「で、ほんとにしら研に行くの?」
「うーん、もう行くって言っちゃったんですよね。しかも結構断り続けてて。僕の良心もだいぶ痛んでた頃なので1回行ってみようかなと」
「ふーん、そうなんだ」
「紫咲さん、目のハイライトがないし、その、横腹ずっとつつくのやめてもらっていいですか?」
「知らなーい。勝手に行っちゃえばー」
「ええ、まあ今日はさすがに行きますよ。あと、湊さん、紫咲さんの手を止めてもらってもいいですか?」
「そうだよシオンちゃん、そろそろやめなよ」
「だって今日だって一緒に帰る約束してたし...」
湊さんからの抑止が掛かると珍しく素直にやめてそのまま席を離れて大空さんの元まで向かってしまった。ちなみに帰り約束はしたっけ?
「なんだかなぁ」
「き、きっと大丈夫ですよ、ちょっといじけちゃっただけで。ただスバルの所に行きたかっただけだと思います」
「やっぱり行かない方が良かったんですかね」
「そんなに誘われてるなら行ってもいいと思いますよ。すいちゃんも風真君のこと勧誘してるんだけど全然来てくれなんだよねーって嘆いてたし」
「星街先輩少し怖いんだよなー」
「でも普段は優しいですよ。伊達に学園のアイドルやってません。ただちょっとサイコパスなだけで...」
「そのサイコの部分がなぁ...」
今日の全ての授業を終了させ、僕は約束の地へと来ていた。ドアの前からは既に笑い声が聞こえる。既に完成されている人間関係に足を突っ込むことに気まずさを覚えるが、ええい、もうなんとかなれー。
「すみません...体験入部の風真なんですけど...」
「ああ!風真君いらっしゃい。ささ、まずはここに」
僕は入るやいなや星街先輩に言われるがまま教室に入り僕のために用意された椅子へ座った。
「この人が風真君?団長前にポルカと帰っている時にこの人見たな」
「え?ほんとですか」
「うん、シオンたんといたよね」
うわ、よりによってあの瞬間を見られてたか
「そうですね。家が近くなのでたまたま一緒に帰ろーってなったんです」
「そうなんだぁ。でもそれにしては仲睦まじくクレープを一緒に食べてたように団長は見えたな」
「ポルカもそう思うー」
「しかもさっきすいちゃんとみこちで屋上に呼んだ時もシオンちゃんいたしー、どういうことかな?」
「いやー、それは...」
ああ、これはやばいな。なんか星街先輩、早速斧取り出してきたし...。
「まあまあ体験入部生を圧迫しないの。怖がって帰っちゃうよ」
ああ助かった、不知火さん本当にありがとう。これからは女神って呼ばせてください。
その後は一通り既存部員の自己紹介が行われた。この中で知らなかったのは尾丸さんだ。どうやらピッチピチの1年生だったようで通りで見かけたことないなと合点が付いた。それ以外の人達は一目見たことがあれば学園でも話題に上がるほどの人なので自己紹介なんて最早いらない気がした。
「しら研って何するんですか?不知火さん」
「うん、見ての通りだよ」
「見ての通りって...」
見渡せば季節外れのこたつ、机には山盛りに置いてあるお菓子、本棚には自己啓発本やミステリー小説ではなく漫画の類、おまけにテレビにはゲームが置かれている。しかも人数分のコントローラーがちゃんと準備されてある。
「しら研は自由じゃよ〜」
「尾丸さんは結構満喫してるんですね」
「はい、風真先輩もどうぞ、お煎餅」
「あ、ありがとうございます」
「まあまあそんなにかしこまらないで下さいよ〜」
「ところで団長気になったんだけど、風真ってことは風真いろはちゃんのお兄さん?」
「はいそうです。確か白銀さんも剣道部でしたよね。妹がお世話になってます」
「うんうん、いろはちゃんは強いよ〜。部の中でも真面目だし、いつものほほんとしてる団長とは大違い」
「いっぱい相手してあげてください、きっといろはも喜びます」
「はいよー」
ガタン
「ちょっとー!もう風真くんいるじゃん!ふざけんじゃねーよ!」
あ、さくら先輩だ。通りで静かだな〜って思ってたらさくら先輩が欠けていた。
「みこち、風真君捜索お疲れ様」
「通りでどこにもいないと思ったにぇ。でも誰かしら連絡してくれても良かったじゃん!」
「それは、ねぇ?みんな風真くんを歓迎するのに手一杯だったからさ」
「星街ぃ!!ポルポルもなんか言ってやってよ!」
「風真先輩、チョコレートもどうですか?」
「ありがとうございます」
「ポルカー、あたしとノエルの分もお願い」
「はーい」
「え?もしかしてみこ、歓迎されてない?」
不憫なさくら先輩をみんなで笑った。もちろんいじめでは無い暖かい笑い。先程僕を圧迫していたあの空気感はどっかへ行き、アットホームな雰囲気へと変わっていった。
「風真君はどっちやりたい?大乱闘かレースゲーム。確か一緒のクラスだった時は大乱闘やってるって言ってたよね」
「はい、たまにですけどね。みんなでできるし、大乱闘でいいんじゃないですか」
「社長と風真君って同じクラスだったんだ。すいちゃんはスマ○ラよりもマリ○カートが良かったな」
「おい星街!せっかくみんな配慮してくれてるんだから名前を出すな!」
「みこちがうるさいよー」
最終的に4文字でスから始まりラで終わるあの愉快なパーティゲームに決定した。僕は本当にたまにしかやらないため、しらないこと研究会一同にぼっこぼこにされた。こんなことされたら体験入部生泣いちゃう...。
「あの、不知火さん。今日実は僕が夕飯を作る日なんです。なので帰っても大丈夫ですか?」
「うん、全然大丈夫だよ。それで、どうだった?しら研は」
「はい、なんか僕が思っている部活動とは違ったんですけど、すごく楽しかったです」
「それなら良かった」
「それで、入るの?風真君」
「...」
正直迷っていた、思いのほか居心地が良いと思ってしまった自分がいた。しかし同時に入ってしまったら女性のみのサンクチュアリを汚してしまうのではないかと思ってしまった。
「1回考えてからでいいですか」
「もちろん。これ、すいちゃんの連絡先。気軽に連絡ちょうだい」
星街先輩を皮切りにみんなの連絡を交換し、しら研のグループに招待された。
「それじゃあ、ありがとうございました」
「ちょっと待って!」
「どうかしましたか?星街先輩」
「...また来てよ。待ってるから」
「はい、わかりました。今日は楽しかったです。愉快な場所に招待してくれてありがとうございました」
星街先輩の顔が赤に染っていた。きっと窓から差し込む夕日のせいに違いない。だって今日の夕焼けはとても綺麗だから。
「やばい忘れ物した」
1度下駄箱にまで赴いたが、忘れ物に気が付き1度教室まで戻ってきた。我ながらファインプレーだ。でもおかしい。放課後に入るまでは確かにバッグの中に入ってたんだけど。
「え」
教室には僕の隣のシルバー髪で背の小さいあの子が机に突っ伏して寝ていた。起こさないようにそーっと忘れ物を取る。
「可愛いな。寝顔」
僕は無意識的に手を頭の上まで持っていかれ、頭を1回2回と撫でてしまった。
「何やってるんだろ」
我に返った時にはもう体は熱くなっていた。
「帰ろう、起こすのも良くないし。きっと大空さんか仲良い人を待ってるんだろ」
そう紫咲さんに背を向けた瞬間
「グッ!」
「あはは!おもしろー」
「紫咲さん!いつから起きてました?」
「いつって?そりゃさっきだよ、目さめた時ちょーど風真君が後ろ向いてたからさー。いやーいいリアクションだね」
「それは結構です。それでなんで教室にいたんですか?もう夕方ですよ」
「うーん、教室で寝たくなったから?」
「なんですかそれ」
「いいから、一緒に帰るよ。どうせぼっちでしょ。ほら早く!!」
「ああもう、待ってください」
忘れ物をしてよかったかもしれない。そう思った。
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サブキャラの話を番外編に載せるのはありか
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あり
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なくてもいい