「球技大会優勝おめでとう!!乾杯!」
委員長の音頭でみなコップ同士を合わせ打ち上げがスタートした。先日行われた球技大会の祝勝会をしている最中だ。先日と言っても1ヶ月以上前の話にはなるのだが。日にちをずらしにずらしまくった甲斐あってクラスのみんな欠員が出ることもなく全員参加することができた。今は男子は男子、女子は女子で座り思い出に浸っている。
「いや〜風真の活躍なしじゃ勝てなかったって!」
「いやみんなのおかげでしょ」
「そんな謙遜すんな!俺みたいに堂々と振る舞えよお前も」
「お前は堂々としすぎなんだよ柊...。MVPもらったからってあんまし調子乗ってっと痛い目合うぞ」
「まあ今週くらいはいいじゃんか!お堅いこと言わずによ〜」
今回の球技大会から先生たちの独断と偏見でMVPが選出されることになっていた。初代MVPは我らのクラスのお調子者、柊が手にすることになった。おかげであいつは有頂天、何かあればMVPを盾に物事を棚に上げてしまう始末だ。
「もっとMVPにふさわしいやつがいただろ、特に風真とかさ。同じクラスのやつが1番の競合相手だったな」
「ま、もう既に引退したやつには負けねーよ」
「まあ今回はばかりは僕も柊に軍配かな。優勝にはきっと欠かせなかった」
「だろ〜!」
「...やっぱなしかも」
「おい!」
「ああ柊、肉焦げるって早く裏返してそれ」
「おい!古海もずっと食べてないでたまには焼けよこのやろう!」
肉を頬張りながら思い出話に花を咲かせていたところで男子たちは本題に入った。
「それで優勝して1ヶ月くらい経ったわけだが...」
「おう」
「...女子となんかあったやついるか?」
「...」
スッ
数人の男子が柊の目を気にして申し訳なさそうに手を挙げた。
「なんでちゃんと進展あるんだよ〜!どうしてMVPの俺がなんにも!進展が!ないんだよ!」
「そうやってことある事にその話題を持ち出すからだぞ柊」
「委員長は黙ってろ!正論が1番俺の心にくる」
「わかってるなら尚更止すべきだな」
「...まあ素直におめでとうだな」
「ああ急に変えた」
「うるせー!とにかく、良かったじゃねーか。作戦大成功だったな!」
僕たちが考えたクリスマスの前に球技大会で優勝して彼女作ってしまおう大作戦を何人かの仲間は無事に遂行することが出来たらしい。本当におめでとう、コングラッチュレイション。
「...できるといいなお前も」
「おいそんな哀れんだ目で見んな委員長、お前も同族だかんな!」
「おや、確かにそうだったな」
「ついでに風真!お前もだぞ!」
「ええ?僕も?僕はそのつもりは毛頭なかったよ」
「「「は???」」」
「お前は早く誰かと付き合えよいつまでハーレムが続くんだよ!」
「こっちはお前のいちゃついてる姿死ぬほど見てんだからな!」
「どうしてお前みたいなタラシにたくさん女子が寄ってくるんだよ羨ましすぎるだろ!」
僕の何気ない発言のせいで総スカンを食らってしまった。声を大にして言いたい、悪気はないし本当にそのつもりはなかったと。異性と付き合えたらみんなの言うように日常が楽しくなったりそれこそクリスマスもきっと1人で過ごすより彩りを増すだろう。しかし行事ごとに引っ張られて付き合うのは僕のポリシーに反している。何故ならその場のテンションで歩み寄ってしまうといざ日常に戻った時に後悔してもおかしくない。付き合うにも僕は責任を感じていて今はまだ前向きにはなれなかった。
「気づいたら季節はすっかり冬だな」
「ああそうだな。もう半袖でなんていられねーよ」
「セーター着ないとな」
「じゃああと2ヶ月もすれば今年も終わりってこと?」
「感慨深いなぁ」
「ちょっと男子たち!席交換するよ!」
世間話に入ろうとしたところで男子の輪の中に女子も参入してきた。僕はそのタイミングでいろはから電話がかかってきたので1度店の外へと出た。
「うん...うん、帰りは遅くならないよ。うん、わかったって大丈夫だからちゃんといい子で待ってるんだよ。それじゃあね」
「寒っ!!」
「あ、そのでかい声は大空さん」
「うるさいは余計だろ!風真君もなんかスバルのこといじるようになってきたよね〜」
「まあ同じクラスになって半年ほど経ったわけですし、大空さんがいじられ役なんだなってこともわかりますよ」
「だからっていじるなよ!」
「あはは、善処します」
「てか風真君変わったよね」
「変わったってなにがですか?」
「え〜?なにがって言われると言葉にするの難しいな...。なんていうか少し雰囲気が緩くなった!というか。最初こそお堅い子なのかな〜ってスバル思ってたけど、案外友達いじったりするんだなって」
「そうですか雰囲気緩くなったなら良かったです」
「スバル的にも助かるわ〜」
「ところで大空さんはみんなのところ行かなくて良かったんですか?」
「え?あースバルはただ外の空気を吸いたかっただけだよ。風真君は?」
「僕は妹から電話がきたのでそれに出てただけです。早く帰ってきてねって言われちゃったのでちょっと困ってます」
「なんだよそれ〜w、妹からもラブコールがくるなんてよっぽどじゃん。早く帰ってあげなよお兄ちゃん!」
「まあみんな次第ですね」
「あーいたいた!スバル呼ばれてたよ!」
「まじ?!じゃあスバルは行くわ!何より寒い」
「はい、行ってらっしゃい」
「で、遥もここにいたのね、通りで周りの席にいないわけじゃん」
「妹から電話がきてて」
「そんな気がした、電話無視しないなんていいお兄ちゃんじゃん」
「そうですかね」
「そうだよ!シオンなんて親からの連絡無視することだってあるし」
「それは返してあげてください」
「え〜めんどくさいじゃん」
「心配しますよ」
「大丈夫だって〜」
「...ところですっかり外も寒くなってきましたね」
「ほんとね〜、最近は布団がシオンのこと離してくれない」
「まあ朝は特に冷え込みますしわからなくもないです」
外に出てほんの数分しか経ってないのにも関わらずシオンさんの手は赤くなっていてそれを温めるかのように息を吹きかける。
「まだ息は白くならないか〜」
「もうちょっと寒くなってからじゃないですか?」
「ワンチャンあると思うじゃん!」
「ワンチャンですね...。女子たちはなにを話してたんですか?」
「え〜もうそりゃ色々だよ!球技大会の話もちゃんとしたけどね」
「そうなんですね。僕たちはずっと球技大会の思い出に浸ってましたよ」
「そりゃ優勝したしね〜。ちなみになんだけど」
「はい?」
「遥の話題いっぱい出てきたよ、よかったね〜」
「よくないですよ...」
「いいじゃん!悪い話ではないからさ」
「ちなみにどんな話題だったんです?」
「え〜それは女子の秘密だよ」
「秘密...ですか...」
「もちろん!当たり前です〜」
唇の前に人差し指を立て、秘密を強調するようなポーズは姿は小学生のようだった。
「こら!風真君とシオン!早く戻ってこい」
「はいはい、じゃあいこ!遥」
「うん」
その後はみんなの輪に入って色々おしゃべりをし解散となった。二次会ついでにカラオケに行く人が大半を占めていたが僕は言われている通り早く帰ることにした。
「ただいま、いろは」
「おかえりでござる!お兄ちゃん」
「焼肉美味しかったよ、いろはにも食べさせてあげたいくらい」
「むー、打ち上げとは言えござるがいない場所で焼肉食べるなんて不届き者でござる」
「今度連れて行ってあげるからさ許してよ」
「しょうがないでござるな〜。お風呂湧いてるから入っても大丈夫でござるよ」
「ありがとう」
寒空の下を歩いたあとのお風呂はやけに体に染み、いつもより気持ちよく感じた。あまりの心地良さに鼻歌を口ずさむほどだった。
「球技大会楽しかったな」
過去の思い出を反芻するかのようにポロッと出てきた。僕はあの球技大会で優勝できて良かったと心の底から思う。優勝できなくてもきっと思い出にはなる、でもせっかくなら1番いい成績を収めて思い出にした方がきっともっと忘れられなくなるから。
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい