TCG販促アニメでどう足掻いても悪役ポジションの私が開き直って悪役RPを満喫するお話   作:木津 吉木

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【無貌の劇場】

 

──私は、誰なんだ。

 

 

私には何も無い。

私を形作る物は全て外付けだ。

だから、私はもっと何かを得なくてはいけない。

私自身を形作る何かを……■■■の前に自信を持って立てるようになる為に。

 

 

──英雄

 

 

……分かっている。そんなものはどうせ虚飾だ、こんな在り方しか出来ない私がなれる筈がない。

でも仕方がないだろう?それでも、ならなければいけないのだから。

敬われ、一目置かれる存在になれば……私のこの空白も埋まるだろう?

私の存在を……■■■に認めてもらえるだろう?

──また、昔みたいに……一緒にいさせてくれるよね?

ねぇ、ユーくん……

 

 

 

ーーーーー

 

 

地面が砕け、空いた穴の中に落ちていく私とジュンくん。

長い浮遊感に、地の底に叩きつけられた時の末路が思い浮かび……私のことは兎も角、ジュンくんは間違いなくトマトのようにぐちゃぐちゃになるのが目に見えていました。

影の中から触手(うで)を、ジュンくんの元へと伸ばそうとした瞬間に寒気を感じました。

触手(うで)の先端を構成する小虫の群れを切り離すと、黒い水晶へと変じてボロボロと風化して崩れていきます。咄嗟に、切り離さなければ……あの程度の被害では済まなかったでしょう。

それをしたであろう下手人の青白い触手が、ぬるりとジュンくんのデッキから生えたまま彼の身に巻き付く。

 

 

「何故邪魔をするのです【永劫に留める(ガタノソア)】!!」

 

 

地面はもうすぐそこで間に合いません。

衝撃に備え、目を閉じた瞬間に急速な浮遊感が治まります。

あの落下は何だったのかと思う程にゆっくりと下ろされ、足裏が地面に触れます。

 

 

「お初にお目にかかります、黒の神」

 

 

同じようにジュンくんも……彼女の傍に下ろされます。

栗色の髪を(くるぶし)の辺りまで伸ばし、優しげな表情はどこか憂いを帯びていて……その姿が妙に()()()()()()()()()。そして、じわりと滲み出ている圧力はこの異界に満ちたソレと等しい。

 

 

「ジュンくんではなく貴女がこの異界を作り上げた方ですか……お名前を伺っても?」

 

「自己紹介が遅れていましたね、私はモルガナ。黒の神、お前に用があるのは私ではなく彼です……私は、彼の望みを叶えているだけです」

 

 

そう話す彼女は、まだ立ち上がれていないジュンくんの横で膝を着いて目線を合わせています。

心配そうな、慈しんでいるようなその目を見る限り……悪辣な存在には見えません。

 

 

「立てますか?」

 

 

答えはありません。

ですが、震えながらも自力で立ち上がるジュンくんにモルガナ氏が目を細める。

 

 

「【永劫に留める(ガタノソア)】を持ち出しても、()()に勝てなかったようですね」

 

「…………」

 

「諦めて帰りますか?」

 

「……それでも」

 

 

ジュンくんが流れ出る血を袖で乱雑に拭い、"ギアスディスク"を着けた左腕でこちらを指します。

 

 

「挑まない理由にはならない……私は、ヤツを滅ぼして英雄にならなくちゃいけない!!!」

 

 

「……分かりました、()()()()()()()()()

 

 

消耗して青ざめた肌と震える四肢と対称的に、妙にギラついた濁りきっているアイスブルーの瞳がアンバランスで……()()()

 

 

「良いですよ、あの騎士たちでは物足りなかった所ですから……この邪神()を楽しませて下さいよ」

 

 

ここでは誰も見ていませんし、何よりも退屈していた所ですからね。

久しぶりの悪役RP(ロールプレイ)に口角が上がります。

モルガナ氏がジュンくんから数歩後ろに下がります。

……視界が暗闇に慣れ、この空間の全容が見えてきました。

黒い水晶が等間隔に十二個、その中には人型の何かが入っているように見えます。地面に刻まれているのはコウモリを模した紋様が目立つ魔法陣ですが、その外輪部には互いに互いを喰らう獣と鳥の意匠が輪を描くように描かれています。

……こういう術には詳しく無いのですが、厄ネタなのだろうなぁというのは分かります。

 

 

「加減は不要だ……約定(クレスト)カードを使え」

 

「使うかどうかを決めるのは私です、貴方ごときが決めないでもらえますか?」

 

 

勿論、使うつもりはありません……タクミくんの時と同じです。

……ジュンくんは、優義徒(ユギト)の大切なお友達ですから。

彼を不必要に傷つければ、優義徒(ユギト)も悲しんでしまう。

 

 

「後悔させてやる……」

 

 

「「"ギアスファイト"レディセット!!!」」

 

 

■■(オウドウ) ■■(ジュン) 【不変に呪われた騎士】

VS

ユギト 【無貌と愉快な仲間たち】

 

 

私の今回の"ギアスモンスター"も【Mr.UNKNOWN(正体不明)】です。彼はやはり、私自身という事もあって中々に使いやすい……我ながら、便利な効果ですし。

ジュンくんの"ギアスモンスター"はやはり【アーサーI(ファースト)】ですね……確か、あのモンスターが"ギアスモンスター"として存在する時に効果が発動するカードもあった筈なので、置かない理由がありません。

 

 

「「スタートアップ!!」」

 

 

先行はジュンくんですね。

先程の激闘から間が空いてないのもありますが、動きが鈍い……やはり、無理がありますね。

……正直、中断して休ませてあげたいですが、彼はそれを望まないでしょう。

 

 

「私のターン、カウンターブースト!!」

 

 

■■(ジュン) 第一ターン

ライフ:10

手札:5 ターンカウンター:2

 

 

「【黒曜騎士(オブシディアンナイト)アグラヴェインⅩⅡ(トゥエルブ)】をサモン!!」

 

 

黒曜騎士(オブシディアンナイト)アグラヴェインⅩⅡ(トゥエルブ)

黒・黄 コスト:2 騎士

A:3 B:6

 

このモンスターは自分の場に黒曜騎士(オブシディアンナイト)モンスターがいるならば場に出せない。

このモンスターは攻撃出来ず、相手プレイヤーは可能ならばこのモンスターを攻撃しなければならない。

このモンスターが破棄された時、手札またはデッキからこのモンスターよりコストが2大きいまたは1小さい黒曜騎士(オブシディアンナイト)モンスター一体を場に出す。

このモンスターはデッキに一枚しか入れられない。

 

 

足を黒い結晶に覆われた騎士が、動いた拍子にズレたメガネを指で直します。その腕全体を覆うのはいかにも硬そうな手甲(ガントレット)……殴られたら痛そうですね。

 

 

「ターン終了だ」

 

「私のターンです……ドローをスキップしてカウンターブースト」

 

 

ユギト 第一ターン

ライフ:10

手札:5 ターンカウンター:2

 

 

さて【アグラヴェインⅩⅡ(トゥエルブ)】のステータスは厄介ですが、攻撃は出来ないのが救いです。お得意のアーティファクトも置かれていない現状ですと……下手に攻撃せずに、展開だけしておきましょうか。

 

 

「アーティファクト【無貌の劇場(ザータ=ホーグラ)】を発動します」

 

 

無貌の劇場(ザータ=ホーグラ)

黒 コスト:2 アーティファクト・無貌

 

このアーティファクトが場に存在する限り、自分の場のモンスターはカテゴリー:使徒を得る。

一ターンに一度、発動出来る。手札から混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)モンスター一体を場に出す。そのモンスターはこのターン攻撃出来ない。

 

 

発動と同時に、私の場に建造されるのは巨大な二枚貝のような外見の劇場です。

その周りでフルートなどの笛を吹き鳴らし、宣伝している仮面を被った子供位の大きさの虫たちは……人手が足らないので裏方作業を任せている分割した私の群れの一つです。

 

 

「【無貌の劇場(ザータ=ホーグラ)】の効果です、手札から混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)モンスターを場に出します。【混織誘黒旅団(ノーフェイスブリゲード)()詐術師(フィクサー)Mr.O(オニテング)】を場へ!」

 

『はい、はい!お呼びとあらば即参上!我輩、働き者でございますので!!』

 

 

一際大きく笛が吹き鳴らされ、スポットライトを浴びながら劇場より姿を見せるのは【Mr.O(オニテング)】……働き者と言いますが、微妙に胡散臭いのですよねこの方。

 

 

「この効果で場に出たモンスターはこのターン攻撃出来ません。これにてターン終了です」

 

「オニテング……神牙(ジンガ)のモンスターを奪ったのか?」

 

「いいえ、協力してもらっているのですよ。私の新しい玩具(仲間)の一人として」

 

『払う物払ってくれるなら、我輩はどなたがサモナーでも構いませんのでー!!』

 

 

仮面の下でニンマリと笑っている【Mr.O(オニテング)】の言葉に、ジュンくんは眉をひそめています……まあ、大分アレな発言ですからね……ええ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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