「うわぁ...でっけえな」
スマホのマップ機能を駆使しなんとかホロライブ学園にたどり着くことができた。受験生でもなければ新入生でもないのになんとも不思議な感覚だが覚えていないものはしょうがない。門をくぐり入口まで行くと夥しい数の下駄箱が並んでいて、思わずぎょっとした。田舎から飛び出してきた俺にとってこんな数は見たことなかった。きっと俺はこのリアクションを繰り返しているんだろうなとも思った。
「お!風真ようやく来たか」
「え?!風真君?」
「元気だったか〜?」
「ああ...え、おう」
教室に入るやいなやクラスの人たち?からの軽い洗礼を浴びせられたような気がした。みんなからしたら俺が誰なのかは自明の理ではあるが、俺にとってはみんなの名前は疎か顔すら覚えていなかった。
「おいおい風真困ってるだろ。知っての通り記憶が曖昧なんだからみんなほどほどにな」
水戸の鶴の一声で俺に押し寄せて来ていたクラスメイトたちは徐々にはけていった。さすがは委員長といったところか。しかし同時に前の俺はクラスにちゃんと馴染めていたんだなと再確認できた。
「ありがとな水戸。いきなり沢山来たから少し困った」
「なんてことない。これが仕事なんだからな」
「委員長はずっと委員長してるからよ。困った時は沢山頼れよな!」
「なんで柊が言うんだよ...。まあ遠慮なくそうさせてもらうんだけどさ。ところで俺の席はどこだ?」
「え?ああ、お前の席か。ちょうど最近席替えしてよ...。お前の席はあそこだぜ」
柊が指を指した方向を見ると後ろの方の席だったためとりあえず一安心だ。問題は誰が隣か。病院にいる時にお見舞いに来てくれた人たちなら問題なくわかるがそれ以外の人達だったら申し訳ないが全く覚えていない。少し気まずいからなんとかなってほしいが...。
「っ!!痛った!何すんだよ?!」
横腹辺りに鋭い一太刀を食らった。その主を特定するために振り返ると
「あはは!おはよう遥、久しぶり!」
満面の笑みをしたクソガキがいた。
「...なあ紫咲。高校の授業ってこんなに暇なのか?」
「そりゃそうでしょ...って授業中なんだからあんまり大きな声出さないの」
「悪い悪い、ついつい出ちまった」
「おい風真!入院明けだろうが授業をサボっていい理由にはならないからな!それと紫咲も同じだからな!」
「おい、紫咲のせいで怒られちまったじゃんかよ」
「何言ってんのそっちのせいでしょ!だいたい遥が話掛けてこなければシオンだって怒られるハメには...」
「はー?紫咲が俺の話にのったのが悪いだろ!うるさくしたらダメってわかってんなら無視すればいいじゃねーかよ」
「...お前ら!!」
「「あ...」」
「ほんとにシオンたちっておしどり夫婦って感じ」
「うるせー、そんなことだけは断じてない」
「そんな否定してる暇があったら手を動かした方がいいですよ、風真様」
「わかってる、わかってるよ!だいたいなんで最初から反省文書かなきゃいけねーんだよ。俺今日が初めてだぜ?高校来るの」
「ま、まあ今の風真君はそうかもしれないけど今まではずっと通ってたわけだし...」
「そもそも反省文って古くない?もっと何かないの?シオンたちには古すぎるよ」
「あの先生頭固いからしょうがないとしか言いようがない余...」
俺と紫咲は反省文の刑を喰らった。本音を言うと意味がわからない。だいたい初日から通常運転、ましてや今までの記憶が無いやつにする仕打ちではない。そのことを棚に上げるのは俺としてもどうかとは思うが配慮のひとつやふたつあってもいいのではないだろうか。
「今日の放課後はどっか遊びにでも行こうか、せっかく風真が復帰したんだ。それも兼ねて少しお祝いでもしよう」
「いいこと言うじゃん委員長!ちょうど俺も部活ねーし大賛成だわ!」
「ここのところずっと部活で忙しそうだったしな柊。キャプテンもそろそろ慣れてきたのか?」
「いやまだ手探りってところだな...。俺は前のキャプテンみたいに根っからキャプテンシーあるわけじゃないしどうチーム引っ張るか...悩みどころだな」
「あら、柊様にしてはずいぶん深く考えられているんですね」
「うるさいですよ癒月さん!俺だって悩むわ!」
「スバルたちもちょうど暇してたしいっしょに行くよ」
「じゃあ決定で!それまでに紫咲さんと風真は反省文終わらせといてくれよ!!」
高校ってトントン拍子に話が進んでいくんだなぁ。中学までだったらありえない寄り道、放課後にそもそも部活がないこと自体新鮮だった。
「いやーにしても帰り道に風真がいるの新鮮!」
「だね〜。シオンちゃん風真君と帰れなくてさみし」
「あーあー!!今日はいい天気だな〜!あ!シオンあのクレープ食べたいな〜!早く行こうよみんな!」
「あ、おいシオン!走って行くんじゃねぇ!風真君が可哀想だろうが...って真琴ものるんじゃねーよ!」
「なあ湊さん、いつもこんなにうるさいのみんな?」
「え?あ、うん。いつもこのくらいうるさいかな。でもみんな風真君帰ってきてくれて嬉しいのもあると思うよ」
「ふーん。ちょっと照れるな」
「ふふ、なんか今日の風真君新鮮」
「なっ!」
「だってあたしたちが知ってる風真君はもっと穏やかで周りをまとめるようなそんな人だけど、こんなに破天荒だなんてあてぃしは少なくとも思わなかったな」
「あくあ様の言う通りね。ちょこもそう思う」
「へ〜そんな感じだったんだぁ。自分が自分じゃないみたいだ」
「なんでそんなに変わちゃったの?余気になる...いて」
「こらあやめ、そういうデリケートな話はしちゃいけないでしょ」
「だからってチョップしなくても...」
「わかったわかった、あやめの分のクレープは俺が奢ってあげるからそれで許して」
「へへ、やった」
「いや絶対に甘すぎだろ古海...」
「あやめ様と古海様は普段からこんな感じだから許してあげてくださいな」
「はあ...眩しい」
「実は俺も少し気になるんだ。良かったら話してくれないか?」
「まあいいよ。...俺は血の繋がった家族がいねーんだ」
「え?」
「おいちょっと待てよ!」
「まあまあ1回落ち着いて。だからみんないろはは知ってるだろ?俺の妹の。もちろん血なんて繋がっちゃいない、両親もみんなね」
「...」
「それで俺もその話を聞いた時驚いた。でも別に隠すようなことじゃねーって思ってて周りの友達に言いふらしたんだ、俺は家族と血繋がってね〜って。したっけそれを棚に上げすぎたせいか周りから友達は消えていった。多分ウザがられたんだろうな。だから俺はここの学園を目指してた、地元のヤツらが行かなさそうなところで再スタートを切るために。だから一人称すら変えたんじゃねーかな。未来の俺のことは全くわかんないけど」
「...そうか。ま、まあ話してくれてありがとな」
「あたぼうよ」
「あたしだったらその友達許せない!だっていきなり離れてくなんて...!」
「俺がそれを言いすぎたのが悪かったんだ。承知してる、落ち度は俺にもある。そしてみんなこの話を知らなかったってことは未来の俺はちゃんとこの話を自分の心にだけ置いていたってことだ」
「...その話を聞いて風真様はどう思われたの?」
「...そりゃあショックだった。今みたいに明るく話すような話題なんかじゃないってこともわかってる。でもしょうがなかった。俺は剽軽なキャラだったからずっと明るく振る舞い続けて、重い話でもなんとか笑い話にするように努めなきゃいけねーって」
「なるほどな...。まあ俺らは少なくともお前から離れたりはしない」
「そうじゃなきゃ困るぜ委員長、異郷の地に来てまでまた1人になってたまるかよ」
「じゃああいつらのところに行こうか、ほんとに大空さんと柊ってやつは...。どうしてあんなに...」
この話をしてわかったことがある。それはみんな俺が思っているよりも大人だってこと。中学生のガキンチョよりも立派に育っていること。話の受け止め方、聞く姿勢、寄り添い方、全てが大人びていた。
「俺はどれにしようか...。とりあえず如何にも普通そうな...っ!!」
「おい、大丈夫か?」
「あ、ああ平気。ちょっと頭が痛くなっただけだから」
「そうか、あんまり無理するなよ。また病院送りは俺らも勘弁だからな」
「おう」
時々くる頭の痛みはいったいなんだろうか。発作かはたまた後遺症か。
「おい!風真俺の食べるか?ってなんだよその質素なやつ!少しくらいパーッといこうぜ!」
「だったら真琴が奢ってやればいいじゃん!」
「はー?スバルもだしてくれんだったら考えるけど」
「ちょっと、スバル様、柊様うるさいですよ」
まあそんなことあとでもいいか
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい