僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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戻りつつある日常

「風真さんの回復速度は凄まじいわね」

 

「そうすか?」

 

「ええ、前まで意識がなかった人とは思えないわ」

 

「...まあバスケとかその色々やりたいことあるんで」

 

 

 俺は冬休み明けの登校日に間に合うように必死にリハビリを重ねた。最初こそ手すりがないと歩行はままならなかったが今では小走りできるくらいには回復している。骨折が腕だけで済んだのが幸いだ。バスケを好む俺からしたら四肢は財産だ。それを右腕の骨折だけで済んだのは不幸中の幸いってやつかもしれない。だってもし左手だったら今まで積み上げてきたハビットをまた1から作り直さなければいけなくなる。

 

 

「それにしても飛ぶ鳥を落とす勢いで良くなっているわ」

 

「登校日に間に合いそうですか?!」

 

「それは無理ね」

 

「は〜」

 

 

 俺がどんなに頑張ったところで間に合わないという。でもリハビリを怠る理由にはならないから一日でも早く復帰できるように努力だけはする。前までだってそうやって乗り越えてきたから。

 

 

「リハビリ終わったあとは暇だな...。だーれも病室にはこない、バスケもできない、テレビはつまらないし...」

 

 

 病院の窓からは公園が見え、小さな子どもたちがおそらく鬼ごっこをして遊んでいた。

 

 

「...楽しそうだな」

 

 

 頬杖をつきながらただじっと眺める。普段は羨むことがないものでもその対象になってしまう。俺自身はただ事故っただけ、でも周りの人から見たら事故って尚且つ記憶もない人。普通って言葉では片付けられない。だから何気ない日常を送って、友達と和気あいあいと楽しむ子どもたちが眩しかった。

 

 

「ここの問題わかんねーし...。高校の問題ってこんなにムズいんか?!馬鹿だろこの数式...。こうなったら」

 

 

 電話である人を呼んだ後に社会や理科系の勉強に勤しむ。やることがないから高校の勉強に追いつくためにやるしかないのだ。中学の延長線上故になんとかなることの方が多かったが苦手なところは手の施しようがない。その時は生物基礎や化学基礎などの分野を徹底的に潰していった。

 

 

「...ちょっと何いきなり呼んでんの?!」

 

「ああ悪い悪い。この問題わかんなくて」

 

「も〜。まあシオンちゃんは天才だから教えてあげてもいいけど」

 

「はいはいさすが天才ですね」

 

 

 紫咲は記憶がなくなる前からかなり親しい間柄にあったそうだ。だから毎日看病に来てくれていたらしい。そんな人相手に俺は誰なんて無愛想なことをほざいたから一時はどうなることかと思った。しかし紫咲はそんな俺を許してくれ今ではこうして出前のように呼んでは毎回文句を言いながらも来てくれている。

 

 

「はえ〜こうやって解くんだ〜」

 

「そうそう...って言っても遥が教えてくれたんだけどね〜」

 

「は、俺がかよ」

 

「だって学園の中でもかなり頭が良い方だしみんな定期テスト前になったら遥を当てにする人も多いから」

 

「ガチか?!俺って優等生...…ってコト?!」

 

「はいはいうるさいから、次いくよ」

 

「少しはつっこんでくれてもいいじゃんかよ」

 

「いーからいーから」

 

 

 前までの俺は紫咲とどんな付き合い方をしていたかはわからない。でも自分なりに答えを見つけて俺らしくいれればいいと紫咲は言ってくれている。

 

 

「おお!できたできた!ありがとう紫咲!」

 

「良かったでちゅね〜」

 

「は?なんだその褒め方」

 

「ええw別に〜」

 

「癪だわ〜」

 

「あはは!ww」

 

 

 豪快でちょっと自分もつられてしまうような笑い声。さっきまで静かだった病室は笑いや会話が絶え間なく続き、シャーペンがノートを書きなぐる音は聞こえなくなった。

 

 

「あれこの腕時計?」

 

「え、これか?目が覚めたら俺の枕元に置いてあったんだ。包装的にクリスマスの時に誰かが置いていってくれたんだろうけど誰かはわかんねーんだ。俺がお利口さんだからサンタさんがくれたんじゃねーかって思ってるけど。」

 

「へ、へ〜そうなんだ。それでその腕時計は遥的にはどうなの?」

 

「う〜んちょっと大人っぽいかもしれねーけど結構かっこいいし気に入ってる。腕のギプスが外れたらまっさきにつけてみたい」

 

「ふ〜ん...良かった」

 

「なんか言ったか?」

 

「うるさいー!ほら早く次の問題解け!」

 

「は?なんかしたか俺?!」

 

 

 何問か練習問題に取り組んだあと紫咲はこれから用事があるからと自宅へと帰って行った。その瞬間はやけに虚しかった。俺の周りに誰もいなくなるあの感覚に似ているものがあったから。読んでる本に栞を挟んで目を瞑る。夕方だ、まだ眠気なんてきちゃいない。

 

 

「起きろ!」

 

「わ!」

 

「まだ寝るにははえーんじゃねーの?」

 

「柊...と天音さんとあずき先輩...であってますか?」

 

「え?!かなたそたちのこと覚えてるの?!」

 

「いや俺が事前に教えといたんで」

 

「余計なことしないでくれないかな?柊君」

 

「あずき先輩に言われたきついわ、なあ助けてくれよ風真」

 

「いや俺に言われても知らないし」

 

「ふふ冗談だよ柊君、善意でやってくれたことくらいかなたんも私もわかってる」

 

「でもびっくりしたけどね」

 

「ふぅ...よかったよかった」

 

 

 柊は内心焦っただろう、今の一瞬のできごとで額には汗が滲んでいた。もしかしてあずき先輩は恐ろしい人なのか??

 

 

「私たちは今日部活終わったあとに来たんだ。だからごめんね、汗臭かったら」

 

「汗臭いのは俺だけですよ、かなたもあずき先輩もいい匂いですって」

 

「何その言い方キモイんだけど!」

 

「別に変なことは言ってないだろ?!」

 

「まあまあ2人とも落ち着いて、ごめんね病室で騒いじゃって」

 

「ああいや別にそれは大丈夫です...。静かよりはうるさいほうがいいですよ」

 

「そっか、あの二人はね私たちの代が終わってからはチームの中心になってくれて、柊君はキャプテンなんだよ」

 

「お前キャプテンだったんだ、すげえな」

 

「まあな...ってお前今まで舐めてたってことかよ?!」

 

「うるさいって言われたばっかでしょーがあんたは!」

 

「痛い痛い!わかったから握り潰さないで!」

 

「粗相ばっかしてたらスバちゃんに言っちゃうからね」

 

「え!それだけはやめてくださいあずき先輩!」

 

「あはは...」

 

 

 あずき先輩が話をしてくれるのだがそれを遮るように柊が喋り天音さんがツッコミ、あずき先輩がお咎めを入れるせいで話題は一向に進まなかった。

 

 

「風真君はその...もし良かったらバスケ部に入ってくれないかなって。って言ってもかなたそは何回も誘ってるんだけどね」

 

「う〜ん即決したい気持ちはあるんだけどなにせこの体だしなぁ。ようやく小走りできるようになったくらいだから厳しいかな」

 

「だよね、もし体が元通りになって入りたいってなったら遠慮なく真琴でもかなたそにも言って」

 

「わかった、ありがとう」

 

「俺はいつでも待ってるからな!また一緒にプレーしようぜ」

 

「はいはい」

 

 

 そんな捨て台詞を吐いてこの場を後にした。また一緒にって俺は1回もお前とやったことなんてないっつーの。でもきっとゴリ押し系なんだろうな。

 

 

 

 

「おお、久しぶりの家だ!」

 

 

 俺は晴れて退院することができた。1ヶ月くらい...いや寝ている時間も含めたら2ヶ月くらいだろうか。初めて訪れる俺の家。こんな立派なもの俺といろはだけのために用意してくれたのかよとツッコミを入れたくなるくらいだった。

 

 

「病院の先生は時間掛かりそうって言ってたけどさすがだわ」

 

「当たり前、時間は無駄にしたくない」

 

「そうね、じゃあお母さんは明日にでも地元に帰ろうかしら」

 

「は?それは勘弁!」

 

「冗談よ。とりあえず学校復帰するまでの間は料理に家事を徹底的に教えるわね」

 

「ひぃ...」

 

 

 ギプスも外れたばっかであんまり動かせないので早速しごきにきた。でも黙っているよりかは体で徹底的に学んだ方がきっと俺のためだ。

 

 

 退院を祝って今日はご馳走だった。色んなもの食べたいな〜って思っていたけど男らしく最初は焼肉にした。久しぶりに脂っぽいものを食べて俺は大満足だった。腹一杯になるってこういうことなんだなって。

 

 

 

「ん〜...今何時...?6時半か」

 

「あら遥おはよう。今日はついに登校日ね」

 

「ああ」

 

「ふふ、緊張してるの?」

 

「まさか」

 

 

 俺は初めて着るのにまるで何回も着ているかのように汚れている制服に身を包む。俺の高校デビューが始まろうとしていた。

 

 

 

 

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

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