TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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ブラックオパール:希望、克服


第二章、暴走列車起動

「……形勢不利を悟った瞬間にあの鶏野郎は逃げた」

 

「文字通りの(チキン)だったということでありますか……」

 

 

ずずっと紅茶に口を付け、その【不死鳥(フェニックス)】という方について考えますが……炎の異界を扱うということは、私との相性は最悪ですね。鶏頭の怪人を見掛けたら、即座に逃げる事にします。

 

 

「それから、彼は恐怖連合(ダークアライアンス)を抜け……仇である【不死鳥(フェニックス)】を今度は追っている」

 

「この町に来たのは鏡花(キョウカ)……妹の様子を見る為だ。だが、あの妙な男に攫われた……白掟(ハクジョウ)優義徒(ユギト)と共に」

 

 

そこなんですよね……優義徒(ユギト)については攫われるのは分かります。あの子の体は"サモンエナジー"で作られていますが、魂は純粋なこの世界で生まれたもの。興味深い存在だと、私でも思いますから……しかし、キョウカちゃんの方は攫われる理由はわからないですね。

……攫って、恐馬(キョウマ)くんを動かす方が目的ですかね?基青神が動いていますから、どこまでが彼の想定(シナリオ)通りかが分かりませんねこれは。

彼の能力へのカウンターになり得るのは……現状のメンバーですと、アポロさんくらいでしょうか。

 

 

「アポロさんはこの件どう思い……アポロさん?」

 

 

ふと、先程からあの比較的お喋りな彼が話していない事に気づきました。

そして、いるであろう場所を見ても……姿がありません。

 

 

「ソコロワ嬢、アポロさんは何処へ……?」

 

「え?……いつの間にか居ないであります!?」

 

「……?お前たち二人しかあの場にはいなかったが……誰か他にもいたのか?」

 

「いたのですよ……まさかアヴァロニア氏に会わせたから、ソコロワ嬢のお願いを叶えたと判断したのですかねあの人」

 

 

やるかやらないかと言われたら……昔の占赤神(かれ)ならば、仕事はこなしたと帰るのはやりかねません。

 

 

ーーーーー

 

「ほんと、勘弁勘弁……裁刃徒(サバト)くんに会うのは流石にマズイからねぇ……」

 

 

大会の時は、ユギトくんの方に注目してたから気付かれなかったけども……落ち着いてる時に出会うのは本当にマズイ。話し合いすっ飛ばして殺し合いが始まっちゃうからね。

 

 

「レジーナちゃんのお願いも聞いてあげたし、ミラージュにこのまま帰っても直ぐに見つかっちゃうから……お散歩でもしようかなぁ」

 

 

のんびりと雨上がりの道を、足の向くまま気の向くままに歩くのは楽しい。

誰かに強制されずに、自分の思うままに振る舞える事の楽しさは一度知ったら、もう辞められない。

 

 

「ふんふーんふんふん……おや?」

 

 

よろけながら、バイクを押している全身ズボ濡れの少女を見つけて、思わず足を止めてしまう。

確か彼女は……

 

 

「レイカちゃん、どうしたの?雨に降られちゃったのかな?」

 

「っ天神(テンジン)、アポロ……」

 

 

割と元気な娘という印象が有るのだけれども……今の彼女は気落ちしているようで、酷く静かだ。

よく見れば、その目元は少し赤くて……泣き腫らした跡にも見える。

 

 

「ユギトくん程では無いけども、私も聞き上手だと思うんだけどね……話、聞こうか?」

 

 

微笑みながら私が差し出した手を……レイカちゃんが恐る恐る取った。

 

 

ーーーーー

 

──人が怖い。

人が人を貶める悪意、その嵐に巻き込まれてから……僕の世界は六畳一間の部屋とインターネットの海だけになった。

時々、お父サマが外から声を掛けてくるけども……外に出すのが目的なのは分かっていたから、無視していた。

そんな小さな世界に、知らない大人が寄り添ってきた。

 

 

『初めまして、白掟(ハクジョウ)優義徒(ユギト)と申します』

 

 

扉越しにそう話し掛けてきた大人の声は、扉があるのに不思議と鮮明に聞こえてきた。

その大人は、ただ毎日訪れて日々の出来事を話してきた。

今日は天気が良かったので庭の草むしりを手伝っただの、今日は食堂の日替わり定食が好きな献立だっただの、今日は肌寒くてくしゃみをしたら周りが慌てていただの、今日は今日は今日は今日は……

毎日毎日うっとおしい筈なのに、彼の話す世界は酷く優しくて……とても、羨ましかった。

 

 

『おはようございます、今日はですね』

 

『なんで……毎日、話しかけてくるの?』

 

 

初めて、その大人に声を掛けてしまった。

ほんの少しの間が空いて、彼はいつものように穏やかな声色で話し始める。

 

 

『キミとお喋りしてみたいと思ったからです』

 

『僕と……?なんで……?』

 

『キミと、お友達になりたいからです』

 

 

変な大人だった。

子ども……それも、小学生と友達になりたいなんて、普通じゃない。

……でも、僕は普通の子どもじゃないからそれで良かったのかもしれない。

久しぶりに、扉を開けて……新しい友達を部屋に迎え入れたのは少ししてからだ。

変な大人──大司教サマの周りには同じくらい変な人で溢れていた。

騎士サマは時々変なミスをする上に、大司教サマに妙な視線を向けているし。

ドクロサマは女の子なのにガサツで、大司教サマを抱えて騎士サマと追いかけっこしたり。

オニサマはそんな三人を止めようとあわあわして、何故か騎士サマを担いで騎馬戦みたいになってるし。

変な人たちだけども……みんな、とても優しかった。

人が怖くて仮面を被ったままの僕の事を気遣って、同じように仮面を付け始めたり、"ギアスファイト"でコピーデッキを使っても怒ったりせずに、逆に回し方のアドバイスをくれたり…………ずっと、こんな毎日が続けば良かったのに、そんな願いは叶わなかった。

 

 

『なんで』

 

 

大司教サマの暴走で、神聖制約教団(ホーリーギアス)の教会は閉鎖された。

僕の行く場所は無くなって、またあの部屋に篭もりがちになった。

 

 

『なんで……』

 

 

その日……爆発音と衝撃に、仮面を付けて僕は部屋の外に出た。

自宅と直結している病院内はパニックで……お父サマが傷だらけで倒れていた。

意識を失う直前に、お父サマから教会へ避難するようにと言われて……言われるがままに走った。

 

 

『なんで……!!』

 

 

走って走って走って……息を切らして、ようやく辿り着いた教会の門の向こうに、大司教サマの姿を見かけた。

捕まっている筈じゃないの?なんで笑っているの?なんで……(ともだち)に逢いに来てくれないの?

 

 

「なんで!!!!!!」

 

 

叫びが喉を通り抜け、大司教サマへの親愛の感情が……その時、反転した。

 

 

 

 

 

 

 




( ˇωˇ )次回、初めてのタクミの"ギアスファイト"描写です……初期から出てるのに"ギアスファイト"するまで100話近く経ってるのマジですか??
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