TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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久しぶりの主人公のエントリーです


第三章、黒曜襲来

──春、小学生から中学生となった俺は新生活が忙しくて……中々ミラージュに行く暇が無かった。

久しぶりに店へと向かう足は軽やかで、楽しみで仕方がなかった。

だからこそ、店に入って聞いたその声と姿に……目を疑った。

 

 

「いらっしゃいませー!!……………ぁ」

 

「ゆ、ユギト!!!??」

 

 

ミラージュの制服のエプロンを付けて、にこやかに元気よく挨拶してくるのは……デカイ金属の首輪を付け、ぐるぐると渦が巻いて見える程に分厚いレンズのメガネを掛けた、友達(ユギト)だった。

 

 

「なんでここにいるんだよ!?」

 

「やあ、こんにちは百火(ヒャッカ)くん……いえね、これには深い訳がありまして……まあ取り敢えず、パック買いません?」

 

 

ニコーっと笑いながら、黒のカードが出るパックを振るアイツを見ると……なんか、気が抜けてくる。

 

 

「いや、俺黒使わねぇし……」

 

「えー!使いましょうよー黒ー!私の色ですよ?この際、赤と混ぜて混色にしても許しますからー!」

 

「押し売りはダメであります!同志百火(ヒャッカ)は混ぜるなら黒よりも黄の方が良いと思うであります。手数が増えて、戦闘に強くなるでありますよ」

 

「いやいやいや、ソコロワ嬢も押し売りしてますよね!?それに、百火(ヒャッカ)くんは墓地利用多いので、墓地肥やしと回収が得意な黒を混ぜた方が良いですよ!」

 

「いやだから、混ぜねぇよ……俺、単色のが合ってるし」

 

 

横からひょっこり出てくるのはレジーナだ。

久しぶりに会ったけども……なんで二人がミラージュにいるんだよ。

 

 

「それはね、二人の任務の手掛かりが見つかるまで、ウチでアルバイトしてもらってるわけさ!人手が足らなくてね!!」

 

「因みにアタシも白掟(ハクジョウ)様が働いてるから、一緒に働いてるってわけよ」

 

 

店の奥から出てくるのはアポロ店長、そしてその横で親指をグッとしてくるのは……ドクロの仮面を付けてたねーちゃん──確か駆魔(カルマ)って人だ。

『タクミの奴は倉庫番してるんだよなぁ』って言ってるけども……タクミって誰だよ。

 

 

天神(テンジン)アポロの予言待ちでありますな……下手に動くより、確実であります」

 

「後、私が一文無しなので……ここ、三食おやつ付きなので助かります」

 

 

すごく世知辛い言葉が聞こえたけども……任務ってなんだ?なんかさっきから疑問しか増えてこねぇ……

 

 

「えーっと……つまりは、暫くはお前らはミラージュで働くって事なのか?」

 

「そういう事になりますね、という訳でパック買いません?」

 

「買うけど、赤のカードの奴な」

 

 

ーーーーー

 

 

ファイトスペースでパックを剥いている百火(ヒャッカ)くんを遠くから眺め……ため息が漏れました。

再会が思ったよりも早かった……というのもありますし、レイカ嬢から伝えられた情報が重いのが原因です。

……鬼丸(オニマル)くんが魔女会(フェアリーテイル)の手に堕ちた。優義徒(ユギト)とキョウカちゃんだけでなく。

鬼丸(オニマル)くんとは、二人で話す機会はあまり多く有りませんでした。彼自身が多くを語らないタイプなのもありますし、私によく話し掛けに来たレイカ嬢やタクミくんに遠慮していたのもあるのでしょう。彼は、優しい子なので。

最後に二人で話した機会は……あの大会の前夜、彼には悪い事をしました。もう一度、話せるならば……彼にも、謝りたいです。

私が魔女会(フェアリーテイル)を追う理由がまた一つこれで増えたというわけです。

そして……同時に【無限湖の繁殖(グラーキ)】もまた魔女会(フェアリーテイル)に奪われてしまった。

瑞神は、神にとっては眷属であり……急所とも言える存在です。【無限湖の繁殖(グラーキ)】だけならまあ、まだ問題ありませんが……行方知れずの【空に誘う冷気(イタクァ)】も確保されていたら、半数が握られている状況となります。私を使役する為の前提条件……私の眷属たる四柱の瑞神を打破する事はそのまま四柱の瑞神を所有する事と同義となります。

()()()()()()()()()という最後の条件を、物理的に満たされる事はまず不可能ですが……"ギアスファイト"を仕掛けられたら、話は変わります。

 

水底の呼び声(クトゥルフ)

永劫に留める(ガタノソア)

無限湖の繁殖(グラーキ)

空に誘う冷気(イタクァ)

 

誘黒神(ナイアルラト)】を引きずり出された上で、確殺してくる姿が目に浮かびます…………【永劫に留める(ガタノソア)】だけでも回収したいのですけど、お父さんの中から取り出されたのは統白神に多分消し飛ばされてますよねぇ……【水底の呼び声(クトゥルフ)】はIGPに確保されてからどうなったのか聞きましたが、こちらもまた行方不明という事です……なんなんですかこれ。

 

 

「はぁ……」

 

「ユギトくん、ため息吐いてると幸せが逃げちゃうよ?」

 

「逃げたのならば、捕まえたら良いのですよ。ほら、幸せは歩いて来ないって言うじゃないですか」

 

 

いつもより機嫌が良さそうなアポロさんに声を掛けられ、そちらへと向き直りますと……ほんの少し、磯臭い香りがした気がしました。

……レイカ嬢が一晩泊まったという事もあって、まさか()()()()と事を行ったのでは?

疑惑を疑惑のままにするのは気持ちが悪いので、口を開いた瞬間……キンと何かが砕ける澄んだ音が響きます。

 

 

「これは……」

 

 

地面から幾つも生えてくるのは私の身の丈をも超える巨大な黒水晶。

それらは私とアポロさんを分断する壁のようになり……次いで、声が響きます。

 

 

set(起動)

 

 

胃の腑が持ち上がるような不快感……何かしらの術による、空間の変異が起こります。

清潔感のある明るい店内から一転、等間隔に火の付いたロウソクが掛けられている石造りの壁は、所々に黒い水晶と化していて……吹き抜ける風は、冷たくてぶるりと体が震えます。

足元には風化して砕けたのであろう黒水晶の破片が散らばり、ジャリジャリという音が響きます。

これはまさに……

 

 

「廃墟……いえ、黒曜石の異界とでも呼んだ方が良いですねこれは」

 

 

飛ばされたのは私だけなのか、それとも他の人も飛ばされたのか……この異界に満ちる重苦しい空気は気が滅入ります。

進もうにも、どの方向に行けば良いのか私にはさっぱり分かりません。

ジャリっと背後で足音と共に微かな金属のぶつかる音が聞こえました。

 

 

「なので、貴方たちが道案内をしてくれる助かるのですが……」

 

 

返答は唸り声と共に突き出される鉄の爪でした。

獅子を模した鎧の騎士とカブト越しに視線を交わしますが……その眼球は黒水晶に完全に覆われていて、視界が無い事が察せられます。荒々しい動きはまさに獣のソレで、直線的ですが鋭い一撃が私の胸を貫きます。

 

 

『よぉし、良いぞ犬っころ!そのまま侵入者を抑えておけ!ククク……侵入者、運が悪かったな。この私に捕まったのだ、骨の髄まで甚振(いたぶ)って、どこの手の者か洗いざらい吐いてもらおう!』

 

 

ここを見ているようで見ていない……夢を見ているような目をした眼帯を付けた老け顔の騎士が嗜虐(しぎゃく)的な笑みを浮かべながら、手に持った鞭の先を地面に叩きつけます。

……黒曜騎士(オブシディアンナイト)なのは分かるのですが、名前をいまいち覚えていないのですよねぇ。

 

 

「ゴホ……そういうのは良いので、貴方たちのサモナー……ジュンくんの所に案内して下さいよ。いるのでしょう?」

 

『先ずは爪の間に針を刺して……いや、痛みよりも先に他の感覚から責めるか……ククク』

 

「うーん、これはダメな気配しかないですね」

 

 

完全にトリップしちゃってる眼帯の騎士さんはブツブツと物騒な事を呟いていますし……獅子鎧の騎士さんは私から零れた()()()を舐めて、遠吠えをしていますし……ここまでとち狂った人たちを見ると、流石の私も真剣にならざるを得ません。

ぐぅと腹の虫が鳴きます。

 

 

「小腹も空いたので……朝のおやつの時間といきましょう

 

 

 




その騎士が見る夢は狩猟。
野を駆け、山を駆け、戦場を駆け、両爪で眼前の敵を葬りさる愉悦に溺れる。
鮮血に塗れて、吼え猛る姿はまさに獣。
第六のルール、血の臭いがしたならば……物音を立ててはならない。狂った獣にその身を引き裂かれるであろう。

──フレーバーテキスト【狩猟の黒曜騎士(オブシディアンナイト)ユーウェイン】から抜粋
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