僕の平穏だった学園生活   作:-つくし-

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新年あけましておめでとうございます。今年の目標は頑張ってこの小説を完結させることです。


迎えに行く王子様

「...遥のこと好き」

 

「...え?」

 

 突然の一言に俺は唖然としてしまいその場から動けなかった。

 

 

 これは卒業式の日のこと。

 

 徐々に学校にも慣れ始めた途端に最上級生を迎えることに一抹の不安を感じつつも少し新たな挑戦に胸を躍らせた

 

 俺は同じ部のさくら先輩とすいせい先輩の2人を送り出すためにしらないこと研究会の部室に赴いた。他の部活もサプライズを決行しているため、おそらく先輩方は薄々何されるか勘づいてたに違いなかったが卒業式の雰囲気が祝福を後押ししてくれた

 

 

「うぅ〜ぽぅぽぅ〜!!みこ卒業したくないよ〜」

 

「はいはいわかったから。よしよし〜」

 

 

 卒業式を後にしてギャン泣きするさくら先輩を尾丸がずっとなだめていた。尾丸は別れに対して悲しそうな素振りを見せていないが目には少しだけ涙が浮かび上がっていて別れさえも割り切りそうなその性格すらも凌駕していた。

 

 

「じゃあ私たちしらけんからは...これ!色紙と花束。みんなで色々考えたんだけど無難なのがいいかなって」

 

「おおすご...!ありがとう」

 

「もうちょっと驚いても良くないですか、すいせい先輩」

 

「え?驚いてるよ。ただ、ちょっと感傷的になってただけ。だってもうみんなとはお別れなんだなぁって今更さ。この部室にいる時間は永遠なんかじゃなかったなって」

 

「すいちゃん...」

 

「まあ頭の中ではまだまだみんなと会えるってことはわかってるよ。でもこの部室で会うことはもうほとんどない。って考えると寂しくて」

 

 

 すいせい先輩は卒業後アイドルになる夢を叶えるために事務所に所属し切磋琢磨していくらしい。さくら先輩はVTuberという俺にはあまり馴染みのないジャンルへと足を踏み入れる。自ずと疎遠になることは分かりきったことだから、すいせい先輩の気持ちもわかる。

 

 

「ごめんね!勝手に感傷的になっちゃって!最後くらい写真撮ろうよ。今思えば全員でちゃんと撮った写真なかったと思ってさ。まあ遥が写りたがらなかったのが原因なんだけど」

 

「え?!俺かよ!」

 

「そうだよ風真君。いや僕写真写り悪いから〜って言ってあんまり撮らせてくれなかったもの」

 

「そうそう、団長も風真君の写真あんまり持ってない」

 

「持たないでくださいよ恥ずかしい」

 

「みこちゃん風真君の写真持ってるよ〜!ほら!部室の机で寝てる写真と〜あとはスマ〇ラでみんなにボッコボコにされてる写真と〜」

 

「ちょっとなんで持ってるんですか?!」

 

 

 やっぱり俺は髪長かったんだ。この時初めて今までの自分の写真を見た。昔の俺とは違うスポーツマンとはかけ離れた穏やかな顔。しっかりとけ込めていていた事実を知れて1人でほっと胸をなでおろした。

 

 

「じゃあすいせい先輩とさくら先輩真ん中で」

 

「遥も入るんだよ?」

 

「わかってますよ...。はい!あと五秒後です!」

 

「え?ポーズはみこち?」

 

「ぽぅぽぅが決めてよ!」

 

「えー社長じゃないやっぱ?」

 

「私?!ってそんなこと言ってる時間ないから!」

 

「ああもう!」

 

 

 そんな話をしているうちに無慈悲にもシャッターが切られた。目をつぶっているものもいればしっかりピースしたもの、結局何すれば言い分からずはにかんでいるもの、三者三様だった。取り直しも打診したがこれがしらけんっぽいとのことで写真撮影は幕を閉じた。

 

 

 

「すいせい先輩、話ってなんですか?」

 

「ごめんね急に。最後だからさ、少しくらいワガママ聞いてよ」

 

「もちろんです」

 

 

 俺はすいせい先輩と2人で部室を抜け出し屋上に来ていた。下を見ると桜散る木の下で俺たちと同様に送別会を行っていたり、友との別れを惜しんでいる人たちがいたりする。

 

 

「すいちゃんが初めて遥に会ったのは...屋上だった。その時の君はすっごく無機質な顔しててさ、生きる気力もないような...そんな顔。そのまま飛び降りちゃうんじゃないかと思ったよ」

 

「あはは...。でも飛び降りないで今ここにいますから」

 

「勇気を出して話しかけたんだ、って言っても遥にはわからないだろうけど。その時にしらけんに誘ったんだ。もちろん遥からの答えはNGだったよ。女子ばっかりの部活に単身で乗り込むなんて自殺行為だって」

 

「まあ今でも思ってますよ。未だに信じられませんし」

 

 

 すいせい先輩の言葉に思わず苦笑する。当時の俺も同じことを考えていたんだなって。だって男子1人女子5人はラノベでも珍しいんじゃないか。そんなハーレムに俺は耐えられるはずがないような気がした。

 

 

「最初は興味本位だった。でも遥が休み時間にバスケットをしてる姿を見てすいちゃんはこんな顔するんだなって初めて思った。あんなに繊細な動きができてあんなに楽しそうな顔をして熱中する姿を初めて見たから」

 

「...照れますね」

 

「ちょうどこのくらいの時期に進路について悩んでた。夢を追うか...普通の大学生になるか。1回アイドルに応募したことがあったけど...結果はダメだったから。もういっその事諦めてしまおうかと思ってた。そんな時に遥は...すいちゃんを救ってくれた」

 

「...そうなんですね。でも俺はそういうキャラじゃないから...なんか傷つけること言ったんじゃないのかな。デリカシーないし...。でもすいせい先輩が諦めなくて良かった」

 

「夢を追いかける人の背中はかっこいい。あなたの姿に魅せられ勇気づけられている人がこの学校にいる」

 

「え?」

 

「遥が言ってくれた言葉だよ。勇気づけるためだけの言葉だったかもしれないけどまた頑張ろうって思えたから感謝してるよ。ありがとう」

 

「...なんか恥ずかしいな。俺ってそんなこと言うのか?!」

 

「でも今考えるとなんであんなに知的だったんだろう?」

 

「クリシェなんかじゃありませんよすいせい先輩。今の俺でもわかります。すいせい先輩はかっこいいです。自分の夢のために汗水流す先輩は誰よりも輝いています」

 

「はは!」

 

「...なんですか」

 

「いやー今の遥からそういう言葉聞くの面白いなって思って」

 

「勇気出したんですよ」

 

「ごめんごめん。...じゃあすいちゃんにも勇気を出させてよ」

 

「え?」

 

「...遥のこと好き」

 

「...え?」

 

 

 突然の言葉にきっと俺は口を開けてアホヅラを晒しているに違いない。下から聞こえてくる雑踏も、卒業生を後押しする風も今の俺には何も感じとれなかった。

 

 

「好きって」

 

「好きだよ、遥」

 

 

 すいせい先輩はきっと本気だ。いつもの理路整然としているすいせい先輩とは程遠く目線は下を向いていて頬はほんのり赤い。俺の前にいるのは正真正銘乙女だった。

 

 

「...でもそれだけ」

 

「え?」

 

「好きって伝えたかった。それだけだよ。もちろん叶うなら付き合いたかった。遥を1人で独占したかった。ほかの女の子と話す姿見たら胸が痛いから」

 

「...」

 

「でもね、すいちゃんは遥を独り占めにするよりも...まず先に夢を叶えたい。あえかな彼女じゃなくてどんぞこから救いに行けるくらい立派なアイドルになりたい」

 

「だから今は...想いだけ。って言ってもきっと前の遥なら気づいてる。すいちゃんが遥のことを好きだってことくらい。少なくともしらけんのみんなにはバレてたし。でも君は硬派だから待ってるシンデレラじゃダメだった」

 

 

「...もし俺が記憶を失ってなかったらすいせい先輩にちゃんと返事ができてたと思います。だからこそ今めっちゃ悔しいです。言葉一つも思い浮かばない自分を殴ってやりたいです」

 

「好きってことを聞いてくれるだけで十分。少なくとも今付き合うとか彼氏彼女になるとかって話をしてるわけじゃないから」

 

「でも...」

 

「じゃあ私がアイドルになって引退して...その時に遥が1人だったら。約束して、すいちゃんと付き合うって。私があなたを迎えにいく。だから待ってて?って言っても遥モッテモテだしそんなことないと思うけど。まあ遥にはずっとすいちゃんのファンでいてもらうしずっと応援してもらうから」

 

 

 

 

 帰ってきてから思うことがある

 

 もし俺の記憶がなくなっていなかったらって

 

 相手の1年は俺にとってのたったの3ヶ月にしか過ぎないって

 

 失われたものはきっと帰ってこない

 

 熱望しても相手と俺の理解度には齟齬が生じる

 

 最初は楽観視していた、普通の生活を送れるようになってからは少しの痛手にしか考えていなかった

 

 でも今日初めて実感した

 

 関係値がリセットされるのはこんなにも苦しいことなのだと

 

 相手の想いに答えられないのがどれだけ悔しいかを

 

 あの瞬間をどれだけ悔やんだか

 

 相槌ひとつ打てない、思い出話に花を咲かせることもできない自分を

 

 壊れた機械のように叩き続ければまた元通りになるのではないのか

 

 そんな考え事をしていたら一通のメールが届いた

 

 

「どうしたんだ。こんな時間に」

 

「え?暇かなって思って」

 

「暇っていうか夜だぞ?!寒いわ!」

 

「あはは!ごめんごめん、なんか散歩したい気分だったからさ〜。用心棒代わりに遥のこと誘お〜って思って。だってシオンかわい」

 

「いや時間を考えろ時間を...。まあ俺も少し冷たい風を浴びたい気分だったからいいけどさ」

 

「...もしかしてなんかあった?」

 

「えっ?」

 

「え?」

 

 

 メールの主は紫咲だった。時刻20:00を回ったタイミングで散歩とは。ダイエットでもしているのだろうかと思ったがそんなことはなかった。沈んだ気持ちを晴らすのにちょうどいいと考え紫咲に今日の一連の出来事を赤裸々に話した。

 

 

「ええ!すいちゃんって遥のこと好きだったの?!」

 

「...そうみたいだ。でも付き合おうとかじゃなくて気持ちを知ってくれればいいって。すいせい先輩的にはそれでいいと思うんだけど俺はそうじゃなくてさ。やっぱり誠心誠意答えたかった」

 

「難しいよね〜。記憶ないからしょうがない!って言いたいけどそうじゃないよね」

 

「俺もわかってるしょうがないってことは。でもやっぱりさ...うん。」

 

「でもこういう姿見ると前も今も遥は変わらないね。真面目なところ、同一人物って感じがして安心した」

 

「...そうなんだ」

 

「でも遥は遥だよ。それだけは変わらない。またいっぱい思い出を作ろう!忘れられないくらいのさ!超楽しい思い出。シオンだってサポートするしその反動で記憶が戻ったらばんばんざい!みんなだってすいちゃんだって思ってる、遥は遥だから。今も昔も変わらない」

 

「...そうか」

 

「うん、っていうかシオンこういう話するの下手くそだから伝わった?」

 

「う〜ん...なんとなく?」

 

「理解しようとしろよ!」

 

「でもありがとう、ちょっと考えすぎだったかもな」

 

「それもそれで遥らしい...。あ!見てあの星ちょーでっかくない?」

 

「ほんとだ。きれい」

 

 

 こうして俺たちは3年生になっていく。新しい出会いと思い出に期待しながら階段を登っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この小説がちゃんと終わったらぶいすぽっ!の小説書こうかなって思ってます。なにかアイデアある方お待ちしてます

サブキャラの話を番外編に載せるのはありか

  • あり
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