TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話 作:木津 吉木
……不意打ちに近い形でしたが、勝利を納めることが出来ました。
呆然と目を見開いたまま、膝を着いているタクミくんの姿を見ると心が痛みますが……あの状況だと、アレが最善手でした。
「タクミくん、落ち着きましたか?」
ゆっくりと彼に近づき、目線を合わせる為に私もしゃがみます。少し見ない間に、前に見た時よりも背が伸びているようで……思わず目を細めて、眉尻を下げてしまいます。
「あのタイミングしか、私の勝ち筋はありませんでした……キミがもう少し、冷静であったならば……【亡き神との送葬】を止めなくても問題は無い事に気づけた筈なのが勿体ないところですね」
アタックフェイズの強制終了を行えるのですから、スペルを止めずにモンスターが並んだとしても返しのターンは確保出来たのです。
……冷静な彼だったら、間違いなく私の【
「タクミくん、お話しませんか?私は沢山、間違いを犯してきています……キミは私の何に対して、怒っていますか?」
「…………」
ギュッと口を
十秒、二十秒……たっぷりと間が空いて、うろうろと彷徨っていた彼と視線がぶつかった時に、ぽつりと言葉が出て来ました。
「なんで……会いに来てくれなかったの?」
小さなその言葉は……正直、予想外でした。カタルさんを使ってタクミくんを利用した事や、騙していた事に怒っているのだと思っていたのに……
「私に、会いに来て欲しかったのですか……?」
「そうだよ……だって、大司教サマは……
ギュッと、私の服を握り……タクミくんの目からぽろぽろと雫が零れ始める。
「僕にとっては、
血を吐くような、そんな叫びと共にぶつけられる重い感情……一方的に向けられる思いは止まらない。
「アナタにとっての僕がその他大勢と同じなんて嫌だ!僕だけを見てよ、僕だけの
逃がすまいと、服を強く握り締める指先は白くなっていて……言葉とは裏腹に揺れる瞳からは怯えの色が見えていました。
見捨てないで、離れないで、一人にしないで……涙を流し続けるタクミくんに優しい言葉を掛けるのは簡単です。ですが……それではいけない。
彼を酷く傷つけるかもしれない……それでも、私は彼のモノにはなれない。
「……タクミくん。キミの中の
「っ……それ、は……」
「私は……外に出歩いてはいますが、自由の身ではありません。やらなければいけない事があるのです……キミに会いに行くのは、自由になってからと思っていたのですよ」
ニコリと微笑みかけて、力が込められすぎている手を優しく撫であげます。一度二度と触れれば、少しづつ力が抜けていき……するりと、服の端が離されます。
「私が化け物なのは聞いていますよね?」
「……うん」
「そうだと知っていて……まだ私を友達と呼んでくれてありがとう、タクミくん」
背に腕を回し、ぽんぽんと撫で叩きながらその小さな体を抱き締めます。
子供特有の高めの温もりがじわりと沁みて……わんわんと大きな声を上げて泣き始めたタクミくんが落ち着くまで、私は目を閉じました。
ーーーーー
──私は何をしていたのだろう
何もしていない時、ふと冷静になってしまった時……その問いが私の中で何度も繰り返される。
あの偽物の手で
そして、あの偽物はどこぞの監獄へと連れて行かれたらしい……更なる置き土産として、他の大司教たちの悪事の証拠を自らのデスクに残して。
結果として見るならば、あの偽物は……善行を行ったと言える。
過程は完全に悪としか言えない有様ではあるが……それでも、きちんとした結果を残した。
意識を取り戻したのは病院で……事は全て終わっていた。
どこか浮ついた……しかし、困惑の色が隠しきれない
『なんであの子のことを、あんなにいじめたの■■ちゃん』
意識を取り戻した
どんな宝石よりも透き通った……心の奥底まで見通してきそうなエメラルドグリーンの瞳に映る私は……酷く、醜かった。
偽物の中から、
気がつけば、訳の分からない男の叫びが聞こえてきて……数瞬後に、それが自らの喉から絞り出されている事が分かった。
逃げるように……否、文字通りに逃げ出して……私は、走って……走って……走って…………魔女に出会った。
ーーーーー
「タクミくん、落ち着きましたか?」
「……うん」
グズグズと鼻を鳴らしながらも、涙は止まった様子のタクミくんは完全に正気に戻っているようでした。
私たちのいざこざが終わったのを見計らい……ソコロワ嬢が近づいてくるのが見えます。
「もう、大丈夫でありますか?」
「ええ、私は大丈夫です……タクミくん、彼女が今の私の雇い主のソコロワ嬢です」
「……首のソレ、その子のせいなの?」
知らない相手が近くにいるので、私の近くに寄って隠れながら様子を伺うタクミくんの頭を撫でます。
「まあ、そうなりますね……」
「僕なら、ソレ取れるよ?
「取らなくていいですよ……契約の一環なので、問題はありません」
「……一般人が取れるような作りになってないのでありますがコレ。ユギト氏の部下、どうなっているでありますか……!?」
「私の自慢の子たちですからね」
"自慢の子"と言われたのが嬉しいのか、はにかみながらも、すりすりと胸元に顔を寄せるタクミくんに思わず、頬が緩みます。
『やはりそういう趣味……』というソコロワ嬢の呟きは無視します……だから、そういう趣味とはどういう意味なのでしょうかね……
「それでタクミくん……あの四枚のカード、まだデッキに入っていますか?」
「えっと…………無くなってるみたい」
しょんぼりとした様子のタクミくんが見せてくれたのは、"ギアスディスク"の機能の一つであるデッキリスト。私も確認しましたが、確かに【カマエイドス】【ミカエリス】【レヴィアタン】【
「それらのカードをくれたというおばさんは、どのような方か覚えていますか……?」
「優しそうな人で……緑色の目だったのは覚えてる……後は、分からない。ごめんなさい……」
「緑色の目という特徴だけで探すのは無理があるであります……その、四枚のカードというのは【
「ええ……それらに加えて【
「僕が持ってたのは……【レヴィアタン】のカード」
「他者への嫉妬が増幅されたのでしょう……それと同時に、加虐性も」
「……とんでもないカードを所持していたでありますな、ユギト氏」
「まあ、私には効果は……
えへんと胸を張って言えば、タクミくんからは尊敬の眼差しを。ソコロワ嬢からは胡散臭い物を見る目を向けられます。
……温度差が酷いですね。
「コホン……まあ、これは
「関わりがあったら、頭抱えるでありますよ……」
はぁ、とため息を吐くソコロワ嬢。
【ルシフェリオン】と基青神に関わりは無いので、完全に別件となる筈ですが……何故でしょうか、なんかとんでもない所で関わりが発生しているような気がするのです。
……まあ、確証が無いのでソコロワ嬢には黙っておきますか。
タクミの年齢は十歳です……十歳にしては拗らせすぎてない??