「ただいまより球技大会を開催します」
2年生を取り仕切る兎田さんの開会宣言で僕たちの球技大会は幕を開けた。開会式中特に男子はソワソワしていて今か今かと待ちわびている姿が壇上から見えた。1年生の頃はみんなと一緒に整列して試合を待つ立場だったが今年からは体育館のステージで球技大会を運営する立場となった。
「とりあえずマニュアル通りに球技大会を進めるペコ。あんたには少し期待してるペコだから心配はしてないペコ」
「期待に応えられるように頑張ります」
「て言ってもぺこーらたちの仕事は得点集計して決勝のチームを決めたり、審判に割当たってるクラスが来てなかったら叫んで呼ぶくらいの仕事しかないペコ。それ以外はここに座ってゆっくり試合でも見て楽しめペコ」
「わかりました。お互いに試合の時は1度ここを離れる感じで大丈夫ですよね?」
「もちろんペコ。ぺこーらたちだって一生徒なんだから学校行事は楽しまないとペコ!」
「そうですね。あ、アップの時間終了です!アップ用のボールを審判のクラスに預けてください!」
「仕事が早いペコ、その調子でマイクで呼びかけるペコ」
兎田さんの言ってた通り基本僕と兎田さんは仕事に縛られているため体育館のステージから動くことはあまりない。クラスの人たちと一緒に楽しむことは厳しいが自分で選んだ道を今更後悔はしていない。
ピッ!
「あ、始まりましたよ」
「ステージ側を男子にして正解だったペコ。なんたって見どころが沢山あって退屈しないペコ」
「そうですね。いや〜バスケしてるとこ見たら僕も今すぐやりたくなってきました」
「そう焦らなくてもじきに来るペコ。確かあんたは3試合目が最初の試合であってるペコ?」
「はい、兎田さんは次ですよね」
「そう、その間は1人で繋いでくれペコ」
ホロライブ学園は1学年8クラス制のため学年毎に球技大会が行われる。僕たち2組は4組、6組、7組と一戦を交えたのち優秀な成績を収めれば決勝へとコマを進めることができる。
「前半終わりましたね。お、5組勝ってる」
「でも1点差だからどうなるかまじでわからないペコ」
後半は前半よりも勢いが増し、ボールへ食いつく姿はさながら飢えた猛獣のだった。残り1分のところで8組が逆転のスリーポイントを沈めたが、残り10秒を切ったタイミングで5組が同点のジャンプシュートを決め、そのまま試合終了のブザーがなった。
「いや〜大接戦ペコ。これで得点集計間違ったら大ブーイングペコ」
「1点でだいぶ左右されそうですね。あとは僕に任せて兎田さんはアップに行ってきてください」
兎田さんを見送り僕は自分の仕事をする、えーと今の試合は17-16で5組が勝って得失点差は1、女子の方は...。
と夢中になっているうちにアップ終了の時間が迫ってきていることに気づき、急いでボールの回収をアナウンスした。
「気が抜けないなぁ...」
「わ!」
「わぁ!!って紫咲さんどうしてここにいるんですか?ダメですよ」
「別にステージに上がってるわけじゃないんだしいいじゃん」
「いやでも...」
「お堅いな〜生徒会は。もっと柔軟にいこうよ、柔軟に」
「...ステージ裏なので今回は見逃してあげます」
「そうこなくっちゃ!」
「クラスのみんなのところ行かなくてもいいんですか?」
「えー風真君が暇してそうだからせっかく来てあげたのに〜」
「まあ暇じゃないと言ったら嘘になりますけど、現に仕事を終えたばかりなので」
「じゃあ少しくらいいいじゃん...あ!試合始まったよ!」
「これは6組対7組ですね」
「風真君的にはどっちが勝ちそう?」
「う〜ん、どっちもバスケ部は同じくらい人がいますし...でも総合的に見たら7組の方がバスケ部だけで言ったら強そうです」
大方僕の予想通りに試合は進み?試合中一度もリードを奪われることなく7組が試合を制した。
「お〜やっぱり7組勝ったね〜」
「僕たちも7組と当たるので強敵です」
「まあまあまあ大丈夫でしょ!ほらまずは初戦、勢いに乗ろ!」
「はいはい、あ!兎田さん試合お疲れ様でした。これ得点シートです。あとは頼みます」
「わかったから早く行ってくるペコ」
兎田さんに軽くあしらわれたあと僕は紫咲さんに先導されみんなのいるところで一緒にアップを開始した。ちなみに男子が時間いっぱいシュートを打てるように女子たちが球拾いとパスを担当してくれている。なんて優しい女子たち、涙が出そうだ。
「おい風真!今日の調子は?」
「ちょっと待って...あ!大空さんパスください」
スパッ!
「まあいいんじゃないかなぁ」
「スカシやがって、これで決まんなかったら一生恨むからな」
「今日だけにしてくれ」
アップを終えた僕たちはベンチに座り最後の休息を、女子たちはギャラリーに戻って応援のスタンバイをしている。クラスTシャツに身を包み僕はコートへと足を踏み入れた。
ピッ!
試合が始まると同時に僕は前へ走った。ジャンプボール制した僕のチームは柊がボールを保持し、前で待っている僕に向かってドンピシャなパスを提供。期待に応えたいがために容赦なくスリーポイントをそのまま放った。
スパッ!
スタートダッシュに成功した僕たちは少々苦戦はしたものの24-19で勝利を収めることができた。女子からの黄色い声援に男子たちは燃えた。クラスで勝利を祝っているのもつかの間、僕は生徒会席へととんぼ返り。
「お疲れ様です」
「ちょっと汗でベッチャベチャペコ!ほんとにもう...」
「すみません、タオル持ってきたので許してください」
「はい!制汗剤貸してあげるからそれで何とかしろペコ」
「あ、ありがとうございます...」
僕は遠慮なく兎田さんの制汗剤を使った、もっと遠慮しろペコ!と怒られたが笑って誤魔化した。
「...あんた」
「はい?」
「やっぱりバスケ上手いペコな」
「ええ、そうですか?」
「うん、1番上手ペコ。生徒会に来たのがありえないくらいには。今の代ならエースはれるんじゃないペコか?」
「それは無理ですよ」
「そんな謙虚になるんじゃねーペコ」
「まあでも生徒会来て後悔してませんよ。良い先輩と良い同僚に恵まれて幸せです」
「...」
「兎田さんが生徒会にいてくれて良かったです。これからも頼りにしてます」
「なっ!!...ば、ばっかじゃねーペコ?!まだ感動する場面じゃねーペコだから!」
「僕はただ思ったことを口に出しただけですよ」
「これだから天然タラシは困るペコ...」
「あ、次って兎田さんのクラスの男子、試合ありますよ」
「何が言いたいペコ?」
「いや見に行ってもいいんじゃないかなって」
「仕事があるから無理ペコ」
「じゃあ僕に仕事を任せてください。さっき兎田さんは僕たちも一生徒って言ってたんで、クラスのみんなを応援するのも大事ですよ。それに白銀さんや不知火さんといる時に兎田さんすっごく楽しそうにしてたので。きっとみんな待ってますよ」
「でも...」
「それとも僕が頼りないですか?」
「...ああもうわかった!行くペコ!その代わりちゃんと仕事するペコよ!ヘマしたら承知しないペコ」
「はい、行ってらっしゃい兎田さん」
足早に自分のクラスに駆けつける兎田さんは心做しか足取りは軽く、顔には隠しきれない笑みが零れていた。
「かーざーまーくーん」
「あ、星街先輩。なんでここに...っていうか授業中ですよね」
「今は休み時間だから少し覗こうかなって」
「なるほどチャイムが鳴らないので気づきませんでした」
「まあここからじゃ時計も見えないし尚更だね。それで風真君たちのクラスはどう?勝ててる?」
「はい、ちゃんと一勝しました。次の試合勝てたら決勝もありえます」
「まあ風真君に限って負けることはないから。そんな可愛い後輩にこれ」
すると先程まで後ろに組んでいた手を離し、ジャーン!と言いながらスポーツ飲料を僕にくれた。
「ありがとうございます、ちょうど喉乾いてたので助かります」
「いいっていって。じゃあ見返りとして今度また遊ぼうね」
「え、あ、はい」
「じゃあすいちゃんはこれで、ばいばい〜」
星街先輩は他の人にバレないようにステージ裏から退散した。1人でいるとそりゃつまらないのであんまりいいことではないが来客が見えると退屈しのぎになる。
「お...3組勝った」
兎田さんのいる3組は見事勝利を手にしていた。クラスのみんなと喜びを分かち合う兎田さんの姿に僕も自然と笑った。
球技大会は後編に続きます
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい