずですから。そりゃあ少しは疑問でしたよ、なんで自分だけ髪の色が違うんだろうって。ふいに冗談半分で髪の話を聞いてみたんです。そしたら僕は血が繋がってないって」
「...」
「おまけにダンボールに入れられてたらしいです。いや捨てられた犬かって。しかも冗談で聞いたのに...だったら冗談で返してくれたっていいじゃないですか...」
シオンさんは唖然としているようだった。僕は話すことをやめない。
「その話を聞いたのは今日みたいな天気の日でした。だから少しだけ思い出しちゃったんです。もし聞かなかったら僕は1人の風真家の一員で居られたのかなって今でも思います。でも捨てられたのは小さい頃の話で僕は全く覚えてないんです、昔の両親の顔もわかりません。笑い話にできたらよかったんですけどね、僕最初ダンボールに入ってたらしいよって。でも、僕には...できません」
「...」
「それを聞いた翌日から僕は中学の友達に言いふらしちゃいました。さっきも言ったように笑い話にしてしまおうと道化を演じようとしました。ことある度にそれを棚に上げてました、悲しさをできるだけ和らげるために。でも友達は徐々に離れていってしまいました。悲劇のヒロイン演じてウザイって」
「ウザイってどういうこと?!ありえないって!」
「でも友達...いや友達だった人たちの言い分もわかるんです。確かにその話しかしてなくて変な雰囲気にさせてしまったのは自分ですから」
「それもあって地元を離れることにしたんです。心機一転、落ち着いた暮らしがしたくて」
「おかげで今は幸せですよ。今の両親はずっとサポートしてくれて、友達はいてシオンさんもいる。この上ないです。でも...血は繋がっていない事実は変わりません。今後も僕をつきまといます。だからたまに感傷に浸っちゃうんです。ごめんなさい」
「謝ることじゃない。むしろシオンこそごめんね...。似てないなんて...言っちゃって...シオンのせいだよね...」
「...泣かないでください。シオンさんは悪くないです。悪いのは勝手に傷ついた僕ですから」
「違う!シオンが悪い!遥の気持ちなんにも考えないでいつものようにからかって、遥の気持ち踏みにじって...」
「いいえ、むしろ疑問に思うのが普通だと思いますよ」
「でも...」
「僕はシオンさんに話を聞いてもらえて少しスッキリしました。初めてこっちにきてこの話をしたので、だからそんなに謝らないでください。むしろありがとうございます、聞いてくれて」
「...うん」
「僕が言うのもなんですけど...シオンさんには笑ってて欲しいです。その...僕も元気もらえますから」
「...ううん」
「わ!びっくりした...」
シオンさんは僕に向かって抱きついてきた。僕とシオンさんの距離はもはやゼロだった。
「無理だよぉ...。ねえ、もう似てないなんて言わないから嫌いにならないでよ...」
「嫌いになんてなりません。じゃあ今の間は、抱きついててください。その...僕もできればこうしてたいです...」
僕たちは初めてハグをした。シオンさんからは同じシャンプーを使っているはずなのにやけに鼻腔をくすぐる匂いがした。可能であればずっと嗅いでいたかった。
「泣き止みましたか?」
「...うん」
「良かったです」
「...まだ」
「え?」
「まだ足りないから...」
もう普段のいたずらっ子の面影はなかった。
とりあえず夏休み前で一段落です。ここまで閲覧してくれてほんとうにありがとうございました!
次は夏休み中の話を何話か書いた後に二学期編にしようと考えています。
て言っても日常生活を主にするのは変わりません。まだ出てきてないホロメンも結構いるので、なんとかします(笑)。今のところ1期生とゲーマーズ、リグロスが出てないのですが、リグロスは今のところ出すのはもっと先になると思います。ごめんなさい。
こんなシチュエーションがいい、やこんな展開どうですか等あったらぜひ待ってます!!
重ねてにはなるのですがここまで閲覧していただきありがとうございました!!
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい