「お前さぁ...」
「どうした柊」
「どう考えても身長伸びてるよな?」
「そうかもな。だって制服に丈が、ほら。少し短くなってるわ」
「ずっと寝てたからかもな、栄養なんてほとんど取れちゃいないと思うのに」
「チューブ越しに貰ってたわ」
「俺が185cmだから...って全然抜いてるし...」
「そうだな。よおちびっ子、抜かされる気分はどうだ?」
「うるせえ、人権は全然あるからいいだろ。だいたいお前は前まで俺より小さかったんだからな」
「うわ、190?!そんなとこまでいってたか?信じられねえ、これちょっと盛れるやつなんじゃねーの?」
「俺もびっくりだわ、まさか自分が190なんてな」
「これならダンク、できんじゃねーの」
「うーんわからん。そもそも1回もダンク成功したことないし、今の脚力でできるかどうかすら疑問だ」
「その脚力を身長で補えるだろうが、とりあえず体育館行ってみようぜ」
いや体育館行こうっていうかまだリハビリ中だしな。そうは言っても体はバスケを欲していて脳の信号とは真逆に俺は気づいたら体育館へ吸い込まれるように足を運んでいた。
「体育の時も思ったけど、やっぱでけえなこの体育館。まじで慣れない。中学の時よりもなにより綺麗だし」
「そりゃあ今をときめくホロライブ学園だぞ。谷郷校長がどんだけ太っ腹な人か」
「へ〜そうなんだな」
「はい、ボール。体育見学してっけど案外体は動かせるんだろ?」
「...さあ」
ギプスという牢獄に閉じ込められていた右手には多少の違和感は残っていたが、長年の蓄積が俺を助けてくれた。ハビットスポーツとも呼ばれるバスケットにおいてはこうした1連の動作を体に染み込ませるために習慣化することがマストであることを今になって痛感した。
「骨折したのが右手で良かったな」
「良くはねーよ。不幸中の幸いだ」
「だってよ、右手は添えるだけだぜ?」
「本来なら左手な」
最初の方こそ何度も何度もリングに当たってばかりだったが数をこなしていくうちにだんだん吸い込まれるようにゴールが決まるようになってきた。しかし急に身長が伸びたため違和感もあった。景色も力の入れ方も、何もかも変える必要があるように感じた。
「...ていうか疲れるわ。体どうこうじゃなくて体力がまじでない」
「はは、寝すぎだマヌケ。みんながどれだけ心配したことか」
「...みんな心配してくれてたのは重々承知している。でもやっぱり俺は人っ子一人覚えちゃいない」
「俺だってみんなだって覚悟はしてたさ。顔をパッと見て思い出せたら苦労なんてしないだろ?記憶を無くす前も風真、今も風真だ。他の誰でもないだろ」
「...くせーセリフがとことん似合わないな」
「は?!お前がそういう雰囲気にしたのがいけねーだろ!!だいたいお前は...!」
「あはは、ごめんごめん悪かった」
照れ隠しだ。その言葉に救われる俺がいた。
学校に復帰して約2週間が経過した。今では高校生活にすっかり慣れ、周りの友達の名前も徐々に覚え始めてきている。まあ勉強の方はおいおい取り組もうと努力はするつもりだ。
「お疲れ様です〜」
「あ!風真君!今日は何するにぇ?」
「もちろん勉強ですよ」
「ちぇー、なんで勉強しかしないのさ〜たまにはみこたちとゲームしようよ」
「みこ姉さんも勉強したらどうです?勉強苦手じゃないですか。この前すいせい先輩が言ってましたよ、赤点取ってるの見ちゃった☆って」
「あのバカ街!...ていうかそもそもみこたちは卒業するから勉強なんていらない!ゲームしよゲーム!」
「じゃあ後輩のために一緒に勉強してください」
「ちょっと騒がしいよ2人とも、特にみこちがうるさい」
「ちょっとすいちゃん〜、風真君がゲームに付き合ってくれないよ〜」
「まあまあ、遥は勉強追いつくのに必死なんだからしょうがないでしょ。まあすいちゃんたち揃って馬鹿だからなんにも教えれないけどね」
「見守ってくれるだけでいいですよ、お2人ともPONなんで」
「「このクソガキ〜!!」」
不知火さんが来たことでこの場は一旦治まった。俺はしらけんの賑やかな感じが好きだ。入部した理由も頷ける。でも最初は入部するのに渋っていたようだ。まあ、この女子の荒波に男子が単身で突っ込むのは勇気がいるだろう。
「ほふいへばはざまくんははれんたいんとーするの」
「こらノエル、口の中の食べ物ゴックンしてから言いなさい」
「なんで幼児目線なんだ...」
「風真君はバレンタインどうするのって」
「どうするって言われてもな...どうしようもなくない?」
「実は私たちのクラス、風真君のファンがいて...ね、ノエル」
「うん、今年は風真君に渡すぞ〜って意気込んでた」
「...それって俺認識あるやつ?」
「いや〜私が知ってる限りは喋ったことないんじゃないかな...」
「この機会に喋りたい〜って言ってる人いたしね」
「...へぇ〜」
「お、おい!星街!目がすっげぇこえーよ...」
「...ていうかバレンタインって」
「ん?明日ですよ、風真先輩」
「おいポルポル〜!どうにかしてくれよ〜」
「いや〜まいったまいった」
俺がポルポルの体を揺らして助けを乞うてもやれやれと言った感じで軽くいなされてしまった。
「...前の俺の方が良かったとか言われたらどうしよ。なんかショック受けそう」
「まあ遥は自然体がいいんじゃない?変に変えてもどうしようもないしさ...。ところでなんでそんなに嫌なの?」
「...れるじゃん」
「ん?」
「照れるって!!」
「「やだ可愛い」」
「うるせー!!」
「ただいま」
「あ、おかえりでござる!ちょうど良かった!お兄ちゃんこれ食べてみて!」
「これは...クッキーか?」
「そうでござる!明日はバレンタインでござるから友チョコならぬ友クッキーを作ろうと思って」
「へ〜女子力高いな...。立派に成長して...お兄ちゃん嬉しいよ」
「ちょ、ちょっと頭撫でないで!」
「あ、ごめんごめんつい...ってなんでそんなシュンってなってんだ?」
「もうお兄ちゃんなんて知らないでござる!」
「ああもう年頃の女の子はわからん!...ところでいろは...その...俺ってどんな感じだった?」
「う〜んどんな感じっていつの頃でござるか?」
「事故る前だよ」
「う〜ん少なくとも今よりは静かでござる」
「え」
「あと俺、なんて言わないでござる」
「なるほど...じゃあ真逆ってことか」
「まあそうでござるね。でも優しいところは全く変わってないでござるよ」
「いろは〜!!」
「ああ〜もう、お兄ちゃんったら...。なんか昔に戻った気分でござる」
来たる2月14日、俺は並々ならぬ気持ちで学校の門をくぐり抜けた。心做しか周りにいる見知らぬ男子たちもソワソワしているように見えた。そりゃあそうだ、男にとっては一大イベント。これからの青春に彩りをプラスするという面でも期待を寄せている男子は多いだろう。かくいう俺はそういう心持ちではないが。
「...うわすご」
下駄箱を開けて開口一番にチョコが入っていた、手紙付きで。
「これどうすんのまじで...」
いろはからお兄ちゃんはこの袋持っていった方がいいでござる!と念押しされたためそれ用のものは持ってきたが朝一で半分ほど埋まるとは先が思いやられる。
「おはよう...案の定すごいな」
「おはよう、古海...。お前はもらってないのか?」
「そりゃあ俺は普通の男子ですから。風真みたいに花なんてないから。それにあやめから貰えればそれで十分」
「おお、お熱い」
そうだ、こいつと柊はすでに彼女がいた。仲間なんて周りには誰もいなかった。
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい