僕たちは次戦の6組戦を快勝し2戦全勝のこの上ない状態で最後の7組戦に挑むことになった。昼食を挟んでの試合なため軽食程度に済ませお腹に負担がかからないように心がけた。
「ここを勝てば決勝進出が見えてくるぞ!」
「今のところ強いのってどこだ?」
「今は3組が全試合終えて全勝してるらしい」
「すげーなぁ...」
「まじかよ」
「もういいから!弱気になったら勝てるものも勝てん、女子のためにもとりあえずここ絶対に勝つぞ!!」
「「「おう!!!」」」
委員長の声掛けで僕たちは気合いを入れ円陣を解き各自アップへと移った。ちなみに女子は5組に一勝しあとの試合は負けてしまったようだった。ここからは女子の分も背負って戦うためなんだか体が強ばる。
「絶対勝つぞ!!」
「「「おう!」」」
試合1分前に再度気合いを入れ直し僕を含めたスターター5人は整列し試合の始まりを待った。センターサークルに柊と相手の選手がたった瞬間周りは緊張感に包まれる。それもそのはず僕たち2組と7組は2勝で並んでいてここを制したものが決勝で待っている3組と一戦を交えることになる。おまけに予選最後の戦いなためひと足早く終えた女子や他クラスの人たちまで試合を見守っている。
ピッ!
試合がついに始まった。前の2戦とはうってかわり相手のチームから攻撃となった。懸念していることがある。僕のクラスは柊と僕の2人がバスケ経験者。それに対し7組は中学校までやっていた人を含めると4人も経験者がいて苦戦を強いられることは間違いなかった。
スパッ
案の定先手は素人を突き破り、バスケ部が無情にもネットを揺らした。お情けなしのようだった。
「柊、いってきて」
「え?ああ」
「僕がボール運ぶから任せて」
自分でいくよりも柊に点を取ってもらうのが得策だと考えた。後半までなりを潜めておけば相手も自然と僕のマークを緩めるはずだ。その間は今まで黒子役に徹してくれた柊に全てを託し、女子の黄色い声援を柊に集中するようにお膳立てをする。
スパッ
「しゃー!!」
最初からエンジン前回だった。フルスピードでゴールへと突進する柊は相手のディフェンスを切り裂き、がら空きのゴール下まで侵入し悠々と点を決めた。しかしその後は相手に阻まれ6-14で前半を終えた。
「俺たち素人はもう無視でいい、頼むからお前ら2人が点を取りまくってくれ」
「むしろいいの?」
「当たり前だ、勝利のためなら最善を尽くすよ俺たちは。特に風真!お前前半特になにもやってねーんだからなんとかしてくれ」
「わかったわかった。ボール回ってこなくても文句言わないでよ」
「あたぼうよ、ディフェンス頑張るからな!」
数人メンバーチェンジを行い、フレッシュな面子に入れ替えることでディフェンスの強度を増す作戦を取った。経験者が少ない以上がむしゃらに相手に食らいつくしかなかった。
スパッ
まずは既に体の温まっている柊のジャンプシュートから後半の幕は切って落とされた。相変わらず相手は初心者を狙い確実に仕留めにきているが、クラスのみんなはなんとか堪えてくれた。
「風真前!」
必死に取ったリバウンドを受け取り、1回ドリブルをついてからスリーポイントを放った。が、リングに入ることは無く外れてしまい相手へボールを献上してしまった。
「どんまいどんまい!」
「大丈夫だよ風真君!!」
「つぎつぎ!次決めて!」
女子からの声援も熱を増している。周りの雰囲気は最高潮で体育館は熱気に包まれていた。ゴール下に押し込まれた委員長を救うかのようにボールをさらった柊は相手のゴール下から自分たちのゴール下まで突進し後半2回目のゴールを沈めた。
「しゃあああ!!」
心做しかさっきの雄叫びよりも大きく聞こえる。腕を大きく振り喜びをこれでもかとアピールした。6点差、確実に迫ってきてはいるが試合はもう折り返し地点だった。僕もそろそろ流れに乗らなきゃいけない。柊にボールを要求し、1度フェイクを入れてからスリーポイントを放った。
