僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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第3章が始まる前の時系列です


トリック・オア・トリック

「作業中ごめんね風真君、ちょっと今いいかな?」

 

「はい大丈夫ですよときの先輩...ってどうしたんですか?そんなアイドルの格好して。そういう企画でも立案したんですか?」

 

「ううん、この様子だと今日はなんの日か知らないのかな?」

 

「はい、今日は...ああ!ハロウィンですね」

 

「そう!トリック・オア・トリート!風真君、お菓子くれないとイタズラしちゃうぞ?」

 

「お菓子なんてあったっけ...」

 

 

 今にもイタズラをしてきそうなときの先輩を背に僕は急いでバッグの中を漁る。お菓子なんて入れた覚えはないが一縷の望みを胸に小さなポケットの中すら念入りに探した。

 

 

「...ああありました。はい、飴です」

 

「え〜せっかくイタズラできると思ってたのに」

 

「勘弁してください。ときの先輩のイタズラはなんかえげつないのがとんできそうなので」

 

「そんなことないよ〜。仕事を増やすだけだから」

 

「それが勘弁なんですよ...」

 

「どうしたんですか?そらちゃん、風真君」

 

「あ、白上先輩。実は...え?」

 

「こんこんきーつね」

 

「ああ...」

 

 

 白上先輩もしっかりとコスプレをしていた。白いキツネのコスプレで如何にもハロウィンというか妖怪のような感じがした。僕は握りしめていた飴を白上先輩に渡し、トリックを免れた。

 

 

「それにしても風真君は今日ハロウィンって知らなかったんだって。クラスの子たちはなにか言ってなかったの?」

 

「いやそれはもう普通の学校でしたよ。コスプレすることもなく、イタズラとお菓子が行き交うこともありませんでした。ボーッと授業を受けてたら今日一日は終わってました」

 

「そんなことあるわけないじゃないですか!白上たちは今をときめくJKですぞ!流行に敏感に決まってます」

 

「あ...。なんか放課後に女子が警察官とか猫とかの服に着替えてたのってそういう」

 

「なんでそれ見て気づかないんですか!」

 

「いやぁ、最近の子たちってよくわかりませんから」

 

「そのよくわからない子たちと同い年なんだよ風真君...」

 

「全く、流行には気を使ってくださいね風真君!季節の催し物とか考えるのも生徒会の仕事なんですから!」

 

「わかりましたごめんなさい」

 

「わかればいいんですよ...う〜ん!この飴甘い!」

 

「ほんと?わたしも食べよ」

 

 

 さすがに催し物に疎いのは反省するべきだと思った。それこそ僕たち高校生はそういったイベントに一喜一憂する年頃なはずなのに変にませてるやつと思われてもおかしくない。

 

 

「じゃあわたしたちは一旦先生のところに行ってくるからお留守番しててね」

 

「え?!その格好で行くんですか?」

 

「もちろん!ホロライブ学園のSNSにあげる写真を撮ってもらうので!それじゃあ!」

 

 

 そういうと白上先輩とときの先輩は生徒会室を飛び出して行った。

 

 

「...ちょっといいペコか?」

 

「ああ兎田さんどうかしま...え?」

 

 

 後ろを振り向くとそこには所謂バニーガールのコスプレをした兎田さんが立っていた。普段の凛々しくたくましい兎田さんのコスプレとは到底思えなかった。

 

 

「...その髪についてる人参はどうやって」

 

「これペコか?これは髪できつく縛りつけて...ってそれよりも他にあるでしょうが!」

 

「え?」

 

「...似合ってるか、似合ってないか...。それくらい言ってくれてもいいじゃねーペコか」

 

「ああ...。えーと、普段の兎田さんはなんというかしっかりしてるなってイメージなんですけど、こういうコスプレもいけるんだなって思いました。個人的には似合ってると思います、すごく」

 

 

 さっきまで俯いていた顔には笑顔が戻った。とりあえず山場は超えたみたいだ。

 

 

「だけど...」

 

「けど?」

 

「はい、この上着着てください。僕も男なので...その胸元がそんなに開いていると目線に困っちゃって...」

 

 

 似合ってはいる、お世辞なんて言える自分ではないからそれは事実なのだが僕はその少してこを入れればはだけてしまいそうな胸元に目がいきそうでしょうがなかった。まだある理性に自制することを頼むのが精一杯なためしょうがなかった。

 

 

「ば、ばっかじゃねーペコか?!」

 

「いや兎田さんがその服着るのが悪いですよ!」

 

「もうお前とは解散ペコ!」

 

「なんの解散ですか?!」

 

「それはそうとして...はい」

 

 

 兎田さんは僕の前に右手を差し出してきた。僕は何を欲しているかすぐにわかった。しかし兎田さんがあのセリフを口にする瞬間を見ておきたかった。

 

 

「...なんですかこの右手は」

 

「なにってさっきまでそら先輩とフブキ先輩に言われてたペコ」

 

「...ごめんなさい。僕流行りには疎くて...。言ってもらえるとすごく助かります」

 

「...は〜。しょうがね〜ペコだな。...トリック・オア・トリート、お菓子くれないとイタズラするぞ」

 

「おお...」

 

「おおってなんだよ?!」

 

「なんか新鮮だなと」

 

「だからやりたくねーペコなんだよ。それでお菓子は?」

 

「はい、飴...ってあれ?飴は」

 

 

 さっきまで握っていたはずの飴はもうそこにはなかった。3個くらいあるだろうなという感触はしたがさっきまでの僕の拳は空を握っていた

 

 

「ねーペコなら...わかるよね?」

 

「...何するかによります」

 

「なにするかって...こう!」

 

「ははっ!ちょっとお腹はやめてください!」

 

「あんたの弱点は知ってるペコだからな!お腹が弱いペコ!」

 

「ちょ、ちょっとなんで知ってるんですか?」

 

「シオンちゃんと旅行に行った時に教えてもらったペコ!ほらわめけわめけ!」

 

「まじでやめてください!ははっ!...てうわっ!」

 

 

 徐々に後退して行った僕は後ろにある資料が大量に敷き詰められている棚に当たった。それは雨のように僕と、そして兎田さんに降り掛かってきた。

 

 

「いたた...。大丈夫ですか、兎田さん」

 

「大丈夫ペコだけど...その」

 

「え?」

 

 

 結果として僕は兎田さんに覆い被さるような形になっていた。距離は互いの息と息が交差するくらいだった。

 

 

「風真先輩、写真の件なんですけど男の人もいた方が映えるよねってことで風真先輩にも来てもらいたいんですけ...何やってるんですか?」

 

「うわ!鷹嶺さん、こ、これは違くて!」

 

「そうペコ!不慮の事故、不慮の事故ペコ!そんなに顔ひきつらせるなペコ!誤解だから!」

 

 

 この流れも1連のトリックであると、そう願いたいくらいには恥ずかしかった。

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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