僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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俺は受験を控える中学3年生

「勉強!」

 

 

 寝てる暇なんてない。俺はあっちの学園に行くためにいっぱい勉強して、そして...。一時も無駄にしたくないのに少し目を瞑ったらこれだ。と思ったけどいつもの俺の部屋じゃない。俺の目の前に広がるのはよく分からない機器とか体に繋がってるチューブとか。

 

 

「「え?」」

 

「ああ、いろは...ってなんだその制服?俺の行きたい高校の...った、なんで俺ギプスしてんの?右手動かないんだけど。それにどこだここ、俺は勉強してたはずじゃ...」

 

 

 いろはが俺の行きたかったところの制服を着てる。意味がわからない。だって地元からは離れてるしそもそも中2のいろはが俺よりも歳を食うはずなんて夢の中でしかありえない。でも夢の中だったらきっとこのギプスで固定されている右腕は痛くないはずだった。

 

 

「そして...誰?」

 

 

 もう1人俺のことを見つめてくる人がいた。身長的や顔の幼さから見てもいろはの同級生のように見えた。

 

 

「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。シオン先輩はずっと付きっきりで看病してくれてたんだよ」

 

「看病?先輩?じゃあこの人はいろはの先輩ってことか?」

 

「まあそうだけど...お兄ちゃんの同級生だよ、シオン先輩は」

 

「え?そうなの?でも俺のクラスにこんな人いなかったし...隣のクラスの...」

 

「...ま、まあとりあえず、病院の人呼ばなきゃいけないね」

 

 

 そういうと俺の知らない銀色の髪の人は俺のそばのナースコールのボタンを押した。その時初めて俺は自分の身になにかがあったことを冷静に考えることになった。その後主治医と思われる人が急いでやってきて俺はよくわからん部屋に連れてかれよくわからん検査をした。

 

 

「なにがどうなってんだ...」

 

 

 再び病室にやってきたが未だに状況は掴めていなかった。誰か教えてくれたっていいじゃないか。

 

 

「なんで俺...こんなボロボロなんだ」

 

 

 自分から見えるところだけでもかすり傷や打撲のあとが見てわかった。でも原因なんてこれっぽっちもわからない。だって勉強して寝落ちした、ただそれだけだから。

 

 

「お兄ちゃん!」

 

「ああいろは、そしてお母さんも来たんだ」

 

「ええ。...遥ぁ、良かった...ほんとうに...」

 

「ちょっとどうしたのお母さん、らしくないな」

 

 

 お母さんは俺を見るやいなや俺を抱きしめてきた。お母さんに抱きつかれるなんて何年ぶりのことだろうか。気づいたら俺の肩は濡れていた。

 

 

「ごめんなさいね、取り乱しちゃって...。それで、遥には話さなきゃいけないことがあるの」

 

 

 お母さんは俺の身になにがあったか説明してくれた。そんなに丁寧に説明してくれる人じゃないんだけどな。しかし聞けば聞くほど自分の置かれてる状況、時系列、そしてこの場所さえわからなかった。

 

 

「...つまり俺は記憶がなくて、今は高校2年生ってことか?」

 

「そうよ...。その口調からして遥は今中学3年生くらいよね?」

 

「なに変なこと言ってんのさ、俺は紛れもなく中学3年生、受験を間近に控えた子どもだぞ」

 

「よく聞いて遥、あなたは今高校2年生で無事に志望校に合格したわ。だから今私たちのいる場所は北海道じゃないの。おまけにいろはと二人暮しだし、私はまだ地元にいるわ」

 

「まじ?俺って志望校合格したんだ...。全く実感ないしなんか自分の目で見れなくてショック。まあ合格したならいいや!それで...俺いろはと暮らしてんの?!俺料理なんて全くできないんだけど」

 

「?お兄ちゃん料理上手だったでござる」

 

「...いろはがそう言うんなら前の俺?はよっぽど優秀なのかもな」

 

「うん、生徒会やったりバスケ部の助っ人入ったりするくらいには優秀でござる」

 

「...ああよくわからん!これからどうすればいいんだ?!」

 

「遥は私のことわからないんでしょ?」

 

「??うん、全然分からない」

 

「...そっか」

 

「ああ!シオン先輩!」

 

 

 シオン先輩と言われる人はいろはの呼び掛けに応じず病室を出て行ってしまった。

 

 

「...なんなんだほんとに。ッ?!」

 

 

 ふと机に置いてある花に目をやった瞬間、頭が急に痛んだ。しばらくすると落ち着いたがじんわりと痛みが残っている。

 

 

「...いってぇ」

 

「どうかしたの?」

 

「いいや、なんでもない。ただちょっと頭が痛くなっただけ」

 

「とりあえず横になりなさい。遥は退院するまで絶対安静よ」

 

「はぁ〜勉強しなくてもいいのは最高だけどこれじゃ退屈だな...。ところでさっきのいろはが追いかけて行った人は誰?」

 

「紫咲シオンさん、遥のクラスメイトよ。遥のこと、暇があったらずっと面倒見てくれて。私がこっちに来るまでの間は紫咲さんがお母さんの変わりをやってくれたの」

 

「...そうなんだ、あの人クラスメイトだったんだ。身長が低いからてっきりいろはの友達なのかと思ってた」

 

「こーら。見た目で人を判断しない」

 

「はいはい、わかってる。って俺身長伸びてるっぽいね」

 

「そうよ、今は確か...182cmくらいはあるんじゃないかしら」

 

「まじ!7cmくらい伸びてるじゃん!」

 

 

 身長が急に伸びるなんて馬鹿げた話は夢やおとぎ話の幻想に過ぎない。だから本当に俺は高校生になったんだと思った。

 

 

「おい!風真無事か?無事なのか?!」

 

「まあまあそんな乱暴に開けるな」

 

「すみませんうちのやつが」

 

 

 雑に開かれたドアから男三人衆が俺の元へ急ぎ足でやってきた。

 

 

「...誰?」

 

「誰って、おい冗談きついぜ...」

 

「...紫咲さんの言ってたことは本当みたいだね」

 

「説明するとこいつが柊、こいつが古海、そして俺が委員長こと水戸だ」

 

「俺らのことほんとに覚えてないのか?一緒に遊びに行ったこととかさ球技大会で優勝したこととかさ?」

 

「いや全く、遊ぶどころか部活漬けだったし球技大会はバレーだったせいで最下位だったしな」

 

「そうか...一人称も俺になってるから冗談ではなさそうだな」

 

「なんか僕って言わない風真は新鮮だね」

 

 

 柊、古海、水戸と言われる人物は記憶がなくなる前の友達なのだろう。でなければこんなに早く駆けつけることなんてないし、駆けつけてくれる仲間のことを今の俺は知らないから。あっちで俺はちゃんと友達ができて順風満帆で平穏な日々を送れていたんだなとほっと胸を撫で下ろす。

 

 

「記憶がなくても友達は友達だ。前の風真は俺のことを水戸じゃなくて委員長って呼んでくれてたからそう呼んでもらえたらありがたい。もしかしたら記憶も元通りになるかもしれないからな」

 

「そんな簡単に戻るのか?」

 

「いやそんな簡単に戻るなんて思ってないさ。だけど些細なきっかけがトリガーになってもおかしくないだろ。少しの可能性も俺は信じていたいからな。多分そうですよね、風真のお母さん」

 

「そうね、お医者さんも言っていたわ、もしかしたら記憶が戻ってくるかもしれないって。だから遥といっしょにいたあなたたちと過ごせばもしかしたら記憶が戻ってくるかもしれないわ」

 

「じゃあ俺らにできることは今まで通りにいることだな。間違っても柊、変なことするんじゃないぞ」

 

「わかってるわ!」

 

 

 会ったこともない、今日初めて見た人たちなのになぜだか安心感が芽生えていた。ずっと一緒に過ごしてきたようなそんな安心感。

 

 

「いい友達を持ったわね、遥」

 

「そうみたいだな、お母さん」

 

「はは、語気が強い風真って新鮮だな!」

 

「うるせー!ええっと...古海だっけ?」

 

「柊だ!」

 

 

 こいつらとなら上手くやっていける気がする。高校生の俺に感謝しないといけないと心の底から思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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