僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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僕は潔白です

「なんか隣のクラスと体育一緒にするって新鮮だな」

 

「そうだね。普段はこんなことないし」

 

「球技大会のおかげだな。今年はバスケだから張り切っちゃいますか!」

 

「まあほどほどにしなよ」

 

 

僕たちは球技大会を1週間前に控えた。そのため普段の体育の授業も変則的になり、隣のクラスと合同で行うことになった。他クラスがどんな感じか感触を確かめる意味でもこの案は理にかなっているだろう。

 

 

「柊君、風真君」

 

「あ、かなたさん!そういえばこっちのクラスだったな」

 

「天音さんってこのクラスなんですね」

 

「このクラスだったんだって隣だからわかるでしょ!さすがに」

 

「まあまあ落ち着いて、そっちのクラスはどんな感じ?」

 

「う〜ん、こっちにもバスケ部員はいるし結構対等に戦えるんじゃないかな。なんたって気合い入りまくりだし男子は」

 

「まあそうですよね。通りでさっきから周りが暑いと思いました」

 

「まああっちのクラスだけじゃなくて俺らのクラスも、だけどな」

 

「風真君たちはどうなの?いい感じ?」

 

「もちろん俺らはいい感じだ!なんたってこっちには風真っていう秘密兵器がいるんだから!」

 

「そんな誇張しないで...、でも手を抜くつもりもありません」

 

「そっちの方がこっちの男子も喜ぶよ、まあお互いに頑張ろうね」

 

 

天音さんは自分のクラスの輪へと戻り、和気あいあいとバスケを楽しんでいた。

 

 

「天音さんの友達、髪の色派手だなぁ」

 

「え?あぁ確かに言われてみれば」

 

「紫の人もいればピンクの人もいておまけに黄色い髪の人もいる。クラスの人たちも覚えるのには困らなさそうだね」

 

「て言っても俺らのクラスも十人十色の髪色だけどな、他人事じゃーない」

 

 

その後アップをしたあと、体育科の先生が用意したビブスに身を包み、みんなで円陣を組んで士気を高めた。前哨戦ではあるが僕たちにとっては初陣なわけで、初戦を勝つかどうかで今後のモチベーションにも繋がってくるし、なんとかして勝利を手にしたい。

 

 

「頑張れー!風真君」

 

「柊様もね〜」

 

 

ギャラリーには女子がいる。体育館は別のところにもあるが体育科の教師が粋な計らいをして男女の試合を互いに見届けてあげようということになった。おかげでこっちの士気は爆上がり、みんないつもよりもやる気に満ち溢れている。

 

 

ピッ!

 

 

ジャンプボールの笛がなり、先生の持っているボールは高々と上げられ試合が始まった。柊が上手くタイミングを合わせたかいあって僕たちボールから試合が進む。

 

 

「はい!」

 

 

元気よくパスを要求する声の方にボール供給する。しかし気合いが入りすぎたためかボールはリングに当たることもなく相手の手に渡ってしまった。

 

 

ガコンッ!

 

 

それは相手側にも言えることで力みがあったのか、勢いよく放たれたレイアップシュートは運悪くリングに嫌われた。試合開始3分はこの硬直が続き見ている方ももちろん僕も焦りを感じていた。

 

 

(ちょっと情けないけどな...)

 

 

そういう気持ちはあったが僕はここで試合を動かすためにテコ入れを図る。僕についているのはバスケ部の子で実力も僕が助っ人にきていた頃よりも伸びていることを雰囲気で感じとれた。

 

 

スパッ!

 

 

僕はそのマークを振り切るようにドリブルをついたあと、1度スリーポイントラインまで下がってシュートを放った。ボールが手から離れた瞬間、我ながら惚れ惚れするような鼓動を描き、両チーム合わせて最初にリングをくぐり抜けた。

 

 

「すげぇ」

 

「やっぱ風真だよな...」

 

「頼りになるわぁ...」

 

「あいつを止めなきゃやばいって言っただろ!」

 

「ディフェンス厳しく行こ!」

 

 

僕のシュートを皮切りに相手チームに喝が入りギアが1段階ましたように見えた。僕たちは立て続けにレイアップ、スリーポイントを2本浴び、点差は3-8と5点ビハインドで前半を終えた。

 

 

「後半は7分だからな!前半と違って5分じゃないぞ!」

 

「わかってるわかってる」

 

「柊も攻めたらどうだ?」

 

「もちろんこれから攻めるわ!任せろってお前たち!」

 

「風真もいける時いきなよ」

 

「そのつもりだよ」

 

「なんたって女子が見てる!ここで負けたら俺たちの青春はないぞ!!」

 

「「おー!!!」」

 

 

前半逆転されて迎えた後半戦。点差も相まって僕たちのクラスは俄然気合いが入っていた。

 

「風真君!」

 

「む、紫咲さん?」

 

「スリーポイント2本入れなかったら罰ゲームだからね!」

 

「えぇ...」

 

 

ホイッスル前に紫咲さんが僕に向けて野次を飛ばしてきた。野次と言ってもそんなに汚いものではないが。振り返ると紫咲さんがニシシと綺麗な歯をこれでもかと見せつけるように笑っていた。

 

 

ピッピッピー!!

 

 

それと同時に相手チームが放ったボールは反対方向の壁に当たり残念ながらブザービートとはならなかった。結論から言うと20-16で僕たちのチームが試合を捲った。約束通り僕はスリーポイントを2本沈め、柊は本領を発揮、周りのクラスメイトも着いてきてくれた甲斐あって7分で17得点を上げることに成功した。

 

 

「鈍ってないじゃん」

 

「もちろん、たまに公園でバスケするし。今は生徒会があってできてないけど」

 

「え!俺そんなこと知らないんだけど!なんで誘ってくれないんだよ!」

 

「柊は部活で忙しいでしょ」

 

「あ、それもそっか」

 

 

勝利のあとは男女入り乱れて初白星をみんなで祝福した。良かったな、こんなに女子たちに褒めてもらえて...。男子が終われば必然的に女子の番。僕たちは体育館わきにはけて女子を応援する。

 

 

ピー!

 

 

試合が始まってからというもの、女子たちは日頃のストレスを発散するかのように勢いをました。周りにいる男子は絶句するくらいの気迫を感じていた。

 

 

「紫咲さん!頑張れ!」

 

 

途中から紫咲が出場した。145cm程度と小柄な紫咲さんは女子と一緒にいてもその低さは目立つ。特にバスケという競技においては尚更だ。

 

 

「紫咲さん!そのままシュート!」

 

 

相手が弾いたボールをちょうどよく紫咲さんがキャッチし両手を使ってめいっぱいリングに向かってボールを飛ばした。

 

 

リングの周りを1周、2周とし周りの人たちを焦らすかのように最終的にはリングに吸い込まれていった。

 

 

「いたっ!」

 

 

声の主は天音さんだった。どうやらジャンプをしたあと、着地地点に相手の足があり、それを踏みつけた結果足を捻ってしまったようだった。僕はそれを見た瞬間、観客であることを忘れ、まるで大会のスタッフかのように迅速に天音さんの元へと駆けつける。

 

 

「アイシングした方が良さそうです。僕が保健室まで運ぶので先生は試合を進めても大丈夫です」

 

「ほんとにいいのか風真、お前一人に任せて」

 

「大丈夫です。任せてください」

 

 

僕は華奢な天音さんを背中におんぶし体育館を離れ保健室へと向かった。周りからは黄色い声が聞こえたが今はあまり気にならなかった。

 

 

「...ごめんね風真君」

 

「全然大丈夫です。それと背中臭くないですか?汗かいてるので不快な気持ちにさせたらごめんなさい」

 

「いやいいっていいって!むしろいい匂いがすると言うか...」

 

「?」

 

「なんでもない!」

 

「とりあえずここに座ってください」

 

 

僕は天音さんをベッドへと下ろし、色々な救急キットが入っているであろう棚を漁った。湿布を発見し、その後氷をバケツに入れアイシングができる環境を整えた。

 

「少し我慢してください、冷たいですよ」

 

「大丈夫だって〜かなたそだしこれくらい...って冷た?!」

 

「だから言ったじゃないですか...」

 

「ねえ...まだ?」

 

「まだ入れて10秒くらいしか経ってません」

 

 

あまりに冷たさに悶絶している天音さんを見ていると何故か申し訳なくなってしまった。

 

 

「もう限界!無理...」

 

「まあ多分大丈夫だと思います。足拭きますよ、痛かったら言ってください」

 

「わ、わかった...」

 

 

黙々と天音さんの足を丁寧に拭く。邪な気持ちを持っていると疑われたくないから親切丁寧に足を拭いてあげた。

 

 

「...これで大丈夫です。今歩くと痛いと思いますから少し安静にしといてください」

 

「わかった、ありがとう風真君!」

 

「...僕はとりあえず保健室の先生を呼んで...うわっ!」

 

 

僕はベッドに座っている天音さんに引っ張られ勢いよく隣へと腰を下ろした、いや下ろされた。

 

 

「...まだ行っちゃダメ」

 

「でも」

 

「ダメ」

 

 

怪我をしていると心細くなる気持ちは何となくわかる。報告を後回しにし、クラスの人たちには悪いが応援は本番の日まで取っておくことにした。

 

 

「...風真君はやっぱりバスケット上手だね」

 

「そんなことないです」

 

「そんなことあるんだよ!多分今の部員の中でも一二を争うくらい上手」

 

「...ありがとうございます」

 

「やっぱりバスケ部入ってくれたらな」

 

「...それはできません」

 

 

申し訳なさで頭を下げた。天音さんの柊の期待に応えたいとは思っているが体がそうは言っていなかった。

 

 

「...だよね、言っても変わらないってわかってるよ」

 

「...はい」

 

「...僕はやっぱり風真君のバスケが見たいよ。でも風真君が決めたことなんだからしょうがないと思う」

 

「...」

 

「だ、大丈夫!責めてるわけじゃないよ!たまにでいいからバスケしてる姿僕に見せて欲しいな」

 

「わかりました」

 

「言ったね?約束だよ?」

 

 

それからは少し談笑をし気がついたら授業終了5分前だった。

 

 

「頭撫でてよ」

 

「え?」

 

「ほら」

 

 

僕は言われるがまま天音さんの方に近い手を頭の上に持っていき上から下に頭を撫でる。

 

「...さらさら」

 

「ふふ、少しくすぐったいよ」

 

「ずっと触っていても良いくらい心地い」

 

「天音ちゃ大丈夫なのらー?!ってなにかあったのら?」

 

「い、いや何もありません」

 

 

髪を梳くのに夢中になってしまってはいたが間一髪で腕を引っ込めて潔白であることをアピールした。紫色の髪をした人に睨まれてしまったがお願いされた身なんだから今回ばかりは見逃して欲しい。もう少ししていたかったなんて口が裂けても今は言えない。

 

 

「湿布ありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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