僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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後書きも見てくれたら嬉しいです


喧嘩なんかしなければよかったのにな

「どうした風真?ぼーっとして」

 

「...え?ああなんでもない」

 

 

 京都旅行が終わってからというもの僕は他の人から見てもわかるくらいには上の空だと思う。恋人でもないのに強引にキスをして。女性はやはり蝶や花のように丁寧に扱うべきで、シオンさんにももちろん同じことが言える。でも後悔ではないと思う、複雑な感情。その答えを見つけるのに頭をひたすら回転させていた。

 

 

「そんな思い詰めても変わらないぞ、京都行ってからずっと変じゃん。紫咲さんとなんかあったのか?」

 

「...そんなわけ」

 

「ふぅ〜ん。まあ俺からは聞かないから、風真が話したいタイミングで話せばいい。話す前に解決出来たらそれはそれでいい」

 

「ありがとう」

 

 

 悩みの種の人はなんとなく晩のできごとを覚えているようで、朧気ながらなにをされたのかはわかっているらしい。京都にいる間は僕の頭はさほど問題視していなかったが今になって事の重大さを知った。相手は不慮の事故で酔っていたとは言えそれを逆手に取り襲った。誘われたからというこじつけもできるが僕がそれを許すわけがなかった。

 

 

「...委員長はさ」

 

「おう」

 

「京都の最後の日、どうだったの。部屋でなにした」

 

「俺か?俺は知っての通り癒月さんと湊さんと一緒だったから、なにしたって言われてもな。恋バナしたり、普段はできないような会話をしたりしたぞ」

 

「...そうなんだ」

 

 

 やっぱり健全だった。関係に名前がないのは僕と委員長のふたりだけ。柊と古海に関してはどうぞご自由にという感じだが。

 

 

「もしかして、言い難いんだが...。せ」

 

「バカバカ、断じてしてない。だけど...」

 

「だけど?」

 

「...キス、しちゃったんだ。しかも酔っているシオンさんを相手に」

 

「ほぅ」

 

「いいよって言われたのは覚えてる、だけど恋人じゃない子相手にそんなことしてよかったのかとずっと考えてて」

 

「ピュアだな、そこまで考える人はあんまりいないと思うぞ。でも通りでいつものように紫咲さんに話にいかないわけだな」

 

「...なんとなく気まずくて」

 

「じゃあ風真はどうするのが正解だと思うんだ?」

 

「どうするって」

 

「謝ってはいるんだろう?風真のことだからまずなによりも先に謝罪はするだろ」

 

「うん」

 

「じゃあそれでいいともならないんだろ?」

 

「うん、なんとなくずっと気まずくて」

 

「紫咲さんが、酔っていたとしても風真相手にいいよって言ってくれたんならもうひとつしかないんじゃないか」

 

「どういうこと?」

 

「お前らはきっと両思いだ、言わなくてもわかっているだろ?」

 

「...わからない」

 

「は?」

 

「...僕は自分がシオンさんを好きでシオンさんが僕のことが好きなんて確証は持てない。だってそういうテンションになってもおかしくない、旅行なんだから」

 

 

 僕は確信が欲しかったんだと思う。その証明をしてくれる証左を自分が、または誰かが示してくれるのをずっと待っているのだと。

 

 

「...でも律儀にそのしおりは使ってるんだな」

 

「...」

 

 

 京都旅行の記念としてシオンさんから押し花のしおりをもらった。花はシオン。自分で自分の名前のついたやつを買うなんてシオンさんらしくないなと思いつつも普段使いしていた。

 

 

「どんな思いで風真に身を委ねそのプレゼントを旅の最後に渡し、いつも風真の近くで笑ってくれているんだろうな」

 

「...さあ」

 

「まあ、自分で見つければいいさ。俺が強引に答えを見つけても風真はきっとスッキリしないだろ?」

 

 

 ある日は生徒会室で

 

 

「兎田さん」

 

「どうしたペコ?ぺこーらは今引き継ぎで忙しいペコ」

 

「...好きでもない人とキスってしますか?」

 

「...は?」

 

「ご、ごめんなさい!仕事の邪魔でしたよね」

 

「...少なくともぺこーらはそんなのするわけねーペコ。でもしてもおかしいことではないと思うペコ、そういう体の関係を持つ人だっているペコなんだから」

 

「...そうですね...。って痛っ」

 

 

 気づいたら兎田さんは僕の後ろに回り喝を入れるかのように思い切り背中を叩いた。

 

 

「なにボサっとしてるペコ!悩んでたって仕方ないんだから前向けペコ。なに起こったかはわからねーペコだけど、グズグズしたってなにも変わらねーペコ」

 

「そうですよね」

 

「でも、悩んだらいつでも相談には乗るペコ。だから...その...ぺこーらのこと頼ってくれても...良いペコよ」

 

「ありがとうございます」

 

「わかったなら早く手を動かすペコ。今日中に一区切りつかなきゃやべーペコよ」

 

 

 家に帰ってから爆速で夕食とお風呂を済まして自室へ籠り、スマホと睨めっこしていた。

 

 

<もしもし>

 

<...もしもしシオンさん、あの今>

 

<あ!今?ごめんね〜シオンお風呂だから、バイバイ>

 

<あ>

 

 

 少し勇気も湧いていたため意を決して電話をしたところまでは良かったが、10秒も経たずして切られてしまった。へこんだ。お風呂が終わったらてっきり折り返しがくるだろうと思い込んでいたがそんなことはなく、新しいメッセージがこないトーク履歴をただひたすらに見つめていた。

 

 

「...シオンさんちょっといい?」

 

「どうしたの?」

 

「あの昨日」

 

「あー!昨日はあのあとお風呂入ったら眠くなっちゃって〜そのまま寝落ちしちゃったんだよね〜ごめん!」

 

 

 普段と変わらないように見えたが、僕には何故かわざとやっているふうに見えてしまった。だって通話を切る時少しよそよそしかったじゃないか。

 

 

「...嘘ですよね」

 

「は?」

 

「だから、嘘ですよねって」

 

「嘘なわけないじゃん。もしかして怒ってる?ww」

 

「...怒ってる」

 

「え?」

 

「怒ってる、だって切るときわざとらしかったじゃないか」

 

「そ、そんなに怒らなくても」

 

「寝るにしたって1回くらい連絡くれたってよかったじゃないか!」

 

「...」

 

 

 あれ?なんで僕って怒ってるんだろう。やり場のない怒りをシオンさんにぶつけているだけなのかな。なんで僕は怒ってるんだろう。

 

「...だったら、なんでいきなり電話なんてしてきたのさ!京都旅行から今の今まで散々シオンのこと避け続けてきたくせに!!都合が良いんだよ!遥は!」

 

「僕は今のままじゃいけないと思って電話をかけたんだ!ずっと気まずいままは嫌だったから!」

 

「ふ〜んそっちがずっと一方的に避け続けてたのに、シオンが話しかけに行っても連絡しても全く相手してくれなかったじゃん!それなのに今更さ!」

 

「悪かったと思ってる、でも今のこれとは違うだろ?!僕は昨日起こったことを話してるんだ」

 

「じゃあ今までの行動振り返ってよ!遥がシオンになにしてきたか!それを考えれば昨日のことだって合点が行くに決まってるって!」

 

「ああもう知らない!もう一生、口なんて聞かない」

 

 

 教室のど真ん中で派手にやってしまったなと我に返ってから始めて気づいた。次の授業に彼女は来なかった、次もその次も6限だって姿を表さなかった。帰りは雨だった。傘を片手に持ってるのにびしょ濡れになって帰った。傘をさす気になんて1ミリもならなかった。

 

 

 気がつくと朝になっていた。帰ってきてびちゃびちゃなまんま寝ちまったんだっけ。所謂ふて寝というやつだ。昨日とは打って変わって快晴、僕の心の天気とは真逆だった。おまけに今日は土曜日、会って謝るなんてこともできなければ昨日の負債を抱え続けたまま休日を過ごすというのも歯切れが悪い。最悪な休日になるのは考えなくてもわかることだった。

 

 

「...こういう日はバスケをするに限るな」

 

 

 自宅からチャリを漕いで10分のところにあるバスケットコートへと足を運んだ。人っ子一人見当たらず貸切状態だった。

 

 

 ガコンッ!

 

 

 ガコンッ!

 

 

 入らない

 

 

 ガコンッ!

 

 

 ガコンッ!

 

 

 入らない。一応入ってはいるが、気持ちいい入り方でなければいつものようにスパスパとゴールに吸い込まれるような弧を描くこともなかった。

 

 

<風真君!これボール!スリーポイント2本決めなかったら奢りだからね>

 

 

「...帰ろう」

 

 

 煮え切らないまま僕は帰路に着いた。

 

 

「こういう時は甘いものを食べて気を紛らわせよう」

 

 

 僕は再びチャリを漕いで街に繰り出した。

 

 

「いらっしゃいませ、ご注文はいかがなさいますか?」

 

「じゃあこのバナナクレー...」

 

<あ!シオンバナナ嫌いだから食べてよ>

 

「...いちごのクレープひとつ下さい」

 

「かしこまりました」

 

 

 バナナ、好きなんだけどな。

 

 

 近くにファストフード店があったのでクレープを食べ終えたあとに入った。なんか体に悪いものを貪りたい気分だった。ナゲットにマスタードをたっぷりつけて食べてやりたい。

 

 

「ソースはいかがなさいますか」

 

「じゃあマスタード...」

 

<ナゲットはバーベキューだよ!マスタードはありえない>

 

「マスタード2つとバーベキュー1つで」

 

 

 マスタードに寝返ったくせに。

 

 

 なにをするにしてもなにかが付きまとってきて気持ち悪かった。でも嫌な気ななんて一度もしなかった。日常をかたどってくれた人がいないってこんなに寂しいことなんだって。思い出やその時の言葉を反芻するくらいには。謝ろう、月曜には絶対に謝ろう。

 

 

 来たる月曜日僕は並々ならぬ気持ちで学校に来た。前日になんて謝ろうか練りに練って、何度も何度も推敲した。多分大丈夫なはずだ。でも彼女は、いなかった。誰のせいとかそういうことは考えたくなかった。多分風邪なんだろう、家の用事なんだろうと自分に言い聞かせた。

 

「...はあ」

 

「どうした?紫咲さんのことか?」

 

「...うん、今日は謝りたいって思ってたんだけど」

 

「気の毒だな」

 

「...僕はやっぱりシオンさんのことが好きなんだと思う。喧嘩して気づいたんだ。隣であの人が笑ってくれてる日常が何よりもかけがえないって」

 

「そうか、じゃあ今日中に謝った方がいいな。気持ちが途切れる前に。家に行くとか電話するとかして謝ってこい」

 

「そうだね、直接謝りたいから家まで行こうかな」

 

 

 帰りのホームルームを終えるのと同時に僕は全速力で学校を飛び出した。雨が降っているため傘をさしながらだったが、ほとんど意味をなしていなかった。しかし家に近づくにつれて足取りが重くなった。おそらく緊張しているんだろう。チャイムを押せばシオンさんが出てきてくれるのだろうか。そもそも無視されないんだろうか。そんなことを考えているうちに、家に行くための最後の横断歩道が見えてきた。

 

 

「...え、あれは」

 

 

 そこにはシオンさんが立っていた。買い物袋らしきものをぶら下げている。元気なら学校来ても良かったじゃないかと思いつつも、今はシオンさんがいるという事実に安堵する。お使いか、はたまたあてもなくぶら下げて散歩でもしていたのだろうか。なんとなく今会うのは気まずくて、心づもりができるまで角の見えないところに立って待つ。

 

 

「は?え?は?」

 

 

 僕は目を疑った。信号は確かに青に変わった。歩行者が渡れることを合図していた。なのになんだあの車、止まる気配がない。シオンさんはイヤホンをしていて横からスピードを上げてくる車に気づいていない。傘を放り投げ全速力で。考える暇なんてなかった。

 

 

「シオン!!!」

 

 

 僕はシオンを押した。ああ、シオンは。シオンは無事だろうか。ごめんね、押しちゃって。ごめんね服汚しちゃって。ごめんね、ごめんね、ごめんね。ああ、喧嘩なんてしなければよか

 

 

 

 

 

 

 

 




第2章はこれでおしまいです。第1章から第2章までで32話書いてきましたがたくさんの人に見てもらえて本当に嬉しいです!私は小説を書くことに関しては初心者なので文の構成や言い回しなど至らない点が多々あったと思いますが日々楽しく小説を書くことができました。第3章はおそらくクライマックスになると思うので、最後まで見てもらえると喜びます!
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サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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