スパッ
「よし」
僕のガッツポーズは柊のものに比べ控えめなものだったと思う。しかし喜んでいないわけではない。あくまでも冷静にいることが僕の役目だと思ったから。
「3点差だよ!」
「男子頑張れー!!」
最初こそリードしている7組の声援が多いように感じたが今は五分五分、もしかしたら僕たちへの応援の方が多いんじゃないかとさえ思えた。
「あと1分!絶対に決めろ!」
残り1分になるまで点差は硬直していた。相手が僕たちにとってはいたい2点を沈め点差は5点差になり苦しい1分が始まった。できるだけ点数を素早く縮めたい僕たちは足早に攻め、柊が仕返しのスリーポイントを決めた。
「うおぉおおお!!!」
周りの観衆の熱気がさらに高まる。耳を劈くほどの熱狂だった。残り30秒を切り相手はボールを確実に保持するためパス回しをし勝利に備えていた。
残り10秒に差し掛かったところだった
相手のパスはロブ気味に上がってしまいそれを見逃さなかった柊はボールに向かって飛びついた。それを見て僕も前へ全力疾走。
7!!
ボールを要求する
6!!
僕の手元にボールが来た
5!!
いつでも攻められる
4!!
相手のマークがきつい
3!!
フェイクでずらせた
2!!
今しかない
1!!
僕は1度ドリブルをつき、相手からずれることでスペースを作り出し最後のシュートを放った。
ピッー!
ゴールへと向かうボールの軌道は何よりも遅く、時間が止まってるとさえ思えてしまった。
スパッ!
値千金のスリーポイントは僕たちの想いに応えてくれたかのように吸い込まれていった。
「お前...!!」
「よくやった...まじでよくやった!」
「お前がヒーローだよこの野郎!!」
「痛い、痛いって!」
手厚い祝福を戦友たちから得て僕は初めて本当にこの試合を制したんだなと実感した。25-24。鳴り止まない拍手にこの試合が決勝戦なのではないかと思った。
「今から決勝戦を行います。2組、3組の生徒以外は1度ギャラリーまで行ってください」
20分の休憩を終えたあと僕たちは興奮冷めやまぬまま本当に最後の試合に臨む。
「やばい俺疲れてきたわ...」
「委員長しっかりしてくれ」
「だってあんなギリギリの試合やったら心も体もやられるだろ!」
「最後だから踏ん張ってくれ、俺と風真でなんとかするから」
「そうだとありがたいんだけどな、まーじでヒヤヒヤする展開だけはやめてくれ!」
「風真君!」
「ああ紫咲さん」
「ちょっとその反応はなくない?」
「いやちょっと緊張してて」
「えー柄じゃないな〜ほれほれ〜」
「ちょっとwつつくのはやめてください」
「にしてもすごかったねーさっきは。もうシオン感動しちゃったよ!」
「感動しちゃいましたか」
「うんうん、でも次勝たないとなんかもったいないな〜」
「ちょっと、ハードル上げないでください」
「きっと風真君なら、いや遥ならできるよ。だってシオンも遥の左腕で見守ってる」
球技大会が始まってからというもの紫咲さんから貰ったリストバンドを試合の時には必ず着用していた。
「ふふ」
「なにさ?」
「なんからしくないなってw、紫咲さんそんなこと言うキャラでしたっけ?w」
「ね゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!恥ずかしかったんだからそういうこと言うなし」
「はいはい、じゃあ僕いきますから」
少し気が楽になった気がした。
「イチャつくな、試合前に」
「そうだ、俺らは必死なんだぞ風真」
「じゃああっちを見てよ。委員長、柊」
「「ああ...終わったらぶっ飛ばそまじで」」
僕の指さした方向には初々しいカップルの百鬼さんと古海が他を寄せ付けないくらい甘いオーラを出していた。
ピッ!
2年生全員に見守られながら最後の試合が始まった。さっきの疲れが多少は残っているがアドレナリンのおかげかまだ体は元気だった。決勝は今までと違い前半7分、後半は10分と5分延長される。決勝だからなのかと兎田さんに聞いたことがあるが、兎田さん曰く時間調整のためペコ。こっちの時間の方が帰りのホームルームの時間にそのまま突入できそうだからペコ、と裏話をしてくれた。
「いいぞ風真!」
「風真君もう一本!」
出だしは僕のスリーポイントから始まった。続けて相手も同じような位置からスリーポイントを沈め、それに対し僕たちは早いリスタートから最後は僕がレイアップでフィニッシュした。目まぐるしくコートを駆け回っているため観客からしたら面白いと思うが、当の僕たち選手は疲れも溜まってきていて足取りは早い段階で重くなってきていた。
「ナイス!」
「いけるぞ3組!」
11-15と4点差になったところで前半を終えた。さっきの勢いのままいきたかったがそう簡単にいく相手ではなかった。
「うわっ冷たっ!」
「びっくりした?」
「もうやめてくださいよ紫咲さん」
「まあまあまあ、これあげるから許してよ」
「スポーツ飲料...。しかも冷たい」
「さっき買ってきたんだ〜。ささやかな差し入れだよ〜」
「...なんか入ってますか?」
「そんなわけないでしょ!!」
「冗談ですって」
女子も僕たちを最後までサポートしてくれた。紫咲さんのように飲み物を買ってきてくれる人、熱が籠った体に向かってうちわを扇いでくれる人、チームを盛り上げてくれる人などクラスは団結力が増していた。
ピッ!
泣いても笑っても最後の戦いが始まった。こっから先は仲間たちのシュートを固唾を呑んで見守ることになる、それくらい緊張感があった。球技大会でこの雰囲気はやめてほしかった。
「またあいつだ!」
「あの生徒会のやつだけじゃないぞ2組は!」
柊が頭角を現し始めた、というよりも今までセーブしていたことを僕は知っている。きっとあいつは僕なんかよりもエース気質で誰よりも負けず嫌いだから。空中で体がぶつかったのにも関わらず持ち前の体幹が柊を後押ししゴールにねじ込んだ。綺麗とは言えないが柊らしい野生感溢れるそんなプレイだった。
柊のプレイに僕たちは次から次へと乗った。僕は立て続けにスリーポイントを沈め、柊もドリブルから一気にスリーポイントまで持っていった。
ピッー!!
試合終了のホイッスルと同時に僕たちは喜びを分かちあった。出だしの勢いをそのままに3組を圧倒、結果的に32-23で攻守両面で主導権を握り優勝を掴み取った。
「終わっちゃったペコね」
「そうですね」
閉会式を終えた僕たちは会場の片付けに追われていた。
「ぺこーらたちのクラスは負けちゃったけど、しょうがないペコ。だってあんなに強かったらもうおめでとうしか言えないペコ」
「ありがとうございます。でも3組も強かったですよ」
「ぺこーらたちの男子たちはタフさが自慢ペコ。って誰かが言ってた気がする」
「そうかもしれませんね」
さっきまで熱気に包まれていた体育館は僕と兎田さんの2人きりでもぬけの殻状態になっていた。熱戦を繰り広げた名残惜しさを噛み締め元ある通りに体育館を復元していく。
「...悪いペコね、最後の最後まで仕事させちゃって」
「構いませんよ、そんなこと気にしないでください」
「こんだけ運動して仕事もしたら帰ったあとすぐ寝ちまうペコだな」
「そうですね、今日はぐっすり...いやそんなことはないかもしれません」
「やっぱり嬉しかったペコか?」
「もちろんです」
「ファファファ!顔に出ちまってるペコ!」
「...わかっちゃいますか?」
「もちろん、今は誰よりもあんたが眩しいペコ」
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい