「で〜、風真君は将来は就職するの?それとも進学するの?」
「...わかりません」
「そっか〜」
「...すみませんこんなトントン拍子で面談って終わるもんなんですか?」
「ん〜僕は教師なだけで風真君にこうなりなさい!って強要することはできないからね〜」
「はあ」
3年生に進級するにあたって俺たちの担任が変わった。最後を締めくくる重要な年であるのにだ。しかも新任、言っちゃ悪いが俺たち生徒を然るべき道へと送り出せるか疑問だ。
「急いだって何も変わらないよ、気楽にいこーよ、気楽にさ。まだまだ若いんだから、はいお菓子あげる」
「あ、ありがとうございます」
「それに急いだって記憶が戻るわけじゃないんだしいつも通りいようよ」
「って俺も言いたいですよ...。でもあと1年で卒業だから...ってなんで猫又先生がそのこと知ってるんですか」
「子どもたちの情報なしに担任なんてできませんよーだ、僕だって引き継ぎくらいちゃんと聞いてるもん。私的には何かがトリガーになって記憶が蘇るんじゃないかって思うんだ。急にあ!思い出した!みたいな。だから普段通りにいることが手助けになってくれるかもよ〜」
一通り話し終えたあと猫又先生は喉を潤すかのように湯のみに入ってるお茶をすする。猫って着いてるんだからきっと猫舌なのかなと思ったら案の定そうらしい。言葉の一つ一つに語気はないし、いかにもゆるゆるな先生だ。しかし先生の言ってることも一理ある気がした。
「将来の夢かぁ」
自惚れた話をするなら、俺はプロバスケ選手になれるだろうと勝手に思っていた。名の知れた高校にさえ進学しなかったものの、強豪校でスタメンにならずに高校生活を終えるくらいなら1年生のうちから確実にレギュラーを取れる場所を選んだのだ。しかし蓋を開けてみれば俺はそもそもバスケ部ですらなかった。もうその道は通行止めとなってしまったのだ。
「夢を持ってるすいせい先輩が羨ましいな」
希望調査と書かれた紙を眺めていたら自然とそんな言葉が口から漏れていた。今日限りは夢を持っている人を羨ましいと思ってしまった。
「...でなんで僕が連れて来られたの?」
「天音なら付き合ってくれると思って、なんだかんだ面倒見良いことは知ってる」
「ま、まあ風真君の頼みだしいいんだけどさ...その、僕以外って選択肢は?」
「バスケ部のマネージャーって言ったら天音だろ?快く引き受けてくれるって思って、あ、もし嫌だったら全然帰っても大丈夫」
「まさか!ここまで来てそんなことするわけ」
天音と来た場所はバスケットコートのある大きな公園だ。体育館だと高校のやつらとしかできないが、ここに足を運べば年齢問わず様々な猛者と相入れることが出来ると考えたのだ。しかしそれはあわよくば、だ。本来の目的はシューティングをすることだった。
「人がいないうちにアップしちゃいたい。距離どんどん伸ばしながらシュート打つからパスだけ欲しい」
「うん」
「できるだけ走らせないように...って、あ、やべ」
「おい!最初から僕を走らせんなよ!僕だってか弱いレディなんだから...なっ!」
「うおっ!パス強!」
体感七割位は入ったような気がしたが、怪我の違和感かはたまたブランクか。なんとなくいつもよりコンディションは悪いように感じた。その後コートに来たおそらく中学生くらいの子と早速1体1をした。結果は言わずもがな、申し訳ないがコテンパンにした。
「なんというか、あくまで僕視点なんだけど、風真君ってこんなに体当ててゴリゴリに突っ込んでく感じだったっけ?」
「俺は元々チームプレーが好きなんだ。でも1体1じゃチームもクソもないだろ?最低限1人でなんとかできるくらいには...とは思ってる」
「相手の子が可哀想なくらいだったけど...」
「男の勝負に手加減はない」
「すみません!俺とも勝負してください!」
「あ、ごめん行ってくるわ。いいよ、はい、先行譲るよ」
俺はどっちかって言うと脇役が好きだ。脇役あってこその主役ってことを知っているから。下から泥臭く支える人が表で輝いてる人よりも好きだった。
「いやー疲れたわ、さすがに」
「何回やったかもうかなたそ覚えてないんだが?!」
「俺も覚えてない」
「少なくとも僕が覚えてる限りは全部勝ってたよね?」
「多分な、上々って感じじゃね?」
「充分即戦力だわ」
「じゃあちょっと着替えてくるからさ、少し待っててくれ」
「はーい、って着替えてくるって言ったくせにここで服を脱ぐな!僕は一応女の子だぞ!」
着替え終わったあと、俺は本題に入るべく事前にリサーチしておいたちょっと良さそうなカフェへと入った。正直俺の雰囲気と全然あってなくて居心地が悪いが、年頃の女の子にはこれしかないであろう。現にスイーツの写真撮ってるしきっと間違ってはいないはずだ。
「今日は天音に聞きたいことがあって呼んだんだ。急に悪かった」
「全然僕は大丈夫だよ、それで何があったの?そんなに畏まって」
「実は...」
俺は最近配られた進路希望調査の話をした。
「要するに進路に困ってるってことね。そんなに回りくどく言わなくたっていいんじゃない?」
「いや背景とか大事かなって思ったんだけど。そうだね、単純に言えば進路に困ってるってこと」
「まずは風真君がどうしたいってところにかかってるんじゃないかな?実際なにがしたいとかはあるの?」
「本当はバスケ選手の道に進もうと思ってた。だけど今こんなだろ?バスケ部に入るっていうのも今の時期だし、前までの俺の意思を尊重したいから避けたい。だからバスケ選手はなしだろ?」
「まあ...そうだね」
「ってなると今は何もない。猫又先生と面談した時にはっとした。そういや俺なんも考えてねーわって」
「でも前の風真君だって今の風真君だって風真君なことには変わりないよ。記憶が入れ違ってるだけで僕たちからしたらおんなじなんだよ」
確かに天音の言っている通りだ。傍から見たら同じ人間だ。だけど当人からしたら違うのだ。二重人格って言ったら厨二くさいがその状態に限りなく近いのではないか。
「バスケをやめたのは平穏に過ごしたいから、風真君が言ってたことだよ。でもバスケの助っ人も出てくれるし、バスケへの憧れは諦めきれてないのかもね」
「趣味程度にはやろうって俺だって決めてたんだ。だけどそれが飛躍しすぎたんじゃないか」
「でもね、バスケしてる時の風真君すごい楽しそうだよ。選手って目線にこだわってるかもしれないけど、僕みたいにマネージャーっていうポジションもあるし、コーチだってある。バスケに携わる道っていくらでもあるんだよ」
「あー...」
「どうかな?的確にアドバイスできた気はしないけど...僕なりに考えてみたからさ、参考にしてみてよ」
「ありがとう天音。俺は1個の道に囚われすぎてたみたいだ。もっと俯瞰して考えてみるよ」
「良かったよとりあえず、力になれたなら」
「じゃあもっと力を貸してくれ。もう1回公園行くぞ」
「はぁ?!まだやるの?勘弁してよ〜」
駄々をこねる天音を背に俺はまたコートに向かった。
長らく投稿をしていなかったことをお詫び申し上げます。正直に言うと紫咲シオンの卒業を受け、とても萎えていました。これからは空き時間を使ってしっかり作品を終わらせられるよう努めたいと思います。
サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい