僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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頑張れ古海君

 俺にはずっと気になっている人がいた。

 

「ね、古海君。ノート見せて余」

 

「ノートですか?はい、どうぞ」

 

「お!ちゃんと書いてるね〜。余授業寝てて何も書いてない...」

 

「はは、まあ授業眠いし仕方ないですよ。終わったら返して」

 

「はーい」

 

 

 そそくさと自分の席に戻ってノートを写す彼女に目線は嫌でも向いてしまう。ノートに顔を近づける度に垂れてくる触覚を耳にかける姿に色気を感じ視線は釘付けだった。

 

 

「どうした古海、百鬼さんの方見て。なにかあったか?」

 

「ああ委員長、なんでもない」

 

 

 なんでもないわけではないが許して委員長、俺はひとりでに静かに恋をしていたいから。

 

 

「なあ古海、お前も一緒に夏休み遊ばないか?」

 

「え、俺が?」

 

「お前以外に誰がいるんだよ。あとは柊もいるし風真もいるぞ」

 

「ふ〜ん。行ってもいいなら俺も行こうかな、どうせ暇だし」

 

「決定な、夏休み中全部予定空けとけよ!」

 

「いやばかやろう」

 

 

 ひょんなことから夏休み中に遊ぶことが決まった。男4人、贅沢を言うなら女子もいればそれこそ青春って感じがしたけど多くは望まないことにした。

 

 

「風真!どうだった?」

 

「うん、大丈夫だったよ委員長、みんな来れるって」

 

「お!まじ?風真に頼んで正解だったな委員長」

 

「え?どういうこと風真?」

 

「ああ古海には言ってなかったんだ。実は男だけじゃ物足りないよねって委員長と柊が。だからじゃんけんで負けた僕が女子を誘うことになって、無事成功したんだ」

 

「ああ、そうなんだ...。ちなみに誰?」

 

「大空さん、癒月さん、湊さん、紫咲さんそして百鬼さんだな」

 

 

 俺は心の中で小さくガッツポーズをした。夏休みは思い馳せ脳内のメモリーを辿ることでしか会うことのできない百鬼さんと遊ぶ機会を得られたのだから。百鬼さんの連絡先を持っているにしてもチキンな僕は一言にメッセージを送ることすらまなならない。

 

 

「じゃあ今日の放課後予定を組むから残れよ」

 

「はいはい」

 

 

 実を言うと今日は既に予定が埋まっていた。しかしそんなことはお構い無し、僕は放課後の教室に残ることに決めた。

 

 

「じゃあプールに決定で!スバルがみんなの連絡先持ってるからあとでグループに招待しとく!」

 

「ありがとう大空さん!じゃあ今日は解散で、また夏休みに!」

 

「ばいばい〜」

 

 

 小1時間程度で予定は組まれた。10分程度で終わってしまうような、簡単な集まりだったが夏休み前ということもありみんなの話が弾んでしまった結果だ。今はその周回も終わり友達と帰る人、家が同じ方向だからと言って女子と帰る不届き者もいた。僕はというと足早にその場を後にしてしまった。

 

 

「あ、雨...。折り畳み傘持ってて正解だった」

 

 

 急に雨が降ってきた。さっきまでの快晴はどこへやら、それは重々しい黒色1色だった。今日傘を持ってきてない人は気の毒だなと思いながらいつもの帰路を辿る。すると近くのバス停に見慣れた影が見えた。

 

 

「あれ百鬼さんどうしたの?」

 

「あ古海君!雨が降ってきて帰れなくて困ってるんだ余〜」

 

 見るからにしゅんとしている百鬼さん、ところどころ濡れているところを見るに傘を持っていないことは一目瞭然だった。

 

「...赤」

 

「赤?ってああ!!...古海君の変態、ばか」

 

「あ、いやこれは不可抗力というか!...ごめんなさい」

 

「全くもう...。雨のせいにしといてあげる余」

 

 

 何がとは俺の口から言うまでもない。透けていたのである。百鬼さんらしい元気いっぱいな赤色、らしいなと感心してしまった。

 

 

「傘貸しますよ、俺家そろそろ着くんで走って帰ります」

 

「え!だめだよ、古海君風邪引いちゃう」

 

「大丈夫、百鬼さんが風邪をひくよりよっぽどマシ。女子なんだから体に気を使ってください」

 

「む〜。女子かどうかは関係ない余。この雨の中余だけが傘さして帰るのはやだ!」

 

「う〜ん、でも傘は1本しかないし...」

 

「それならさ!」

 

 

 すると百鬼さんは地面に置いていたバッグをひょいと担ぎ、俺の傘を奪って俺の隣に身を寄せた。所謂相合傘だ。

 

 

「これならどっちも濡れずに済む余!」

 

「...そうですね」

 

「え、余と傘はいるのいや?」

 

「いやそういう訳じゃなくて...」

 

 

 百鬼さんと俺の身長差は軽く見積って20cm差はある。傘を持っている百鬼さんは背伸びをしてようやく傘を俺の頭まで持ってこれるくらいで、見るからに体勢がキツそうだった。

 

 

「傘俺が持ちますよ、貸してください」

 

 

 結局俺が持って帰り道に着いた。俺の家はすぐ近くだったが百鬼さんの家は奥の方らしく一緒について行った。

 

 

「送ってくれてありがとう!じゃあまた夏休みにね!」

 

「ばいばい」

 

 

 何事もなく今日はお別れとなった。何も無かったことを喜ぶべきか喜ばないべきか。ちなみに俺は百鬼さんに傘を傾けていたため右肩はびしょ濡れだ。まあ名誉の証にしようと思い思う存分濡らしてやった。

 

 

<やっぱりプールじゃなくてネズミの国にしない?>

 

 

 大空さんの提案でことは一気に動き始めた。トントン拍子で話が進んでいき結果として大空さんの提案の元某テーマパークへ行き先を変更した。その変遷を僕は既読スルーで見守っていた。積極的に発言するほど目立つ存在ではないから。ちなみにこの段階で男子を1名追加し、ほぼ合コンが完成していた。

 

 

<せっかくなんだしくじ引きでペア決めるのはどう?みんなで回るのもいいけど10人じゃ多いと思う>

 

 

 癒月さんの提案は不満の声なく承諾された。もしかすると百鬼さんと2人きりで回れる絶好のチャンスが訪れるのではないかと心が躍った。前日は遠足が楽しみで寝れない小学生のように目をバキバキにしながら翌日を夢見て眠りについた。

 

 

「あ!古海君、一番乗りなんだ」

 

「ああ大空さん、おはよう」

 

 

 俺は柄にもなく一番乗りで集合場所に着いた。その後も続々と人が集まってきたが俺の目線はただひとりの人に向けられていた。行きのシャトルバスは気が気ではなかった。楽しさ反面緊張さも同時に感じていて感情の起伏が激しかった。

 

 

「じゃあ早速クジ引いちゃいますか!スバル作ってきたから、ほら早く引いちゃって!」

 

 

 待ちに待ったくじタイムがきた。結論から言うと俺は5の書かれたくじを引いた。

 

 

「5番の人〜?」

 

「あ、はい!余だよ!古海君よろしくね」

 

「え?!あ、あ、よ、よろしく...お願いします」

 

 

 嘘かと思った。まさか5分の1を引き当てられるなんて夢にも見ていなかった。今なら空へと飛び立てるような、そんな気がした。

 

 

「まずはどこ行こっか、古海君」

 

「ここはどうですか?俺いっぱいマップ見てきたんで大体の位置わかるよ」

 

「え!そんな気合い入れてきたんだ!頼りになるね」

 

「え、まあそうですね〜」

 

「じゃあ古海君の言ったところにしよう!余あんまりわからないから案内よろしくお願いします」

 

「う、うん」

 

 

 多分百鬼さんから見たら今の俺の歩き方ロボットの兵隊のようにガチガチな気がする。それくらい緊張していた。

 

 

「...どうしたの?さっきから古海君変」

 

「え!えっと...」

 

「もー素直に話して余!せっかくの楽しい一日が台無しになっちゃう余!」

 

「...いや、えーと。実は俺百鬼さんといっしょになれて嬉しいな〜なんて思って...」

 

「え...」

 

「ご、ごめん!気持ち悪かったよね!最初からこんな感じで...、ほんとごめん!今からでもペア変えてもらえるか」

 

「いやだ余」

 

「え?」

 

「余だって古海君といっしょに回りたいな〜ってずっと思ってたのに、勝手に変えたらやだ」

 

「あ...そ、そうなんだ」

 

「「...」」

 

 

 このあとどうすればいいかわからなかった。人混みに飲まれながらどこかへ行ってしまいたい気分だった。でも逃げ出すのは男として最悪だ。

 

 

「俺!あの...」

 

「...うん」

 

「ずっと百鬼さんのこと!気になってた。その、それで今どうしたらいいかわからな...わかりません」

 

「あはは!w」

 

「ちょっと百鬼さん!」

 

「いや〜ちょっとおかしくってwごめんね」

 

「...」

 

「古海君なら今余がどんな言葉が欲しいかわかると思うな。きっと余と古海君が考えてること、同じだと思うし...あー!もう恥ずかしい余!古海君どうにかして!」

 

「え」

 

「ちょっとしっかりして余!余は古海君の口から聞きたい」

 

「...百鬼さんと学園祭とか、その学校生活とか一緒にいて楽しくて、それで気がついたらずっと百鬼さんのこと見ちゃってて...。それで!百鬼さんのことが...す、好きなんだなって思いました」

 

「...はい」

 

「だから俺と...付き合ってほしいです」

 

「...ふふ」

 

「...」

 

「同じで良かった!」

 

 

 人目をはばからず百鬼さんは俺に向かって一直線にダイブしさっきまでの距離はゼロになった。夜、夜景を見ながら最後に告白、なんてロマンチックなことは俺にはできなかった。学園祭、クライマックスの時に魔法に操られながら告白も俺にはできなかった。でもひょんなとこから想いが伝わった今を楽しみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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